NHK「美の壺(びのつぼ)」は普段使いの器から家具、着物、料理、建築に至るまで、衣食住、人の暮らしを彩ってきた美のアイテムを解説してくれる番組。紹介されたものは何?場所はどこ?出演は誰?どこで買える?と興味津々。
そんな気になる「美の壺・美術の鑑賞マニュアル」を詳しく調べてみました。最後に番組内の音楽もまとめてあります。
美の壺「日本の心を映す 松」File 659
出演は俳優の 草刈正雄(くさかり まさお)さん、ナレーション(語り)は俳優の 木村多江(きむら たえ)さんです。
最新エピソード 美の壺 File 661「のれん」 もどうぞ併せてご覧下さい。
X(旧 twitter)(@kininarutips)でも新作・再放送の放送日にお知らせしています。
NHK BS(BS101チャンネル)
初回放送:2026年5月12日(火)19:30~20:00
再放送 :2026年5月22日(金)12:00~、2026年5月23日(土)07:30〜
BSプレミアム4K
初回放送:2026年5月6日(水)19:30~20:00
再放送 :2026年5月13日(水)08:00~、2026年5月16日(土)06:45〜
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美の壺 静寂の銀世界 雪 File 624 内容
▽日本三景のひとつ「松島」。国内外で注目を集める写真家が、唯一無二の絶景に迫る!
▽松が主役の名園・栗林公園。1400本もの松が織りなす圧巻の美と受け継がれる庭師の技
▽近世水墨画の至高とも称される国宝「松林図屏風」。謎に包まれた名品が語りかけるものとは?
▽歌川広重の浮世絵に松が多い理由をひもとく
▽花によって日本の肖像を表す花人・川瀬敏郎さん。大徳寺孤篷庵にて、松の系譜を多様にいける
プロローグ
盆栽の松に神が降りると信じて祈祷する草刈さん。
神にちょっと聞きたいことがあるそうですが…
美の壺 一、絶景:悠久が形づくる立ち姿
ひとつめのツボは 絶景:悠久が形づくる立ち姿。
小関一成さん / 写真家 / 松島の絶景【宮城県 松島】
宮城県 の 松島(まつしま)は日本三景の一つと称される東北屈指の名勝。
松島湾には約260もの島々が浮かび、神秘的な絶景が広がります。

この日、松島を訪れたのは、国内外で高い評価を得ている写真家の 小関一成(こせき かずあき)さん。
小関さんは1977年山形県生まれ。写真館コセキ を営む父・小関利明さんの影響で幼少期より写真に親しみ、現在は父の写真館を継ぎ人物撮影を続けながら、東北の自然をテーマに活動しています。
現在の松島は観光地として人気ですが、1000年以上に渡り仏教の聖地として極楽浄土を願う人々が参拝に訪れる場所だった、と小関さん。
大小の島々で風雪にさらされながらも緑をたたえてきた松。海との調和が唯一無二の景観を生み出しています。
小関さんのお気に入りは、松島湾の南東に位置する 奥松島(おくまつしま)。
やって来たのは岬です。
岩の上に生えている松。過酷な環境な環境の中、しっかりと根を張り生きている松に心を動かされます。
松と岩、浄土のような松島の風景は江戸時代に松尾芭蕉が訪れた頃と大きく変わらないように見えます。
実際には岩は波で削られ、松はゆっくりと成長しながら時には朽ちて、世代交代を繰り返しながらこの景観も今も絶えず変化を続けている。その長い時間の中で大小さまざまな島と松が関係を結びながら育まれてきたもの、それが松島の美しさだと思う、と語る小関さんでした。
| 名前 | 松島(まつしま) |
| 住所 | 宮城県宮城郡松島町松島 |
| 名前 | 小関一成(こせき かずあき) |
| WEB | https://kazuakikoseki.com/ |
| 名前 | 写真館コセキ |
| 住所 | 山形県山形市若宮4-4-22 |
| 電話 | 023-647-0118 |
| WEB | https://ps-koseki.com/pg47.html |
| 営業時間 | 水〜月:9:00〜18:00 |
| 定休日 | 火曜 |
梶田嘉宣さん+森川茂仁さん / 栗林公園 / 庭師の松の手入れ【宮城県 松島】
香川県高松市 の 栗林公園(りつりんこうえん)は 松 が主役の庭園。
16世紀後半、地元の豪族によって造営が始まり、およそ300年前、高松藩五代目藩主・松平頼恭(まつだいら よりたか)の時代に完成しました。
園内に植えられた松は1,400本にも及びます。
解説してくれたのは造園課長の 梶田嘉宣 さんと庭師の 森川茂仁 さん。
松は常緑で緑を常にたたえているため繁栄や長寿を表すものとされていました。大名はお家繁栄を願い松を植えたそうです。
中でもひときわ風格を放つのが 根上り五葉松(ねあがりごようまつ)。
黒松の株に徳川十一代将軍・家斉(いえなり)から譲られた盆栽の五葉松を接ぎ木したと伝わります。
鶴亀松(つるかめまつ)は色を模した石組みの上に、松の巨木が鶴のように枝を広げています。
園内の松の9割が 黒松(くろまつ)。
大名は、力強い黒松を植えることで権力を誇示し、不老不死の象徴に家の永続への願いを込めたといわれます。
この庭園では15人の庭師が一年を通して松の手入れを行っています。
園内の松のほとんどが樹齢300年ほど。その美観は代々の庭師によって受け継がれてきました。
松は頂芽優勢(ちょうがゆうせい)。最も上にある「頂芽」の成長が、下の方にある「側芽(わき芽)」よりも優先されます。
その頂芽優勢を止めて、側芽を成長させて、2年先、3年先の樹形を計算しながら剪定する作業。
庭師の経験を積んでも古い松の形を維持するのは思うようにいきませんが、やり甲斐のある仕事っだと語る森川さん。
庭師たちが守り続けてきた至高の造形。悠久の時が刻まれた松の姿です。
| 名前 | 栗林公園(りつりんこうえん) |
| 住所 | 香川県高松市栗林町1-20-16 |
| 電話 | 087-833-7411 |
| WEB | https://ritsuringarden.com/ |
| 営業時間 | 5:30〜18:30 |
| 定休日 | 不定休 |
美の壺 二、絵画:いにしえの思い 時を越えて
ふたつめのツボは 絵画:いにしえの思い 時を越えて。
松嶋雅人さん / 東京国立博物館 副館長 / 日本絵画の松【東京都 台東区】
日本絵画 でも 松 は重要なモチーフの1つ。
解説してくれたのは 東京国立博物館(とうきょうこくりつはくぶつかん)副館長の 松嶋雅人(まつしま まさと)さん。
狩野孝信「賢聖障子絵」
京都国立博物館(きょうとこくりつはくぶつかん)にある 狩野孝信「賢聖障子絵(けんじょうのそうじえ)」は松をモチーフにした日本画の原点ともいえる作品。
御所の中でも最も格式が高い紫宸殿(ししんでん)の玉座の後ろに飾られていました。
中央に描かれているのは、獅子と狛犬、そして1対の松。
日本の絵画は中国の絵画にならって描かれていました。常緑樹である松は中国でも好んで描かれていたモチーフ。
長寿や繁栄の象徴であり、人物の徳を象徴する事物として使われていました。
それを日本の王朝貴族がならって日本の絵画に使っていたのです。
天皇の最も重要な場所に松が現れる。永遠に続く天皇の力を象徴する、そういう機能があったと思う、と松嶋さん。
| 名前 | 京都国立博物館(きょうとこくりつはくぶつかん) |
| 住所 | 京都府京都市東山区茶屋町527 |
| 電話 | 075-525-2473 |
| WEB | https://www.kyohaku.go.jp/ |
| 営業時間 | 火水木土日:9:00~17:30、金:9:00~20:00 |
| 定休日 | 月曜 |
「浜松図屏風」
松のモチーフは、大和絵において重要なテーマとなっていきます。
中でも中世に盛んに描かれたのが、松を中心に浜辺の風景を描いた「浜松図」。
室町時代に描かれた「浜松図屏風(はままつずびょうぶ)」(東京国立博物館蔵)。
画面右端には、春風に揺れる柳の木。海辺には萩や芒すすきなどの秋の草花。
いちばん左端には雪のかかった槇の木。
四季の移ろいが多くの松とともに描かれています。
浜辺で人々が安寧に暮らしている。戦争もなく飢えもなく日々安らかに暮らしている。それを寿いでいる。
そのための大きな役割として松の木が現れると一層絵画空間が寿ぐ、と松嶋さん。
| 名前 | 東京国立博物館(とうきょうこくりつはくぶつかん) |
| 住所 | 東京都台東区上野公園13-9 |
| 電話 | 050-5541-8600 |
| WEB | https://www.tnm.jp/ |
| 営業時間 | 火〜日:9:30~17:00 |
| 定休日 | 月曜 |
長谷川等伯「松林図屏風」
安土桃山時代に描かれた 長谷川等伯(はせがわとうはく)「松林図屏風(しょうりんずびょうぶ)」(国宝、東京国立博物館蔵)は水墨画の傑作と称えられています。美の壺 File 558「水墨画」でも紹介されました。
墨の濃淡を巧みに操り、霞に浮かぶ松の姿を描いたといわれます。
鎌倉時代に中国から禅宗がもたらされると、松は水墨画でも描かれるようになります。
大久保純一さん / 美術史家 / 歌川広重の松【東京都 台東区】
東京都・上野公園、寛永寺(かんえいじ)のお堂・清水観音堂(きよみずかんのんどう)にある 月の松(つきのまつ)は江戸時代から人々に親しまれてきました。
解説してくれたのは美術史家・国立歴史民俗博物館 名誉教授の 大久保純一(おおくぼ じゅんいち)さん。
月の松は江戸時代末期の浮世絵によく描かれてる松。
歌川広重(うたがわ ひろしげ)の最晩年のシリーズ「名所江戸百景(めいしょえどひゃっけい)」の中に描かれていることでも有名です。

歌川広重「名所江戸百景 上野山内月のまつ」
かつて徳川家の菩提寺、寛永寺(かんえいじ)の大伽藍(だいがらん)の一部だった清水観音堂の松を描いた歌川広重の名所絵。
松の枝を通して不忍池の情景をのぞく外連味(けれんみ)あふれる作品です。
今も2代目の松の枝から不忍池の風景が垣間見えます。

歌川広重「名所江戸百景 千束の池袈裟懸松(せんぞくのいけ けさがけまつ)」
歌川広重「名所江戸百景 八景坂鎧掛松(はっけいざかよろいのかけまつ)」
広重の「名所江戸百景」は全部で118枚。その中で特定の名前が付いた松は6図描かれています。
他の木にはない多さなので、やはり当時の人々が松に対する特別な思いを抱いていた証しではないかと大久保さん。

歌川広重「名所江戸百景 浅草川首尾の松御厩河岸(あさくさがわしゅびのまつおんまやがし)」
隅田川のほとりに立つシンボルツリー、「首尾の松」を描いた一枚。
船で吉原へと通う人々がその夜の首尾を語り合ったことが、その名の由来だといいます。
歌川広重「名所江戸百景 日黒元不二(めぐろもとふじ)」
江戸は百万都市で市街地は密集地帯だったため、大きな松が名所として残ることはなかったといいます。
例えば隅田川べりや上野の山など、郊外や行楽地にある特徴的な形をした松が名所として取り上げられる。
周りの風景と松が組み合わされることにより風景としての魅力が高まるのでは、と大久保さん。
人々のまなざしを集めたその風情。
松は江戸の暮らしに趣を添えていたのです。
| 名前 | 寛永寺(かんえいじ) |
| 住所 | 東京都台東区上野公園1-29 |
| 電話 | 03-3821-4440 |
| WEB | https://kaneiji.jp/information3sp.html |
| 営業時間 | 9:00〜17:00 |
| 定休日 | なし |
美の壺 三、いけばな:聖の一枝 野の一景
最後のツボは いけばな:聖の一枝 野の一景。
川瀬敏郎さん / 花人 / いけばなの松【京都市 北区】
京都大徳寺 の塔頭、孤篷庵(こほうあん)。
江戸時代初期に活躍した茶人で作庭家の 小堀遠州(こぼり えんしゅう)によって建立された寺です。

この日、ここで松をいけるのは、花によって日本の肖像を表現し続けてきた花人の 川瀬敏郎(かわせ としろう)さん。
川瀬さんは1948年京都府出身。京都の老舗花屋・花市商店に生まれ、10歳から池坊で華道を学び岡田幸三に師事。日本大学芸術学部を卒業後、フランスのパリ大学に留学し演劇や映画を研究。
帰国後は特定の流派の所属せず、「いけばな」の原型である「たてはな」と「なげいれ」を探究し独自の創作活動を続けています。
30代の頃から白洲正子さんを師と仰いで信仰を深めたり、「ネスカフェゴールドブレンド」のCMに出演したことでも有名。美の壺 File 494「信楽焼」の回にも出演されました。
川瀬さんは、いけばなにおいて松は特別な存在であるといいます。
日本人は身近なところで松を日々見つづけてきている。そのことで松の神性を見てきました。
そして松の樹皮はものすごく魅力的で、枝や幹もうねりがあったり曲がったり、拝みたくなるような姿もあります。
花で身を立ててる人間にとってみて、松は一つの依代(よりしろ)みたいなところもあり、千変万化の姿を表すことができるもの。
檀那間 / 立花(りっか)
まず川瀬さんが孤篷庵の 檀那間(だんなのま)にいけたのは、常磐の松の緑を中心に梅と椿が取り合わされた 立花(りっか)という形式のいけばな。
室町時代の黒漆塗り平卓(ひらじょく)に古銅(こどう)の器。
立花は、古来「天地自然の気をうつすもの」と伝えられ、大自然にも勝る世界を表しました。
大きく枝を広げる松。咲き誇る紅白の花々。
清らかな竹の緑と、白梅が描かれた襖絵を背景に早春の気配が匂いたちます。
立花というのは皆さんに祝福を与えていく華やかな花。
松は特に祝祭の花、だと川瀬さん。
忘筌 / たてはな
小堀遠州が自ら設計したと伝わる茶室 忘筌(ぼうせん)。
ここで川瀬さんが取り組むのは たてはな。
室町時代に 神の依代と仏にささげる花が神仏習合することで生まれた、いけばなの祖型といわれるもの。
要となるのも松です。
枯淡な趣をもつ茶室にいけられた、たてはな。
雪焼けした姫五葉松(ひめごようまつ)。
枝が枯れて芯だけが残った杜松の神(としょうのじん)。
うっすら苔のついた躑躅(つつじ)と唐橘(からたちばな)。
中国明時代の香盆(こうぼん)に、室町時代の古銅の器。幽玄で冷えやせた深い精神性を感じさせます。
直入軒 / なげいれ
直入軒(じきにゅうけん)と呼ばれる書院を飾る松。千利休が大成した自由な花、なげいれ によっていけられました。
窯の中でくっついた常滑の三筋壺(さんきんこ)という壺。
岩の塊を思わせる壺にいけられたのは、地をはうように岩場に生えていたという荒々しい松。
足元に寄り添うのは、厳しい冬の大地を割って春を告げる若草色の蕗の薹(ふきのとう)。
山雲床 / なげいれ
最後にいけるのは、山雲床(さんうんじょう)と呼ばれる小間の茶室です。
川瀬さんは締めくくりに聖なる花の姿を見せてくれるといいます。
小堀遠州の筆による軸「無窮(むきゅう)」。
常磐木である松のように無限・永遠を意味する言葉です。
天に伸びる松に、白い雪割一華(ゆきわりいちげ)の花を添えた、なげいれ。
「曼荼羅華(まんだらげ)」と呼ばれる花入。
曼荼羅華は天界から降る白い花を指します。
荘厳な松に 曼荼羅華の化身のような雪割一華が寄り添う日本の花の美の極みです。
多様な松をいけること。
それは、自然そのものを写し取ることだと川瀬さんは考えます。
日本の花は、華麗な「立花」のようなメインディッシュな花から、原野の野趣のような世界をずっと巡っているような「たてはな」。
ひとつの山を眺めてもいろんなものを楽しめる。
その意味で松は深い、と語っていました。
| 名前 | 川瀬敏郎(かわせ としろう) |
| WEB | http://kawase-toshiro.net/ |
| 名前 | 孤篷庵(こほうあん) |
| 住所 | 京都府京都市北区紫野大徳寺町66 |
川瀬敏郎さんの著書。
エピローグ
松を飾りつけて祈り続けていると松の精霊が降りてきてくれました。
草刈さんが聞きたかったのは朝から妻がカンカンな理由。あ、忘れていたけど今日は結婚記念日でした。
記念日のお祝いのうなぎは奮発して「松」にしますかね。
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音楽 BGM
ジャズの名曲が流れる美の壺。番組BGMファンもいらっしゃるのではないでしょうか。
オープニング曲と番組内挿入曲をまとめましたので参考にどうぞ。リンク先で試聴できます。
オープニングテーマ
オープニングテーマ は Art Blakey And The Messengers(アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ)の名曲「Moanin’」。ジャズドラマー アート・ブレイキーが1958年に発表した同名のアルバムに収録されています。作曲はピアニストの Bobby Timmons(ボビー・ティモンズ)。
番組内 楽曲
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