NHK「美の壺（びのつぼ）」は普段使いの器から家具、着物、料理、建築に至るまで、衣食住、人の暮らしを彩ってきた美のアイテムを解説してくれる番組。紹介されたものは何？場所はどこ？出演は誰？どこで買える？と興味津々。
そんな気になる「美の壺・美術の鑑賞マニュアル」を詳しく調べてみました。最後に番組内の音楽もまとめてあります。
美の壺「和と洋の出会い 大正ロマン」File 573
出演は俳優の 草刈正雄（くさかり まさお）さん、ナレーション（語り）は俳優の 木村多江（きむら たえ）さんです。
最新エピソード 美の壺 File 602「観音」 もどうぞ併せてご覧下さい。
BSプレミアム（2023年11月30日まで。2023年12月1日から NHK BS(BS101チャンネル) へ移動）
初回放送：2023年2月3日(金)19:30～20:00
再放送 ：2023年2月11日(土)06:45〜、2023年2月17日(金)12:30～
2023年9月21日(木)06:45〜
BS4K（2023年12月1日から BSプレミアム4K へ名称変更）
初回放送：2023年2月3日(金)19:30～20:00
再放送 ：2023年2月11日(土)06:45〜、2023年2月16日(木)23:00～
2023年9月21日(木)06:45〜
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美の壺 2024年度（2024年4月〜2025年3月）バックナンバー はこちらをどうぞ！
美の壺 和と洋の出会い 大正ロマン File 573 内容
▽ノスタルジック！和洋折衷のアンティーク
▽西洋のコンパクトの装飾に金蒔絵の技が
▽大正ロマンなファッションで踊るタンゴ倶楽部
▽モボやモガも飲んだ！？大正生まれのカクテルにあのお漬物が！
▽驚きのデザイン！女学生を魅了した銘仙
▽モダンボーイが愛したステッキに宿る職人技
▽今回は草刈正雄さん出演の土曜ドラマ「探偵ロマンス」（総合・土曜夜10時）とコラボ！草刈邸にあの名探偵がやってくる！
プロローグ
スーツに身を包んだ草刈さんが現れたと思ったら、名探偵 明智小五郎？
大正時代からやってきたといいますが…
濱田岳×草刈正雄の土曜ドラマ「探偵ロマンス」は若き江戸川乱歩と明智小五郎のモデルとなった名探偵・白井三郎の探偵活劇。U-NEXTやAmazonのNHKオンデマンドで視聴できます。U-NEXTは初回無料トライアルあり。
美の壺 一、和洋折衷：時を超えた 和と洋の出会い
ひとつめのツボは 和洋折衷：時を超えた 和と洋の出会い。
稲本淳一郎さん+稲本陽子さん / 東京蛍堂 / 大正浪漫なアンティークショップ【東京都 浅草】
東京・浅草 の小さな路地の奥 東京蛍堂（とうきょうほたるどう）は大正浪漫をコンセプトにしたアンティークショップ。時間を巻き戻したかのような不思議な空間が広がっています。
オーナーは 稲本淳一郎（いなもと じゅんいちろう）さんと妻の 稲本陽子（いなもと ようこ）さん。
大正ロマンの会を主催していた稲本さんは自らのお店を出そうと6年に渡って物件を探し出会ったのが浅草「野口食堂」だったビル。2008年にオープンし、着実に大正ロマン愛好者を増やしています。
レトロな雰囲気の店内にはきれいな ビーズバック、大正時代女性たちの間で流行した クロッシェ帽子 を当時の形を忠実に再現したもの、金蒔絵（きんまきえ）の技法で装飾された大正時代から昭和初期の コンパクト などが売られています。
稲本さんは日本人が生み出した和洋折衷の魅力に気づいてほしいとこの店をつくりました。
大正時代の人たちは西洋の文化を咀嚼して自分で取り込んで和洋折衷というハイブリットという形で表現しいるところがかっこいい、と稲本さん。
明治大正に流行した トンビマント。西洋のコートを袖が大きい着物にも合うようにアレンジしたマントです。ディテールのも凝っていて手縫いの縫製の良さも当時の丁寧なものづくりがしのばれます。
日本人の感性が生んだ和洋折衷の逸品です。
稲本さんが主催する クラシックタンゴ倶楽部 に集うのは、お店の常連や大正ロマンに魅せられた人たち。
当時を思わせる洋装や和装に身を包み、かつて和洋折衷を生み出した日本に思いを馳せる。
月に1度の交流会は毎月、第2日曜日18:30〜20:30に開催されています。ドレスコードあり。
西洋ばかり良いと刷り込まれているのをもう一回立ち戻り「日本人て何だったかな？こういうのだったかな？」とていうのを絵空事にしないで何か表現してほしいと稲本さんは考えています。
| 名前 | 東京蛍堂（とうきょうほたるどう） |
| 住所 | 東京都台東区浅草1-41-8 |
| 電話 | 03-3845-7563 |
| WEB | http://tokyohotarudo.com/ |
| 営業時間 | 水〜日：11:00〜20:00 |
| 定休日 | 月曜・火曜 |
鈴木敦さん / The Bellwood（ザ ベルウッド）/ 大正時代に流行したカフェをイメージしたバー【東京都 浅草】
東京・渋谷 にある大正時代に流行したカフェをイメージしたバー The Bellwood（ザ ベルウッド）。
オーナーの 鈴木敦（すずき あつし）さんは国内外のバーで研鑽を積み、カクテルの世界チャンピオンに輝いたバーテンダー。
鈴木さんは高校卒業後に都内のバーで働き24歳で渡米。「Angel’s Share」などのバーで勤務後、渡英し「64th&Social」に勤務。
帰国後は恵比寿「Bar Noir」に勤務。さらにカナダに渡り2013年のトロントのカクテルコンペティションで優勝。国内外でバーを運営する SG Group に入社し上海「Speak Low」などの責任者を5年間務めたという国際的なキャリアの持ち主。
2020年6月に SG Groupの新店舗として The Bellwood（ザ ベルウッド）をプロデュースしました。
インテリアも大正モダンな「カフェー」をモチーフにデザインされたこちらのお店。大正時代をイメージしたカクテルを楽しめます。
オリジナルのカクテル モガティー は大正時代流行のおしゃれを楽しんだモダンガールをイメージしてつくった爽やかな甘さのお酒。
少し華やかさもありながら魅力的な色を添えるというイメージでつくったそうです。
大正時代のカフェーは、今のバーの前身。
それまでホテルでカクテルを楽しんでいた文化が町場に降りてきて、その町場で日本人のバーテンダーの人たちが、日本人のゲストに向けてカクテルを作るという文化にすごく惹かれたという鈴木さん。
大正時代のバーテンダー・前田米吉（まえだ よねきち）さんは日本のバー文化の礎を築いたと言われる人物。鈴木さんにとっても大切な日本人バーテンダーです。
大正時代に前田米吉が残したカクテルブック「KOKUTEERU（コクテール）」。
そこには本場ヨーロッパに先駆け当時の最新のカクテルが掲載されていました。近年再評価されているバーテンダーです。
鈴木さんが前田米吉のオリジナルと言われる ラインコクテール を当時のレシピを参考に作ってくれました。
ジンにフレーバーワインそして薬草系のリキュールさらに、苦味と香りのビターズを少々。
よくシェークし、グラスに注ぎます。そして最後に添えられるのは1粒の らっきょう。
独特の香りとキリッとした口当たりにらっきょうが良い味を添えるカクテルです。
当事洋酒が日本に入ってきて、初めて見るお酒がほとんどだったはず。
オリジナリティーが出そうとして前田米吉は好奇心で作ったカクテルではないかと鈴木さんは考えています。
そういう時代背景を踏まえてカクテルを飲むと、ちょっと特別な感情で飲めるのですごく好きだと語っていました。
| 名前 | The Bellwood（ザ ベルウッド） |
| 住所 | 東京都渋谷区宇田川町41-31 |
| 電話 | 03-6452-5077 |
| WEB | https://sg-management.jp/#bellwood |
| 営業時間 | 18:00〜26:00 |
| 定休日 | 不定休 |
美の壺 二、銘仙：時代を映し 軽やかに美しく
ふたつめのツボは 銘仙：時代を映し 軽やかに美しく。
桐生正子さん / 銘仙（めいせん）蒐集家 / 大正の女学生が愛した着物
大正末期、女学生をきっかけに日本中に広まったファッションアイテム 銘仙（めいせん）。
もともとは売り物にならない絹糸で織り上げた値段の安い着物でしたが化学染料の普及とともに鮮やかな色柄に発展。瞬く間に日本中の女性たちを虜にしました。
紹介されていたのは学生時代からコレクションを始めたという 銘仙蒐集家の 桐生正子（きりゅう まさこ）さん。
桐生さんは栃木県生まれ。京都の立命館大学在学中に骨董市で銘仙と出合い収集を始めました。
現在コレクションの数は600点以上にもなります。
2022年には伊勢丹新宿本店や新見美術館で「桐生正子着物コレクション〜大正の夢・秘密の銘仙ものがたり〜」が開催されました。
もともと地味な色柄だった銘仙。
それが色鮮やかになるきっかけを作ったのは陸軍大将の 乃木希典（のぎ まれすけ）がきっかけでした。
明治末期に学習院の院長に乃木希典が就任。当時学習院の女学生たちが着ていた豪華な振袖等は乃木には贅沢に映り、服装を銘仙以下のものにするようにとお達しを出しました。
安くて質素だった銘仙。しかし女学生たちは少しでもきれいな着物を着ていたい。
そこで銘仙の産地は輸入した化学染料を使い、それまでにない華やかなデザインを生み出していったのです。
安くてデザインも豊富だったので、当時の女学生はファッションアイテムとして銘仙のおしゃれを楽しみました。
今でいう「かわいい」の原点は大正時代にあるのではないかと桐生さん。
当時の婦人雑誌には銘仙のカタログが掲載され、最新のデザインが広まっていきました。
銘仙は大正末期から昭和初期にかけて10年間でおよそ1億反が売られたという大ヒットアイテムに。
デザインのバリエーションも膨大です。
日本人独特の感性、懐の広さ。ポップでモダンで100年前のものとは思えないデザイン性がとても惹きつけられると桐生さんは語っていました。
新井教央さん / 新啓織物 / 秩父銘仙【埼玉県 秩父市】
銘仙（めいせん）は関東が主な産地。中でも 埼玉県秩父市 は最も歴史のある産地の1つです。
秩父銘仙（ちちぶめいせん）織元の 新啓織物（あらけいおりもの）新井教央（あらい のりお）さんは 秩父銘仙の技法を今も守り作り続けています。
1970年創業の織元ですが使っている織り機も実は大正時代に作られたもの。
秩父銘仙の代表的な手法が ほぐし織（ほぐしおり）。
ほぐし織とは織り上げる前に 経糸（たていと）だけに型染めするのが特徴です。
一本一本の糸に染料が入るため、より繊細な表現ができるといいます。
玉虫色の光沢を出せるのも、秩父銘仙の特徴。
経糸と違う色を 緯糸（よこいと）に使うと見る角度や光によって色が変化します。
型染め の作業を見せてもらいました。
シート状に揃えられた1,600本もの経糸を型で染めていきます。
ほぐし織の型染めは手作業。わずかな柄のズレも出ないように、正確に型を置いて行かなければなりません。
しかも時間がかかれば染料が滲んでしまいます。熟練した技術があってこそ作られる銘仙です。
秩父市といえば 美の壺 File 536「ウイスキー」でも紹介された ベンチャーウイスキー の イチローズモルト が人気です。
「ウイスキーの街+秩父銘仙の街」を象徴する作品を生み出そうと共同で作ったのが秩父銘仙の新柄「大麦矢羽根文様（おおむぎやばねもんよう）」。
ウイスキーの原料の大麦をモチーフに、ベンチャーウイスキーのラベルデザインを担当しているグラフィックデザイナー 吉田武志（よしだ たけし）さんがデザイン。
時代を映し大胆に表現するのも銘仙ならでは。
今、自分が皆さんに着ていただきたいもの、自分が表現したいものを表現することが1番の銘仙の魅力だという新井さん。
変わっていくことも銘仙の魅力です。
新井さんの代表的な作品「山なみ」は秩父の山々をイメージしたもの。
幼い頃から慣れ親しんだ故郷への想いを形にしました。
伝統の技を守りながら、新たな感性で進化していく。銘仙は今も生き続けています。
| 名前 | 新啓織物（あらけいおりもの） |
| 住所 | 埼玉県秩父市中宮地町37-9 |
| 電話 | 0494-22-3140 |
| WEB | https://www.arakei.com/ |
| 営業時間 | 10:00〜19:00 |
| 定休日 | 不定休 |
美の壺 三、ステッキ：受け継ぎ 守ってきた思い
最後のツボは ステッキ：受け継ぎ 守ってきた思い。
高橋源一郎さん / 銀座タカゲン / 明治15年創業のステッキ専門店【東京都 銀座】
大正時代、人々は流行のファッションに身を包み街を闊歩していました。
おしゃれなモダンボーイたちは山高帽にスーツ。そして忘れてならないのが ステッキ でした。
東京・銀座 の明治15年（1882年）創業のステッキ専門店 銀座タカゲン（ぎんざタカゲン）は「ステッキ」という言葉を生み出した老舗。
4代目社長の 高橋源一郎（たかはし げんいちろう）さん。
店内には様々な種類のステッキが。
銀製の持ち手に黒檀の棒をつけたもの。
つるつるの丸い持ち手は 大黒頭（だいこくあたま）と呼ばれる形。
主流は ウェーブ状 の握りやすい持ち手なのだとか。
シンプルな形だからこそ、細工や素材にこだわったステッキ。
貴重なものと言われていたのは南米原産の希少な樹木 スネークウッド で作られた最高級品。
その名の通り蛇の皮のような木目をしています。
ちなみに100万円を超えるものもあるそうです。
竹のステッキは日本の竹の根の部分を使い、熱をかけ手作業で曲げるというもの。
今ではこうしたステッキを作れる職人はほとんどいなくなったそうです。
創業者は高橋源一郎さんの曾祖父 高橋源蔵（たかはし げんぞう）さん、もともとは刀剣商でした。
明治になり、横浜で外国人紳士がステッキを持ち歩くのを見て、日本で最初のステッキ専門店を銀座に開きました。
政治家 吉田茂元首相も常連でした。
良いものをお作りしてお客様に喜んでいただくというのが1番大切だと高橋さん。
45年ほどステッキを取り扱っているので人生の一部になっていると語っていました。
| 名前 | 銀座タカゲン（ぎんざタカゲン） |
| 住所 | 東京都中央区銀座1-9-18 ぎんざ姿ビル 1階 |
| 電話 | 03-6263-9515 |
| WEB | https://www.takagen.co.jp/ |
| 営業時間 | 10:30〜18:30 |
| 定休日 | 不定休 |
銀座タカゲンのステッキ。
高橋英雄さん / ステッキ専門 T・HIDEO（ティーポイントヒデオ）/ ステッキ職人【東京都 江戸川区】
東京江戸川区 の ステッキ専門 T・HIDEO（ティーポイントヒデオ）は今では数少なくなった ステッキ職人 の工房です。
ステッキ職人 高橋英雄（たかはし ひでお）さんは銀座タカゲン三代目の三男。この道32年のベテランです。
東京国際大学商学部卒業後に2年間の会社勤めをした後に品川職業訓練校木工課に入学。
卒業後はビリヤードキュー「石垣キュー」でキュー職人となりますが、銀座タカゲンのステッキ職人が減っていることを聞きステッキ職人の道へ。
平成10年（1998年）に ステッキ専門 T・HIDEO（ティーポイントヒデオ）を開業しました。
ステッキの製作工程を見せてもらいました。
まず持ち手の型を写し材料を切り抜きます。力を入れすぎれば、材料が割れてしまう繊細な作業。
次に持ち手の角を削り取ります。
曲線で作られる表面の形は全て高橋さんの手の感覚です。どこまで削るか微妙な力加減1つで決まるのです。
持ち手と棒を繋げます。ここまでわずか35分。
つなぎ目を滑らかに整えていきます。
毎日形通りに作っていても、それがダサイなと思い始める時があるのだとか。
厚みを変えたり形を模索して、かっこいい形が出来上がっていくそうです。
長年の経験が受け継がれてきた形をより良いものに変えていく職人業です。
高橋さんが長年集めた材料を見せてくれました。
銀座タカゲンでもとても貴重だと言われていた スネークウッド です。
しかしこの材料自分では使わずに取っておくのだという高橋さん。
いつか受けついてくれる人がもっといいステッキを作ってくれる。だからこそ貴重な材料は取っておきたい。ステッキ作りに込めた高橋さんの思いです。
| 名前 | ステッキ専門 T・HIDEO（ティーポイントヒデオ） |
| 住所 | 東京都江戸川区松江4-30-8 |
| 電話 | 03-3652-2469 |
| WEB | https://www.facebook.com/people/ステッキ専門-THIDEO/100070963591140/ |
銀座タカゲンのステッキ。
エピローグ
財宝めぐって悪漢たちと大立ち回りの名探偵・明智小五郎…
あれ？夢だった？それにしても面白い夢だったみたいですね。
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なつぞら などの朝ドラや
光る君へ・
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真田丸 などの大河ドラマ、
探偵ロマンス・
正直不動産 などの名作ドラマ、
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音楽 BGM
ジャズの名曲が流れる美の壺。番組BGMファンもいらっしゃるのではないでしょうか。
オープニング曲と番組内挿入曲をまとめましたので参考にどうぞ。リンク先で試聴できます。
オープニングテーマ
オープニングテーマ は Art Blakey And The Messengers（アート・ブレイキー＆ザ・ジャズ・メッセンジャーズ）の名曲「Moanin’」。ジャズドラマー アート・ブレイキーが1958年に発表した同名のアルバムに収録されています。作曲はピアニストの Bobby Timmons（ボビー・ティモンズ）。
番組内 楽曲
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