NHK「美の壺(びのつぼ)」は普段使いの器から家具、着物、料理、建築に至るまで、衣食住、人の暮らしを彩ってきた美のアイテムを解説してくれる番組。紹介されたものは何?場所はどこ?出演は誰?どこで買える?と興味津々。
そんな気になる「美の壺・美術の鑑賞マニュアル」を詳しく調べてみました。最後に番組内の音楽もまとめてあります。
美の壺「大地の祝福 信楽焼」File 494
出演は俳優の 草刈正雄(くさかり まさお)さん、ナレーション(語り)は女優の 木村多江(きむら たえ)さんです。
最新エピソード 美の壺 File 616「菊」 もどうぞ併せてご覧下さい。
BSプレミアム(2023年11月30日まで。2023年12月1日から NHK BS(BS101チャンネル) へ移動)
初回放送:2020年1月10日(金)19:30~20:00
再放送 :2022年4月30日(土)06:45〜、2022年5月6日(金)12:30~
BS4K(2023年12月1日から BSプレミアム4K へ名称変更)
再放送 :2020年2月27日(木)19:00〜、2020年3月5日(木)09:00〜
2020年12月4日(金)19:30~、2020年12月7日(月)16:00~
2020年12月11日(金)09:00〜
Eテレ
再放送 :2020年3月8日(日)23:00〜、2020年3月12日(木)11:00〜
2021年12月5日(日)23:00〜、2021年12月9日(木)11:00〜
2022年12月4日(日)23:00〜、2022年12月7日(水)05:30〜
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美の壺 大地の祝福 信楽焼 File 494 内容
▽朝ドラ「スカーレット」でおなじみの信楽焼
▽「たぬき」が守衛のバイトで草刈家に!?
▽「冷え枯れた美」と茶人が絶賛した壺や甕(かめ)。江戸時代前期まで焼締(やきしめ)の技法で作られた古信楽(こしがらき)は信楽焼の真骨頂。見どころ満載!
▽花人の川瀬敏郎さんが古信楽に花をいける
▽陶芸家を魅了する変幻自在な信楽の土の秘密
▽身も心も温まる信楽焼のお風呂も登場!?
▽知られざる信楽焼の世界!
プロローグ
草刈家に訪れた信楽焼のたぬき。守衛のバイトに来たというのですが…
NHKオンデマンドで信楽を舞台にした朝ドラ「スカーレット」が視聴できます。
美の壺 一、古信楽:心で観るから、美しい
ひとつめのツボは 古信楽:心で観るから、美しい。
大槻倫子さん / 滋賀県立陶芸の森 学芸員 / 古信楽【滋賀県 甲賀市 信楽町】
古くから焼き物の産地として栄えた 滋賀県甲賀市信楽町。
この地で 信楽焼(しがらきやき)が生まれたのは13世紀頃と言われています。
江戸時代前期までに作られ釉薬を使っていない信楽焼を 古信楽(こしがらき)と呼びます。
解説してくれたのは 滋賀県立陶芸の森(しがけんりつとうげいのもり)専門学芸員 大槻倫子(おおつき のりこ)さん。
一般庶民の生活道具を作る窯として始まった信楽焼。実用的な用途で庶民の生活を支えていた器です。
蹲(うずくまる)という名の小さな壺は人が膝を抱えしゃがみ込んだような愛嬌ある姿が特徴。
元々は種壺や油壺などの生活雑器として使われていましたが、花入として茶人らに愛好されました。
種もみを保存したり水を入れる用途などに使われた古信楽。
この素朴な焼き物に美を見いだしたのが室町時代の茶人たち。飾り気のない姿を「冷え枯れた美」とたたえ茶道具として重宝しました。
古信楽の最大の魅力と言われるのは 火色(ひいろ)と呼ばれるほんのり赤い肌。
釉薬を使わず高温で焼く 焼締め(やきしめ)と呼ばれる技法によって、土に含まれる鉄分が火を思わせる色を生み出します。
豪快な 自然釉(しぜんゆう)も魅力の一つ。土と薪の灰に含まれる成分が反応しガラス質となって溶け出しました。
白いプツプツとした模様が付いている器もあります。
白い粒は 蟹の目(かにのめ)と呼ばれ、その名の通り蟹の目玉のようなかわいらしさが特徴です。
土に含まれる鉱物が溶け自然の装飾として現れました。
大槻さんによると信楽焼のような焼締めのものは「心で観る」とよく言われるそうです。
心でじっと観て自分に訴えてくるような美しさ。そこが信楽焼の面白さなんじゃないかと語ります。
飾り気のない「すっぴん」が信楽焼の魅力です。
名前 | 滋賀県立陶芸の森(しがけんりつとうげいのもり) |
住所 | 滋賀県甲賀市信楽町勅旨2188-7 |
電話 | 0748-83-0909 |
WEB | https://www.sccp.jp/ |
営業時間 | 火〜日:9:30〜17:00 |
定休日 | 月曜・年末年始 |
大槻倫子さんの著書。
川瀬敏郎さん / 花人 / 古信楽の花器
古信楽の花器 に 花を生けてくれたのは花人(かじん)の 川瀬敏郎(かわせ としろう)さん。
川瀬さんは1948年京都府出身。京都の老舗花屋・花市商店に生まれ、10歳から池坊で華道を学び岡田幸三に師事。日本大学芸術学部を卒業後、フランスのパリ大学に留学し演劇や映画を研究。
帰国後は特定の流派の所属せず、「いけばな」の原型である「たてはな」と「なげいれ」を探究し独自の創作活動を続けています。
30代の頃から白洲正子さんを師と仰いで信仰を深めたり、「ネスカフェゴールドブレンド」のCMに出演したことでも有名です。
これまで数々の古信楽に花を生けてきましたという川瀬さん。
古信楽の壺は風土そのものが持つ祝福みたいなものを持っている、と器が自然と密接につながっていることを感じている様子。
まず向き合うのは室町時代の 大壺(おおつぼ)です。
火色そして窯の中で灰がかぶり黒く変化した部分のコントラスト。
冷え枯れた美しさをかもし出す一品です。
生けるのは野山から摘んできた草木。
熟れたざくろに、赤いツタを添えて。
晩秋の気配が壺からあふれ出るかのような作品です。
信楽焼は生活の中で生まれたものなので食べものがよく合うのだそうです。
続いて生けたのは 鬼桶(おにおけ)という器。
大河のような自然釉の流れが冬のしじまにりんとたたずむ寒菊を包み込みます。
壁には「焼経やけぎょう」と呼ばれる掛け軸を。
平安時代のものといわれるお経。
金で装飾した料紙の一部に焼けた跡があります。
その跡と鬼桶の自然釉の流れが見事に調和した作品になりました。
小ぶりな 蹲(うずくまる)は壁掛けで。
命が尽きる寸前のすすきは秋の終わり。椿は冬の訪れ。
季節の移ろいを小さな壺が受け止めます。
同じ蹲も置いて生ければ全く異なる印象に。
安定感のある形がぽつんと残った赤い実の危うさを引き立てます。
蹲が演出するピンと張り詰めた冬の緊張感。
最後に現れたのは力強さがみなぎる 大甕(おおがめ)。
赤い肌を流れる豪快な自然釉。大きく張った肩の迫力。
力強さがみなぎる 大甕(おおがめ)です。
完成した作品は蓮の花の枯れ姿と琵琶湖を思わせるヨシが囲う水辺の風景。
命の終わりの静ひつな空気が漂います。自然のはかなさを包み込む大きな力。その大甕はまさに大地そのものです。
名前 | 川瀬敏郎(かわせ としろう) |
WEB | http://kawase-toshiro.net/ |
川瀬敏郎さんの著書。
美の壺 二、土:土の声を聴け
ふたつめのツボは 土:土の声を聴け。
澤清嗣さん / 積翠窯陶房 陶芸家 / 信楽の土【滋賀県 甲賀市 信楽町】
滋賀県の面積の1/6を占める琵琶湖。三百数十万年前は信楽も湖の一部でした。
この地域は古琵琶湖層と呼ばれ焼き物に適したコシの強い土。
紹介されていたのは信楽の土を愛する陶芸家の一人 澤清嗣(さわ きよつぐ)さん。
澤さんは1948年滋賀県信楽生まれ。高校卒業後に京都府陶工訓練校へ。京都で修行した後、信楽焼の陶芸家 高橋春斎の下で修行。
1981年に独立し、信楽に窯築。精力的に活動し各地で個展を開催しています。
息子の澤克典さんも陶芸家。親子で 積翠窯陶房 にて作陶しています。
信楽の土 の特徴は黒っぽく見える 珪石(けいせき)と、白い粒子状の 長石(ちょうせき)と呼ばれる鉱物が多く含まれていること。
焼くとさまざまな見どころとなって現れる上、これらの鉱物が含まれるとコシのある土になります。
澤さんは作る物に合わせて数種類の土を調合します。
この日澤さんが使うのはひときわ粘りけのある土です。
錆びたのこぎりを使い、口元を大胆に破いた器を形作ります。
1,200度ほどの高温で焼き締めます。5日間続く寝ずの作業。
のこぎりの溝に自然釉が艶めき、迫力ある裂け目が土の持つ力強さを表現しています。
名前 | 積翠窯陶房 |
住所 | 滋賀県甲賀市信楽町長野1372 |
電話 | 0748-82-3051 |
澤清嗣さん作の徳利&ぐいのみセット。
古谷和也さん / 陶芸家 / 信楽の土【滋賀県 甲賀市 信楽町】
陶芸家にさまざまなひらめきを与える 信楽の土。
その土の魅力を独特な方法で引き出しているのは陶芸家 古谷和也(ふるたに かずや)さん。
古谷さんは1976年滋賀県信楽生まれ。父は陶芸家の古谷道生さん。
山口芸術短期大学卒業後、京都府立陶工技術専門校卒業。父・古谷道生さんに師事。精力的に個展を開催しています。
使うのは山から採れたそのままの土・原土(げんど)。
信楽の土は土質が粗く扱いづらいため多くの場合は数種類の土を混ぜますが、古谷さんはあえてこのまま使います。
まずは麺棒で原土を延ばし成形した作品に直接貼り付けていきます。
古谷さんは 黒い原土 や 白い原土 を自在に組み合わせて作品作り。
黒い原土は粒子が粗く野趣あふれる質感が気に入りました。
一方白い原土は火色が美しく出るもの。
個性の異なる土を組み合わせることで
互いの魅力を引き出します。
まるで荒涼とした大地を思わせる土本来の姿。
白と火色。
同じ土を貼った部分でも窯の中の灰のかぶり具合で発色が分かれました。
土の存在感があふれる一品です。
信楽の土自体が複雑な表情をしている、という古谷さん。
原土は採れたばかりのものでしか感じない力強さがあるのが魅力。
陶芸家の尽きない探求心をかきたてる魅惑の土です。
名前 | 古谷和也(ふるたに かずや) |
住所 | 滋賀県甲賀市信楽町神山566 |
電話 | 090-8659-2885 |
WEB | http://furutani-kazuya.com/ |
古谷和也さんの作品。
美の壺 三、変幻自在:たぬき、大物、なんでも来い
最後のツボは 変幻自在:たぬき、大物、なんでも来い。
藤原銕造 / 狸庵 / たぬきの発祥【滋賀県 甲賀市 信楽町】
信楽焼といえば、たぬき。なぜ信楽はたぬきの町となったのでしょう?
きっかけの一人と言われているのが窯元・狸庵(りあん)の初代 藤原銕造(ふじわら てつぞう)。
明治30年代に銕造が たぬき を作り始めたと言われています。銕造は大好きなたぬきの焼き物ばかりを作っていました。
昭和26年(1951年)に信楽を昭和天皇が訪問。銕造たち信楽の陶工は たぬきに日の丸を持たせ沿道に設置して歓迎します。
天皇はこれに大変喜び信楽は「たぬきの町」として一躍有名になったのです。
名前 | 狸庵(りあん) |
住所 | 滋賀県甲賀市信楽町江田957 |
電話 | 0748-82-0214 |
営業時間 | 10:00〜17:00 |
定休日 | 不定休 |
縁起物の信楽焼の狸(たぬき)。
川澄一司さん / 信楽窯業技術試験場 場長 / いろいろな形に化ける土【滋賀県 甲賀市 信楽町】
信楽焼 では 大物(おおもの)と呼ばれる焼き物が盛んに作られました。
中でも全国一の生産量を誇ったのが 火鉢(ひばち)です。
宮内省から用命を受けて作られた 宮方火鉢(みやがたひばち)は数多く生産されました。
戦時中銅製の火鉢が軍に供出され、その代用品が信楽で作られていたのです。
信楽窯業技術試験場 場長の 川澄一司(かわすみ かずし)さんによると、信楽の土はコシが強くてしかも窯の中で変形しにくいのが特徴。
いろいろな形に化ける大変面白い土のため大きな焼き物も小さな焼き物も作ることができるそうです。
名前 | 滋賀県工業技術総合センター信楽窯業技術試験場 |
住所 | 滋賀県甲賀市信楽町勅旨2200-5 |
電話 | 0748-83-8700 |
WEB | https://www.shiga-irc.go.jp/scri/ |
営業時間 | 月〜金:8:30〜17:15 |
定休日 | 土曜・日曜・祝日 |
花器にもビオトープにも。モダンな鉢。
岡本太郎 / 太陽の塔・黒い太陽と信楽焼【大阪府 吹田市】
変幻自在な信楽の土に目をつけたのが芸術家の 岡本太郎(おかもと たろう)。
大阪万博のシンボル「太陽の塔」の背面の「黒い太陽」を信楽の陶器工場で制作しました。
名前 | 太陽の塔(たいようのとう) |
住所 | 大阪府吹田市千里万博公園1-1 |
電話 | 0120-1970-89 |
WEB | https://taiyounotou-expo70.jp/ |
営業時間 | 木〜火:10:00〜17:00(塔内部観覧は要予約) |
定休日 | 水曜・年末年始 |
奥田文悟さん / 文五郎窯 陶芸家 / 信楽焼のお風呂【滋賀県 甲賀市 信楽町】
大物を得意とする陶芸家の 奥田文悟(おくだ ぶんご)さん。
1862年(文久2年)に初代 奥田文五郎(おくだ ぶんごろう)が開いた登り窯 文五郎窯(ぶんごろうがま)。奥田文悟さんは5代目。弟の奥田章さんと共に制作しています。
兄の文悟さんが浴槽・大型プランター・手洗い鉢などの大物を、弟の章さんは食器などの小物陶器を作っています。
奥田さんが大物中の大物 信楽焼のお風呂 の制作を見せてくれました。
使うのは240kgもの粘土。最も重要なのは縁の厚み。
大きな浴槽は3つに分けて作り、つなぎ目をミリ単位で合わせます。
つなぎ目は手で丁寧に延ばしていきます。
窯までの移動は軽トラックで。
釉薬をかけ窯で1週間ほど焼いて完成です。
奥田さんの浴槽は全国各地の旅館やホテルで大勢の人を温めています。
映像が出ていたのは 神奈川県箱根 の ホテルおくゆもと。
直線ではない、線がぶれてるところがふわっとした温かみを感じるのではないかと奥田さん。
人をぽかぽかと優しく包み込む手仕事のぬくもり。
匠の技が生み出す癒やしのひとときです。
名前 | 文五郎窯(ぶんごろうがま)・文五郎倉庫 |
住所 | 滋賀県甲賀市信楽町長野1087 |
電話 | 0748-82-3153 |
WEB | http://www.bungoro.com/ |
営業時間 | ショップ:火〜日:10:00〜18:00 |
定休日 | 月曜・第2第4火曜 |
信楽焼の浴槽もある神奈川県箱根湯本のホテルおくゆもと。
エピローグ
守衛のバイトは必要ないと断っても「子ども14匹が信楽におりましてね」と身の上話を聞かされ、仕方なく働いてもらうことに。
結構お金がかかってしまいましたが、たぬきが来たから草刈さんにも福が来ますかね。
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音楽 BGM
ジャズの名曲が流れる美の壺。番組BGMファンもいらっしゃるのではないでしょうか。
オープニング曲と番組内挿入曲をまとめましたので参考にどうぞ。リンク先で試聴できます。
オープニングテーマ
オープニングテーマ は Art Blakey And The Messengers(アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ)の名曲「Moanin’」。ジャズドラマー アート・ブレイキーが1958年に発表した同名のアルバムに収録されています。作曲はピアニストの Bobby Timmons(ボビー・ティモンズ)。
番組内 楽曲
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