NHK「美の壺(びのつぼ)」は普段使いの器から家具、着物、料理、建築に至るまで、衣食住、人の暮らしを彩ってきた美のアイテムを解説してくれる番組。紹介されたものは何?場所はどこ?出演は誰?どこで買える?と興味津々。
そんな気になる「美の壺・美術の鑑賞マニュアル」を詳しく調べてみました。最後に番組内の音楽もまとめてあります。
美の壺「いろり」File 436
出演は俳優の 草刈正雄(くさかり まさお)さん、ナレーション(語り)は俳優の 木村多江(きむら たえ)さんです。
最新エピソード 美の壺 File 622「炎」 もどうぞ併せてご覧下さい。
BSプレミアム(2023年11月30日まで。2023年12月1日から NHK BS(BS101チャンネル) へ移動)
初回放送:2018年2月9日(金)19:30~20:00
再放送 :2018年2月16日(金)06:00~、2018年9月11日(火)10:45~
2019年2月8日(金)19:30~、2019年2月15日(金)12:00~
Eテレ
再放送 :2018年2月18日(日)23:00~、2020年2月09日(日)23:00~
2020年2月13日(木)11:00~、2021年1月17日(日)23:00~
2021年1月21日(木)11:00~
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美の壺 いろり File 436 内容
▽白川郷で、合掌造りの家を160年守り続けてきた、いろりとは?
▽落語家・林家たい平さんの、スタイリッシュないろり初公開!
▽都心の家が、いろりで大変身!
▽いろりでパリっ!バケットサンドやトーストの朝食…「いろりライフ」を楽しむ家族の1日に密着!
▽いろりに欠かせない魚の形をした「自在鉤(じざいかぎ)」。留め具なしで上下する驚きの仕組みとは?!
▽金沢の旧家で、当主が描く灰アートの美!
プロローグ
おばさんの家に遊びにきた草刈さん。囲炉裏(いろり)のある古い日本家屋です。
子供の頃にいろり の前でごはんを食べたり昔話を聞いたりしたことが思い出されて懐かしくなりました。
おばさんは出かけていて、置き手紙が。
「正雄 ちょっと出かけてくるから薪割り頼みます。野菜も洗っておいてね」
美の壺 一、ぬくもりを伝えて
ひとつめのツボは ぬくもりを伝えて。
旧遠山家民俗館 / 白川郷【岐阜県 大野郡 白川村】
岐阜県北部、日本有数の豪雪地帯にある 白川郷(しらかわごう)。急勾配の屋根を持つ 合掌造り(がっしょうづくり)の建物が大小100棟余り残されています。
とりわけ長い歴史を秘めた一軒 旧遠山家民俗館(きゅう とおやまけ みんぞくかん)は、かつて養蚕業を営む遠山家の大家族が暮らしていた住宅 兼 養蚕場。重要文化財に指定されています。所在地が白川村御母衣のため世界遺産の「白川郷・五箇山の合掌造り集落」には含まれていません。
文政10年(1827年)頃に建てられ、嘉永3年(1850年)頃に改築、現存している建物は約170年前に建てられたものです。現在は衣食住に関する資料が展示公開されています。
広い座敷の一角には客をもてなすための いろり があります。座敷の隣に家族が生活していた部屋があり、そこにも いろり がつくられています。当時は暖をとる手段は いろり だけ。雪深い村に住む人々にとって いろりの火はとても大切だったことでしょう。
いろりの上にあるのが 火棚(ひだな)。地方によってさまざまな呼び方があり、白川郷では 火天(ひあま)と呼ばれています。煙でいぶされて黒光りしています。
白川村教育委員会 松本継太(まつもと けいた)さんは、嘉永3年からいろりの火を絶やさず燃やし続けてきていて、いろりの火のありがたさを特に感じているそうです。
旧遠山家民俗館の いろり は白川村の人の手で守られています。
その一人 新谷円(あらたに まどか)さんが薪をおこすところを見せてくれました。
たきつけには秋のうちに拾っておいた小枝や杉葉を使用。薪によっては火のつきが悪いときもあり、今日はつくかなと心配しながらつけているそうです。うまい具合に火が起こせて安心した様子。
火がおきると暖かい空気が上昇。しかしすぐに天井に昇ってしまっては部屋全体が暖まりません。
そこで力を発揮するのが いろり の上の 火棚。火棚には火の粉が飛び散らないための防火の役目と、暖かい空気を横に拡散させる働きがあります。
この一枚の板が上昇気流を遮って循環させ効率よく部屋を暖めてくれるのです。
1層目でおこされた火の煙は建物の2層3層4層全てに巡っていきます。
煙の通り道として床に作られた隙間を抜けて2層目に上がり、さらに3層目へ。最後に煙は最上階に到達します。
このいろりの煙のもう一つ役割。それは夏場屋根にこもる湿気を取り、かやぶきにつく虫の駆除をすること。冬だけで無く夏も いろり の火を燃やしているのだとか。
旧遠山家民俗館は1年半前に屋根をふき替えたばかりですが、同じ白川郷の合掌造りの 旧中野長次郎家 の屋根はふき替えて20年。煙や煤で真っ黒くコーティングされています。これが茅葺(かやぶき)の耐久性を高めているのだそうです。
旧中野長次郎家は 合掌造り民家園(がっしょうづくり みんかえん)内に移築されていて見学することができます。
名前 | 旧遠山家民俗館(きゅう とおやまけ みんぞくかん) |
住所 | 岐阜県大野郡白川村御母衣125 |
WEB | https://shirakawa-go.gr.jp/ |
営業時間 | 木〜火:10:00~16:00 |
定休日 | 水曜 |
名前 | 合掌造り民家園(がっしょうづくり みんかえん) |
住所 | 岐阜県大野郡白川村荻町2499 |
WEB | https://www.shirakawago-minkaen.jp/ |
営業時間 | 8:40〜17:00 |
定休日 | なし |
美の壺 二、火と寄り添う暮らし
ふたつめのツボは 火と寄り添う暮らし。
林家たい平さん / スタイリッシュな いろり【東京都】
東京都心、落語家 林家たい平(はやしや たいへい)さんのとてもお洒落なご自宅。
モダンな和室にスタイリッシュな いろり。自宅を新築する時に若い頃から憧れていたいろりを作ったそうです。
たい平さんは1964年埼玉県秩父市出身。1987年に武蔵野美術大学造形学部視覚伝達デザイン学科卒業。1988年に林家こん平師匠に入門。1992に二ツ目に昇進、2000年に真打昇進。2004年から「笑点」に出演しています。
武蔵野美術大学出身とあってとてもデザインセンスの良い たい平さん。美の壺 File 559「型染」に登場したときは自身でデザインした手ぬぐいを見せてくれました。妻の 田鹿千華(たじか ちか)さんは元 NHKの契約キャスター。
昔は寄席の楽屋に1年中炭がおきていて、師匠が炭でたばこに火をつけたりしていました。炭があると師匠方の楽屋の会話にも花が咲いているの前座をしているときに感じていたのだとか。
炭火のおこし方は前座の時に覚えたそうです。釣り棒の横木は扇子をモチーフに。
長男は20歳を過ぎ、いろりで魚を焼きながらお酒を飲むのがかけがえのない時間。火を囲むとすごくあったかい話ができると嬉しそう。
しかし2019年に保護猫3兄弟をお迎えしてからは いろりの出番は少なくなっているようです。
いろりの蓋がスライドして閉まる仕組みになってるんですね。スタイリッシュで実用的。
名前 | 林家たい平(はやしや たいへい) |
WEB | http://www.hayashiya-taihei.com/ |
大塚拓司さん / 古民家の いろり【長野県 佐久市】
長野県佐久市、冬は雪はほとんど降らないもののマイナス20度までになるという極寒の地。
大塚工務店(おおつかこうむてん)を経営する 大塚拓司(おおつか たくじ)さんは妻 大塚めぐみ(おおつか めぐみ)さんと娘 水月ちゃんの3人家族。長野県長野市信州新町の築300年の古民家を自らの手で解体し移築しました。
昔から伝統的な建築が大好きだったという大塚さんは神社仏閣の建築の修行をし、家業に戻ってからは新築物件と並行して古民家再生の業務も始めました。
あるとき長野市の信州新町の空き家の大家さんが「あげるよ」と古民家を譲ってくれたことから、佐久市に移築。「古拙堂(こせつどう)」と名付けて工務店のモデルハウス兼自宅としています。施主や友人を招いていろりを囲んだ会を催しています。
大塚さんの朝一番の楽しみは、寝る前に灰をかけておいた炭を取り出し いろりの準備をすること。
灰をかき分けると埋火(うずみび)が息を吹き返し、暖かさが伝わります。
いろりに火が入ると朝食の準備。いろりの端にワタシという金網を置き、小さな炭火を並べます。
今朝は手作りのバゲットサンドを温めるとチーズがとろーり、いろりで沸かしたお湯でコーヒーを淹れます。美味しそう。外食もほとんど行かなくなったそうです。
冬場はいろりのそばに洗濯物を干して。ミカンの皮は乾燥させてお風呂に。桜の薪をくべてナッツとチーズの燻製作り。いろりが大活躍です。
夕方は友人を招いて宴会。
大塚さんは実家の竹林で竹を切って日本酒の器に。灰に刺しておくと竹の香りのお燗ができあがります。いろりを囲んで竹の杯で飲むお酒、風情があります。
いろりの火で焼き鳥やニジマスの塩焼き。おもちもふっくらパリッと焼けました。山の幸をふんだんに使ったきのこ汁。とても贅沢なひとときです。
名前 | 大塚工務店(おおつかこうむてん) |
住所 | [事務所] 長野県佐久市岩村田3847-3 [モデルハウス] 長野県佐久市内山1634-1 |
WEB | https://otsuka-architects.com/ |
営業時間 | 月〜金:8:00〜17:00 |
定休日 | 土曜・日曜・祝 |
美の壺 三、いろりを支える名脇役
最後のツボは いろりを支える名脇役。
細井康司さん / 自在鉤 (じざいかぎ)職人【埼玉県 蓮田市】
埼玉県蓮田市 の 工房 大五郎(だいごろう)代表 木工職人 細井康司(ほそい こうじ)さん。祠(ほこら)、囲炉裏(いろり)、自在鉤 (じざいかぎ)などをつくっています。
鉄瓶や鍋をつるすための道具 自在鉤(じざいかぎ)。自在に上下するので自在鉤という名前。
魚の形が多いのは、水に住む魚で火の用心、火除けの意味があるそうです。
細井さんはひとつひとつ手彫りにこだわっています。鱗の重なりも緻密に表現。
魚自体も一匹一匹個性がありますので、一匹一匹違う形を考えながら作っています、という細井さん。
気になる自在鉤のお値段は ¥50,000〜¥500,000 くらいです。
名前 | 工房 大五郎(だいごろう) |
住所 | 埼玉県蓮田市閏戸2661 |
WEB | http://www.hokora.com/ |
喜多敬次さん / 喜多家 / 旧家の灰模様【石川県 野々市市】
北陸 加賀 の典型的な町家造りの屋敷 喜多家(きたけ)は国の重要文化財に指定されている建物。
江戸時代には油屋を、幕末からは造り酒屋を昭和46年(1971年)まで営んでいました。2013年に11代当主 喜多直次さんが亡くなった後、喜多敬次(きた けいじ)さんが12代当主となりました。
先代が個人所有のまま 喜多記念館(きたきねんかん)として一般公開していたことを受け継ぎ喜多敬次さんも屋敷を個人所有していましたが、自宅が川崎市でということもあり 野々市市(ののいちし)に無償譲渡することが決まっています。
間口は7間半、土間の吹き抜けには美しい梁組み。四季折々の庭をのぞむ広間。文化レベルの高い裕福な商家の佇まい。
喜多家の いろり は玄関の土間のすぐの上がり口 御上の間(おえのま)と呼ばれる部屋にあります。薪ではなく木炭のいろりです。客にお茶を出すために茶釜がかけられていました。料理の煮炊きなど生活に使われる いろりではなく、買い物や商談のお客様をもてなすための いろり。
灰には 灰模様(はいもよう)と呼ばれる模様が描かれています。
波のようでもあり幾何学模様でもあり。枯山水も連想させます。模様が何を意味しているのか、いつから描かれているのか記録は残っておらずわからないまま。喜多さんの母が戦後すぐにお嫁に来た時には灰模様を書く習慣があったため戦前から継承されているのでは、と説明してくれました。
喜多敬次さんは2013年に父親からこの家を受け継ぎ、その時から灰模様も描く事になりました。
灰をふるうところから始まり模様全部描き終わるまでに小一時間かかるなかなか大変な仕事。
灰模様はどこから描くのか、その順序も代々伝えられているそうです。
昔の人は火の神様にお祈りする気持ちを込めて描いていたのではないでしょうか。やってるうちにだんだん火の神様を奉るという気持ちも分かってきたような感じがします、と語る喜多さんでした。
名前 | 喜多記念館(きたきねんかん) |
住所 | 石川県野々市市本町3-8-11 |
WEB | https://www.city.nonoichi.lg.jp/soshiki/9/2614.html |
営業時間 | 9:00〜17:00 |
定休日 | 不定休 |
エピローグ
薪割り、野菜も洗って疲れたのか いろり端でうたた寝してしまった草刈さん。
目が醒めると包丁の音。おばさんが帰ってきているようです。夕飯に何を作ってくれてるのでしょうか。草刈さんさんもお手伝い。
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音楽 BGM
ジャズの名曲が流れる美の壺。番組BGMファンもいらっしゃるのではないでしょうか。
オープニング曲と番組内挿入曲をまとめましたので参考にどうぞ。リンク先で試聴できます。
オープニングテーマ
オープニングテーマ は Art Blakey And The Messengers(アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ)の名曲「Moanin’」。ジャズドラマー アート・ブレイキーが1958年に発表した同名のアルバムに収録されています。作曲はピアニストの Bobby Timmons(ボビー・ティモンズ)。
番組内 楽曲
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