NHK「美の壺(びのつぼ)」は普段使いの器から家具、着物、料理、建築に至るまで、衣食住、人の暮らしを彩ってきた美のアイテムを解説してくれる番組。紹介されたものは何?場所はどこ?出演は誰?どこで買える?と興味津々。
そんな気になる「美の壺・美術の鑑賞マニュアル」を詳しく調べてみました。最後に番組内の音楽もまとめてあります。
美の壺「土に息吹(いぶ)く 備前焼」File 617
出演は俳優の 草刈正雄(くさかり まさお)さん、ナレーション(語り)は俳優の 木村多江(きむら たえ)さん、ゲストは 親戚のヒロユキ役で登場した俳優の 平山浩行(ひらやま ひろゆき)さんです。
最新エピソード 美の壺 File 619「甕(かめ)」 もどうぞ併せてご覧下さい。
NHK BS(BS101チャンネル)
初回放送:2024年10月8日(火)17:30~18:00
再放送 :
BSプレミアム4K
初回放送:2024年10月2日(水)19:30~20:00
再放送 :2024年10月7日(月)13:00~、2024年10月9日(水)08:00~
2024年10月12日(土)06:45〜
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美の壺 土に息吹(いぶ)く 備前焼 File 617 内容
▽京都・備前焼専門ギャラリーの店主が語る、さまざまな「景色」の味わい方
▽陶芸家・星野聖さんが生み出す迫力の「大壺」
▽備前の陶工として初めて人間国宝となった金重陶陽。その流れをくむ陶工・金重周作さん陽作さん兄弟による、伝統の「土づくり」と、暮らしの中の備前焼
▽巨大!備前焼の大鳥居
▽300年以上残る国宝「旧閑谷学校 講堂」のシンボル・備前焼の瓦
▽草刈正雄邸には平山浩行登場!
プロローグ
陶芸を趣味でやっている親戚のヒロユキくんが草刈さんを訪ねてきました。
新作の備前焼をプレゼントしてくれるそうです。
美の壺 一、景色:炎が描く
ひとつめのツボは 景色:炎が描く。
伊藤泰二郎さん / 備前焼ギャラリー青山 店主 / 備前焼の景色【京都市 下京区】
京都市下京区 にある備前焼専門のギャラリー 備前焼ギャラリー青山(びぜんやきギャラリーあおやま)。
店主は 伊藤泰二郎(いとう たいじろう)さん。もとは東京南青山骨董通りで10年以上営業していましたが、2020年に京都五条の町家へ移転しました。
日本建築にはもちろんモダンな空間にも合うという作品が並びます。
陶磁器が見せる様々な表情を「景色(けしき)」と呼びます。素朴と言われる備前焼ですが、様々な景色を見せてくれるといいます。備前焼に見られる景色を解説してもらいました。
胡麻(ごま)
備前焼の中では1番オーソドックスな 胡麻(ごま)の景色。
備前焼は長い期間、薪(まき)を使ってたかれます。
その薪は燃えて灰となり、それが付着して、プチプチプチと本当に胡麻がかかったような表情になります。
特に抹茶茶碗ではお茶を点てたときに、抹茶のグリーンと胡麻の対比、色のコントラストがとても落ち着いた日本的な美しい色合いになります。
緋襷(ひだすき)
襷(たすき)のように朱色の線が付いているものは 緋襷(ひだすき)と呼ばれます。
巻いた稲藁(いなわら)と土の鉄分が反応して赤くなったもの。
窯変(ようへん)
前焼の中では1番人気があるという 窯変(ようへん)という景色。
灰の中に長時間埋もれることにより、独特な青グレーのような不思議な色に変化します。
作家さんたちが意図して狙い器や窯道具をあえてくっつけて焼くことで出した備前焼の景色。
しかし全てが思い通りに行くわけではなく、失敗することもあれば想像を超えた景色が生まれることもあります。
やっぱりそれがワクワクする1つのポイントだと伊藤さん。
名前 | 備前焼ギャラリー青山(びぜんやきギャラリーあおやま) |
住所 | 京都府京都市下京区油小路通五条上ル上金仏町263番地 |
電話 | 075-285-2576 |
WEB | https://bizenpottery.com/ |
営業時間 | 水〜日:11:00〜19:00 |
定休日 | 月曜・火曜 |
星野聖さん / 陶芸家 / 半地下式穴窯で焼く大壺【岡山県 瀬戸内市 牛窓町】
「日本のエーゲ海」とも呼ばれる 岡山県瀬戸内市牛窓町(うしまどちょう)で活動する陶芸家の 星野聖(ほしの せい)さん。
星野さんは昭和34年(1959年)広島県生まれ。1981年に法政大学卒業後、キューピー株式会社に勤務。1996に退職し陶芸の道へ。奇才 森陶岳(もり とうがく)に5年間師事し、独立。
2003年に森陶岳の半地下式登窯(はんちかしきのぼりがま)の形を踏襲した 半地下式穴窯(はんちかしきあながま)が完成。
酒器・茶碗など様々な作品を作っています。
星野さんの作品の中でも評価が高いのは 大壺(おおつぼ)。
こうした作品を焼くために使う 半地下式穴窯 は全長およそ15mのトンネル式。
年に1度、冬におよそ18日間窯だきをします。
正面の窯の口から最大1180度までゆっくり温度を上げていくと、大作が割れるリスクが低くなるのだとか。
1180度になったら4〜5日温度をキープします。
窯で使うのは赤松だけ。1回の窯で25tほども使います。
星野さんに大壺の成形を見せてもらいました。
土台から少しずつ大きくしていきます。1日5cm上げては乾燥させ、およそ2週間かけ成形します。
星野さんは20年もの間、理想の大壺の形を追い求めてきました。
シャープなところはシャープに、膨らむところは膨らんで、全体のプロポーションが美しく見えるような形を目指します。
星野さんの大壺には様々な技が凝縮されているのだとか。
口の部分には 緋襷(ひだすき)。その下に こげ と たまだれ。裾にはわずかに 窯変(ようへん)が現れています。
口のところにかぶせをし、藁をたくさん巻くと赤い 緋襷(ひだすき)が現れます。
たまだれ は薪がどんどん燃えていって、炭になって灰になって壺に付着してじわじわ溶けて流れている。
長時間かけて焼かないと裾までは流れない。
こげ は炭が溶けないで黒く残っている感じ。それがすごく溜まっている迫力のある壺です。
いつも完璧な焼けを目指してはいるけれども、なかなかそうは毎回はうまくいかない。
やっぱり自分がいいと思う焼けが出た時は嬉しいと星野さん。
名前 | 星野聖(ほしの せい) |
住所 | 岡山県瀬戸内市牛窓町千手60-1 |
電話 | 0869-34-5552 |
美の壺 二、土:土に始まり 使うに終わる
ふたつめのツボは 土:土に始まり 使うに終わる。
金重陶陽 / 備前焼の人間国宝【岡山県 備前市 伊部】
備前焼の歴史に欠かせない名工 金重陶陽(かねしげ とうよう)。
備前の陶工として初めて人間国宝となりました。
備前焼が隆盛を極めたのは安土桃山時代。しかし江戸時代に入ると人気が衰えてきます。
明治初期には伊万里など華やかな磁器が人気を博していましたが、金重陶陽 は桃山の古備前の再現を通して備前焼の人気を復活させました。
金重周作さん+金重陽作さん / 陶工房 斿 / 金重陶陽の流れを組む陶芸家兄弟【岡山県 備前市 伊部】
金重陶陽(かねしげ とうよう)が暮らしていた 備前市伊部(いんべ)にある 陶工房 斿(とうこうぼう ゆう)。
工房で現代に合う器を作るのは金重家の流れを組む兄弟、兄・金重周作(かねしげ しゅうさく)さんと弟・金重陽作(かねしげ ようさく)さん。
金重陶陽の弟・金重素山(かねしげ そざん)、素山の息子・金重有邦(かねしげ ゆうほう)、そして有邦の息子が周作さんと陽作さんになります。すなわち陶陽は周作さんと陽作さんの大叔父にあたります。
現代は家庭でも多岐にわたる料理が出てきます。家庭で使う食器を一切手抜きなしで作るというのが陶工房 斿のコンセプト。
まずは土つくりから。
備前焼は主に田んぼの地中深くにある「ひよせ」という土を用います。
それを代々伝わるやり方で細かく砕いていきます。
こだわりは全て手作業で土を作ること。
手作りで準備した土は均等じゃない部分があり、粒子の中にも大小の粒が混ざってるため最終的な表面の表情や土に対する親しみやすさに影響するのだといいます。
砕いた土を少しずつ水に溶かしていくと泥のような状態に。
10日ほど粘土のような状態になるまで乾燥させます。
乾かした土を足で練っていく 土踏み(つちふみ)の作業。
粒子が均一になり、焼いたときに良い質感の土肌が現れるといいます。
この日混ぜる土はおよそ400kg。この作業を4回ほど繰り返します。
練り上がった土は1年ほど寝かせて、コシのある土に。
いよいよ成形。
非常に優れた土で、薄作りの皿でもペラっとへたってしまわないコシの強さがあるそうです。
ろくろだけでなく平たく叩いた四角い皿も作り、バリエーションも豊か。
出来上がったのは現代にマッチした軽やかな備前焼。
四角いたたき皿は一回り小さい四角い皿を乗せて焼くことで色の違いを出しました。
土の質感を存分に味わいます。
乳白色の備前焼は素朴ながら存在感のある仕上がりに。
平たくたたいた丸皿は節を少し上げて歪みは炎に委ねたという1枚です。
料理を盛り付けてた姿が完成。皿だけではやりすぎないようにしようと意識しています。
皿だけで見たら8割位、料理を盛り付けたときに10割や12割になるところを想像しながら作っていると語ります。
工房は暮らしの場でもあります。
周作さんと陽作さんは自分たちの焼き物を日々の暮らしで使っています。
お昼時。昼食をいただきます。
四角のたたき皿にはおにぎりと地元の食材を使ったおかずの盛り合わせ。
鱧(はも)のヒレの唐揚げや古漬けなどが並びます。
こちらのたたき皿には鱧(はも)の棒寿司。
皿の色に夏らしさを感じ、鱧(はも)を合わせました。
一方、丸皿には蕎麦乳白色の地に蕎麦が引き立ちます。
美しく盛り付けられた美味しそうな料理。土地の焼き物と土地の食べ物はすごくリンクしていると語ります。
水と備前は相性が良いということで、お皿も水に濡らしてから使うと表情が豊かになります。
全く乾いた地面にちょっと雨が降ったような、生き物が暮らしていけるような風情佇まいみたいなものが出るそうです。
器の中に土の力を宿す。陶工たちの挑戦は続きます。
名前 | 陶工房 斿(とうこうぼう ゆう) |
住所 | 岡山県備前市伊部 |
WEB | https://www.kaneshige-yuho.com/yu-kobo/ |
美の壺 三、願い:歳月を経て輝く
最後のツボは 願い:歳月を経て輝く。
下澤尚志さん / 由加神社本宮 禰宜 / 備前焼の鳥居【岡山県 倉敷市 児島】
岡山県倉敷市児島(こじま)、厄除け大権現(やくよけだいごんげん)で知られる 由加神社本宮(ゆがじんじゃほんぐう)にあるのは一風変わった備前焼。なんと 備前焼の鳥居 です。
解説してくれたのは禰宜(ねぎ)の 下澤尚志(しもざわ なおし)さん。
備前焼の鳥居が寄進されたのは明治27年。備前焼が衰退していたた時期でした。
寄進された方が備前焼を広く世間に広めようと備前焼の鳥居を作ることを考案。
鳥居の制作を任されたのは備前焼の改良に取り組んでいた窯元の1人 大饗千代松(おおあえ ちよまつ)。
備前焼の衰退した時期に作っていた土管の製法を用いてパーツを作り、つなぎ合わせて鳥居の形になっています。
鳥居のそばの備前焼でできた2頭の獅子は鳥居が作られるより前の江戸時代後期に寄進されたもの。
鳥居のそばで共に見守っています。
100年以上前に作られた鳥居は、参拝に訪れた人々も良い色だなと触ったりて、備前焼独特の強度が素晴らしいと思われたし。由加山のシンボルと捉える方がたくさんいらっしゃるそうです。
この鳥居を見て備前焼に触れる機会をもっと増やしていただければ、と下澤さん。
名前 | 由加神社本宮(ゆがじんじゃほんぐう) |
住所 | 岡山県倉敷市児島由加2852 |
電話 | 086-477-3001 |
WEB | https://yugasan.or.jp/ |
営業時間 | 8:00〜17:00 |
定休日 | なし |
若林一憲さん / 旧閑谷学校顕彰保存会 / 国宝・旧閑谷学校の備前焼の瓦【岡山県 備前市 閑谷】
岡山県備前市閑谷(しずたに)にある 旧閑谷学校(きゅうしずたにがっこう)。江戸時代に岡山藩主の 池田光政(いけだ みつまさ)が地域のリーダーを育てようと作らせた学校で300年以上もの時を刻んでいます。
講堂は国宝に指定されていて、赤い屋根瓦が全て備前焼で作られています。
解説してくれたのは旧閑谷学校顕彰保存会事務局長の 若林一憲 さん。
講堂の備前焼瓦は伊部(いんべ)の陶工が焼け上げたもの。
約25,000枚あため、1つの陶工ではなく、伊部の陶工が大勢で焼け上げたものだと考えられています。
長い歳月、風雨に耐えられるよう屋根に工夫がされています。
瓦の下は板葺き(いたぶき)の構造で、瓦と板の間の湿気をパイプを通して外に出す仕組み。
そのパイプまでも備前焼で作られています。
講堂は当時の子どもたちの学びの場でした。今でも地域の子どもたちが学校行事などで利用しています。
長期間にわたって焼け締められた備前焼だと300年近く持つものがあるそうです。
強度・耐久性のある素材を使った建築。永続的にこの学校を存続させようとする強い意志が当初からあったということが想像できます。
緑豊かな閑谷で備前焼の赤い瓦は映えて非常に印象的。一つ一つ同じ色がなく、色合いも非常に美しいと若林さん。
1枚1枚陶芸家の手によって作られた備前焼の瓦。
時代を超えて子どもたちをそっと見守り続けています。
旧閑谷学校は現在 岡山県青少年教育センター 閑谷学校 として活用されています。
小中学生・高校生の宿泊研修、子ども会、大学の部活動、企業研修など、 広く生涯学習の場として利用されています。
見学もできます。ガイド付き見学は要予約。
名前 | 旧閑谷学校(きゅうしずたにがっこう) |
住所 | 岡山県備前市閑谷740 |
電話 | 0869-67-1436 |
WEB | https://shizutani.jp/ |
営業時間 | 9:00〜17:00 |
定休日 | 12/29-12/31 |
エピローグ
プレゼントされたのはとても素敵な花瓶。そしてもうひとつ徳利も…と取り出そうとしたら、机に忘れてきてしまったようです。ショック。
そこで草刈さんが出してきたのは以前にもらった徳利。気にいって使っていました。
今日はこの徳利で一杯!
U-NEXT でNHKの動画配信サービス NHKオンデマンド を視聴可能。虎に翼・らんまん・なつぞら などの朝ドラや 光る君へ・鎌倉殿の13人・真田丸 などの大河ドラマ、探偵ロマンス・正直不動産 などの名作ドラマ、ファミリーヒストリー「草刈正雄」を一気見できます。U-NEXTは初回31日間無料トライアル。NHKオンデマンド は別料金ですが、もらえる600ポイントで購入できます。PR
音楽 BGM
ジャズの名曲が流れる美の壺。番組BGMファンもいらっしゃるのではないでしょうか。
オープニング曲と番組内挿入曲をまとめましたので参考にどうぞ。リンク先で試聴できます。
オープニングテーマ
オープニングテーマ は Art Blakey And The Messengers(アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ)の名曲「Moanin’」。ジャズドラマー アート・ブレイキーが1958年に発表した同名のアルバムに収録されています。作曲はピアニストの Bobby Timmons(ボビー・ティモンズ)。
番組内 楽曲
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