NHK「美の壺(びのつぼ)」は普段使いの器から家具、着物、料理、建築に至るまで、衣食住、人の暮らしを彩ってきた美のアイテムを解説してくれる番組。紹介されたものは何?場所はどこ?出演は誰?どこで買える?と興味津々。
そんな気になる「美の壺・美術の鑑賞マニュアル」を詳しく調べてみました。最後に番組内の音楽もまとめてあります。
美の壺「柔らかな境界 のれん」File 661
出演は俳優の 草刈正雄(くさかり まさお)さん、ナレーション(語り)は俳優の 木村多江(きむら たえ)さんです。
X(旧 twitter)(@kininarutips)でも新作・再放送の放送日にお知らせしています。
NHK BS(BS101チャンネル)
初回放送:2026年5月10日(火)19:30~20:00
再放送 :2026年5月17日(金)12:00~、2026年5月14日(土)07:30〜
BSプレミアム4K
初回放送:2026年5月4日(水)19:30~20:00
再放送 :2026年5月9日(月)13:00~、2026年5月11日(水)08:00~
2026年5月14日(土)06:45〜
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美の壺 2026年度(2026年4月〜2027年3月)バックナンバー はこちらをどうぞ!

美の壺 柔らかな境界 のれん File 661 内容
▽風にそよぐ境界“のれん”現代の暮らしに息づく柔らかな美に注目
▽江戸のにぎわいを再現する手仕事の技
▽日本橋の商業施設を飾る紋章とは
▽和太鼓劇場のロビーを飾る幅20mに及ぶ巨大のれん
▽京都の老舗が守り伝える伝統
▽ろうけつ染めの味わい深いひび模様が世界を魅了
▽アートの島の街並みに溶け込む素朴なデザイン
▽染織家が描き出すのは、島の人々の暮らしや記憶
▽伝統から最先端まで“のれん”の美を堪能します。
プロローグ
美の壺 一、新機軸:くぐりたくなる しかけ
ひとつめのツボは 新機軸:くぐりたくなる しかけ。
中村新さん / 中むら のれんディレクター / コレド室町の暖簾【東京都 日本橋】
東京日本橋。近年 大規模な再開発が行われ、新たな商業施設 コレド室町(コレドむろまち)が生まれました。
コレド室町のモダンなビルのエントランスに意外にも のれんがかかっています。
コレド室町
コレド室町ののれんプロジェクトに参加し、のれんを制作したのは 有限会社 中むら ののれんディレクター 中村新(なかむら しん)さん。
江戸時代のにぎわいを現代でも再現しようとした企画。
江戸の町を描いた絵巻物にはのれんが多く描かれています。
屋号や家紋を染め抜いたのれんが看板のように並び、町の景観をつくっていたのが「のれん」といっても過言ではない、と中村さん。
現代のコレド室町の のれんにも家紋が染め抜かれています。
| 名前 | コレド室町(コレドむろまち)1・2・3・テラス(コレドむろまちテラス) |
| 住所 | 1:東京都中央区日本橋室町2-2-1 2:東京都中央区日本橋室町2-3-1 室町古河三井ビルディング 3:東京都中央区日本橋室町1-5-5 テラス:東京都中央区日本橋室町3-2-1 日本橋室町三井タワー |
| 電話 | 1・2・3:03-3242-0010 テラス:03-3272-4801 |
| WEB | https://mitsui-shopping-park.com/urban/muromachi/ |
| 営業時間 | 月〜金:11:00〜20:00、土日:10:00〜20:00 |
| 定休日 | 不定休 |
波戸場承龍さん / 京源 紋章上絵師 / 家紋のデザイン

コレド室町ののれん をデザインしたのは、京源(きょうげん)紋章上絵師(もんしょううわえし)の 波戸場承龍(はとば しょうりゅう)さん。

紋章上絵師とは、手描きで家紋を描く専門の職人。「分まわし(ぶんまわし)」と呼ばれる竹でできたコンパスで、どんな家紋も自在に描きます。
もともと家紋は家の印。形の中に子孫繁栄、代を繋ぎたいという思いが込められています。
コレド室町ののれん は日本橋が五街道の中心なので、5を絡めてデザインを考えたと言います。
要のところは日本橋の起点。そこを中心に それぞれが街道が走っていくっていう形にしました。
円の中心や半径を微妙に変えながら街道を描いていきます。
東に向かう2本の街道と西に向かう3本の街道がのれんになりました。
コレド室町にはこんなのれんも。
5つの升を重ねて、ますます繁盛。
人人人がのれんをくぐって、入る入る入る。
千客万来ののれんです。
| 名前 | 京源(きょうげん) |
| 住所 | 東京都台東区東上野3-2-4 |
| 電話 | 03-6231-6856 |
| WEB | https://www.kyogen-kamon.com/ |
波戸場承龍さんの著書。
DRUM TAO THEATER KYOTO の暖簾【京都市 南区】
京都市南区、2026年4月9日に開業した和太鼓劇場 DRUM TAO THEATER KYOTO(ドラムタオシアターキョウト)。和太鼓エンターテインメント集団・DRUM TAO(ドラムタオ)の専用劇場です。
こちらのロビーの大のれんも 中村新 さんと 波戸場承龍 さんが手がけています。
1枚の幅が70cm 高さ5m。こうした布が何枚も連なって和太鼓の公演を行う劇場のロビーにかけられます。
原寸のサンプルで検証して、家紋がうまく繋がるか、ゆがみのない模様になるか、細部まで入念に確認。
前代未聞の大きな家紋も波戸場さんの分まわしから生まれました。
太鼓に描かれるのは巴(ともえ)からデザインされた 巴紋(ともえもん)。
波戸場さんの描く巴紋は和太鼓の高鳴りに合わせるかのように次第に大きくすることで高揚感を表しました。
今回新たに取り入れたのがデジタル技術。
分まわしで描くと必要な線しか描きませんが、デジタルで描くと今まで見えなかった補助線が可視化されました。
図形を描くプロセスで現れるたくさんの線。その軌跡が巴紋に不思議な奥行きを与えます。
軌跡も含めた全体像を見たらマンダラみたいに見えて美しく感じたという波戸場さん。
伝統の技とテクソロジーを合体させた令和の時代の新たなのれんが完成しました。
| 名前 | DRUM TAO THEATER KYOTO(ドラムタオシアターキョウト) |
| 住所 | 京都府京都市南区東九条西山王町31 アバンティビル 9階 |
| WEB | https://drum-tao-kyoto.com/ |
| 営業時間 | 第一部:19:00〜、第二部:21:00 |
| 定休日 | 火曜・水曜 |
美の壺 二、継承:守り伝える
ふたつめのツボは 継承:守り伝える。
滋賀千尋さん / 洛陽織物 / 老舗織元の暖簾【京都市 上京区】
京都上京区、天保初年(1804年)創業の西陣の織り元 洛陽織物株式会社(らくようおりもの かぶしきがいしゃ)。
話をしてくれたのは 滋賀千尋(しが ちひろ)さん。
工房は伝統的な京町家造りのたたずまい。のれん を出して一日の仕事が始まります。
現在掛けられている のれんは昭和40年ごろデザインされたも。
上る下るの京都の町、京都を基盤の目に見立てて、洛中の真ん中あたりになる店の場所が染め分けられています。
のれんは最初は茶色のこっくりとした「消し赤」と呼ばれる色でしたが、日が当たりだんだんと変化してきました。
この変化が「味わい」というか、「育てる」感じだと滋賀さん。大事に使わせっています。
のれんをくぐると 店の間(みせのま)と呼ばれる商いの空間。
さらに奥へ続く長い土間 通り庭(とおりにわ)が続きます。
その先にまた 内のれん(うちのれん)と呼ばれるのれんが掛けられていて、空間を仕切りっています。
内のれんの先は台所。店の者のみが使用する空間です。わずか一枚の布が暗黙の立ち入り禁止の役目を果たします。
そしてもう一枚、大切なのれんを見せてくれました。
明治の頃、先祖がかけていたというのれんです。
「のれんを畳む」は 縁起が悪いとされ、畳まずに巻いてしまわれています。
当時の家紋の脇にある「本」の字は本家を表しているそうです。
のれんは店の者にとっては歴史そのもの。代々先祖受け継いできた思いや熱意がのれんにつめられている、と語る滋賀さんでした。
| 名前 | 洛陽織物株式会社(らくようおりもの かぶしきがいしゃ) |
| 住所 | 京都府京都市上京区寺之内通千本東入二丁目新猪熊東町347 |
| 電話 | 075-431-5331 |
| WEB | https://rakuyou.com/kyousinise/ |
| 営業時間 | 月〜金:9:00〜17:30 |
| 定休日 | 土曜・日曜 |
洛陽織物の帯。
上林博之さん / しょうび苑 / ろうけつ染めの暖簾【京都市 西京区】

桂川が流れる 京都市西京区、創業およそ60年のろうけつ染めのれんの工房 しょうび苑(しょうびえん)
制作工程を見せてくれたのは二代目の 上林博之(かんばやし ひろゆき)さん。
高温で溶かした 蝋(ろう)を使って模様を描く ろうけつ染め(ろうけつそめ)。
染めずに白く残したいところにろうを置いていきます。
奈良時代に大陸から伝わった日本最古の染色技術のひとつといわれています。

染めていくと、ろうの細かいひびから染料が入り味わい深い模様が現れます。
ろうけつ染めの一番の魅力は、ひび割れ模様が入るところだと上林さん。
しかし昔はそれが美しいと理解されないこともありました。
父・上林勝美(かんばやし かつみ)さんは、得意先から「ひび割れのないろうけつ染めののれんを持ってこい」と言われて怒ったことありました。
ひびの模様は無用とされたのです。

上林さんはマイナスイメージだったひびをあえてのれんの全面に施します。
ろうでコーティングして固くなったぬのを手でつかみ、無数のひびを入れていきます。
ひび割れが、千変方化の模様に。
同じように見えて同じものは二度とできない、ろうけつ染め。その時々に表情を変える一期一会ののれんです。
上林さんののれんには、自然の移ろいを染め上げたような一枚があります。
飛沫模様を作り出す ろう吹雪(ろうふぶき)という技法。
ろう吹雪で描いた のれんは、海を渡りメキシコへ。
タペストリーのようにメキシコの邸宅のリビングルームを飾っています。
ろうけつ染めののれんを作って、日本の文化を海外に伝えていきたい、と語る上林さん。
のれんの文化は、次の時代へと歩みを進めているようです。
| 名前 | しょうび苑(しょうびえん) |
| 住所 | 京都府京都市西京区山田久田町10-15 |
| 電話 | 0120-832-123 |
| 楽天店 | https://www.rakuten.co.jp/norenya-kyo/ |
| 営業時間 | 月〜金:9:00〜17:00 |
| 定休日 | 土曜・日曜 |
しょうび苑の のれん。オーダーもできます。
美の壺 三、つなぐ:来し方行く末 染め上げて
最後のツボは つなぐ:来し方行く末 染め上げて。
加納容子さん / ひのき草木染織工房 / 直島 のれんプロジェクト【香川県 直島】

瀬戸内海に浮かぶ 香川県・直島(なおしま)。
3年に1回、瀬戸内国際芸術祭が開かれ、美術館やアート作品も多数点在。アートの島として知られています。
始まりは2001年に開催された「のれんプロジェクト」。島の人々の暮らしや記憶をのれんで表現した ひのき草木染織工房(ひのきくさきぞめこうぼう)染織家・加納容子(かのう ようこ)さんの作品です。
当初は期間限定展示の予定でしたが、会期終了後も継続されることとなり現在も続いています。
島の風景に彩りを添えるのれん。食堂にも、美術館にも、民家の軒先にも掛けられています。
町並みに溶げ込んだ のれんが人々の交流を生み、25年も続くことになりました。
加納さんは岡山真庭市在住。美の壺 File 377「暖簾(のれん)」の回にも出演されました。
岡山真庭市の勝山町並み保存地区は「暖簾の町」として知られていて、通りのお店や民家には加納さんの制作したのれんが掛けられています。
加納さんは時々直島を訪れ、のれんと対面します。
石川まり子 さんのお宅の のれんはもう4枚目になるそうです。
加納さんはこの家のシンボルだった松をデザインしました。今は枯れてしまったそうですが、のれんのおかげで永遠に松があるような感じがする、と石川さんも思い出しています。
神社の鳥居の脇に建つ 谷洋子 さんのお宅では、この春新しいデザインののれんがかけられました。
これで3枚目だといいます。
家の前の坂道で秋が深まると赤く色づく南天。
加納さんはそれぞれのお宅の暮らしやのれんへの思いを丁寧に聞き取り、デザインに盛り込んでいます。
南天の赤がすごく映えて可愛くってすごく素敵、と谷さんもお気に入り。
奥山尚久さん / アカイトコーヒー / 大槌島をモチーフにしたのれん
今年初めて のれんを作ったのは AKAITO COFFEE(アカイトコーヒー)の主人 奥山尚久(おくやま なおひさ)さん。
奥山さんは18歳で島を出ましたが、10年前に戻りカフェを始めました。
祖父が建て、家族の思い出が詰まった家を改装して使っています。当時のガラス窓もそのまま残し、庭にはテラス席。
子どもの頃に親から叱られて放り込まれていた納屋はコーヒーの焙煎室になりました。
島のあちこちで のれんがかかっているのをずっといいなと見ていた反面、一度島を出てしまった自分がそういうプロジェクトに参加するのもおこがましいなとか後ろめたい気持ちがあったという奥山さん。
店を始めて10年目の今年に思い切ってのれんを作ることにしました。
初めて作ったのれん。加納さんに「どういうデザインがいい?」と聞かれた時に、真っ先に浮かんだのが港の先に見える大槌島。
高校の時に毎日フェリーに乗って通いながら眺めていた島で、今も毎朝店のオープン前に港まで行って眺めている大切な存在です。
心の島がのれんになりました。
| 名前 | AKAITO COFFEE(アカイトコーヒー) |
| 住所 | 香川県香川郡直島町2269番地 |
| 電話 | 050-3593-7040 |
| WEB | https://akaitocoffee.com/ |
| 営業時間 | 火〜日:7:00〜17:00 |
| 定休日 | 月曜 |
加納容子さん / ひのき草木染織工房 / のれんの制作【岡山県 真庭市】
東京の女子美術短期大学でデザインと染織を学んだ加納さん。
1996年に自家の酒屋を手伝うため、勝山に戻ったのが暖簾作りのきっかけでした。
加納さんの祖父の代までは造り酒屋をしていたという歴史のある酒蔵。加納さんの親の代からは酒の小売店として営業していました。
古い家なのだから暖簾をかけてみようと自ら檜(ひのき)の檜皮(ひわだ)で染めた暖簾を製作。
光を通す麻の生地を檜で染め、真ん中を白く抜きました。
夜11時まで営業していたため、店の明かりが暖簾の白い丸から透けて見えてまるでお月様のよう。
町を歩いている人も酒屋のお月様が光っていたら寄ってきてくれないだろうかと考えました。
2026年時点では酒屋は廃業し、加納さんの工房 ひのき草木染織工房(ひのきくさきぞめこうぼう)の制作拠点とショップ&ギャラリーになっています。
岡山真庭市
染織家
加納容子さん
岡山県真庭市、直島ののれんを作る加納容子さんの染織工房です。
加納さんの のれんは 布を糸で縫い染料が染み込まないように防染して模様を生み出す 絞り染めです。
絞り染めは、細かい表現は難しいとされていますが、加納さんは 独自の手法で絵画のような のれんを作ってきました。
手がけたのれんは1,000枚以上。
大量のデザインファイルが試行錯誤の連続を物語ります。
加納「難しい題材を自分でうっかり伺って描いてしまった。そしたらそれを今度はどうやって作ることができるのかというのが一番難しいところだと思いながら、それが勉強だと思っている
そろばんの珠をデザインしたのれんでは、角をくっきりと出すのが至難の業だったといいます。
加納「三角とか四角とか、特にとんがったものに対してはミリ数をここから細かくするっていうふうなかなりそこには注意してやります
5mmほどの縫い目を角の近くにくるとより細かいピッチに変えていきます。
そうすることで角の表現をくっきりとさせます。
さらに
加納「秘密兵器です。
工房では「ボンタン」と呼んでいる加納さん手作りの道具。ワインのコルクにはぎれをぐるぐる巻きにしたもの。染める柄に合わせて 大小を使い分けます。
これから染める布。
まず 絞った部分を丁寧に整え、ボンタンを入れて巻きつけます。
それにポリ袋をかぶせ 麻糸で縛ります。
最後に 袋の角を切って、そこから水を入れます。
加納「大きいものをすればするほど染める時にどんどん周りが染料に浸食されていって、失敗を何回かして考えてるうちに浸透圧の関係を考えたらいいんじゃないかと思いだして
水袋の中が白く残したい部分。
加納さんは、浸透圧などに着想を得て、水を使えば染料の侵食を防ぐことができると考えました。
見てください。水があるところを境にくっきりと色が分かれました。
加納「絞り上げて染めて開くまで もうすっごく毎回とっても気になって、ドキドキしながら
っていうことが多いので。
出来栄えはどうでしょう
大きな丸、三角、四角の柄。角もくっきり。
糸目に沿って絞り染め特有の波のような凹凸が浮かびます。
加納「風が来てのれんがふわっと動くと本当にようこそおいてくださいましたって言ってるような気がしますよね、のれんって。
布だからいいのかもしれないって思うこともあります
一枚の布に思いを染めて。
| 名前 | |
| 住所 | |
| 電話 | |
| WEB | |
| 営業時間 | |
| 定休日 |
エピローグ
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音楽 BGM
ジャズの名曲が流れる美の壺。番組BGMファンもいらっしゃるのではないでしょうか。
オープニング曲と番組内挿入曲をまとめましたので参考にどうぞ。リンク先で試聴できます。
オープニングテーマ
オープニングテーマ は Art Blakey And The Messengers(アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ)の名曲「Moanin’」。ジャズドラマー アート・ブレイキーが1958年に発表した同名のアルバムに収録されています。作曲はピアニストの Bobby Timmons(ボビー・ティモンズ)。
番組内 楽曲
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