NHK「美の壺(びのつぼ)」は普段使いの器から家具、着物、料理、建築に至るまで、衣食住、人の暮らしを彩ってきた美のアイテムを解説してくれる番組。紹介されたものは何?場所はどこ?出演は誰?どこで買える?と興味津々。
そんな気になる「美の壺・美術の鑑賞マニュアル」を詳しく調べてみました。最後に番組内の音楽もまとめてあります。
美の壺「料理が映える 折敷(おしき)」File 524
出演は俳優の 草刈正雄(くさかりまさお)さん、ナレーション(語り)は女優の 木村多江(きむらたえ)さんです。
最新エピソード 美の壺 File 622「炎」 もどうぞ併せてご覧下さい。
BSプレミアム(2023年11月30日まで。2023年12月1日から NHK BS(BS101チャンネル) へ移動)
初回放送:2021年1月22日(金)19:30~20:00
再放送 :2021年1月30日(土)06:45〜、2021年5月19日(水)06:45〜
2022年1月22日(土)06:45〜、2022年1月28日(金)12:30〜
BS4K(2023年12月1日から BSプレミアム4K へ名称変更)
初回放送:2021年1月22日(金)19:30~20:00
再放送 :2021年1月25日(月)16:00〜、2021年1月29日(金)09:00〜
2022年1月22日(土)06:45〜、2022年1月28日(金)12:30〜
Eテレ
再放送 :2023年1月22日(日)23:00〜、2023年1月25日(水)05:30〜
U-NEXT でNHKの動画配信サービス NHKオンデマンド を視聴可能。虎に翼・らんまん・なつぞら などの朝ドラや 光る君へ・鎌倉殿の13人・真田丸 などの大河ドラマ、探偵ロマンス・正直不動産 などの名作ドラマ、ファミリーヒストリー「草刈正雄」を一気見できます。U-NEXTは初回31日間無料トライアル。NHKオンデマンド は別料金ですが、もらえる600ポイントで購入できます。PR
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美の壺 折敷(おしき) File 524 内容
▽料理研究家・土井善晴さんの「一汁一菜」を支える折敷(おしき)。愛用コレクション公開!
▽伝統を受け継ぐ茶懐石の折敷には、黒漆や白木など茶人の趣向が
▽樹齢250年の吉野杉からうまれる、どこまでもシンプルでスタイリッシュ真四角の折敷
▽パン・うどん・ワインの晩酌…フードスタイリスト・高橋みどりさんの折敷のある豊かな暮らし
▽人気の塗師・赤木明登さんならではの、マットな質感の折敷に迫る!
プロローグ
姪っ子さんが1人暮らしをするので「おしき」ってのが欲しいらしいという草刈さん。
「おしき」って何?
美の壺 一、食卓を豊かに
ひとつめのツボは 食卓を豊かに。
松井英輔さん / 暮らしのうつわ花田 / 器専門店【東京都 千代田区】
料理の器を載せる敷物 折敷(おしき)。茶事で用いられる道具ですが近頃はランチョンマットと同じように気軽に楽しむ人が増えています。
東京都千代田区 の器専門店 暮らしのうつわ花田(くらしのうつわ はなだ)。1977年に開業、300名に及ぶうつわ作家の作品を取り扱っています。2階にはギャラリースペースがあり、毎月作家の展示が開催されています。
お店には色々な 折敷 が並んでいます。長方形のもの、円いもの、木目を生かしたもの、漆塗りのものなど素材や形仕上げも様々です。
店主の 松井英輔(まつい えいすけ)さんは「器と食卓の間に折敷が入ることで食卓がぐっと引き立ち、料理や器がワンランクアップして食卓にメリハリが出る」と教えてくれました。
和食はもちろんパスタや丼ものなど普段使いの食卓にも折敷を使うと食卓が豊かになるそうです。
今年は例年の倍以上の売れ行き。近頃はおうちごはんの機会が増えているので、敷くだけで食卓が華やかになる折敷はとても便利なアイテムですね。
名前 | 暮らしのうつわ花田 |
住所 | 東京都千代田区九段南2-2-5 1・2F 九段ビル |
WEB | https://www.utsuwa-hanada.jp/ |
営業時間 | 月〜金:12:00〜17:00 |
定休日 | 土曜・日曜 |
土井善晴さん / 料理研究家
料理研究家の 土井善晴(どい よしはる)さん。1957年大阪府で家庭料理の第一人者であった料理研究家 土井勝(どい まさる)さんの次男として生まれました。スイス・フランスでフランス料理、大阪の 味吉兆 で日本料理を修業後、1992年に 土井善晴おいしいもの研究所 を設立(参照:wikipedia)。
土井勝さんの後にテレビ朝日系「おかずのクッキング」の司会を引き継いだほか、NHK「きょうの料理」などのメディアにも多数出演。優しい語り口とシンプルでわかりやすいレシピが人気です。
美の壺 File 500「美術館」の回にも出演されました。
土井善晴さんの食卓には折敷が度々登場。土井さんが提案する 一汁一菜(いちじゅういっさい)にも折敷がぴったりなのだとか。
折敷はお料理を載せてお盆として使い、皆さんの前に出したらお膳になる。和食の道具というのは非常に汎用性が高くて合理的、という土井さん。
土井さん愛用の折敷はどれも旅先や骨董店などで出会った物語のあるものばかり。
土井さんが折敷に注目するきっかけになったのは、若い頃に通い詰めた器店の店主の折敷に憧れたこと。いつもあるもので美味しいごはんをつくって出してくれたそうです。学んだのは美しいものを楽しみお料理を楽しむ美意識。土井さんは木目が美しい折敷を特注し、いまでも大切に使っています。
白いごはんと
— 土井善晴 (@doiyoshiharu) October 31, 2020
きり干し
白さい漬け
白みそのおつゆ pic.twitter.com/VawkLKLjFo
アイヌの彫刻を施した折敷も。今注目されてるアイヌの板。とても力強い彫刻。力強い土の器にも負けません。器との取り合わせ、関係性を考える楽しみもあります。
裏にも彫刻が彫られています。表が良ければ裏を見る、というのが日本の習性だと語る土井さん。確かに茶道でお茶碗やお盆を拝見するときも裏返しますね。作る方は裏の意匠まで考えてらっしゃるのですね。
かやくごはん
— 土井善晴 (@doiyoshiharu) October 19, 2020
きのこじる
ぬかづけ
そろそろぬか漬けも終わりかなあ
白菜漬けた pic.twitter.com/8i6CszR6at
この日の一汁一菜は、ごはん、なめこと豆腐春菊のみそ汁、そして漬物。
合わせたのは黒い漆の折敷。漆の採取から塗りまで1人で行う昔なじみの職人が作ったもの。
お盆(折敷)は料理の舞台でありその場を作る額縁。額縁に入ると際立って美しくなる、そうすると改まって食事を大切にしようという気持ちになる、と土井さん。
名前 | 土井善晴おいしいもの研究所 |
WEB | https://oishiimonok.com/ |
美の壺 二、受け継がれる食の文化
ふたつめのツボは 受け継がれる食の文化。
熊倉功夫さん / ミホ ミュージアム / 茶懐石の折敷【滋賀県 甲賀市】
平安時代の人々の様子を描いた絵巻物「病草紙」の中の「歯槽膿漏の男」が食べている料理は一枚の板の上に一汁三菜。平安時代にはすでに折敷が使われていたのですね。
解説してくれたのは和食の文化に詳しい MIHO MUSEUM(ミホ ミュージアム)館長の 熊倉功夫(くまくら いさお)さん。
熊倉さんは1943年東京生まれ。1965年に東京教育大学文学部日本史学科卒業。同大学院修士課程を1968年に修了、博士課程を単位取得退学。京都大学人文科学研究所助手、講師を経て1978年筑波大学助教授、1982年教授。1992年から2004年まで国立民族学博物館勤務。林原美術館館長、静岡文化芸術大学学長を務めた後、2016年からMIHO MUSEUM館長。
茶道史、寛永文化、日本の料理文化史、民芸運動など幅広く研究しています。美の壺 File 584「竹」の回にも出演されました。
茶懐石では最初に折敷に乗った料理が出されます。折敷に乗るのは 飯(めし)、汁(しる)、向付(むこうづけ)。1人ずつに出されます。
1人用のお膳でごはん食べるという伝統が残ってるのは茶の湯の懐石だけなのだそうです。
茶の湯の懐石は折敷という 銘々膳(めいめいぜん)の典型的なもの、今日一番実用にされている姿。銘々膳とは一人一人に出す食膳のこと。明治時代くらいまでは銘々膳が一般的。一家で卓袱台(ちゃぶだい)を囲む食事スタイルに変わって行きました。
茶の湯では畳は清浄なものとされ、折敷は畳に直接置いて使います。茶事では季節や趣向によってさまざまな折敷が使われます。折敷を選ぶのも茶人の楽しみ。
黒い漆で仕上げた 真塗(しんぬり)の折敷。角があるものを 角切らず(すみきらず)といいます。
角を切ったものは 角切り(すみきり)。紹介されていたのは かんな目(かんなめ)と呼ばれる削り跡を残したデザイン。
夏の茶事などには 組木(くみき)の細工をあしらった 白木(しらき)の折敷で涼やかな風情を演出。
朱塗りの縁を黒く塗った円い折敷には低い脚が付いていて、軽い食事 点心などで使われます。
名前 | MIHO MUSEUM(ミホ ミュージアム) |
住所 | 滋賀県甲賀市信楽町田代桃谷300 |
電話 | 0748-82-3411 |
WEB | http://www.miho.jp/ |
営業時間 | 火〜日:10:00〜17:00 |
定休日 | 月曜、2020年12月14日〜2021年3月12日まで冬季休館 |
真塗(しんぬり)角切らずの折敷。
坪岡常佳さん / 坪岡林業 木工職人 / 吉野杉の折敷【奈良県 吉野町】
奈良県吉野地方 坪岡林業(つぼおかりんぎょう)の木工職人 坪岡常佳(つぼおか つねよし)さん。300年前から木工を生業とする家に生まれ育ちました。
坪岡さんは地元特産の 吉野杉 を使った折敷を作っています。ブランド名は 聖山(ひじりやま)。
一見したところは何の変哲もない厚さ8mmの板。僅かな傾斜「手がかり」があるだけです。
坪岡さんが使うのは樹齢およそ250年の吉野杉。山守(やまもり)と呼ばれる人たちが何代にもわたって手入れし大切に育てて来ました。山守は 美の壺 File498「奈良の鄙び」でも紹介されていましたね。
年輪の間隔が狭く丈夫で水に強い吉野杉は昔から酒樽などに用いられ重宝されてきました。吉野杉の折敷もシンプルな形だからこそ細かい木目が際立っています。
豆腐や味噌は杉の樽で仕込まれているのだから、日本の食文化の中で杉と食は切り離せない、と坪岡さん。
8年前、坪岡さんはこの貴重な吉野杉の魅力を伝えるものを作りたいと模索していました。
ある日母親が工場に落ちてる端材を休憩のトレー代わりに使ったことで、折敷にすることをひらめきました。今まで価値がなく捨てるものだった端材に価値を見出した瞬間でした。トレーというよりも折敷という名前がピンと来たそうです。
折敷に使うのは伐採して2年以上乾燥させた吉野杉。「赤身」と呼ばれる堅い部分を使います。
細かく均一な年輪、綺麗な木目が飾らず凛とした雰囲気です。
試作を重ねて厚さは8mmに決定。少しずつ削り磨きをかけると木目がさらに際立ちます。
縁にやすりをかけ滑らかな手がかりを作って完成。
余計なものは何一つない、引き算の折敷。折敷をつくる、というよりは折敷を使う暮らしをつくりたいと思いを語っていました。
名前 | 坪岡林業(つぼおかりんぎょう) |
住所 | 奈良県吉野郡吉野町橋屋1 |
WEB | http://www.hijiriyama.com/ |
他社製品ですが、これも奈良産吉野杉のランチョンボード。
美の壺 三、好きを極める
最後のツボは 好きを極める。
高橋みどりさん / フードスタイリスト / 日常づかいの折敷【栃木県 黒磯】
栃木県黒磯(くろいそ)にある tamiser kuroiso(タミゼクロイソ)はフードスタイリスト 高橋みどり(たかはし みどり)さんの住まい兼ギャラリー。
1957年群馬県生まれ、東京育ちの高橋みどりさんは女子美術大学短期大学部で陶芸を専攻後、テキスタイルを勉強。大橋歩事務所、ケータリング活動を経て1987年からフリーのフードスタイリストとして活躍。NHK「趣味どきっ! 人と暮らしと、台所~夏」にも出演されました。
夫の 吉田昌太郎(よしだしょうたろう)さんは恵比寿の antiques_tamiser(アンティークス タミゼ)オーナー。10年ほど前に吉田さんの故郷 黒磯で昭和6年(1931年)に建てられた元タクシー会社の建物に出会い、リノベーションして週末住居 兼 ショップ tamiser kuroiso(タミゼ クロイソ)に。現在は2拠点生活、2022年を目処に完全に黒磯に移住される予定です。
紹介されていたのは高橋さんと吉田さんの朝食。地元の取れたて野菜で作ったスープと焼きたてのパン。合わせるのは 楢(なら)の木の折敷。5年前に吉田さんがデザインして木工作家の 高木克幸(たかぎ かつゆき)さんが制作したもの。タミゼのオリジナル折敷として販売されています。パンを切ってもいいくらいな気軽な感じでオーダーしたそうです。パンを切った時のナイフの傷も味わいのうち。味わいは愛着につながり、気に入っているそうです。
栗の木の折敷 は 矢沢光広(やざわみつひろ)さんの作。ダイナミックな彫り跡がお気に入り。裏には脚が付いています。
仕事の合間に頂くお昼ごはんはこの折敷で。白い丼がきれいに映えます。
特別感があって気分が上がる、メリハリがあって気分転換にもなる、と大切に使っています。
こちらは20年前から愛用する 漆塗りの折敷。赤木明登(あかぎあきと)さん作。ザックリとした質感の漆塗りは普段使いにもちょっとしたおもてなしにも、日々のさまざまなシーンで大活躍。
芋ようかんと煎茶でおやつ時間に。夜は大好きなワインとチーズでリラックスタイム。
名前 | tamiser kuroiso(タミゼ クロイソ) |
住所 | 栃木県那須塩原市(旧 黒磯市)本町3-13 |
WEB | http://tamiser.com/ |
営業時間 | 日月:13:00〜18:00 |
定休日 | 火曜〜土曜 |
名前 | antiques_tamiser(アンティークス タミゼ) |
住所 | 東京都渋谷区恵比寿3-22-1 |
WEB | http://tamiser.com/ |
営業時間 | 火〜土:12:00〜19:00 |
定休日 | 日曜・月曜 |
赤木明登さん / 塗師 / 輪島塗の折敷【石川県 輪島市】
高橋みどりさん愛用の 漆の折敷 は 石川県輪島市 の 輪島塗 の職人 赤木明登(あかぎ あきと)さんが作りました。赤木さんは33年漆と向き合う 塗師(ぬし)。
美の壺 スペシャル「現代のうつわ」にも出演されました。
赤木さんはこれまでさまざまな折敷を作ってきました。
かんな目が印象的な折敷は光の具合で漆の表情が変わります。
円い折敷は鉄の粉を使った下地で凹凸をつけています。うっすらと入った銀ぱくのラインが隠し味。
フレンチレストランなどでも人気の上品な折敷です。
折敷が作られるようになったのは千年以上前の平安時代。以来作り方も使い方も変わらずにずっと続いて来たのは、日本人の食の根っこの部分を折敷が支えてきたからではないかという赤木さん。
赤木さんは1962年岡山県生まれ。中央大学文学部哲学科卒業後、東京の出版社で編集者として勤務後、輪島塗に魅せられ1988年に移住。輪島塗職人 岡本進さんの元で5年の修業を経て1994年独立しました。当時赤木さんは伝統的な輪島塗だけを作るのに抵抗があったと言います。
ピカピカの高級で豪華な輪島塗は自分の暮らしの中では必要ない。何が作りたいのかわからずに漠然としていた時に、自分が一番好きなものを作ればいいのだと気がついたそうです。
きっかけは修業時代に偶然出会った江戸時代の後期の 輪島塗の飯椀。シンプルで素朴、ピカピカではなく普段の暮らしに溶け込む器。以降赤木さんは丈夫で自然な風合いを目指すようになります。
試行錯誤の末たどりついたのは和紙を貼る手法。韓国の李朝時代の家具の技法からヒントを得ました。
和紙の風合いを生かすため漆や塗り方も工夫して素朴な表情の作品に。
赤木さんは輪島の漆の伝統を踏まえ自らが好きなもの使いたいものを作り続けたいと考えています。
漆という素材が自然の中で生まれた時から本質的に持っている性質を取りこぼすことなく引き出して表すことができた時に自分にとって一番好きなものになるだろうし、誰もがいいなと思う普遍性に辿りつくと思う、と赤木さん。
名前 | 赤木明登 うるし工房 有限会社ぬりもの |
住所 | 石川県輪島市三井町内屋ハゼノキ75 |
WEB | http://www.nurimono.net/ |
赤木明登さん、高橋みどりさん、日置武晴さんの共著。
エピローグ
物置で折敷を見つけた草刈さん。気に入ってしまい、姪にあげるのはやめて自分で使うことにしました。
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音楽 BGM
ジャズの名曲が流れる美の壺。番組BGMファンもいらっしゃるのではないでしょうか。
オープニング曲と番組内挿入曲をまとめましたので参考にどうぞ。リンク先で試聴できます。
オープニングテーマ
オープニングテーマ は Art Blakey And The Messengers(アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ)の名曲「Moanin’」。ジャズドラマー アート・ブレイキーが1958年に発表した同名のアルバムに収録されています。作曲はピアニストの Bobby Timmons(ボビー・ティモンズ)。
番組内 楽曲
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