NHK「美の壺(びのつぼ)」は普段使いの器から家具、着物、料理、建築に至るまで、衣食住、人の暮らしを彩ってきた美のアイテムを解説してくれる番組。紹介されたものは何?場所はどこ?出演は誰?どこで買える?と興味津々。
そんな気になる「美の壺・美術の鑑賞マニュアル」を詳しく調べてみました。最後に番組内の音楽もまとめてあります。
美の壺「光と風の物語 窓」File 548
出演は俳優の 草刈正雄(くさかり まさお)さん、ナレーション(語り)は女優の 木村多江(きむら たえ)さん。ゲストは 少年役で登場した俳優の 横山歩(よこやま あゆむ)さんです。
最新エピソード 美の壺 File 624「雪」 もどうぞ併せてご覧下さい。
BSプレミアム(2023年11月30日まで。2023年12月1日から NHK BS(BS101チャンネル) へ移動)
初回放送:2021年8月20日(金)19:30~20:00
再放送 :2021年8月28日(土)06:45〜、2021年9月3日(金)12:30~
2022年11月12日(土)06:45〜、2022年11月18日(金)12:30~
BS4K(2023年12月1日から BSプレミアム4K へ名称変更)
初回放送:2021年8月20日(金)19:30~20:00
再放送 :2021年8月28日(土)06:45〜、2022年11月12日(土)06:45〜
2022年11月17日(木)23:00〜
Eテレ
再放送 :2023年1月15日(日)23:00〜、2023年1月18日(水)05:30〜
2024年7月21日(日)23:00〜、2024年7月29日(月)05:55〜
U-NEXT でNHKの動画配信サービス NHKオンデマンド を視聴可能。虎に翼・らんまん・なつぞら などの朝ドラや 光る君へ・鎌倉殿の13人・真田丸 などの大河ドラマ、探偵ロマンス・正直不動産 などの名作ドラマ、ファミリーヒストリー「草刈正雄」を一気見できます。U-NEXTは初回31日間無料トライアル。NHKオンデマンド は別料金ですが、もらえる600ポイントで購入できます。PR
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美の壺 光と風の物語 窓 File 548 内容
▽「テーマはアリの生活」という造園家・齊藤太一さんの巨大な窓には、50種類の植物による圧巻の光景!
▽吉村順三が軽井沢に設計した、自然を愛でる広い窓
▽巨匠フランク・ロイド・ライトの美意識が詰まった、さまざまな窓のデザイン
▽まるで宇宙船?!「ふきだし」をモチーフにした図書館の窓
▽ローマのパンテオンから鎌倉の寺まで…「丸窓」の魅力とは?!
▽武者小路千家・千宗屋さんが語る茶室の窓の役割
プロローグ
かわいがっていたインコのピーちゃんが窓から逃げちゃったと悲しむ草刈さん。
そこへ少年が現れます。
「君どこから来たの?」と訊ねる草刈さん。
美の壺 一、景色:理想の眺めを求めて
ひとつめのツボは 景色:理想の眺めを求めて。
齊藤太一さん / 造園家 / 田根剛さん設計の家【東京都 世田谷区】
東京・世田谷区 の住宅地、等々力渓谷を望む傾斜地に建つ一軒家は造園家の 齊藤太一(さいとう たいち)さんの自宅です。
齊藤さんは1983年岩手県生まれ。造園家、グリーンプロデューサー。15歳から独学で植物販売や造園を始め、2002年に南青山の生花販売会社に入社。
2011年に 株式会社 DAISHIZEN(だいしぜん)を創業。SOLSO というブランドでランドスケープデザイン・設計・施工などを行い、直営店も展開しています。
中に入るとうっそうとした木々が迫り来る大迫力の景色。
高さ3.5mのリビング一面に広がる巨大な窓がこの家の主役です。
齊藤さんは建築家 田根剛(たね つよし)さんに自邸の設計を依頼。2人で試行錯誤してこの窓を設計しました。
木造3階建ての八角形の家。1階のリビングの床部分は地面より1mほど掘り下げられています。そのため目線が地面に近くなる構造になっているのです。
リビングのテーマは「アリの生活」「縄文の生活」というプリミティブ(原始的)な光景。生態系を断面的に見られる窓、自然に見下ろされる感覚。
地面を歩くアリや木を這う虫や頭上で鳴く鳥。
「森の中で自然の姿を見上げるような体験をしたい」と窓のデザインと造園に時間をかけました。
都内の住宅街、建物の外の敷地は幅2mほど。その中で自然を作ることを考えたという齊藤さん。新しい自然、「新自然」と呼んでいるのだとか。
周辺地域にもともと生息する植物を調べ、それらと相性のいい種を加えた合計50種類以上の植物を植え込みました。
造園家が理想を追求して生み出した一面の緑。自然の迫力が窓からあふれ出ています。
窓と内部の関係には心地よい空間の極意がある。
「建築を考える=窓を考える」ということになると考えている、と齊藤さん。
名前 | 株式会社 DAISHIZEN(だいしぜん) |
住所 | 東京都港区南青山1-12-32 2 |
WEB | https://solso.jp/ |
齊藤太一さんの自宅は建築系雑誌にも掲載されています。
田根剛さん / 建築家
齊藤太一さんの自宅を設計したのは建築家 田根剛(たね つよし)さん。
1979年、東京都杉並区生まれ。北海道東海大学芸術工学部建築学科に進学し在学中にスウェーデンのHDKとシャルマス工科大学へ留学。大学卒業後はデンマーク王立アカデミーにて客員研究員を務めます。その後、ヨーロッパの設計事務所に勤務。
2006年にダン・ドレル、リナ・ゴットメと共同で Estonian National Museum(エストニア国立博物館)の国際コンペに応募。最優秀賞を授賞し、華々しくデビュー。パリに DGT.(DORELL.GHOTMEH.TANE / ARCHITECTS)を共同設立。
2016年に エストニア国立博物館 がオープンし DGT. を解散。パリに Atelier Tsuyoshi Tane Architects(アトリエ ツヨシ タネ アーキテクツ、略称:ATTA)を設立。現在はパリを拠点としながら日本を始め世界中でプロジェクトを手がけています。
名前 | Atelier Tsuyoshi Tane Architects(アトリエ ツヨシ タネ アーキテクツ) |
住所 | 62 Bd Diderot, 75012 Paris, France |
WEB | http://at-ta.fr/ |
田根剛さんのインタビュー本。
エストニア国立博物館が紹介されています。
脇田和アトリエ山荘 / 吉村順三設計の洋画家の住宅兼アトリエ【長野県 軽井沢町】
長野県軽井沢町、閑静な別荘地の中でひときわ目を引く山荘 脇田和アトリエ山荘(わきたかず あとりえさんそう)。昭和45年(1970年)に洋画家 脇田和(わきたかず)の住宅兼アトリエとして建てられました。令和3年(2021年)に国の有形文化財に登録されています。
脇田和は明治41年(1908年)東京都生まれ。青山学院中等部中退後、15歳でドイツ・ベルリン国立美術学校に入学、西洋美術を学び昭和5年(1930年)に卒業。
帰国後は光風会や帝展に出品し、昭和11年(1936年)新制作派協会の創立に参加。戦後は国際展に出品し高い評価を受けました。
洋画家として活動しながら、昭和39年(1964年)〜昭和45年(1970年)は東京藝術大学で教鞭を執り、後進の指導にもあたりました。
全長35メートル、鉄筋コンクリート造(一部木造)の2階建て。細長い建物が庭を「く」の字型に囲っています。
中に入ると横に長くのびる窓。居間から庭全体を一望でき気持ちのいい空間が広がります。
設計は脇田和と交流があった戦後を代表する建築家・吉村順三(よしむら じゅんぞう)。ともに東京藝術大学で教鞭をとり、新制作派協会(現・新制作協会)で活動した吉村順三に設計を依頼しました。
脇田和の要望は「絵のモチーフとなる動植物を観察したい」ということ。
吉村順三が出した答えの一つが軒。屋根からのびる軒の長さを景色に合わせて緻密に計算しました。
横に長く伸びる窓、水平の軒のライン。当時窓の向こうは一面の森。軒は森へ向けた画家のまなざしを作ってくれました。
この別荘の現在のオーナーは脇田和の長男 脇田智(わきた さとし)さん。脇田智さんは動物写真家。弟の 故・脇田愛二郎(わきた あいじろう)さんは彫刻家。芸術家一家です。
脇田和アトリエ山荘の敷地内には平成3年(1991年)に創立された 脇田美術館(わきたびじゅつかん)があり、脇田智の作品を展示しています。脇田智さんは美術館の館長を務めています。
美術館は常時開館していますが、アトリエは夏・秋に期間限定で特別公開となっています。(残念ながら新型コロナウイルスの感染拡大の影響で2021年の公開は中止となりました。)
父は鳥を描くので鳥を飼っていた、と思い出を語る脇田智さん。
大きな窓か鳥が時々外に飛び出したりしても「あ~きれいきれい」なんて言って逆に喜んでいたのだとか。
建物は当初コブシの木を囲うように建てられていました。「窓から木に止まる鳥がよく見えるように」という吉村の心遣いが感じられます。
さらに窓は雨戸や障子はもちろんガラス戸まで全て戸袋に収まるよう設計。全開にすると外と中の境界を感じさせない開放感が生まれます。
父の絵の中にも窓があったり大体鳥が窓からのぞいてるとか。
自分の頭の中に想像の窓もあったりすると思いますけれども、絵そのものが窓、と脇田智さん。
自然の光景を見る額縁のような窓です。
名前 | 脇田美術館(わきたびじゅつかん) 脇田和アトリエ山荘(わきたかず あとりえさんそう) |
住所 | 長野県北佐久郡軽井沢町大字軽井沢字野沢原1243-14 |
電話 | 0267-42-2639 |
WEB | http://www.wakita-museum.com/ |
営業時間 | [美術館] 10:00~17:00 [アトリエ山荘] 夏・秋に期間限定で特別公開 |
定休日 | [美術館] 展示替え・イベント等の臨時休館日 |
絵本「おだんごぱん」の絵も脇田和さんの作品です。
吉村順三 / 建築家
洋画家 脇田和(わきたかず)の住宅兼アトリエ、脇田和アトリエ山荘(わきたかず あとりえさんそう)を設計したのは戦後を代表する建築家・吉村順三(よしむら じゅんぞう)。
吉村順三は明治41年(1908年)東京生まれ。東京美術学校(現東京藝術大学)で建築を学び、1931年に卒業後はアントニン・レーモンドに師事。モダニズム建築を体得するとともに、レーモンドに日本建築を伝えました。
1941年に吉村順三設計事務所を開設。1945年に東京美術学校助教授就任。1962年に東京藝術大学教授に就任。1970年に東京藝術大学名誉教授。
代表作は前川國男・坂倉準三と共同設計した国際文化会館、奈良国立博物館新館など。
日本の伝統とモダニズムの融合する設計で高い評価を得ています。
住宅も多数設計した吉村順三。中でも1962年に竣工した自らの小さな別荘・軽井沢の山荘(吉村山荘)は傑作と言われています。
軽井沢の山荘と脇田和アトリエ山荘の共通点は1階にピロティがあり2階に居間があること。持ち上げられた居間の窓から眺める軽井沢の木々を愛したのでしょうか。
名前 | 吉村順三記念ギャラリー(よしむらじゅんぞう きねんギャラリー) |
住所 | 東京都豊島区目白3-8-6 |
電話 | 03-5342-5655 |
WEB | http//www.yoshimurajunzo.jp |
営業時間 | 奇数月の第1週〜4週の土日:13:00〜17:00 |
入場料 | 一般:500円 |
吉村順三の名作「軽井沢の山荘」が詰まった本。
美の壺 二、デザイン:形に込められた思いを味わう
ふたつめのツボは デザイン:形に込められた思いを味わう。
フランク・ロイド・ライト / アメリカ人建築家
世界的建築家 フランク・ロイド・ライト(Frank Lloyd Wright)は1867年アメリカ合衆国ウィスコンシン州生まれ。
100年前の大正6年(1917年)に日本を訪れ、帝国ホテル、旧林愛作邸、旧山邑邸(現:ヨドコウ迎賓館)、自由学園明日館、の4作品を設計しました。
美の壺 File 414「フランク・ロイド・ライト」の回でも詳しく紹介されていました。
ライトの建築が見られるのはアメリカ以外では日本だけ。
東洋の宝石とうたわれた豪華絢爛なホテル 帝国ホテル。
丘の斜面にはうように建てられた住宅 旧山邑邸(現:ヨドコウ迎賓館)。
草原に建つ家をイメージした学校 自由学園明日館。
ライトは斬新なデザインを施しながらも日本人の感覚に寄り添った建物を設計しました。
岩井忠之さん / ヨドコウ迎賓館(旧山邑家住宅)/ フランク・ロイド・ライト設計の住宅【兵庫県 芦屋市】
近代建築の巨匠 フランク・ロイド・ライト のこだわりが詰まった窓、と紹介されていたのは 兵庫県芦屋市、町を見下ろす丘の中腹に建つ 旧 山邑家住宅(きゅう やまむらけじゅうたく)。
灘の造り酒屋 櫻正宗(さくらまさむね)を営む八代目 山邑太左衛門(やまむら たざえもん)の別邸として建てられました。ライトが来日中の大正7年(1918年)に基本計画が行われましたが、ライトのアメリカに帰国後に実施設計と工事が進められたためライトのスケッチを基に弟子であった 遠藤新(えんどう あらた)と 南信(みなみ まこと)が担当。大正13年(1924年)に竣工しました。
1947年に 株式会社 淀川製鋼所(よどがわせいこうしょ)が社長邸として建物を購入し、1989年から ヨドコウ迎賓館(ヨドコウげいひんかん)として一般公開しています。
建築当初の姿で残る国内唯一のライトによる住居建築。
解説してくださったのはヨドコウ迎賓館 館長の 岩井忠之(いわい ただゆき)さん。
2階の 応接室 は窓が多く曇りの日でも明るい印象です。
さまざまな窓に囲まれたこの部屋で独特の存在感を放っているのが天井近くにずらりと並んだ 小窓。
こちらの住宅の各部屋には天井照明がありません。そのため光と風を取り入れることを目的としたこの小窓が付いています。
ライトは伝統的な日本家屋の「欄間(らんま)」からヒントを得て小窓を設計したと考えられています。
建物の外から見ると一つ一つの小窓には砕いた大谷石と砂セメントを素材とした飾り石が施され
ライトが当時影響を受けていたマヤ文明の遺跡のような雰囲気が漂っています。
通気や採光といった機能だけでなく窓にさまざまなデザインを施したライト。
4階の 食堂 には三角形に見える 天窓 が。でもよく見ると窓自体の形は四角く、天井に奥行きのある三角形の穴が開いているデザイン。
館内の天井は皆平らなのですが食堂だけ唯一三角の面で構成。
天井に合わせデザインされた窓が教会のような厳かな雰囲気を演出しています。
さらに3階の 廊下 に並ぶ窓は自然に溶け込んだ建築を理想としたライトのこだわりを感じさせます。
窓ガラスの板に装飾された銅板は植物の葉をモチーフとしたもの。表面は植物に似せるため、あえて緑色のさび 緑青(ろくしょう)を発生させています。
西日がさし込むとまるで木漏れ日を受けたよう。
窓から見える景色、そして光と風。自然を建築の中に取り込むイメージ。
自然や環境と溶け込む「有機的建築」の理念に貫かれたライトの窓です。
名前 | ヨドコウ迎賓館(旧山邑家住宅 きゅうやまむらけじゅうたく) |
住所 | 兵庫県芦屋市山手町3-10 |
WEB | https://www.yodoko-geihinkan.jp/ |
営業時間 | 水土日祝:10:00~16:00 |
定休日 | 月曜・火曜・木曜・金曜 |
入場料 | 大人:500円、小・中・高校生:200円 |
武蔵野プレイス / 図書館 / 「ふきだし」モチーフの窓【東京都 武蔵野市】
東京・武蔵野市 の 武蔵野プレイス(むさしのプレイス)は2011年に開館した 武蔵野市立図書館(むさしのしりつとしょかん)などが入る公共文化施設。図書館、生涯学習支援、市民活動支援、青少年活動支援の4つの機能を備えています。
目を引く外観は潜水艦?宇宙船?思わずのぞき込みたくなる不思議な形の窓です。
館内に入ってみると、ぽっかりと丸くくりぬかれたような空間がいくつも連なっています。
それぞれの空間を仕切る壁はありません。あるのは楕円形の穴。
解説してくださったのは設計者の一人、建築家の 比嘉武彦(ひが たけひこ)さん。
窓の形と中の部屋の形とが呼応していてお互いに共鳴し合っている建物。小さなスペースがたくさん集まり大きな施設となっています。
人を優しく包み込むことを重視し、丸い形を多用したデザインが生まれました。
この窓は「吹き出し」がモチーフなのだとか。
それぞれの思いがプカプカ浮かんでる。いろいろな人たちの思いが共存していることを象徴する形。
人が語り合い人に語りかける窓。少し足を止めて窓の声を感じ取りたくなります。
名前 | 武蔵野プレイス(むさしのプレイス) |
住所 | 東京都武蔵野市境南町2-3-18 |
電話 | 0422-30-1905 |
WEB | https://www.musashino.or.jp/ |
営業時間 | 木〜火:9:30~20:00 |
定休日 | 水曜・年末年始 |
比嘉武彦さん / 建築家 / kw + hg アーキテクツ
武蔵野プレイス(むさしのプレイス)の設計者の一人、建築家の 比嘉武彦(ひが たけひこ)さん。
建築家の 川原田康子(かわはらだ やすこ)さんと共に kwhgアーキテクツ一級建築士事務所 を主宰しています。
比嘉さんは1961年沖縄県生まれ。1986年に京都大学工学部建築学科卒業後、長谷川逸子・建築計画工房に勤務。
2001年に 比嘉武彦建築研究所 を設立し、2004年に kwhgアーキテクツ一級建築士事務所 に改組。
2004年に武蔵野市が実施した「武蔵境新公共施設設計プロポーザル」でkwhgアーキテクツの案が選ばれ、2011年に「武蔵野プレイス」として開館するまで7年間の歳月をかけて設計・施工監理に携わりました。
武蔵野プレイス は日本建築学会賞作品賞を受賞するなど高い評価を得ています。
名前 | kwhgアーキテクツ一級建築士事務所 |
住所 | 東京都杉並区荻窪5-17-6 トーワビル301 |
WEB | http://kwhg.co.jp/ |
武蔵野プレイスっも紹介されています。
美の壺 三、象徴:窓がいざなう心の旅
最後のツボは 象徴:窓がいざなう心の旅。
五十嵐太郎さん / 建築史家・東北大学大学院教授 / 円形の窓
世界中の窓の研究を行っている建築史家と紹介されていたのは東北大学大学院教授でもある 五十嵐太郎(いがらし たろう)さん。もちろん窓の研究だけを行なっているわけではなく、都市・建築デザインを中心に映画やマンガ・アニメなど幅広い知識をお持ちです。
五十嵐さんは1967年フランス・パリ生まれ。1989年に東京大学工学部建築学科卒業。1992年に東京大学大学院修士課程修了。2000年に東京大学大学院博士課程で工学博士取得。
中部大学工学部建築学科講師、助教授を経て、2005年に東北大学大学院工学研究科・都市・建築学専攻助教授に就任。
2010年から東北大学大学院SSD教授。著書も多数で、窓に関する著作だけでも「窓へ 社会と文化を映しだすもの」「窓から建築を考える」「窓と建築の格言学 窓学」「世界の美しい窓」などがあります。
五十嵐さんが教えてくれた特別な意味を持つ窓の形は 円(えん)。
日常的に生活している家は通常長方形の開口部のため、円形になっているとすごく非日常的な存在になります。
名前 | 五十嵐太郎(いがらし たろう) |
WEB | https://twitter.com/taroigarashi |
五十嵐太郎さんの著書。
パンテオン / 円形の天窓:オルクス【イタリア ローマ】
象徴的な 円形の窓 を持つ建築は世界各地にあります。
イタリア・ローマ、あまねく神々が祭られた古代ローマの神殿 パンテオン(Pantheon)。
115年~125年頃にハドリアヌス帝によって建てられました。
ドームの頂点、高さ43.2mの場所に開いているのは直径9mの完全な 円の窓 。古代は「オルクス(目)」と呼ばれていました。
空に「目」が開いていてそこから光が入ってくる、その光が射す位置が太陽の動きとともに変化していくのは建物の中にいながらも天体というか星が動いてるようなコスモロジーを感じさせます。
大変シンボリックな効果を持つ天窓。この天に開いた「目」は2,000年近く人々を見守るように光を降り注いできました。
名前 | パンテオン(Pantheon) |
住所 | Piazza della Rotonda, 00186 Roma RM, Italy |
WEB | https://www.pantheonroma.com/ |
営業時間 | 9:00~19:00 |
定休日 | なし |
明月院 / 円形の窓:悟りの窓【神奈川県 鎌倉市】
日本でも寺社などで円窓は多く作られてきました。
紹介されていたのは 神奈川県鎌倉市 にある 明月院(めいげついん)の本堂にある 悟りの窓(さとりのまど)。
この窓は悟りや真理大宇宙などを象徴的に表現したと言われています。
明月院は紫陽花の名所として知られ、通称:あじさい寺 とも呼ばれています。
円く切り取られた庭の景色。
情報がそぎ落とされた円の中の光景は見る人に深い集中をもたらします。と言われていましたが、番組の映像ではリス?のしっぽがチョロチョロ動いていて気になって集中できず。雑念に囚われてしまいました。
人を悟りの境地へと導くといわれる円い窓です。
名前 | 明月院(めいげついん、通称:あじさい寺) |
住所 | 神奈川県鎌倉市山ノ内189 |
電話 | 0467-24-3437 |
WEB | https://trip-kamakura.com/place/230.html |
営業時間 | [7月-5月] 9:00~16:00 [6月] 月〜金:8:30~17:00 |
定休日 | [6月] 土曜・日曜 |
千宗屋さん / 茶室 重窓 / 東京タワーが見える茶室【東京都 港区】
茶道 武者小路千家(むしゃこうじせんけ)第15代家元後嗣(いえもとこうし)千宗屋(せん そうおく)さん。
紹介されていたのは千さんがかつてしつらえた茶室 重窓(ちょうそう)。東京タワーが見渡せる都心のマンションの一室です。
茶室というのは「囲い」。囲った場所でありそれ自体が別世界。
窓 は日常:外の世界 と非日常:囲いの中を隔てる結界でもあります。
茶室の中にいるときには窓の外の時間をしばし忘れて別世界に心を遊ばせる。そして最後にその窓を障子をガラッと開けると外の景色がや東京タワーが見えてはっと我に返り日常に戻っていく。と千さんは語ります。羨ましい贅沢な世界ですね。
騒がしい日常から離れ別世界を生み出す茶室の窓。
名前 | 千宗屋(せん そうおく)/ 株式会社 重窓(ちょうそう) |
住所 | 東京都港区麻布十番2-5-13 丸井ビル4F |
WEB | https://cho-so.jp/ |
千宗屋さん / 武者小路千家 / 正午の茶事【京都市 上京区】
茶道 武者小路千家(むしゃこうじせんけ)第15代家元後嗣(いえもとこうし)千宗屋(せん そうおく)さん。
騒がしい日常から離れ別世界を生み出す茶室の窓。窓は茶事の中でも重要な役割を担っているといいます。
紹介されていたのは 正午の茶事(しょうごのちゃじ)と呼ばれる茶会。4時間ほどにも及びます。
始まりは薄明かりの中で。全ての窓にはすだれが掛けられ明るさが抑えられています。
この暗さの中で懐石などがふるまわれます。
物事がはっきり見えなければ亭主や客たちはこん然一体になれる。そんな感覚が味わえるのだとか。
前半の懐石を終えると客はいったん退席。
ここで亭主は 突き上げ窓 を開け外の空気と光を取り入れます。
床のしつらえは掛け軸から花に。
客が再び席に着くと亭主は外へ出て、窓に掛けられたすだれを一つずつ順番に上げていきます。
薄暗かった室内に少しずつ満ちていく光。「陰」から「陽」に場面が転換されました。光がパッと入ってきて「いよいよメインの席が始まる」高揚感を演出します。光の調整は茶事全体の流れの中でも象徴的に使われます。
この明るさの中でいわば茶事の本番、亭主の点てた濃茶がふるまわれるのです。
窓が生み出す深遠なひととき。光と陰の彩りです。
名前 | 武者小路千家(むしゃこうじせんけ) |
住所 | 京都市上京区武者小路通小川東入613 |
WEB | https://www.mushakouji-senke.or.jp/ |
エピローグ
「いつも窓の外を見ながら、たまには思いっきり空を飛びたいなって思ってた」という少年。
しかし窓の外の現実は思っていたものとは違い、厳しい世界。だからもういいかなって思った、と帰って行きました。
草刈さんが「あの子は初めて会った気が全然しないな」と言っていると、ピーちゃん帰ってきてくれていました。
あの少年はもしかして…?
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音楽 BGM
ジャズの名曲が流れる美の壺。番組BGMファンもいらっしゃるのではないでしょうか。
オープニング曲と番組内挿入曲をまとめましたので参考にどうぞ。リンク先で試聴できます。
オープニングテーマ
オープニングテーマ は Art Blakey And The Messengers(アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ)の名曲「Moanin’」。ジャズドラマー アート・ブレイキーが1958年に発表した同名のアルバムに収録されています。作曲はピアニストの Bobby Timmons(ボビー・ティモンズ)。
番組内 楽曲
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