NHK「美の壺(びのつぼ)」は普段使いの器から家具、着物、料理、建築に至るまで、衣食住、人の暮らしを彩ってきた美のアイテムを解説してくれる番組。紹介されたものは何?場所はどこ?出演は誰?どこで買える?と興味津々。
そんな気になる「美の壺・美術の鑑賞マニュアル」を詳しく調べてみました。最後に番組内の音楽もまとめてあります。
美の壺「日本の筆、はけ、ブラシ」File 545
出演は俳優の 草刈正雄(くさかり まさお)さん、ナレーション(語り)は女優の 木村多江(きむら たえ)さんです。
最新エピソード 美の壺 File 622「炎」 もどうぞ併せてご覧下さい。
BSプレミアム(2023年11月30日まで。2023年12月1日から NHK BS(BS101チャンネル) へ移動)
初回放送:2021年7月16日(金)19:30~20:00
再放送 :2021年7月24日(土)06:45〜、2021年7月30日(金)12:30~
2022年8月19日(金)19:30~、2022年8月27日(土)06:45〜
2022年9月2日(金)12:30〜
BS4K(2023年12月1日から BSプレミアム4K へ名称変更)
初回放送:2021年7月16日(金)19:30~20:00
再放送 :2021年7月30日(金)12:30~、2022年8月19日(金)19:30~
2022年8月27日(土)06:45〜、2022年9月1日(木)23:00〜
Eテレ
再放送 :2023年7月16日(日)23:00〜、2023年7月19日(水)05:30〜
2024年5月26日(日)23:00〜、2024年6月3日(月)05:55〜
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美の壺 2024年度(2024年4月〜2025年3月)バックナンバー はこちらをどうぞ!
美の壺 日本の筆、はけ、ブラシ File 545 内容
▽日本の筆・はけ・ブラシの奥深き世界を徹底解剖!
▽ミス日本のメイクを手掛けるお坊さんメイクアップアーティストが愛用する広島の熊野筆は「かわいさ」が要
▽将軍徳川吉宗のお墨付き!はけとブラシの老舗の品数はなんと800!その驚くべき種類と用途
▽繊細な毛先に見る江戸はけ作りの技の妙▽今ブームの靴磨き・手植え靴ブラシの工房へ
▽世界が注目する「隠れメイドインジャパン」は美しき暮らしのパートナー
プロローグ
障子の張り替えをしている草刈さん。障子紙・のりは揃ったものの「刷毛(はけ)」がありません。
美の壺 一、けしょうふで:繊細な肌触り
ひとつめのツボは けしょうふで:繊細な肌触り。
西村宏堂さん / 僧侶・メイクアップアーティスト / 化粧筆【東京都 港区】
東京・港区 の室町時代から続く由緒ある浄土宗の寺の僧侶 西村宏堂(にしむら こうどう)さんは世界的なメークアップアーティスト。1989年東京生まれ、ニューヨークのパーソンズ美術大学(Parsons School of Design)に留学し卒業後はアメリカでメイクアップアーティストのアシスタントとして修業したのち独立。
ミス・ユニバース世界大会で各国の代表者のメイクを担当するなど世界的に活躍されています。
ご実家が浄土宗の寺院ということで2015年に浄土宗の僧侶となりました。
2022年の紅白歌合戦の審査員を務め、「ハイヒールを履いた僧侶」としても活動の場を広げています。
西村さんの仕事に欠かせないものが 化粧筆(けしょうふで)。肌触り、使う化粧品がどれだけうまく乗るか、どれだけ思い通りに描けるかが大事だと語ります。
西村さんのメイクを見せてもらいました。モデルは2020ミス・ユニバース日本代表の 杤木愛シャ暖望(とちぎあいしゃはるみ)さん。
まずはアイメイクから。メイクをする部分・化粧品の種類で様々な筆を使い分けます。細かいところはリスの毛でできた小さなブラシで。
次にファンデーション。そして大きなブラシでチークを入れます。眉、リップ、と化粧筆を自在に操り仕上げていきます。
西村さんのお気に入りの化粧筆は日本の 熊野筆(くまのふで)。繊細に作られているので思った通りに動かせるのだとか。
名前 | 西村宏堂(にしむら こうどう) |
WEB | https://www.kodonishimura.com/ |
西村宏堂さんもお気に入りの熊野筆。竹宝堂の上質な化粧筆。
竹森鉄舟さん / 竹宝堂 / 熊野筆【広島県 熊野町】
西村宏堂さんもお気に入りの 熊野筆(くまのふで)。産地の 広島県熊野町 は江戸時代より続く筆作りの町。
紹介されていたのは創業 昭和56年(1971年)の 熊野化粧筆工房 竹宝堂(ちくほうどう)。熊野の筆作りの技と選りすぐりの素材から熟練の職人さんたちが化粧筆を制作する世界有数の化粧筆メーカー。希少価値のあるリスやヤギなど厳選された動物の毛が使用されています。
筆作りを見せてくれたのは創業者で会長の 竹森鉄舟(たけもり てっしゅう)さん。
鉄舟さんの父 竹森一男 さんが昭和27年(1952年)に人形の顔を描く 面相筆(めんそうふで)の穂先造りを家内工業で始め、その技術を受け継いだ鉄舟さんが昭和30年代に面相筆作りの技をもとに 化粧筆 製作の基盤を開発しました。
化粧筆の要は 穂先(ほさき)。鉄舟さんが熟練の技で穂先を仕上げます。
穂先を整えて先のないものや傷んだ毛を小刀で抜き取る 逆毛取り(さかげとり)。
次に コマ入れ と呼ばれる作業。逆毛取りした穂先を中をくり抜いた コマ と呼ばれる木型に入れ丸い形にします。
しかしコマの中で丸くした穂先はそれぞれが微妙に違う形。手のひらで揉み穂先の形を作っていく 揉み出し(もみだし)の作業で整えます。揉む場所を変えるだけで穂先の形を自由に変えられると語る鉄舟さん。まるで魔法のような職人技。
こだわっているのは穂先の山が始まる場所がわからないほどに自然に丸みを帯びた形。「そのほうがかわいい」と微笑む鉄舟さん。こだわりの技で生み出された繊細な肌触りの化粧筆です。
名前 | 熊野化粧筆工房 竹宝堂(ちくほうどう) |
住所 | 広島県安芸郡熊野町出来庭6-5-5 |
WEB | https://www.chikuhodo.com/ |
竹宝堂の上質な化粧筆。
美の壺 二、えどはけ:丁寧が生み出す良きモノ
ふたつめのツボは えどはけ:丁寧が生み出す良きモノ。
濵田捷利さん / 江戸屋 / 刷毛とブラシの老舗【東京都 日本橋】
東京・日本橋 の 刷毛(はけ)と ブラシ の専門店 江戸屋(えどや)。店で扱う刷毛やブラシは800種。店内には夥しい商品が陳列され、天井からも刷毛がぶら下がっています。
創業は江戸中期の享保3年(1718年)、店の屋号は八代将軍 徳川吉宗(とくがわよしむね)から賜りました。現当主は12代目の 濵田捷利(はまだ かつとし)さん。
用途に合わせて作られ使われてきた江戸の刷毛。庶民から大奥まで日常の様々な場面で使われていました。
濵田さんが見せてくれたのは 木版刷毛(もくはんばけ)。浮世絵の版木に色をつける刷毛。江戸時代には大活躍したことでしょう。
漆刷毛(うるしばけ)は漆を塗るための刷毛。人間の髪の毛、それも30年以上乾燥させた日本女性の髪の毛が最適とされていました。
江戸刷毛(えどはけ)のひとつ、掛け軸・屏風・ふすま・障子などの表具に糊を塗ための 糊刷毛(のりばけ)。
江戸時代の享保17年(1732年)に書かれた商品学書「万金産業袋(ばんきんすぎわいぶくろ)」には日用品などの良し悪しが解説されていて、「江戸ばけ 表具によろし」と指南されています。障子の張り替えなどを日常的に行う当時の暮らしには欠かせないものだったことが伺われます。
東京都産業労働局によると、東京の伝統工芸品に指定されている 江戸刷毛 は 経師刷毛、染色刷毛、人形刷毛、漆刷毛、木版刷毛、白粉刷毛、塗装刷毛の7種類。現在はこの7種類の刷毛の総称が 江戸刷毛 と定義されています。
名前 | 株式会社 江戸屋(えどや) |
住所 | 東京都中央区日本橋大伝馬町2-16 |
電話 | 03-3664-5671 |
WEB | https://www.nihonbashi-edoya.co.jp/ |
営業時間 | 月〜金:9:00〜17:00 |
定休日 | 土曜・日曜・祝日 |
江戸屋の洋服ブラシと靴ブラシ。
稲崎昌仁さん / 経新堂稲崎表具店 表具師 / 江戸刷毛【東京都 日本橋】
江戸刷毛(えどはけ)はどのように使われているのでしょうか。
江戸刷毛を使うところを見せてくれたのは 東京・日本橋 の 経新堂稲崎表具店(きょうしんどういなさきひょうぐてん)の表具師 稲崎昌仁(いなさき まさひと)さん。
江戸天保年間より日本橋で5代続く表具店。稲崎さんのご先祖は、江戸城への出入りと苗字帯刀を許された筆頭の表具師でした。表の看板に「大経師(だいきょうじ)」と書かれているのは当時の表具屋の呼び名「経師屋」の筆頭格「大経師」の称号を賜っているから。
表具師は用途に応じて様々な刷毛を使い分けます。
糊を塗るのに使う 糊刷毛(のりはけ)。
貼った和紙をしっかりなでつける なぜ刷毛(なぜばけ)、
貼った和紙を叩く 打ち刷毛(うちばけ)。叩くと和紙の繊維がからまって強く貼り付けることができます。
細かいところに糊をつけるための 切り継ぎ刷毛(きりつぎばけ)。
良い江戸刷毛は毛先が一番大切だと稲崎さん。毛先がまっすぐに揃っていること、適度にコシがあることが重要だと語っていました。
名前 | 経新堂稲崎表具店(きょうしんどういなさきひょうぐてん) |
住所 | 東京都中央区日本橋浜町2-48-7 |
電話 | 03-3666-6494 |
WEB | https://www.kyoushindo.com/ |
営業時間 | 月〜土:10:00〜18:00 |
定休日 | 日曜 |
田中重己さん+田中宏平さん / 小林刷毛製造所 / 江戸刷毛【千葉県 習志野市】
江戸の表具師が使ったそのままの姿の 江戸刷毛(えどはけ)を今も変わらぬ技で作り続けているのは明治40年(1907年)創業の 小林刷毛製造所(こばやしはけせいぞうしょ)の 田中重己(たなかしげみ)さん、田中宏平(たなかこうへい)さん親子。
3代目当主の父・田中重己さんは、この道64年。文化庁認定選定保存技術保持者です。
工房は千葉県習志野市にありますが、美術館・博物館や東京芸藝大学からの注文も多いようで東京都台東区池之端に店舗を構えていて、そちらは重己さんの弟の小林誠さんが営業されています。
田中さんが作る刷毛は国宝の修復にも使われています。
安土桃山時代の絵師 狩野永徳(かのう えいとく)が1590年に製作した「檜図屏風(ひのきずびょうぶ)」。東京国立博物館が所蔵しています。
経年劣化によって絵の具が剥落したため、2012年10月〜2014年3月まで18か月かけて修復が行われました。その修復に使われたのが田中さんの刷毛。
糊刷毛(のりばけ)50本分の毛先の下処理だけで、約2か月がかかります。高い品質を保つためにはきちんと手順を踏んで手間をかけるのが職人の仕事。
糊刷毛 に使う毛は馬の尻尾。
毛先を揃える 先揃え(さきぞろえ)。右手で毛先を持ち丁寧に揃えます。
次に逆毛や毛先のないものを小刀で取り除く すれ取り(すれとり)。
毛先を一直線に揃えて紙で巻き、仕上げへ。檜の板で挟んで三味線の糸で綴じます。
余分なものは一切なく、糊を塗る為だけに作られた糊刷毛。丁寧な仕事が生み出した江戸刷毛です。
名前 | 小林刷毛製造所(こばやしはけせいぞうしょ) |
住所 | [工房] 千葉県習志野市藤崎5-7-5 [店舗] 東京都台東区池之端2-7-6 |
電話 | [工房] 047-472-343 [店舗] 03-3821-6296 |
WEB | http://www.kobayashihake.jp/ |
営業時間 | [店舗] 月〜金:10:00〜17:00 |
定休日 | [店舗] 土曜・日曜・祝日 |
美の壺 三、くつブラシ:輝きを生み出す極上のパートナー
最後のツボは くつブラシ:輝きを生み出す極上のパートナー。
石見豪さん / THE WAY THINGS GO 靴磨き職人 / くつブラシ【大阪府 中央区】
大阪・中央区、かつて船場と言われたエリアに残る近代建築 船場ビルディング 内にある靴磨き専門店 THE WAY THINGS GO(ザ ウェイ シングス ゴー)。靴ブラシがブームの今、マニア垂涎のお店。靴磨き職人(シューシャイナー)の 石見豪(いしみ ごう)さんは2018年「靴磨き日本選手権」で優勝した凄腕。
石見さんは昭和57年(1982年)生まれ。高校卒業後に会社員となり10年間激務の後、29歳で出会ったのが靴磨きという職業。出張のみの靴磨き職人としてスタートし、3年後に現在の店をオープン。
出張の靴磨き職人をしていた3年間で2万足を超える靴を磨いたのだとか。
石見さんにプロの靴磨きを見せてもらいました。
最初に 馬毛のブラシ で丁寧に汚れを落とし、表面に残る古い油や蝋などを取り除いたあとクリームを塗っていきます。
次に使うのが 豚毛のブラシ。コシがあって硬い豚毛はクリームを均一に伸ばして靴を輝かせることができます。
最後に使うのは ヤギのブラシ。ワックスを少しの水を含ませたヤギのブラシで靴全体に行き渡らせて完成です。
一足にかかる時間は40分から1時間。つま先はまるで鏡のようにピカピカです。
石見さんにとって靴ブラシとは「魂」みたいな感じ。レーサーが乗る車で記録が変わるのと同じように石見さんは自分の愛用のブラシでないと自分の磨き方ができないと語ります。
100点を出すための相棒。
気になるお値段は
短靴 その場磨き:4,400円、3〜6日後渡し:3,520円、1週間後渡し:3,080円
東京店は2021年3月30日で閉店されています。
名前 | THE WAY THINGS GO(ザ ウェイ シングス ゴー) |
住所 | 大阪府大阪市中央区淡路町2-5-8 船場ビルディング415 |
電話 | 06-6203-0551 |
WEB | https://www.twtgshoeshine.com/ |
営業時間 | 月火木金土:12:00〜19:00 |
定休日 | 水曜・日曜 |
江戸屋の靴ブラシ。
寺澤一久さん / 寺沢ブラシ製作所 / 手植え靴ブラシ【東京都 亀戸】
東京・亀戸、下町の住宅街にあるオーダーメイドのブラシの専門店 寺沢ブラシ製作所(てらさわブラシせいさくしょ)。店主の 寺澤一久(てらさわ かずひさ)さんが手植えで作っています。
毛の種類や長さ、持ち手の大きさ・形・色など使う人の注文に応じて製作。小判型や角形などブラシの型を選び、毛の種類も馬毛・豚毛・ヤギ毛から選んで好きなブラシをオーダーできます。
寺沢さんが作るブラシの毛は全て手植え。先代の父から受け継いだ手植えブラシの技法です。
持ち手に穴を開けるのも手作業。表は大きく、裏は小さく穴を開けます。大きい穴から二つ折りにした毛の束を入れて裏から留めると毛が抜けにくくなります。
小さな穴からステンレスの針金を通し、指で毛の束をつまんで針金で引っ掛け引っ張って留めます。
最後に毛先を揃えて完成。
ブラシの毛先が木の板から自然に生えてきたような美しさです。
名前 | 寺沢ブラシ製作所(てらさわブラシせいさくしょ) |
住所 | 東京都江東区亀戸9-35-21 |
電話 | 03-3684-6938 |
WEB | https://www.terasawa-brush.com/ |
エピローグ
刷毛(はけ)も見つかり障子の張り替えも無事に完了。
次は靴磨き?下駄はどう磨こう?とちょっと困った草刈さんでした。
U-NEXT でNHKの動画配信サービス NHKオンデマンド を視聴可能。虎に翼・らんまん・なつぞら などの朝ドラや 光る君へ・鎌倉殿の13人・真田丸 などの大河ドラマ、探偵ロマンス・正直不動産 などの名作ドラマ、ファミリーヒストリー「草刈正雄」を一気見できます。U-NEXTは初回31日間無料トライアル。NHKオンデマンド は別料金ですが、もらえる600ポイントで購入できます。PR
音楽 BGM
ジャズの名曲が流れる美の壺。番組BGMファンもいらっしゃるのではないでしょうか。
オープニング曲と番組内挿入曲をまとめましたので参考にどうぞ。リンク先で試聴できます。
オープニングテーマ
オープニングテーマ は Art Blakey And The Messengers(アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ)の名曲「Moanin’」。ジャズドラマー アート・ブレイキーが1958年に発表した同名のアルバムに収録されています。作曲はピアニストの Bobby Timmons(ボビー・ティモンズ)。
番組内 楽曲
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