NHK「美の壺（びのつぼ）」は普段使いの器から家具、着物、料理、建築に至るまで、衣食住、人の暮らしを彩ってきた美のアイテムを解説してくれる番組。紹介されたものは何？場所はどこ？出演は誰？どこで買える？と興味津々。
そんな気になる「美の壺・美術の鑑賞マニュアル」を詳しく調べてみました。最後に番組内の音楽もまとめてあります。
美の壺「京友禅」File 408
出演は俳優の 草刈正雄（くさかりまさお）さん、ナレーション（語り）は女優の 木村多江（きむらたえ）さんです。
最新エピソード 美の壺 File 621「平安の美」 もどうぞ併せてご覧下さい。
BSプレミアム（2023年11月30日まで。2023年12月1日から NHK BS(BS101チャンネル) へ移動）
初回放送：2017年4月14日(金)19:30～20:00
再放送 ：2017年4月21日(金)06:00〜、2018年4月6日(金)19:30～
2018年4月13日(金)12:00～
BS4K（2023年12月1日から BSプレミアム4K へ名称変更）
再放送 ：2019年4月4日(木)19:00〜、2019年4月11日(木)09:00〜
Eテレ
再放送 ：2020年3月22日(日)23:00～、2020年3月26日(木)00:00～
2021年1月2日(土)05:30～
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美の壺 京友禅 File 408 内容
▽華やかながら優しく控えめな“はんなり”を表現する、手描き友禅の驚きの技。“絵画のよう”とも評される、その極意とは！？
▽1000枚もの型紙を駆使した、豪華京友禅は圧巻！
▽模様全てを金や銀で仕上げる金彩加工。華やかなだけではない、金銀がもたらす独特の効果が光る！
▽祇園の舞妓に密着。1年の修行を終えてデビューする当日、初めて袖を通す特別な京友禅とは！？
プロローグ
押し入れの片付けをしている草刈さん。「フランス人は10着しか服を持たないっていうしね」と着ない服を処分しようとしています。すると、衣装ケースの中から美しい京友禅の着物が出てきました。
美の壺 一、ぼかしでみせる京のみやび
ひとつめのツボは ぼかしでみせる京のみやび。
友禅染の歴史と京友禅の技法
紹介されていたのは京都市下京区に残る町屋。襖に貼られているのは着物で友禅染が誕生する以前に京都で作られたもの。
当時は金の装飾や刺繍による柄が中心。豪華な装飾が最高級品の証として持て囃されていました。
1683年に贅沢を禁止して倹約を推し進める「奢侈禁止令（しゃしきんしれい）」が出され、刺繍や金の装飾は使えなくなしました。
そこで京都の絵師 宮崎友禅斎（みやざきゆうぜんさい）が染めだけで豪華に見せる 友禅染（ゆうぜんぞめ）を編み出しました。
こうして江戸時代中頃に京都で生まれた友禅染は華やかな色で緻密な柄を染め上げる伝統の技。
数ある技法の中で有名なのが 糸目友禅（いとめゆうぜん）。糊で模様の輪郭線を描き、色が滲み出したり隣の色と混ざったりするのを防ぐやり方。輪郭線が出来たら中を染めていきます。
最後に糊を洗い流すと、輪郭が糸目のように浮かびます。
友禅染が各地に広がっていく中で京都で独自に進化したのが 京友禅（きょうゆうぜん）。染め以外にも、絞り、金の装飾、刺繍 など様々な技法を使い華やかな世界を作りあげます。
服部有樹子さん / 服部和子きもの学院【京都市 中京区】
美しい京友禅の着物を着て登場されたのは 服部和子きもの学院（はっとりかずこきものがくいん）副院長の 服部有樹子（はっとりゆきこ）さん。服部和子きもの学院は1964年に日本ではじめて開講した着付け教室。服部和子さんの長女 有樹子さんは呉服商社京都丸紅に勤務しているときに京都きものの女王に選ばれた事が転機となり、着付けの世界へ。
NHK「趣味Do楽 京都で磨く ゆかた美人」にも講師として出演されたり、映画などの着物コーディネートを担当されています。京阪電車「おけいはん」の着物コーディネートも服部有樹子さんの仕事。
兄は心理占星術研究家の 鏡リュウジ（かがみりゅうじ 本名：服部彰浩）さん。
京友禅ははんなりとした色使いがたくさん使われていて、染めの技法だけでもたくさんある上に金の装飾や刺繍を施されている。全体のバランスを考えながら出来上がっている「調和の美」が魅力だと語っていました。
| 名前 | 服部和子きもの学院（はっとりかずこきものがくいん） |
| 住所 | 京都府京都市中京区柳馬場通御池下ル柳八幡町75 LS京都ビル4F |
| WEB | https://kimonomuseum.com/ |
千總 / 京友禅の老舗【京都市 中京区】
1555年、室町時代に創業した着物の老舗 千總（ちそう）。僧侶の法衣や公家の装束を納める御装束師として開業し、明治時代に主軸を友禅染めに移します。古典を基にしながらも常に新しいデザインを提案し、技術開発にも力を注いできました。
資料室を見せてくれたのは着物制作プロデューサー 森輝昭（もりてるあき）さん。NHK「Core Kyoto 京友禅」などメディアにも出演されています。
千總には8人のインハウスデザイナーがいて、古くから伝わる京友禅の文様を独自に収集して今の着物作りに活かしています。
古典柄が着物の図柄として一番合うデザイン、それを参考にしてどう書き換えるかが重要だと語る森さん。古典の文様を使いながらも全体の配置などは時代に合わせてアレンジしています。
紹介されていたのは流水紋が全体にあしらわれた手描き友禅の訪問着。流水紋の上に花や木々がリズミカルに配されています。楓の葉はぼかしの技法でグラデーションになっています。
模様に様々な表情を与えるのが ぼかし の技術。
はっきりさせたいときには花びらの外側を濃くしてぼかすと輪郭が強調されて小さい模様でもくっきりと。
内側が濃くなるようにぼかすとふんわりとした表情に。大きな模様でも柔らかな印象になります。
| 名前 | 千總（ちそう） |
| 住所 | 京都府京都市中京区三条通烏丸西入御倉町80番地 |
| WEB | http://www.chiso.co.jp/ |
| 営業時間 | 木〜月：11:00〜18:00 |
| 定休日 | 火曜・水曜・年末年始 |
千總（ちそう）謹製 最高級の京友禅 訪問着。
小糸染芸 / 摺り友禅【京都市 山科区】
明治時代にできた技法 擦り友禅（すりゆうぜん）は型紙による友禅染め。
もみの木の一枚板でできた友禅板に白生地を張り、型紙を切り抜き、鹿毛の刷毛で染料を刷り込む昔ながらの染色技法。色ごとに型紙を変えて染料を擦り込みます。
使用するのは重ねた和紙に彫刻刀で模様を彫った 伊勢型紙（いせかたがみ）。
小糸染芸（こいとせんげい）の伝統工芸士 小糸太郎（こいとたろう）さん。明治元年（1868年）創業、山科を拠点に営む老舗染屋の5代目です。
摺り友禅 は糸目友禅のような糊の防波堤が無いため、刷毛に含ませる染料や液量の加減で色味が決まります。糸目友禅と比べて柔らかい印象が特徴。
紹介されていた牡丹の柄の反物、花弁や葉は柔らかな表情。
ぼかしにも型紙ならではの特徴があります。刷毛で染料を重ねていくため柔らかいグラデーション。
1000枚の型紙を使ったという京友禅の着物には江戸時代の京都の情景が緻密に描かれています。祇園のお茶屋遊びの様子は着物の柄まで描かれていて、まるで絵巻物のようです。細い輪郭線も型紙で染められています。
| 名前 | 小糸染芸（こいとせんげい） |
| 住所 | 京都府京都市山科区西野山射庭ノ上町145 |
| WEB | http://www.koito-kimono.com/ |
小糸染芸（こいとせんげい）の京友禅 小紋。
美の壺 二、金がうみだす立体感
ふたつめのツボは 金がうみだす立体感。
富宏染工 / 染匠【京都市 中京区】
京友禅の訪問着、金彩加工（きんさいかこう）による風合いで華やかでありながらも上品で柔らか。
明治時代後期になると江戸時代に禁止された金の装飾が復活、京友禅の代表的な技法に加わりました。
糊を擦り込み砂粉と呼ばれる金粉や金箔をかけます。金を入れると模様の見え方は大きく変わります。
富宏染工（とみひろせんこう）の手描き染匠 藤井寛（ふじいひろし）さんは1935年に下絵師の長男として生まれ、1972年に自らの工房設立。京友禅を60年に渡り手がけてきました。藤井寛さんの作品は皇室に納品されているほど。
番組放送時は藤井寛さんが代表取締役社長でしたが2020年8月25日に代表取締役社長後任に娘の 藤井友子（ふじいともこ）さんが就任されています。経営は友子さんに任せられましたが、藤井寛さんが制作を続けていらっしゃるようです。
染匠とは意匠の考案から染めの仕上げまで、15前後に分かれた京手描友禅の工程を統括する、プロデューサーの役割のこと。藤井寛さんは金彩加工の職人さんに金彩を施す箇所を注文します。
金彩加工した箇所が重厚感が増し絵柄に立体感が出てきます。
| 名前 | 富宏染工 株式会社（とみひろせんこう かぶしきがいしゃ）/ RITOFU |
| 住所 | 京都府京都市中京区蛸薬師新町西入不動町175-9 |
| WEB | https://tomihiro-yuzen.jp/ |
富宏染工の藤井寛（ふじいひろし）さんの 訪問着。
光映工芸 / 金彩友禅【京都市 中京区】
金彩加工 だけで模様を描く工房 光映工芸（こうえいこうげい）。模様に糊を塗り、金粉や着色した銀粉を撒いて描きます。
羽を広げたクジャクの柄の振袖はまるで絵画のよう。すべて金粉と銀粉で描かれています。
代表取締役会長で金彩友禅作家の 和田光正（わだみつまさ）さんは1962年に工房を創業。桃山時代から江戸時代初期には優れた技法があった金彩加工ですが、江戸後期の金彩が禁止された期間に技も廃れていて、昭和になっても重要な技法とは見られていなかったそうです。
和田光正さんは独立後に独自で技術開発に努め、ドライクリーニングにも耐える品質、色も150色まで増やすことに成功。
「金箔は着色や自然の色もあるがその中から出てくる光を操りたい」と語る和田さんの作品は「光のオーケストラ・金彩友禅」と呼ばれています。
着物一面を覆い尽くすのは京都の名所。金と銀だけで描かれています。眩しいほどに輝いていました。
気になるお値段は 28,000,000円（税別）。
| 名前 | 金彩友禅 光映工芸（こうえいこうげい） |
| 住所 | 京都府京都市中京区西ノ京伯楽町24 |
| WEB | http://www.wada-mitsumasa.com/ |
光映工芸の和田光正さん作の金彩友禅 訪問着。
美の壺 三、京友禅が花街を彩る
最後のツボは 京友禅が花街（かがい）を彩る（いろどる）。
松尾久枝さん+まめ章さん / 舞妓さんの着物【京都市 東山区】
京都最大の花街 祇園甲部（ぎおんこうぶ）の置屋 多麻（たま）の女将 松尾久枝（まつおひさえ）さん。1937年京都に生まれの松尾久枝さんは1951年に舞妓デビュー、1953年に芸妓となり一流芸妓として名を馳せました。1972年に芸妓を辞め祇園でお茶屋バーをオープン。1987年からは舞妓さん・芸妓さんを抱える置屋も経営しています。
多麻の女将さんはじめ舞妓さんたちは 美の壺 File 525「祇園の舞妓」、美の壺 スペシャル「着物」の回にも出演されていました。
2017年2月、松尾久枝さんが用意していたのは舞妓が 店出し（みせだし）の日に着る 京友禅の黒紋付。おめでたいとされる貝合わせの文様、金の刺繍や絞りなど京友禅の技の数々が施されています。
仕込み（しこみ）と言われる1年間の修行期間を終えて舞妓デビューすることを店出しと呼び、3日間は紋付を着るしきたり。15人ほどの舞妓さんがこの紋付でデビューしたそうです。
この日舞妓になるのは はるかちゃん改め まめ章（まめあき）さん、15歳。1年前に千葉県からやってきた まめ章さん。同じ置屋のお姉さんの店出しを見て「いつかうちも黒紋付着て花見小路歩きたい」と願っていました。
舞妓になれてとても嬉しそうな まめ章さんですが、2021年1月時点ではすでに引退されています。
まめ章さんは店出しの朝、家族に見守られて女将さんにご挨拶。男衆（おとこし）と呼ばれる着付けの男性と一緒にお茶屋や舞の師匠などに挨拶をして回ります。
帯は西陣織の だらりの帯。春と秋には異なる帯を締めます。
4月と5月、9月と10月は京友禅の染め帯。季節にあった柄の帯を締めるのが和装の粋。
春になると祇園の街に飾られる提灯をモチーフにした帯も。斬新な柄です。
| 名前 | お茶屋バー・多麻（たま） |
| 住所 | 京都府京都市東山区祇園町南側570 |
| 営業時間 | 月〜土：18:00〜24:00（一見さんお断り。入店には紹介者が必要） |
| 定休日 | 日曜 |
エピローグ
京友禅が入っていた衣装箱からは草刈さんが子供の頃に描いたおばあちゃんの絵が出てきました。おばあちゃんの宝箱だったのです。
京友禅の着物はおじいちゃんがおばあちゃんにプレゼントしたもの。芝居を観に連れて行ってくれたときに来ていたことも思い出されてきました。おじいちゃんがおばあちゃんに書いた素敵な手紙も出てきて感動。
僕もいますぐ妻に気持ちを伝えようと「正雄、今日、言うぜ」。最後はダジャレ？
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音楽 BGM
ジャズの名曲が流れる美の壺。番組BGMファンもいらっしゃるのではないでしょうか。
オープニング曲と番組内挿入曲をまとめましたので参考にどうぞ。リンク先で試聴できます。
オープニングテーマ
オープニングテーマ は Art Blakey And The Messengers（アート・ブレイキー＆ザ・ジャズ・メッセンジャーズ）の名曲「Moanin’」。ジャズドラマー アート・ブレイキーが1958年に発表した同名のアルバムに収録されています。作曲はピアニストの Bobby Timmons（ボビー・ティモンズ）。
番組内 楽曲
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