NHK「美の壺(びのつぼ)」は普段使いの器から家具、着物、料理、建築に至るまで、衣食住、人の暮らしを彩ってきた美のアイテムを解説してくれる番組。紹介されたものは何?場所はどこ?出演は誰?どこで買える?と興味津々。
そんな気になる「美の壺・美術の鑑賞マニュアル」を詳しく調べてみました。最後に番組内の音楽もまとめてあります。
美の壺「金沢の手仕事」File 615
出演は俳優の 草刈正雄(くさかり まさお)さん、ナレーション(語り)は俳優の 木村多江(きむら たえ)さんです。
最新エピソード 美の壺 File 616「菊」 もどうぞ併せてご覧下さい。
NHK BS(BS101チャンネル)
初回放送:2024年9月17日(火)17:30~18:00
再放送 :2024年9月24日(火)10:25~
BSプレミアム4K
初回放送:2024年9月11日(水)19:30~20:00
再放送 :2023年9月18日(水)08:00~、2024年9月21日(土)06:45〜
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美の壺 金沢の手仕事 File 615 内容
▽厚さ1万分の1ミリ!金箔(ぱく)の秘密は、半年かけて作る専用の紙にあり!
▽金箔(ぱく)5万枚!日本有数の量を誇る本願寺金沢別院の本堂。さまざまな輝きを組み合わせて作る黄金の世界
▽金沢伝統の着物「加賀友禅」。加賀五彩を基調とした表現豊かな色と、写実的な柄が生み出す優美な世界!
▽金沢で独自に発展した「水引」。工房で代々受け継がれてきた華麗な職人技!
プロローグ
石川県の金沢に旅行に行くと荷造り中の草刈さん。
楽しみなのは日本海の海の幸。後はどんなのあったっけ?
美の壺 一、金箔(きんぱく):荘厳な輝き放つ
ひとつめのツボは 金箔(きんぱく):荘厳な輝き放つ。
縁付金箔(えんづけきんぱく)/ ユネスコ無形文化遺産
日本の建築美術工芸などに欠かせない 金箔(きんぱく)。
金を1万分の1mmまで薄くしたもので、約99%ほどが金沢で作られています。
400年以上前から行われている金箔の製造技術は紙に乗せた時に縁ができることから 縁付金箔(えんづけきんぱく)と呼ばれます。
縁付金箔を含む「伝統建築工匠の技 木造建築を受け継ぐための伝統技術」は2020年12月にユネスコ無形文化遺産に登録されました。
高橋祐大さん / 本願寺金沢別院 / 黄金の本堂【石川県 金沢市】
金沢市 にある浄土真宗本願寺派(西本願寺)の別院 本願寺金沢別院(ほんがんじかなざわべついん、通称・西別院)の本堂には一面金箔が施されています。
その数5万枚。日本有数の量を誇ります。解説してくれたのは 高橋祐大 さん。
ご本尊の 阿弥陀如来(あみだにょらい)のいる 浄土(じょうど)の世界は光り輝いていると言われています。
その浄土の光の世界を表すために金箔を施しているのです。
一面の金箔貼りですが、よく見ると場所によって輝きが異なっています。
下地に和紙を施した壁の金箔は少し落ち着いた雰囲気。
下地は漆を施した柱の金箔は大変艶やかな輝きを放っています。
下地によって全く趣が変わるところも素晴らしいし、1枚1枚仏様を敬う気持ちが込められていることが感じられると高橋さん。
名前 | 本願寺金沢別院(ほんがんじかなざわべついん) |
住所 | 石川県金沢市笠市町2-47 |
電話 | 076-221-0429 |
WEB | https://www.incl.ne.jp/honganji/ |
営業時間 | 6:00〜18:00 |
定休日 | なし |
青嶋繁夫さん / 箔座株式会社 箔打職人 / 1万分の1mmの厚さの金箔【石川県 金沢市】
金沢市 の金箔工房 箔座株式会社(はくざ かぶしきがいしゃ)は昭和初期に高岡源治が創業した高岡金箔店がはじまり。現在は 高岡製箔株式会社(たかおかせいはく かぶしきがいしゃ)と 箔座株式会社(はくざ かぶしきがいしゃ)として箔の製造から、箔を使った製品の製造販売などを手がけています。
紹介された本願寺派金沢別院の修復の金箔も箔座が製造したもの。西本願寺や清水寺の修復にも箔座の金箔が使用されています。
箔打職人の 青嶋繁夫(あおしま しげお)さんは金箔作り約50年。製造工程を見せてもらいました。
純金にわずかな銀と銅を混ぜたものを1万分の1mmの厚さまで伸ばし、一定の大きさに切り揃えます。
それを1枚1枚、雁皮紙(がんぴし)という紙に挟んでいきます。
実はこの紙が金箔作りの要。雁皮紙(がんぴし)は雁皮(がんぴ)という植物と土から作られる和紙ですが、そのままでは使いません。
金箔を打つ作業の前に数ヶ月かけて職人自らが 紙仕込み(かみしこみ)」と呼ばれる作業を行います。
稲藁のアクと柿渋を混ぜた液に1枚1枚浸し、絞り、乾かし、さらに打ち込んでなじませていきます。
この紙が金箔の出来を左右するとも言われます。
およそ半年、毛羽立ちがなくなり、金箔がくっつかない丈夫な紙が出来上がります。
紙に挟む金は、およそ1600枚。箔が平均になるように、少しずつ薄していきます。
打ち続けると紙が凹むため、何回か紙を替えて打ち込んでいきます。
金箔の完成です。厚さはわずか1万分の1mm。
仕上げは静電気で金箔がつかないよう鹿革を張った台に乗せ、竹で切り揃えます。
湿潤な金沢の気候と職人技の手仕事が作り上げる輝きです。
箔座本店ではガラス越しに箔打職人さんの仕事を見学できます。
ワークショップなども開催されているようです。
名前 | 箔座株式会社(はくざ かぶしきがいしゃ) |
住所 | 本社・本店:石川県金沢市森山1-30-4 |
電話 | 本店:076-251-8941 |
楽天店 | https://www.rakuten.co.jp/hakuza/ |
WEB | https://www.hakuza.co.jp/ |
営業時間 | 本店:9:30~17:30 |
定休日 | なし |
箔座の断切金箔は1枚から変えます。金箔トッピングのパウンドケーキもあり。
美の壺 二、加賀友禅:絵画をまとう
ふたつめのツボは 加賀友禅:絵画をまとう。
奥田雅子さん / 奥田染色株式会社 加賀友禅作家 / 加賀五彩で手描きする優美な柄【石川県 金沢市】
金沢芸妓(かなざわげいこ)がまとっているのは 加賀友禅(かがゆうぜん)。
500年前の梅染(うめぞめ)に始まったとされる金沢伝統の着物です。
江戸時代に京都の扇絵師・宮崎友禅斎(みやざきゆうぜんさい)によってその技法が確立されました。
写実的な柄が特徴です。
紹介されていたのは明治38年(1905年)創業の 奥田染色株式会社(おくだせんしょく かぶしきがいしゃ)。加賀友禅作家の 奥田雅子(おくだ まさこ)さん。
奥田雅子さんは金沢学院大学美術工芸学部美術工芸科卒業後に同大学院美術工芸研究科に進んだのち、奥田染色株式会社代表取締役社長で伝統工芸士の 奥田勝将 さんに師事。雅子さんは勝将さんの姪にあたります。
絵の力だけで表現できるのは加賀友禅の素晴らしいところだと語る奥田さん。
日々植物をスケッチして着物の柄に生かしています。
単なる模写ではありません。自分の中で噛み砕き、どういう風に配置したら勢いのある流れになるかを考えているのだとか。
加賀友禅のもう一つの特徴は色。
加賀五彩(かがごさい)と呼ばれる 黄土、えんじ、藍、草色、古代紫、の5色を基調に描かれます。
奥田さんはこの5色をベースに様々な色をつくります。
職人の間では「色を殺す」と表現するそうですが、派手な色でも少し色を殺すことで落ち着いた色、馴染む色に調整するそうです。
表現方法にも特徴があります。
りんごの花を描く場合、まず花びら全体を白で彩色。
そして外側をぼかす 外ぼかし(そとぼかし)と呼ばれる技法を使い、小さな花でもくっきりと見せます。
奥田さんが2年の歳月をかけ描き上げた里山の風景の作品を見せてくれました。
精緻に描かれた木々や山がまるで一幅の絵画のよう。
華やかで多彩なのに、どこか落ち着いていて、自分の思いも形にできる。さらにそれを着てくださる方がいて成り立つのはすごく素敵だという奥田さんでした。
奥田染色が運営する 茜やアーカイブギャラリー(あかねやアーカイブギャラリー)では型染めや手描き友禅の体験ができます。やってみたいですね!
名前 | 奥田染色株式会社(おくだせんしょく かぶしきがいしゃ) |
住所 | 石川県金沢市専光寺町ニ181-3 |
電話 | 076-267-3711 |
WEB | https://akaneya-web.com/ |
名前 | 茜やアーカイブギャラリー(あかねやアーカイブギャラリー) |
住所 | 石川県金沢市里見町53-1 |
電話 | 076-223-8555 |
WEB | https://akaneya-web.com/ |
営業時間 | 土日祝:10:00〜17:00 |
定休日 | 月曜〜金曜 |
奥田染色、奥田雅子さんの叔父の奥田勝将さん作の加賀友禅。
馬場華幸さん / 懐華樓 女将 / 受け継がれる加賀友禅の着物【石川県 金沢市】
紹介されていたのは金沢代表する ひがし茶屋街(ひがしちゃやがい)。江戸時代から続く金沢の茶屋文化を残す 懐華樓(かいかろう)は最も古いお茶屋の1つ。
建物は1820年に建てられたという金沢市指定保存建物。女将は 馬場華幸(ばば はなこ)さん。
馬場さんは 美の壺 File 583「障子」の回にも出演されていました。
朱塗の階段を上ると2階には大きな広間。今も1日1組限定でお座敷をあげています。
金沢に残るお茶屋建築の中では1番規模が大きいと言われています。
馬場さんが愛用している加賀友禅を見せてもらいました。
涼しげな夏着物。夏の茶花がたくさん描かれています。とても上品で着ると背筋が伸びるといいます。
お仕事で着ることが多いため、お客様のお座敷のしつらえにピタッとはまるものを選ばれているそうです。
馬場さんの最も特別な1枚は20歳の時に両親が誂えてくれた 振り袖(ふりそで)。
1番最初に着た加賀友禅で思い出の着物。
そして今年の成人式で娘の 華(はな)さんがこの加賀友禅の振袖を受け継ぎました。
着た姿を見て感動したそうです。馬場さんのお母様も涙していたのだとか。
馬場さんにとってはじめての加賀友禅が娘にとっても初めての加賀友禅。
受け継いでいくのは本当に嬉しかったと語ります。
伝統の技とともに着る人もまたつないでいく加賀友禅です。
懐華樓の1階はカフェとショップ、2階はお座敷。お座敷は要予約ですが10:00~17:00は2階も見学可能。
建物見学料は
大人:750円、小・中・高生:500円
見学なしでカフェのみの利用もできます。
名前 | 懐華樓(かいかろう) |
住所 | 石川県金沢市東山1-14-8 |
電話 | 076-253-0591 |
WEB | https://www.kaikaro.jp/ |
営業時間 | 10:00~17:00 夜は要予約:17:00~21:00 |
定休日 | 水曜 |
美の壺 三、水引:思いを結ぶ
最後のツボは 水引:思いを結ぶ。
水引の種類と意味
祝儀袋などに用いられる 水引(みずひき)。
水引には紐を引いて結ぶことで、人と人を結びつける、またほどきにくいことから未開封であるという意味であるとも言います。
和紙をこより状にして水のりで引くことからその名がついたと言われます。
結び方によって心を表現するという役割もあります。
基本となる あわじ結び(あわじむすび)(あわび結び)。
簡単にはほどけないことから、「末長く続くように」との意味があります。結婚祝いなどに使われます。
あわじ結びを応用した より返し(よりかえし)。
より返す波に例えて「善いことが幾重にも重なりますように」という意味を持っています。
結びきり(むすびきり)は「今後同じことが起こらないように」という願いを込めています。
何度もあるべきではない贈り物、結婚祝い・お見舞い・弔事などに使われます。
津田宏さん+津田六佑さん+津田さゆみさん / 加賀水引 津田【石川県 金沢市】
金沢市の水引工房 加賀水引 津田(かがみずひき つだ)は大正6年(1917年創業)の老舗。
水引は金沢で独自の発展を遂げました。一般的に平面だった水引を立体的な造形にしたのです。
解説と実演は 四代目 津田宏(つだ ひろし)さん、五代目 津田六佑(つだ ろくすけ)さん、津田さゆみ(つだ さゆみ)さん。
鶴と亀。亀はあわじ結びを応用して作られています。
考えたのは工房の初代・津田左右吉(つだ そうきち)。
平面だった水引を立体的にできないかと思考錯誤を重ねて作り上げ、図面に起こしました。
水引というのは気持ちを相手に伝えることが1番重要だと五代目の津田六佑さん。
相手に伝えたい相手を喜ばせたいという気持ちの延長に自然と立体的な水引きがある。立体的な方が喜んでもらえるのではという気持ちがある。本来の水引の本質に合っていると語ります。
水引細工はどのように作られるのでしょうか?鶴の水引作りを実演してくれたのは四代目の津田宏さん。
初代の図案をもとに考え出されました。
まず6本の水引きを揃えて結んでいき、立体的な造形は膝を使って作ります。
1つ作るのに数時間。見事な鶴の完成です。
手で作るものだから唯一無二の価値がある。自分で心を込めれば人に伝わるかなと思いながら制作しています。
そもそも立体の水引細工は 折形(おりがた)と呼ばれる和紙を折って品物を包むことを立体にすることが始まりだったといいます。
用途や大きさの違う複雑な折型を折り畳むのは難しい作業。初代・津田左右吉は、角に折り目を付けず、ふっくらと包んで水引で結ぶというアイデアを思いつきました。
実演してくれたのは津田さゆみさん。
厚さ、幅、高さ、小さい、大きい。それによって100通りもの包み方があります。
包み、文字、水引き細工が全て合わさって、贈る人の思いが形になりました。
職人の手仕事が人から人へ思いを伝えます。
名前 | 加賀水引 津田(かがみずひき つだ) |
住所 | 石川県金沢市野町1-1-36 |
電話 | 076-214-6363 |
Yahoo!店 | https://store.shopping.yahoo.co.jp/yuinou-mizuhiki/ |
WEB | https://mizuhiki.jp/ |
営業時間 | 月~金曜:10:00~18:00、土曜:10:00~12:00 |
定休日 | 日曜・祝日 |
エピローグ
ガイドブックで金沢を予習した草刈さん。ちゃんと傘も持っていきます。
「弁当忘れても傘忘れるな」と言われるほど北陸の天気は変わりやすいのだとか。
予習はバッチリ。いざ加賀百万国へ!
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音楽 BGM
ジャズの名曲が流れる美の壺。番組BGMファンもいらっしゃるのではないでしょうか。
オープニング曲と番組内挿入曲をまとめましたので参考にどうぞ。リンク先で試聴できます。
オープニングテーマ
オープニングテーマ は Art Blakey And The Messengers(アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ)の名曲「Moanin’」。ジャズドラマー アート・ブレイキーが1958年に発表した同名のアルバムに収録されています。作曲はピアニストの Bobby Timmons(ボビー・ティモンズ)。
番組内 楽曲
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