NHK「美の壺(びのつぼ)」は普段使いの器から家具、着物、料理、建築に至るまで、衣食住、人の暮らしを彩ってきた美のアイテムを解説してくれる番組。紹介されたものは何?場所はどこ?出演は誰?どこで買える?と興味津々。
そんな気になる「美の壺・美術の鑑賞マニュアル」を詳しく調べてみました。最後に番組内の音楽もまとめてあります。
美の壺 スペシャル「現代のうつわ」
出演は俳優の 草刈正雄(くさかり まさお)さん、ナレーション(語り)は女優の 木村多江(きむら たえ)さんです。
最新エピソード 美の壺 File 613「干菓子」 もどうぞ併せてご覧下さい。
BSプレミアム(2023年11月30日まで。2023年12月1日から NHK BS(BS101チャンネル) へ移動)
初回放送:2022年6月25日(土)18:00~19:30
再放送 :2022年9月14日(水)16:20〜、2023年3月6日(月)16:28〜
2023年6月1日(木)14:58〜
BS4K(2023年12月1日から BSプレミアム4K へ名称変更)
初回放送:2022年3月28日(月)13:00~14:30
再放送 :2022年6月25日(土)18:00~
U-NEXT でNHKの動画配信サービス NHKオンデマンド を視聴可能。らんまん・なつぞら などの朝ドラや 光る君へ・鎌倉殿の13人・真田丸 などの大河ドラマ、探偵ロマンス・正直不動産 などの名作ドラマ、ファミリーヒストリー「草刈正雄」を一気見できます。U-NEXTは初回31日間無料トライアル。NHKオンデマンド は別料金ですが、もらえる600ポイントで購入できます。PR
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美の壺 2024年度(2024年4月〜2025年3月)バックナンバー はこちらをどうぞ!
美の壺 スペシャル 現代のうつわ 内容
▽コロナ禍でおうち時間が増える中、若い世代を中心に人気を集める「現代のうつわ」を大特集
▽人気ファッションデザイナーも愛する「美」と「実用」を兼ね備えた「生活工芸」とは?
▽展覧会を開けば売り切れ必至の人気作家の創作現場へ
▽日本の器がいま中国で大人気?!中国料理と和食器が生み出すマリアージュ
▽個性派ギャラリーや人気作家が新しい器の魅力を提案
▽自然の力を借りて作り出す器の新しい「景色」とは?
プロローグ
深夜の草刈邸ですすり泣く女性の声が。1枚、2枚、とお皿を数えています。
番町皿屋敷のお菊さん?
「私お皿集める趣味があるの。渡しなさいよ」とお菊さんから脅される草刈さんですが…。
美の壺 一、くらし:使う人と作り手を結ぶ “生活工芸”
ひとつめのツボは くらし:使う人と作り手を結ぶ “生活工芸”。
皆川明さん / ファッションデザイナー / 生活の中の器【東京都】
ミナ・ペルホネン(minä perhonen)のファッションデザイナー 皆川明(みながわ あきら)さんが日常使いに愛用している器と料理を見せてくれました。
皆川さんは1967年、東京生まれ。1989年に文化服装学院卒業後、服飾メーカー勤務などを経て、1995年に自身のブランド ミナ(minä)を設立。2003年にはブランド名を ミナ・ペルホネン(minä perhonen)に改名。
「minä(ミナ)」は「私」、「perhonen(ペルホネン)」は「ちょうちょ」の意味。
ブランドの魅力はオリジナルの手描き図案によるテキスタイルデザインを作るところから生み出される服。北欧のライフスタイルに影響を受けた日常に寄り添うデザインで、ファッションからはじまり家具や器まで幅広いアイテムが揃っています。
100年愛される特別な日常の服を作りたいという皆川さん
デザインだけでなく、肌触りなど素材の生地からこだわるものづくりは世界でも高い評価を受けています。
皆川さんのそうした情熱は、料理にも注がれます。
料理好きで知られる皆川さんはブランドが軌道に乗るまで魚河岸でアルバイトしていた経験もあり。
コレクションの忙しい時期は20人以上のスタッフに自らまかない料理をふるまうそうです。そのレシピは Casa BRUTUS の連載「今日のまかない」で紹介されました。
近年はジノリの絵付けを初めとする器メーカーとのコラボレーションや自ら食器をデザインすることも増えてきた皆川さん。日々の暮らしでも器は大切なもの。
皆川さんは料理を盛る時に大きめの器を使います。使っていたのは沖縄の 大嶺工房(おおみね こうぼう)のやむちん作家 大嶺實清(おおみね じっせい)さんの 大皿。
「器の景色を借りる」と器のデザインや形、制作した時の気持ちを想像しながら、料理の食材・手順・盛り付けを組み立てるのが面白いのだと語ります。
いちごは 晴耕社ガラス工房(せいこうしゃ がらすこうぼう)荒川尚也(あらかわなおや)さんの ガラス皿 に。整列するように盛り付けるセンスが素敵。
皆川さんがトマト専用として愛用する白いお皿は 陶芸家 安藤雅信(あんどう まさのぶ)さんの作品。
トマトの赤に白、縁の揺らぎも相まって、まるで白い花が咲いたかのような1皿です。
名前 | ミナ・ペルホネン(minä perhonen) |
住所 | 東京都港区白金台5-18-9 |
WEB | https://www.mina-perhonen.jp/ |
大嶺實清さん / 大嶺工房 / やちむん【沖縄県 読谷村】
皆川明 さんが使っていた 大皿 は 沖縄 の 大嶺工房(おおみね こうぼう)のやむちん作家 大嶺實清(おおみね じっせい)さんの作品。沖縄では陶器のことを やむちん と呼びます。
美の壺 File 571「やちむん」の回では「やちむん」が詳しく紹介されました。
大嶺さんは1933年沖縄県生まれ。1961年に立命館大学卒業後、京都の古道具屋で琉球王国時代の陶器に出合ったのがきっかけで陶芸家への道へ。
1970年に首里城北に「石嶺窯」を、1980年には「読谷村窯(よみたんそんがま)」を築いた現代やちむんの第一人者。
1986年から1997年に沖縄県立芸術大学教授、2002年から2003年まで沖縄県立芸術大学学長を務めました。
現在は陶芸家である3人の息子さん、大嶺由人さん、大嶺亜人さん、大嶺音也さんとともに読谷村で制作しています。
名前 | 大嶺工房(おおみね こうぼう)/ ギャラリー囍屋(きや) |
住所 | 沖縄県中頭郡読谷村座喜味2653-1 |
電話 | 098-958-2828 |
営業時間 | 10:30~18:00 |
定休日 | 不定休 |
大嶺工房 大嶺實清さん作のやちむん。
荒川尚也さん / 晴耕社ガラス工房 / ガラスの器【京都府 京丹波町】
皆川明 さんが使っていた ガラスの器 は 京都府京丹波町 の 晴耕社ガラス工房(せいこうしゃ がらすこうぼう)荒川尚也(あらかわなおや)さんの作品。
荒川さんは1953年京都府生まれ。1977年に北海道大学農学部卒業後に豊平ガラス工場に入社し巳亦進治氏に師事。
1980年に京都府京丹波町の山奥に晴耕社ガラス工房を設立。自然豊かな土地で宙吹きガラスを製作しています。
繊細な小さな気泡が閉じ込められた独特な質感のガラスの器は実用的でありながら温かみを感じます。
名前 | 晴耕社ガラス工房(せいこうしゃ がらすこうぼう) |
住所 | 京都府船井郡京丹波町中山東野26 |
電話 | 0771-84-1977 |
WEB | http://seikosha-glass.com/ |
晴耕社ガラス工房作のグラス。
安藤雅信さん / 陶芸家【岐阜県 多治見市】
皆川明 さんが トマトを盛る時の専用の器 は 岐阜県多治見市 の陶芸家 安藤雅信(あんどう まさのぶ)さんの作品。白い器に真っ赤なトマトが映えます。
安藤さんは現代の作り手に大きな影響を与えてきた陶芸家。皆川さんとも親交があり、ミナペルホネンとのコラボ作品も制作しています。
安藤さんは1957年岐阜県多治見市生まれ。家業は焼物の卸業。
武蔵野美術大学彫刻学科在学中はジャズドラムにのめり込み、卒業後は現代美術作家として活動。アートを焼物で表現する試みを続けましたが制作自体に行き詰まりを感じていたそうです。
80年代90年代は工業製品で溢れていた時代。1992年に妻・明子さんと結婚し新婚生活で器を揃えよう探しても気に入る器が見つかりあませんでした。ならば自分で理想の器を作ろうと思い立ちます。
出会ったのが17世紀の素朴なオランダ白釉陶器の皿。自分が欲しいものは「手仕事の日常使いのうつわ」であることに気づきます。
白でニュートラルな飽きのこないお皿、彫刻のような器が作りたいと思った安藤さん。
オランダ白釉陶器からインスピレーションを得て試行錯誤を重ねること3年、独自の製法にたどり着きます。
安藤さんのゆらぎのある器は独特の製法「たたら」という技法から生まれます。
削り出しているのは石膏型。ろくろは用いずこの石膏型を使い、まるで彫刻のように器を作るのが安藤さんの特徴。
たたら技法は石膏型に タタラ と呼ばれる板状の粘土を置き、叩いて成型をする手法です。
窯に入れ焼き上げると粘土を叩く力の微妙な加減で揺らぎが生まれます。
同じ型を使っても少しずつ個体差がでて1つとして同じものはできない一点もの。手で叩いたときの力が形となって現れるのが魅力です。
作品性だけでなく、使い手の意識も大切にするのが安藤流。
使う人のことを考えて、器が擦れてテーブルに傷がつかないようにお皿の底には艶のある釉薬を施しました。
日本の狭いテーブルでも無駄なくたくさんの皿が置けるようにと楕円形の器をいち早く手掛けたのも安藤さんです。
日常遣いにも美しさを、と使う側に問いかける安藤さんの作品は「生活工芸」と呼ばれ、多様な器にも広がりを見せています。
作る人のエネルギーと使う人のエネルギーは対等。使う人のエネルギーを触発し、この器をどう使ってくれるのかというのが見たいと語っていました。
1998年に数寄屋風の古民家を移築し作業場兼住まいと併設されたギャラリー ギャルリ百草(ギャルリももぐさ)を開廊。自らの作品作りと並行してギャラリーでは数々の工芸作家の展覧会を開催。
名前 | ギャルリ百草(ギャルリももぐさ) |
住所 | 岐阜県多治見市東栄町2-8-16 |
電話 | 0572-21-3368 |
WEB | https://www.momogusa.jp/ |
営業時間 | 11:00〜18:00 |
定休日 | 展示による |
安藤雅信さんの著書。
三谷龍二さん / 木工作家 / 白漆塗りの木の器【長野県 松本市】
長野県松本市 の木工作家 三谷龍二(みたに りゅうじ)さん。普段使いの木の器を作る生活工芸のパイオニアです。
三谷さんは1952年福井市生まれ。高校卒業後に京都の前衛的な劇団に入団しポスターや舞台美術を担当。その後、職を転々とした末、1979年に松本市に移住。松本は木工家具の産地です。地元の画材店に働く傍ら職業訓練校の木工科で家具づくりを学びました。
1981年松本市に個人工房 PERSONA STUDIO(ペルソナスタジオ)を設立。1985年には「クラフトフェアまつもと」の発足に参加。
2011年に松本市に ギャラリー10cm(10センチ)を開店。
番組で紹介されていた陶芸家の 安藤雅信 さん、ガラス作家の 辻和美 さんとは毎年「生活工芸」作家の3人展を開催するなど親交があり。
1981年の独立当初は六畳一間の工房。大きな家具は制作できません。作り始めたのは木のブローチ。
無垢の家具は何十万もする高価なもので普通の暮らしの中ではなかなか使えません。無垢の木の良さに触れてもらうには生活により近いものを作りたいと考えるようになりました。
1983年に家具を作る友人に刺激を受けて、気軽に買えて暮らし役立つ道具を作ろうとスプーンやナイフなどの カトラリー を制作。木の器 も作り始めました。
三谷さんの器は、自らの暮らしの中から生まれたもの。
瓶のそこに残ったジャムもきれいにすくえるよう、柄の長いさじを作ってみたり
木の器に金属のナイフを使うのは、気が引けると木製のパンケーキナイフを作ってみたり、
こんなものあったらいいな、という気づきが器作りの出発点。
牛乳パックをそのまま使えるヨーグルトメーカーを購入した妻のためにちょうど柄の良い長さのスプーンをつくったことも。
三谷さんの木の器は木目の美しさを至るため、表面には専用のオイルを塗り食卓に馴染む薄さにデザインされています。
そして木の器をもっと身近なものにしたいと追求する三谷さんがたどり着いた器は下地に 黒漆、仕上げに 白漆が塗られたお皿。
木工は意外とカチッとした形に仕上げるそうですが、刷毛目によってズレやノイズ感が出て自分が意図しない位の変化が面白いと語ります。
無垢の木よりも白い皿の方が他の食器ともなじみやすいはず、と三谷さんは考えました。
白なら細かな傷も目立ちません。
お手入れ簡単。洗剤で洗っても大丈夫日常遣いで楽しめる器です。
普通の人々、市井の人々、自らもその1部だしそういう人々といつも繋がっていたい。
その人たちの暮らしが1番かけがえのないものでだという三谷さん。
細やかなこだわりで使う人を幸せにする器です。
名前 | ギャラリー10cm(10センチ) |
住所 | 長野県松本市大手2-4-37 |
電話 | 0263-88-6210 |
WEB | http://www.mitaniryuji.com/ |
営業時間 | 金〜日:11:00~18:00 |
定休日 | 月〜木 |
三谷龍二さんの著書。
美の壺 二、作り手:器は作家をあらわす
ふたつめのツボは 作り手:器は作家をあらわす。
広瀬一郎さん / ギャラリー桃居【東京都 西麻布】
東京西麻布 の ギャラリー桃居(とうきょ)のオーナー 広瀬一郎(ひろせ いちろう)さん。その卓越した審美眼と広い知見で、多くの工芸作家が信頼を寄せる人物です。
広瀬さんは1948年東京生。慶応義塾大学法学部卒。出版社勤務、神田神保町で珈琲店、青山でバー「K’s Bar」を経営。店や自宅に焼物を揃えるうちに、現代の陶磁器に目を注目します。
1987年に ギャラリー桃居 をオープン。
開業当時はバブル全盛期。大手百貨店や有名ギャラリーには有名作家の作品や高価な鑑賞用の陶磁器が飾られていました。
しかし広瀬さんが扱ったのは日常生活で使うための器。高級品と大量生産品の間のゾーンが欠けていることに気づき、作家が手作りした暮らしの器のお店を作り、作り手と使い手の架け橋になりたいと考えたのです。
産地や権威にとらわれず、気になる作家さんたちとコンタクトを取り、少しづつ作品の取り扱いを始めました。
川淵直樹さん、青木亮さん、花岡隆さん、村木雄児さん、黒田泰蔵さん、赤木明登さん、三谷龍二さん、安藤雅信さんなど、今では錚々たる作家の方達ですが有名になる前からお付き合いが続いています。
番組で紹介されたのは 羽生野亜(はにゅう のあ)さんの 古木の器、津田清和(つだ せいわ)さんの ガラス器、安齋賢太(あんざい けんた)さんの 漆器、新宮州三(しんぐう しゅうぞう)さんの 漆器。
名前 | ギャラリー桃居(とうきょ) |
住所 | 東京都港区西麻布2-25-13 |
電話 | 03-3797-4494 |
WEB | http://www.toukyo.com/ |
営業時間 | 金〜火:11:00~19:00(展示による) |
定休日 | 水曜・木曜 |
村上躍さん / 陶芸家 / 手びねりのティーポット【長野県 茅野市】
長野県茅野市 の陶芸家 村上躍(むらかみ やく)さん。代表作は ティーポット 。展示会を開くと売り切れしまうほどの人気です。
村上さんは1967年東京都生まれ。武蔵野美術大学短期大学部専攻科工芸デザインコース卒業後、1998年から神奈川県川崎市柿生で 手びねり で作品制作を始めました。
2020年に長野県八ヶ岳に自宅兼工房を移転。
村上さんの陶器は 手びねり という制作技法で作ります。手ろくろに粘土を積み上げる手法です。指先の感覚1つで微妙な厚みや曲線を作り出していきます。
手作りの風合いを保ちつつ、村上さんがこだわるのはその機能性。
こだわりは、急須の内側部分にある茶こしと注ぎ口の部分。茶こしの部分は試行錯誤を繰り返し茶葉がつまらない最適の穴の大きさや形を見つけ出しました。
何より神経を使うのが注ぎ口の部分。先端に2mm単位のわずかな折り返しをつけることで、液だれを防ぐのです。
素朴な質感と工業製品のような機能性。軽さと重さ、柔らかさと鋭さが共存する不思議な形です。
さまざまな化粧土を使いこなし異なる質感を作り出す技術は魔法のよう。
そして触れたときにほっと一息つけるのも大事なこと。
村上さんの師匠、と大切にしているのは角の取れた「石ころ」。手に取ったときに、なんだか心が満たされてしみじみといいなって思ってしまう。
自然が作り出した造形で何の作為もない。これが理想の形で目標と語ります。いつまでも手の中で転がしたくなる。
不思議な心地よさに満ちた村上さんの器です。
名前 | 村上躍(むらかみ やく) |
住所 | 長野県茅野市 |
WEB | https://www.instagram.com/yaku4698/ |
村上躍さんのティーポット。
長野史子さん / ガラス作家【愛知県 名古屋市】
愛知県名古屋市 ガラス作家 長野史子(ながの ふみこ)さん。
長野さんは1974年生まれ。名古屋芸術大学デザイン科卒業後、テレビ局に入社し美術演出の仕事へ。
料理番組を担当するうちに器に興味を持ち、陶磁器に比べてガラスの器は未開拓だと週末ガラス工房に通い技術を学び始めました。28歳で退社しガラス制作に専念。
瀬戸市新世紀ガラスコースで学んだ後、キッタヨーコ工房、ピーターアイビー工房、グラススタジオIEMAKでのアシスタントを経て2011年に独立。愛知県名古屋市に自宅兼工房を開設しました。
長野さんが作るのは今にも壊れそうな儚げを表した花のようなガラスの器。
見せてくれたのは石膏型にガラスの粉と板ガラスを敷き詰め電気炉で焼成するキルンワーク という技法。同じ材料でも、粒子の粗さや溶かす温度、仕上げの仕方で出来上がりが全く変わってくるのが面白いところ。
素材を電気炉に入れて一晩。
細かいガラスの粉が溶けて雪が積もったような景色が現れました。
また別の器は溶けたガラスの粒が小さな気泡となって浮かび上がりました。
さらに透明な表面をあえて削ることで、ガラスの複雑な表情を作り出して行きます。
実はちょっとおっちょこちょいな長野さん。うっかりミスでやってしまった失敗から新しい発見があるのだとか。
変幻自在に姿を変えるガラスの器はまるで水のようでもあり、表情豊かな永野さんそのものを移したかのようなものでもあります。
名前 | 長野史子(ながの ふみこ) |
住所 | 愛知県名古屋市 |
WEB | https://naganofumiko.com/ |
神崎宣武さん / 民俗学者 / 日本の食文化と器
日本の食文化と器を解説してくれたのは民俗学者の 神崎宣武(かんざき のりたけ)さん。
神崎さんは1944年岡山県生まれ。実家は宇佐八幡神社社家。家業に反発し武蔵野美術大学へ。
大学で民俗学者の宮本常一教授に出会い民俗学の道へ。その後近畿日本ツーリスト社が開設した日本観光文化研究所で研究。陶磁器、食文化を中心にフィールドワークを重ね著書多数。
宇佐八幡神社の28代目宮司も務めています。
美の壺 スペシャル「日本のお弁当」、美の壺 File 610「石仏」にも出演されました。
今に伝わる器の多くは、江戸時代の食文化に基づいています。一人一つのお膳に五種類程度の器を乗せるのが一般的なスタイル。
庶民は畳の上に 平膳(ひらぜん)と呼ばれるお膳を置いて食事をしました。
お膳の上の器は畳の位置から口元まで70cmほど運ぶ運搬容具。飯茶碗 は手に収まりやすい形になり直接口元に運ぶため薄くて丈夫な磁器が好まれました。
また絵付けの皿には目にも楽しい粋な工夫が凝らされました。
織部焼(おりべやき)のお皿は緑、白、黒の模様があり景色を作らなくても盛り付けがしやすいという利点があります。上から順に食べ進むと最後は織部の景色が残るというのはとても優れた演出だと神崎さん。
汁椀 の蓋の裏側にはめでたい絵柄が描きこまれ、食事の時間を楽しく盛り上げます。
料理と器を目で見て味わう。食事を豊かに彩るために、日本ではたくさんの種類の器が誕生したのです。
名前 | 宇佐八幡神社 |
住所 | 岡山県井原市美星町黒忠3430 |
電話 | 0866-87-2709 |
WEB | https://www.okayama-jinjacho.or.jp/search/16713/ |
神崎宣武さんの著書。
美の壺 三、日本の器:器から学ぶ日本の美意識
みっつめのツボは 日本の器:器から学ぶ日本の美意識。
溝口実穂さん / 菓子屋ここのつ / 糧菓と器【東京都 台東区】
東京台東区 菓子屋ここのつ の店主 溝口実穂(みぞぐち みほ)さん。
溝口さんは1991年埼玉県生まれ。食物栄養科の短期大で栄養学を学んだ後、東京と京都の和菓子屋に勤務。23歳で古い材木置き場を改装し、菓子と茶のコースを提供する完全予約制の茶寮 菓子屋ここのつ を開業。四季折々の和洋の食材を組み合わせてお客をもてなします。
茶寮は完全予約制、1回5名限定の2時間コース、昼夜2回オープン。
自ら 糧菓(りょうか)と呼ぶ料理と菓子の間のような5皿がそれぞれに合うお茶と共に提供されます。
和でも洋でもない、菓子とも料理ともつかない独創的な糧菓。紹介されていたのはカリフラワーのスープに浮かべるのはチョコレートムースを包んだれんこんの饅頭。
料理をするときに大切にしていることは「自由」。決めつけないで自由に組み合わせてみる、意外な組み合わせを楽しんでみる。新しい発見があるのは面白いと溝口さん。
こつこつと買い集めた器の数々。その独特な器遣いもお店の魅力です。
骨董店で見つけた年代物の黄瀬戸の皿に番組でも紹介された現代作家 安藤雅信 さんのグラタン皿の組み合わせ。安藤さんとは共著「茶と糧菓 喫茶の時間芸術」も出版。
茶渋も愛おしいという溝口さん。あえて茶渋を残すと積み重ねが年輪となって器の歴史を育んでいきます。
欠けた湯呑みやお皿にに施す金継ぎも然り。器と共に過ごす日々を積み重ね、器を育てていく楽しさを味わっています。
気になる茶寮の予約方法は公式サイトを参照。毎月1日の朝8時にメール受付となっています。
料金は初回 12,000円+税、2回目以降 10,000円+税。振り込み前払い制となっています。
名前 | 菓子屋ここのつ茶寮 |
住所 | 東京都台東区鳥越1-32-2 |
WEB | https://9-kokonotu.com/ |
メール | 9mizoguchi@gmail.com |
営業時間 | 13:00~15:00, 17:00~19:00(完全予約制) |
定休日 | 不定休 |
陶芸家・安藤雅信さんとの共著。
李若帆さん / ギャラリー莨室(LiangShi)/ 中国でも注目される日本の器【中国 北京】
中国・北京 のギャラリー 莨室(LiangShi)オーナーの 李若帆(りじゃくはん)さん。器を初めとした生活工芸を取り扱ってます。
10年以上に渡り、日本の器を中国に紹介してきた李さん。古くから磁器が好んで使われてきた中国では手入れも大変で割れやすい陶器は受け入れられるのに時間がかかりました。
少しずつ日本の現代陶器の魅力も浸透し、現在は毎年日本作家の展覧会を開催。ファンも獲得しています。
番組取材時は高知県香美市に工房を構える 小野哲平(おの てっぺい)さんの個展を開催中でした。
さらにこちらのギャラリーでは器を実際に使ってもらう体験会を開いています。
見て、触って、盛り付けて。自分の生活にどう溶け込ませるか想像を膨らませます。
料理と器の組み合わせの妙。作家の指の跡や力の強弱。食事中にいろいろな感覚を経験することができるとあって、お客さんからも好評です。
名前 | 莨室(LiangShi) |
住所 | 中国北京市朝阳区万荷文创园1号院6号楼2层 (中国北京市朝陽区万荷文創園1号院6号2階) |
電話 | +86-152-0798-1513 |
WEB | https://www.facebook.com/people/莨室LiangShi/100062956884728/ |
営業時間 | 火〜日:10:30〜18:00 |
定休日 | 月曜 |
陳超さん / 料理研究家 / 日本の器のコレクター
雑誌社に勤める 陳超(ちん ちょう)さん。16年前に日本への研修旅行で日本の器に出会い、日本に訪れる度に工房や展示会に足を運ぶようになりました。気に入ったものを買い集めるうちにコレクションは2,000点以上になっていました。
器と料理の組み合わせも日本特有の美意識を感じたという陳さん。
料理上手な母親からは「男は料理はしなくていい」という古風な教育を受けていましたが、日本の器に出会ったことで料理をするようになったといいます。今では料理研究家としても活躍。
陳さんの故郷・貴州 は数多くの少数民族が暮らす山岳地帯。独特の食文化が育まれた地域です。
貴州料理をベースにしたアイデア料理と日本のうつわの組み合わせを披露してくれました。
小野哲平 さんの大皿に盛るのは豚足を使った肉料理。素朴な風合いの器と色鮮やかな貴州料理の共演です。
器は家の一部であり、家族の一員と語る陳さん。生活に欠かすことのできない日本の器です。
美の壺 四、つなぐ:器のかげにつなぐ人あり
よっつめのツボは つなぐ:器のかげにつなぐ人あり。
吉岡秀治さん + 吉岡知子さん / カモシカ / オカズデザイン【東京都 杉並区】
東京・杉並区 で 器と料理 カモシカ を運営する料理家の 吉岡秀治(よしおか ひではる)さんと 吉岡知子(よしおかともこ)さん夫妻。器のギャラリーでありながら器に合った料理を提供する独自のスタイルで人気です。
吉岡さん夫妻は オカズデザイン というユニットとしても活躍。NHK朝ドラ「ちむどんどん」の料理監修や「きょうの料理」の講師などメディア関連のお仕事も多数。
紹介されていたのは 伊藤環 さんの深い小鉢のようなお皿。この器でコース料理全5品を提供。同じ器にいろいろな料理を盛ることでさまざまな使い方のアイデアを伝えたいと考えています。
金森正起 さんの琺瑯の器は吉岡夫妻がプロデュース。使い手の意見を作家に伝え新しい器を生み出しています。
名前 | 器と料理 カモシカ / オカズデザイン |
住所 | 東京都杉並区下高井戸5-5-2 |
電話 | 03-6304-6270 |
WEB | https://shop.okaz-design.jp/ |
営業時間 | 店舗は展示会期のみオープン |
オカズデザインさんの著書
辻和美さん / factory zoomer ガラス作家【石川県 金沢市】
石川県金沢市 の factory zoomer(ファクトリー・ズーマ)のガラス作家 辻和美(つじ かずみ)さん。
辻さんは1964生まれ。金沢美術工芸大学商業デザイン科を卒業後に渡米。カリフォルニア美術工芸大学でガラスを学びました。 金沢卯辰山工芸工房・ガラス工房専門員を経て、1996年にガラスデザイン・制作のユニット factory zoomer(ファクトリー・ズーマ)をスタート。
1999年に金沢にアトリエ factory zoome/studio を設立。2005年には金沢犀川縁に factory zoomer/shop をオープン、2016年には金沢広坂に factory zoome/gallery をオープン。
現代美術家を目指していた辻さん。次第に行き詰まってしまいます。そんな時に友人の器を手にしたことをきっかけに方向性を転換。
発表したのは「color」というタイトルのインスタレーション。51色のガラスのコップに人種や国、性別の多様性を投影しました。コップは1個単位で販売。来場者はお気に入りの1つを探して持ち帰ることができます。
ガラスのコップがコミュニケーションの一端を担うこと。コップは辻さんのつくるコミュニケーションツールです。
名前 | factory zoomer/shop(ファクトリー・ズーマ・ショップ) |
住所 | 石川県金沢市清川町4-3-17 |
電話 | 076-244-2892 |
WEB | https://factory-zoomer.com/ |
営業時間 | 木〜月:12:00〜18:00 |
定休日 | 火曜・水曜 |
名前 | factory zoomer/gallery(ファクトリー・ズーマ・ギャラリー) |
住所 | 石川県金沢市広坂1-2-20 |
電話 | 076-255-6826 |
営業時間 | 水〜火:12:00〜18:00 |
定休日 | 月曜 |
辻和美さんの作品集。
辻和美さんの作品。
美の壺 五、自然:器の中に自然を見つける
最後のツボは 自然:器の中に自然を見つける。
艸田正樹さん / ガラス作家 / ピン・ブロウ技法【石川県 金沢市】
石川県金沢市 のガラス作家 艸田正樹(くさだ まさき)さん。
艸田さんは1967年岐阜県生まれ。1991年に名古屋大学工学部土木工学科を卒業、1993年に名古屋大学大学院工学研究科博士課程前期課程修了。株式会社三菱総合研究所に勤務。会社員の傍ら趣味として陶芸・写真・ガラス作品の制作を始めました。
1997年に工房 架空庭園(かくうていえん)を開設。
艸田さんは吹きガラスの ピン・ブロウ といういう技法で作品を制作。
一般的な吹きガラスは、ガラスの種を鉄パイプに巻き取り息を吹き込み作ります。
ピン・ブロウは鉄の棒にガラスを巻き取り針で突いた穴に空気を吹き込んで膨らませます。
できる限り人の手を加えず、自然の現象の組み合わせで作品を作りたいと考える艸田さん。
名前 | 艸田正樹(くさだ まさき) |
住所 | 石川県金沢市 |
WEB | http://kusada.net/ |
赤木明登さん / 塗師 / 天日クロメ【石川県 輪島市】
石川県輪島市 の 塗師(とし)赤木明登(あかぎ あきと)さん。
赤木さんは1962年岡山県生まれ。中央大学文学部哲学科卒業後、東京の出版社で編集者として勤務後、輪島塗に魅せられ1988年に移住。輪島塗職人 岡本進さんの元で5年の修業を経て1994年独立。
美の壺 File 524「折敷」の回にも登場しました。
赤木さんは現代輪島塗を代表する作家。作るのは日常使いの漆器。従来にない斬新な手法で仕上げられた漆器を送り出しています。
漆のパスタ皿 は金属製のカトラリーを使っても傷がつかないように鉄の粉をまぜた漆で仕上げられています。
下地に和紙を貼った パン皿 は手の跡や傷がつきやすい漆器のイメージを変えました。
10月の秋晴れの日、赤木さんは 天日クロメ(てんぴクロメ)と呼ばれる作業にとりかかります。
「クロメ」とは水分を飛ばして精製する工程。太陽の下、ヘラで漆液攪拌しながら天日で水分を飛ばします。
名前 | 赤木明登 うるし工房 有限会社ぬりもの |
住所 | 石川県輪島市三井町内屋ハゼノキ75 |
WEB | http://www.nurimono.net/ |
赤木明登さん、高橋みどりさん、日置武晴さんの共著。
エピローグ
お皿をよこせというお菊さん。
しかし草刈さんは「いつまでもこんなことしてちゃいけません。本当はお皿を一緒に楽しめる相手が欲しかったんじゃないですか?」と諭します。
成仏したお菊さん。これまで集めたたくさんのお皿を草刈さんに残していきました。
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音楽 BGM
ジャズの名曲が流れる美の壺。番組BGMファンもいらっしゃるのではないでしょうか。
オープニング曲と番組内挿入曲をまとめましたので参考にどうぞ。リンク先で試聴できます。
オープニングテーマ
オープニングテーマ は Art Blakey And The Messengers(アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ)の名曲「Moanin’」。ジャズドラマー アート・ブレイキーが1958年に発表した同名のアルバムに収録されています。作曲はピアニストの Bobby Timmons(ボビー・ティモンズ)。
番組内 楽曲
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