NHK「美の壺(びのつぼ)」は普段使いの器から家具、着物、料理、建築に至るまで、衣食住、人の暮らしを彩ってきた美のアイテムを解説してくれる番組。紹介されたものは何?場所はどこ?出演は誰?どこで買える?と興味津々。
そんな気になる「美の壺・美術の鑑賞マニュアル」を詳しく調べてみました。最後に番組内の音楽もまとめてあります。
美の壺「不朽のデザイン 市松模様」File 520
出演は俳優の 草刈正雄(くさかり まさお)さん、ナレーション(語り)は女優の 木村多江(きむら たえ)さんです。
最新エピソード 美の壺 File 621「平安の美」 もどうぞ併せてご覧下さい。
BSプレミアム(2023年11月30日まで。2023年12月1日から NHK BS(BS101チャンネル) へ移動)
初回放送:2020年11月27日(金)19:30~20:00
再放送 :2020年12月5日(土)06:45〜、
2021年7月23日(土)19:30~、2021年7月30日(土)06:45〜、
2021年8月6日(金)12:30~、2022年8月16日(火)17:37〜
2023年6月6日(火)06:45〜、2023年10月20日(金)06:45〜
BS4K(2023年12月1日から BSプレミアム4K へ名称変更)
初回放送:2020年11月27日(金)19:30~20:00
再放送 :2020年11月30日(月)16:00~、2020年12月4日(金)09:00~
2023年6月6日(火)06:45〜、2023年10月20日(金)06:45〜
Eテレ
再放送 :2022年11月27日(日)23:00〜、2022年11月30日(水)05:30〜
2023年11月12日(日)23:00〜、2023年11月15日(水)05:30〜
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美の壺 不朽のデザイン 市松模様 File 520 内容
▽スーツから靴下まで、市松模様を毎日身につける狂言師・茂山逸平さん。愛用歴20年の市松アイテム大公開!
▽縄文土器や埴輪にも!写楽も描いた「市松」の名の由来の人物とは?!
▽漆黒市松のスタイリッシュな江戸切子に、3500の四角がうごめく市松模様の九谷焼。
現代にいきる、市松模様ならではの美
▽京都・東福寺にある重森三玲の市松模様の庭。その意図を孫が読み解く!
▽古民家に輝く、市松のふすま絵!
プロローグ
良い夢が見られるという市松模様の大きな抱き枕を購入した草刈さん。さっそく縁側でお昼寝です。
美の壺 一、交互:繰り返す四角の妙
ひとつめのツボは 交互:繰り返す四角の妙。
茂山逸平さん / 大蔵流 狂言師 / 市松模様愛好家【京都市 上京区】
京都市上京区 で江戸時代から受け継がれてきた 大蔵流(おおくらりゅう)の狂言師 茂山逸平(しげやま いっぺい)さん。長男の 茂山慶和(しげやま よしかず)さんも登場されました。
茂山逸平さんは1979年に二世 茂山七五三(しげやま しめ)さんの次男として生まれ、父および祖父4世茂山千作、曽祖父3世茂山千作に師事。狂言師として活躍する一方で、NHK連続テレビ小説「京、ふたり」「オードリー」「だんだん」「カーネーション」「ごちそうさん」、NHK大河ドラマ「武蔵」などにも出演されています。
美の壺 File 613「干菓子」の回にも出演されました。
茂山さんは自他ともに認める市松模様好き。熱中歴は20年で100点以上も市松グッズをコレクション。和でも洋でも使いやすいと衣類から持ち物まで市松づくし。
着用されていたスーツは市松が織られている生地で仕立てられていて、光の加減で市松がうっすらと見えて上品。ネクタイも市松です。
着物も市松。下着も市松なので一松を身につけない日はないのだとか。
披露してくれたのはバッグ、道行き、風呂敷、信玄袋、名刺入れ。名刺も市松。市松マスクで顔を隠しても逸平さんだとバレてしまいます。
市松模様は狂言の装束にも施されてきました。伝統芸能、古典芸能は観賞用というよりも保存用に思われがちであるけれど、実用的でありたい、と語る茂山さんでした。
名前 | 茂山逸平(しげやま いっぺい) |
WEB | https://kyotokyogen.com/ |
茂山逸平さんの著書。狂言のルールと演目をわかりやすく解説しています。
市松模様の歴史 / 縄文時代〜江戸時代の佐野川市松
日本の 市松模様の歴史 は古く、縄文時代にまで遡ります。
縄文時代後期の 深鉢型土器 の表面に約5cm四方の市松模様が描かれています。
多摩美術大学 芸術人類学研究所所長 鶴岡真弓(つるおか まゆみ)さんによると縄文時代の人々も宇宙・自然の中で無限の広がりを格子状のデザインとして文様にしていったのではないかと解説。
6世紀、古墳時代後期の 貴人埴輪(きじんはにわ)は市松模様の袴が描かれています。
2色が拮抗し対立し合う市松模様は再生力・反転力を表現する模様だと鶴岡さん。
石畳(いしだたみ)と呼ばれていた市松模様、江戸時代にこの模様の由来となる歌舞伎俳優 佐野川市松(さのがわいちまつ)が現れます。初代 佐野川市松 は近松門左衛門作「心中万年草」という演目で白と紺の石畳柄の袴を履いて人気となり、後に 市松模様(いちまつもよう)と呼ばれるようになりました。
東洲斎写楽「三世佐野川市松の祇園町の白人おなよ」にも市松模様の着物を着た佐野川市松が描かれています。
鶴岡真弓さん / 多摩美術大学 芸術人類学研究所所長
市松模様の歴史を解説してくださったのは多摩美術大学 芸術人類学研究所所長 鶴岡真弓(つるおか まゆみ)さん。
鶴岡さんは1952年茨城県出身。1977年早稲田大学文学部卒業、同大学院文学研究科修了後、ダブリン大学トリニティ・カレッジへ留学。
立命館大学文学部教授、多摩美術大学・芸術学科教授を経て、同・名誉教授。
専攻はケルト芸術文化、ユーロ=アジア世界の生命デザイン交流史研究。
NHK「チコちゃんに叱られる」でハロウィンの解説で登場するなどメディアにも出演されています。
名前 | 多摩美術大学 芸術人類学研究所(たまびじゅつだいがく げいじゅつじんるいがくけんきゅうしょ) |
住所 | 東京都八王子市鑓水2-1723 多摩美術大学八王子キャンパス・メディアセンター4F |
WEB | https://www2.tamabi.ac.jp/geigaku/professor/mayumi_tsuruoka/ |
鶴岡真弓さんの著書。
美の壺 二、工芸:平面を超えて
ふたつめのツボは 工芸:平面を超えて。
石塚春樹さん / 硝子工房 彩鳳 江戸切子職人 / 市松模様の江戸切子【埼玉県 草加市】
江戸時代末期より技が受け継がれてきた 江戸切子(えどきりこ)。注目を集めている市松模様の江戸切子を作っているのは 株式会社ミツワ硝子工芸(ミツワがらすこうげい)が運営する江戸切子ブランド 硝子工房 彩鳳(ガラスこうぼう さいほう)の江戸切子職人 石塚春樹(いしづか はるき)さん。
石塚さんは1982年生まれ、栃木県出身。2018年に伝統工芸士に認定されました。
紹介されたグラスは漆黒と透明の大胆な面が際立つ市松模様。いかに細かくできるかにこだわっていたという石塚さん。あるときデザインを斬新に変えることで今までの江戸切子っぽさからちょっと抜けた部分を出せるのではと思い付いたのだとか。
江戸切子 は透明な 透きガラス(すきガラス)の外側を色の着いた 色被せガラス(いろきせガラス)で覆ったグラスを職人が手作業で削って作ります。
まずダイアモンドホイールで格子の線を入れる 割付け(わりつけ)という作業。次の 荒摺り(あらやすり)・中摺り(なかやすり)・石掛け(いしがけ)の工程は従来と同じやり方では上手くいかずに試行錯誤。砥石にサンドペーパーも併用して美しい面を削りました。
正面から見ると市松模様のグラス、少し視点をずらしただけで手前と向こうの色が宙に踊って舞っているような雰囲気に見せるところがガラスの市松の魅力だと石塚さん。
名前 | 株式会社ミツワ硝子工芸(ミツワがらすこうげい)硝子工房 彩鳳(ガラスこうぼう さいほう) |
住所 | 埼玉県草加市小山2-24-22 |
WEB | 江戸切子 彩鳳 オンラインストア |
石塚春樹さん作の市松文様の江戸切子。
戸出雅彦さん / 陶芸家 / 市松模様の九谷焼【石川県 金沢市】
石川県金沢市、陶芸家で卯辰山工芸工房講師の 戸出雅彦(といで まさひこ)さんは 九谷焼(くたにやき)で市松模様を表現しています。
九谷焼の家に生まれた戸出さんは独自のスタイルを確立したいと多くの作品に市松模様を取り入れてきました。
戸出さんが市松模様に注目したのは2002年、テレビで見たサッカー W杯がきっかけでした。真っ赤な市松模様のクロアチアの旗が振られて立体的にうねる様子は平面の布なのにまるで生き物のように見え、「ああいうものを作りたい」という気持ちが湧き上がりました。以来20年近くに渡り生き物のように見える市松模様に挑み続けてきました。
紹介されていたのは 飾り壺 の製作工程。縄文土器の造形に着想を得てダイナミックな形を作りました。
そこに市松模様を描きます。使うのは九谷焼で輪郭を描く際に使う黒の絵の具。細い筆でひとつひとつ塗りつぶします。
3,500以上の四角が並ぶ飾り壺。まるで命を宿したかのような市松模様です。
名前 | 戸出雅彦(といで まさひこ) |
WEB | https://www.facebook.com/masahiko.toide/ |
美の壺 三、見立て:整然から解き放つ
最後のツボは 見立て:整然から解き放つ。
東福寺 / 重森三玲の市松模様の庭【京都市 東山区】
京都市東山区 の 東福寺(とうふくじ)は1236年に藤原摂関家の菩提寺として九条道家により創建。本堂など主要な建物を中心に25か寺の塔頭を有する大寺院です。
大方丈を囲む東西南北の四方に、日本を代表する作庭家 重森三玲(しげもり みれい)が手がけた4つの 本坊庭園(ほんぼうていえん)があります。そのうち 北庭 と 西庭 は市松模様の庭。昭和14年(1939年)に完成しました。
東福寺のお庭は 美の壺 スペシャル「庭園」でも紹介。東福寺の開祖・円爾(えんに)は 美の壺 File 588「禅」で紹介されていました。
紹介されていたのは 北庭 の 小一松の庭。板石と杉苔が織りなす四角の世界。解説してくださったのは重森三玲の孫で作庭家の 重森千靑(しげもり ちさお)さん。
寺で使わなくなった敷石を再利用をすることを要求された重森三玲。敷石を枯山水としてではなく杉苔と合わせて市松模様を作り上げました。
山の木の四季折々の変化をものすごく縮小された世界で表現しているのが 苔(こけ)。朝は水分を含んで青々とした杉苔は新緑を思わせ、日中乾燥すると次第に茶色くなり秋の山を彷彿させます。
静と動でもあり隠と陽でもある 石 と 苔 。対局する2つが並ぶ整然とした世界は庭の奥に行くに従いまばらになっていきます。その消え行く様の表現は絵画のぼかしや遠近法にもつながるデザイン。禅や悟りの世界がこの庭に込められていると重森千靑さん。
名前 | 東福寺(とうふくじ) |
住所 | 京都府京都市東山区本町15-778 |
電話 | 075-561-0087 |
WEB | http://www.tofukuji.jp/ |
営業時間 | [4月-10月] 9:00~16:00 [11月-12月 第1日曜まで] 8:30~16:00 [12月 第1日曜-3月末]9:00~15:30 |
定休日 | なし |
三桝正典さん / 美術家 / 市松模様の襖絵【広島県 広島市】
広島県広島市 の美術家で広島女学院大学教授の 三桝正典(みます まさのり)さん。1960年広島県生まれ。
三桝さんは重森三玲が手がけた広島市の 桜下亭(おうかてい)の襖絵を2011年に描いたことをきっかけに、「ジャパニーズ・モダン」をテーマとして京都・大徳寺や尾道・浄土寺など多くの寺社や茶室の襖絵などを描いてきました。8年前からは作品に市松模様を取り入れています。
襖絵「秋 蜜柑」という作品は地元のみかんを市松模様で表現。赤・黄色・緑の絵の具を和紙の上で重ね、仕上げにハケで金色を施しました。
光を浴びるときらきら光るみかん。市松模様も遠目に見るとチラチラと光が反射しているように見える、その効果と魅力をみかんに重ねて表現した、と三桝さん。
取り組んでいたのは1774年建設の築246年の古民家 旧千葉家住宅(きゅう ちばけじゅうたく)のために製作した 桜と市松模様の襖絵。市松模様は2種類の金色で、花びらは白と赤の絵の具で描かれます。
三桝さんが完成された美を感じるという市松模様。時間の経過とともに完全な市松模様が剥がれ落ちたり消えたりする経過も表現。
東から太陽が登り、刻々と日差しを強め、西へ傾いていく。その光の移ろいを市松模様で表しています。
旧千葉家住宅は無料で見学が可能です。
名前 | 三桝正典(みます まさのり) |
住所 | 広島県広島市南区北大河町17-15 |
WEB | https://mmimasu0.wixsite.com/website |
名前 | 旧千葉家住宅(きゅう ちばけじゅうたく) |
住所 | 広島県安芸郡海田町中店8-31 |
WEB | https://www.town.kaita.lg.jp/site/miryoku/17703.html |
営業時間 | 第2・4土曜日の前日から連続する4日間:10:00~16:00 |
見学料 | 無料 |
エピローグ
草刈さんが縁側で見つけたのは絵巻物「草刈家代々肖像戯画」。肖像画入りの家系図です。正吉じいさんから遡り、江戸時代には歌舞伎役者・正市松?安土桃山時代は戦国武将。みんな市松模様の着物を着ています。さらに遡ると古墳時代は市松模様の埴輪?
…というところで目が覚めました。
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音楽 BGM
ジャズの名曲が流れる美の壺。番組BGMファンもいらっしゃるのではないでしょうか。
オープニング曲と番組内挿入曲をまとめましたので参考にどうぞ。リンク先で試聴できます。
オープニングテーマ
オープニングテーマ は Art Blakey And The Messengers(アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ)の名曲「Moanin’」。ジャズドラマー アート・ブレイキーが1958年に発表した同名のアルバムに収録されています。作曲はピアニストの Bobby Timmons(ボビー・ティモンズ)。
番組内 楽曲
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