NHK「美の壺(びのつぼ)」は普段使いの器から家具、着物、料理、建築に至るまで、衣食住、人の暮らしを彩ってきた美のアイテムを解説してくれる番組。紹介されたものは何?場所はどこ?出演は誰?どこで買える?と興味津々。
そんな気になる「美の壺・美術の鑑賞マニュアル」を詳しく調べてみました。最後に番組内の音楽もまとめてあります。
美の壺「手のひらのアート 根付」File 534
出演は俳優の 草刈正雄(くさかり まさお)さん、ナレーション(語り)は女優の 木村多江(きむら たえ)さんです。
最新エピソード 美の壺 File 623「鯛(たい)」 もどうぞ併せてご覧下さい。
BSプレミアム(2023年11月30日まで。2023年12月1日から NHK BS(BS101チャンネル) へ移動)
初回放送:2021年4月9日(金)19:30~20:00
再放送 :2021年4月17日(土)06:45〜、2021年4月23日(金)12:30~
2022年3月19日(土)06:45〜、2022年3月25日(金)12:30〜
BS4K(2023年12月1日から BSプレミアム4K へ名称変更)
初回放送:2021年4月9日(金)19:30~20:00
再放送 :2021年4月17日(土)06:45〜、2021年4月23日(金)12:30~
2022年3月19日(土)06:45〜、2022年3月25日(金)12:30〜
BSプレミアム4K
再放送 :2023年12月30日(土)12:30〜
Eテレ
再放送 :2022年6月12日(日)23:00〜、2022年6月15日(水)05:30〜
2024年2月4日(日)23:00〜、2024年2月7日(水)05:30〜
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美の壺 手のひらのアート 根付 File 534 内容
▽思わず握りしめたくなる小さくかわいい「根付」。ポケットのない着物で小物を帯からぶらさげる際の留め具で江戸時代にはおしゃれアイテムとして大流行。そんな「手のひらのアート」を堪能!
▽「根付は大切な相棒」だと語る落語家の古今亭文菊さん。その心は?
▽京都にある日本最大の根付専門美術館をご紹介
▽日本より人気!?外国人が根付を愛する理由とは
▽江戸時代の有名根付師たちの貴重な作品も続々登場!
プロローグ
和服の草刈さん、押し入れで見つけた根付を使おうと選んでいます。
草刈さんそっくりの根付を発見。「僕はこんなのん気な顔?もっとキリッとしてるでしょ」と不満げです。
美の壺 一、装う:江戸の粋を身に着ける
ひとつめのツボは 装う:江戸の粋を身に着ける。
古今亭文菊さん / 落語家 / 愛用の根付
落語家の 古今亭文菊(ここんてい ぶんぎく)さんが愛用の根付を見せてくれました。
古今亭文菊さんは1979年東京都出身。2001年に学習院大学卒業後、2002年に古今亭圓菊師匠に入門。前座名 古今亭菊六で活動後、2012年に真打に昇進し古今亭 文菊 に改名。
文菊さんは普段は懐中時計に根付を付けています。高座へ上がる前は懐中時計を帯の中に入れ、根付を帯の上に乗せるのがいい塩梅。帯の上からお面が覗いて粋ですね。
高座に上がるときも時計と根付はいつも一緒。座布団の右前に置いています。
この日の根付は江戸後期につくられた「面根付(めんねつけ)」江月(こうげつ)作。
文菊さんはたまたま人から贈られたのがきっかけで根付を集め始めました。
人の形をしたものがお好きなのだとか。
「人格とまでは言いませんが、心というか気というか思いというか、何かがこもっているように思う。根付は師匠でありお守りであり友達」と語ります。
根付との出逢いは奇跡でありご縁に感謝する。文菊さんは時を超えて手元にやって来た根付との出会いを特別なことだと考えています。
名前 | 古今亭文菊(ここんていぶんぎく) |
WEB | https://www.bungiku.com/ |
木下宗昭さん / 京都清宗根付館 / 根付専門美術館【京都市 中京区】
紹介されていたのは 京都清宗根付館(きょうとせいしゅう ねつけかん)。江戸時代後期1820年に建てられた武家屋敷 旧神先家住宅を2007年に根付専門美術館としてオープン。 コレクションは江戸から現代のものまで約5,000点、常時400点ほどの根付が展示されています。
館長は 木下宗昭(きのした むねあき)さん。
紹介されていたのは江戸時代後期に作られた根付「龍宮(りゅうぐう)」升雲斎(しょううんさい)作。
龍宮城を取り巻く波や魚。荒々しい海の情景が透かし彫りの手法で表現されています。
ぐるりと広がる海の底の世界、側面には玉手箱を持った浦島太郎が彫られていました。
4面、360度楽しめるのが身につけるアート根付ならではの見どころ。
根付「いないいない」小野里三昧(おのさとざんまい)作。小野里三昧さんは妖怪根付を得意とする現代作家さん。
顔を隠した女性恥ずかしいのかと思いきや、着物の下に隠されていたのは、いないいないばあ。表と裏を通して女性の心の内側がコミカルに伝わってきます。
名前 | 京都清宗根付館(きょうとせいしゅう ねつけかん) |
住所 | 京都府京都市中京区壬生賀陽御所町46-1 |
WEB | https://www.netsukekan.jp/ |
営業時間 | 火〜日:10:00〜17:00 |
定休日 | 月曜・お盆・年末年始 |
美の壺 二、オンリーワン:自分だけの一品を求めて
ふたつめのツボは オンリーワン:自分だけの一品を求めて。
中野将志さん / 根付収集家
根付収集家 中野将志(なかの まさし)さんの根付コレクションを紹介。
中野将志さんは慶應義塾大学卒業後、1995年大手外資系コンサルティング会社 Accenture(アクセンチュア)入社。金融サービス本部統括本部長を務める一方で、休日には美術館巡りや江戸・明治期の根付の収集研究をされています。
中野将志さんのご自宅。レモンティーが描かれた現代アート、と言われてたのは 草間彌生(くさまやよい)の「レモンスカッシュ」のシリーズだと思います。見上げるように飾った根付は江戸時代中期に作られた「麒麟(きりん)」正直(まさなお)京都の作品。
「レモンティーを飲みたいよ」と首を伸ばして見上げる麒麟、というイメージでレイアウト。中野さんが考えた物語に沿ってコレクションを配置して楽しんでいます。
一つ一つの根付が全く異なる作風を持つことに魅力を感じているという中野さん。
好きな根付は動物。実写的なものからデフォルメされてるものまで色々なキャラクターや姿に幅があるのだとか。作者が必死に悩んでどうにか個性を出してこの形にしたんだろうなと思われる根付に愛着を覚えるようです。
幕末から明治時代に活躍した根付師 懐玉斎正次(かいぎょくさいまさつぐ)の「うさぎ」。毛の一本一本が柔らかく繊細に表現され、思わず撫でたくなるような作品。
江戸後期に活躍した 友一(ともかず)の「ふくら雀(ふくらすずめ)」。短い翼につぶらな瞳と小さなくちばし、まるで現代のゆるキャラのようなデフォルメした愛らしさ。
江戸に限らずいろいろな地域にいる武家や農民も、根付は自分の個性を出すアイテムの1つとしてすごく重要だったのではないか。人とは違うものを持つことでお洒落してたのではないか、と中野さん。
江戸のしゃれ心が磨き上げた根付の文化。作者によって千差万別の作風です。
吉田ゆか里さん / 根付専門店 提物屋 SAGEMONOYA / 海外での根付の評価【東京都 新宿区】
明治〜大正期につくられた木の実のようにも見える根付、ぱかりと開くと中には囲碁を打つ2人組が現れました。
このように「からくり根付」と呼ばれる手のひらサイズのおもちゃのように親しまれる根付も次々と登場。遊び心満載です。
明治になり日本人の装いが洋服に変わったことで根付は急速に忘れられていきます。
一方西洋では根付にアートとしての価値が見いだされ、19世紀後半から活発に研究売買が行われ書籍も次々と出版。
現代でも海外での人気は根強く、3,000万円の値が付くこともあるそうです。2011年のロンドン ボナムス社のオークションでは18世紀後半の象牙の根付けが265,240ポンド(約3,180万円)で落札されました。
解説してくださったのは 東京・四谷 の根付専門店 提物屋 SAGEMONOYA(さげものや)社長の 吉田ゆか里(よしだ ゆかり)さん。
海外の方がこの根付に興味を持たれる最大の理由は「触って楽しめること」だと吉田さん。
根付は触っていくうち細工がすり減りまろやかな手触りになっていきます。
これを「なれ」と呼び、「なれ」は持ち主たちがこの作品を愛したという証。「なれ」のある根付は海外のコレクターが求めてやまない特長です。
持ち主が愛情を注ぐとどんどん美しく変化する。世界でたった一つの手のひらの芸術品。育てる喜びも根付の醍醐味です。
名前 | 提物屋 SAGEMONOYA(さげものや) |
住所 | 東京都新宿区四谷4-28-20 パレエテルネルビル704号 |
WEB | https://www.netsuke.com/ |
営業時間 | 水~土:13:30~18:00 |
定休日 | 日曜・月曜・祝日 |
吉田ゆか里さんの著書。
美の壺 三、つくる:江戸から今へ
最後のツボは つくる:江戸から今へ。
道甫さん / 根付師
過去に作られたものだけが根付ではありません。
紹介されていたのは現代の根付師 道甫(どうほ)さん。1988年、広島県出身。大阪芸術大学芸術学部工芸学科金属工芸コースを卒業後、大阪芸術大学大学院 芸術研究科修了。高円宮殿下記念 根付コンペティション などの入選歴多数。
道甫さんは自分の空想の世界を根付で表現しています。
「袋小路(ふくろこうじ)」と言う銘の帯に差して使う 差根付(さしねつけ)の作品。
彫られているのは ねずみ と触手。展覧会の締め切りに追われているときに作ったもの。ねずみに道甫さん自身が、触手に締め切りが投影されています。
独自の発想で現代の根付のあり方を模索する道甫さんが最も重視していることは根付の「丸み」。
根付は身につけるものなので衣服に引っかからないよう角を丸めることも重要。それが根付特有の柔らかい印象を生み出します。
紹介されていたのは「水無月の侘び(みなづきのわび)」という作品。
ミステリアスな雰囲気の作品が多い道甫さん。テーマとしているのは「奇妙な丸さ」。
数種類の刃とヤスリを使い分けながら生み出される独特な生き物。制作時間のおよそ3分の2は丸みを出す作業に費やされます。触り心地の良さそうな緩やかな曲線が生まれました。
出来上がったのは「多幸篭(たこかご)」と言う作品。奇妙だけれどなぜかぎゅっと握りたくなる愛らしいタコ。
「守破離(しゅはり)みたいなもの。古典を守った中からぶち破る、新しいものを取り入れて新根付みたいなものを作らないといけない」と語る道甫さんでした。
名前 | 道甫(どうほ) |
WEB | https://www.hanakagesho.com/nezu-netsuke/netsukeartists/duh/duh_archive/duh_archive.html |
及川空観さん / 根付彫刻家
紹介されていたのは根付彫刻家 及川空観(おいかわ くうかん)さん。岩手県出身、1991年武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業。根付師 中川忠峰さんの展示会を手伝ったことがきっかけとなり根付作家の道へ。根付コンテストで受賞歴多数の現代を代表する根付作家。
及川空観さんの作品は人や神が今にも動きだしそうな生き生きとした造形。
根付はただ単に何かモチーフを表現してるだけではなくて、形の持っているダイナミックな構成を楽しむことができると及川さん。物語と構成を一緒に考え、根付の全体を見せながらひとつの物語を作ることができると言います。
根付「ヴィーナス」。表面は美しい女神ヴィーナスが帆立貝に寝そべっています。そして裏側はその内面にうごめくを得体の知れないエネルギーを表現。帆立貝の形に沿って動物がびっしりと彫られ中央にはドクロ。表とは一転不気味な様相です。
美しいものに内在する秘められた激しい欲望。心の二面性を表現しています。
複雑な物語を小さな根付に込めるために必要なのは繊細な技術。
及川さんは 左刃(ひだりば)と呼ばれる根付作り専用の道具を100本ほども自作しています。
彫りの細かさによって道具を使い分け、時には幅1mm以下の線を彫ることもあり。
息の詰まるような作業を経て手のひらサイズの芸術品が生み出されます。
根付はひとつの舞台空間と捉える及川さん。演じる役者、シチュエーションがあり、作家である及川さんはその振り付けをしているだけ、と語ります。小さな根付に壮大な世界を詰め込んでいます。
名前 | 及川空観(おいかわ くうかん) |
WEB | http://kukan246.blog99.fc2.com/ |
エピローグ
草刈さんに似た根付には「草刈」と彫られていました。先祖様が家族をモデルにして彫ったものかもしれない、そう思うと のん気な顔も愛着が湧いてきたようです。
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音楽 BGM
ジャズの名曲が流れる美の壺。番組BGMファンもいらっしゃるのではないでしょうか。
オープニング曲と番組内挿入曲をまとめましたので参考にどうぞ。リンク先で試聴できます。
オープニングテーマ
オープニングテーマ は Art Blakey And The Messengers(アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ)の名曲「Moanin’」。ジャズドラマー アート・ブレイキーが1958年に発表した同名のアルバムに収録されています。作曲はピアニストの Bobby Timmons(ボビー・ティモンズ)。
番組内 楽曲
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