NHK「美の壺（びのつぼ）」は普段使いの器から家具、着物、料理、建築に至るまで、衣食住、人の暮らしを彩ってきた美のアイテムを解説してくれる番組。紹介されたものは何？場所はどこ？出演は誰？どこで買える？と興味津々。
そんな気になる「美の壺・美術の鑑賞マニュアル」を詳しく調べてみました。最後に番組内の音楽もまとめてあります。
美の壺「天空の聖地 高野山」File 646
出演は俳優の 草刈正雄（くさかり まさお）さん、ナレーション（語り）は俳優の 木村多江（きむら たえ）さんです。
NHK BS(BS101チャンネル)
初回放送：2025年10月24日(金)21:15～21:45
再放送 ：2025年10月31日(金)12:00～、2025年11月1日(土)07:30〜
BSプレミアム4K
初回放送：2025年10月15日(水)19:30～20:00
再放送 ：2025年10月20日(月)13:00～、2025年10月22日(水)08:00～
2025年10月25日(土)06:45〜
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美の壺 天空の聖地 高野山 File 646 内容
▽空海が唱えた真言密教の教えを表した絵画「曼荼羅（まんだら）」。その空間美とは？
▽117の寺院にいるおよそ700人の僧侶。僧侶が日々身につけている「数珠（じゅず）」には、1000年以上続く手仕事の技！
▽高野山に50以上ある「宿坊」。趣向を凝らした庭園を紹介！
▽5味・5法・5色で作られた高野山ならではの「精進料理」
▽大豆を使わず、白胡麻と吉野本葛で丁寧に作る「ごま豆腐」の味わい！
プロローグ
高野山に行ってきたという草刈さん。
その感動を詩にできないかと深い深い思考の海をたゆたっていました。
美の壺 一、曼荼羅：悟りに近づく道しるべ
ひとつめのツボは 曼荼羅：悟りに近づく道しるべ。
高野山（こうやさん）/ 平安時代につくられた天空の宗教都市【和歌山県 伊都郡 高野町】
和歌山県伊都郡高野町（いとぐんこうやちょう）の標高800mの場所にある 高野山（こうやさん）は平安時代につくられた宗教都市。山の名前ではありません。
弘仁7年（816年）に 弘法大師空海（こうぼうだいしくうかい）が開いた高野山は真言密教の聖地。
入り口・大門（だいもん）をくぐった街全体が一つの修行道場とされています。
2004年にユネスコ世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」に登録。女人禁制だった期間もありますが、現在は女性も参拝できます。
高野山には117の寺院があり、その中心は真言密教の総本山・金剛峯寺（こんごうぶじ）。
空海が今も瞑想を続けているとされる 奥之院（おくのいん）では毎日 2回 食事が届けられます。
| 名前 | 高野山（こうやさん） |
| 住所 | 和歌山県伊都郡高野町高野山 |
| WEB | https://www.koyasan.or.jp/ |
壇上伽藍 / 胎蔵界・金剛界の曼荼羅
空海がこの地に入って、真っ先に整備を着手したとされる 壇上伽藍（だんじょうがらん）は19のお堂が並ぶ修行道場です。解説してくれたのは高野山執務公室 室長の 薮邦彦（やぶ ほうげん）さん。
高野山の総本堂 金堂（こんどう）に真言密教の教えを表した絵画・曼荼羅（まんだら）が掲げられています。
平安時代、平清盛によって寄贈されたといわれる 両界曼荼羅図（りょうかいまんだらず）は 胎蔵界曼荼羅（たいぞうかいまんだら）と 金剛界曼荼羅（こんごうかいまんだら）の2点セット。
胎蔵界曼荼羅（たいぞうかいまんだら）には中心に大日如来がいて、その周りをたくさんの仏が同心円状に囲うように描かれています。外側には「餓鬼」と呼ばれる鬼の存在や、森羅万象を含めた生きとし生けるいる世界。
慈愛 の世界を表現していると言われています。
一方、金剛界曼荼羅（こんごうかいまんだら）は 知恵 を象徴するといわれています。
仏の悟りの世界を求めていく過程、また仏が我々に教えを説いてくださる過程を9つの世界によって段階的に表しています。
慈愛の教えと知恵の教え、この両方をあわせ持つことによって大いなる悟りの境地に近づく道しるべとなっているという教えが曼荼羅で説かれているのです。
根本大塔 / 胎蔵界の立体曼荼羅
壇上伽藍のシンボル 根本大塔（こんぽんだいとう）は日本で初めて平面と円を組み合わせて建てられた 多宝塔様式（たほうとうようしき）です。
本尊は 大日如来（だいにちにょらい）。
根本大塔の内部空間自体が 胎蔵界（たいぞうかい）の 立体曼荼羅（りったいまんだら）となっていて、大日如来の周を金剛界の仏が取り囲む配置。
16本の柱には16本の柱には 十六大菩薩（じゅうろくだいぼさつ）が描かれています。
西塔 / 金剛界の立体曼茶羅
さらに空海の構想は建物の配置にも及びます。
胎蔵界の曼茶羅が表現された 根本大塔（こんぽんだいとう）の反対側には、平安時代に完成し江戸時代に再建された 西塔（さいとう）があります。
中には 金剛界（こんごうかい）の 立体曼荼羅（りったいまんだら）が表現されています。
空海の構想とは異なる位置にありますが、本堂を中心に壇上伽藍に両界曼茶羅を表現しています。
高野山のいちばん奥にある奥之院で悟りを開き、今も瞑想を続けているとされる空海。
祈りの空間美がここにあります。
美の壺 二、数珠：祈りをつなぐ
ふたつめのツボは 数珠：祈りをつなぐ。
僧侶が使う3種類の数珠 / 常用念珠・本装束念珠・半装束念珠
6月15日。弘法大師空海の誕生を祝う 降誕会（こうたんえ）が行われ、高野山の僧侶50人以上が集まりました。
こうした 法会（ほうえ）や日々の 勤行（ごんぎょう）に父かせないのが 数珠（じゅず）。
解説してくれたのは高野山法会課 課長の 森寛賢さん。
各宗派で正式に定められた数珠を 本連念珠（ほんれんじゅず）と呼び、基本的に108の玉が連なっています。
108というのは煩悩の数。
真言密教では、決まった数の真言を唱えながら数珠の玉をくることによって煩悩を滅して仏の位に入るとされています。
高野山で使われる数珠は主に3種類。
常用念珠（じょうようねんじゅ）と呼ばれる数珠です。
色つきのものが基本で、素材は木や木の実石などさまざま。
日々の勤めや、供養・祈願など衣を着た際に常に手に持っています。
本装束念珠（ほんしょうぞくねんじゅ）はすべて水晶で作られれています。
位の高い、導師（どうし）と呼ばれる僧が使います。
「陀羅尼集経」というお経の中に「水晶を以て最上とする」というような文言が書かれいて、水晶の数珠はすべての煩悩を滅し悟りに入った位の象徴とされています。
半装束念珠（はんしょうぞくねんじゅ）は半分が水晶でできています。
まだ悟りを開いていない僧侶たちが重要な法会で使います。
数珠は当たり前のように体の一部として普段の僧服の一部として持ち歩くもの、と森さん。
折々に師匠やお世話になった先輩にいただくそうです。
森さんが今使っている念珠もいただいたもので、それ以来毎日使っていて、基本的には一度使い始めたものは一生使うことになると言います。
木曽有香さん / 中本名玉堂 数珠職人【和歌山県 伊都郡 高野町】
高野町 で江戸時代中期の1716年に創業した数珠の専門店、株式会社 中本名玉堂（なかもとめいぎょくどう）。
作業を見せてくれたのは数珠職人の 木曽有香（きそ ゆか）さん。兄の 中本勝也 さんが17代目代表を務めています。
木曽さんがこの日行っていたのは 数珠の修理。
使っていると糸が切れたり伸びたりするので糸を新しくする作業です。
高野山の数珠は 主玉（おもだま）といわれる108の玉の部分、そして 弟子玉（でしだま）と呼ばれる部分からできています。今回は弟子玉の部分の修理です。
玉は 清月菩提樹（せいげつぼだいじゅ）という木の実。
使うのは絹糸（きぬいと）。玉に絹糸を通して四つ編みにします。
数珠の玉の大きさによって通す糸の本数を変えていて、玉が程よく動くように調整します。
端を結ぶときには「叶え結び」という結び方。
表が口の字、裏が十の字になっていて、合わせると漢字の「叶（かなえる）」となることからこの名が付きました。
使っている方の思いや願いが叶うとい意味が込められている形なのでは、と木曽さん。
次は台を使って四つ編みにし、最後は房作り。
ハサミで絹糸をきれいな球体にしていきます。
修理は使い手それぞれの好みに合わせて直すという難しさがあるといいます。
使い手が使いやすいように、切れないように、長年使っていただけるようにと思いながらの作業。
2日かけて美しく修理されました。
高野山で連綿と受け継がれる手仕事です。
中本名玉堂のショップでは数珠や仏具だけでなくごま豆腐などのお土産物も販売。
食堂もあり、精進料理もいただけます。
| 名前 | 株式会社 中本名玉堂（なかもとめいぎょくどう） |
| 住所 | 和歌山県伊都郡高野町高野山765 |
| 電話 | 0736-56-2024 |
| WEB | https://www.koya3.com/ |
| 営業時間 | 8:30〜17:00 |
| 定休日 | 年末年始 |
中本名玉堂が紹介されています。
美の壺 三、宿坊：調和をいただく
最後のツボは 宿坊：調和をいただく。
近藤説秀さん / 恵光院 住職 / 宿坊の庭園と精進料理【和歌山県 伊都郡 高野町】
高野山 には117の寺院があります。その一つ 恵光院（えこういん）。およそ1,200年の歴史をもつ寺院です。
住職は 近藤説秀 さん。
紹介されていたのは恵光院の宿坊。お部屋はコンパクトな6畳和室から半露天風呂ラグジュアリースイートまであります。瞑想・写経体験もできて人気の宿坊です。
高野山には現在52の宿坊があります。
僧侶たちが寝泊まりする場所から始まり、後に参拝者のための宿泊施設となりました。
大手の宿泊予約サイトから予約できる宿坊もあり、参拝者が気軽に利用できるようになっています。
宿坊の魅力の一つが 庭園。
こちらでは多種多様な植栽を楽しむことができます。
高野山は真言密教の山ということで、曼荼羅的なことを意識して、自然の中でも調和の取れた美しさをテーマに造園しているのだとか。春にはしゃくなげが咲き乱れ、秋にはもみじが色づきます。
さらに宿坊の楽しみの一つが 精進料理（しょうじんりょうり）です。
高野山の精進料理は、儀式や催事の際に食事で客人をもてなす 振れ舞い膳（ふれまいぜん）がベースとなっています。
一般的な精進料理のイメージよりは豪華な食事になっていて、料理の美しさ、美味しさだけでなく、お膳を運ぶ僧侶の繊細な所作も見所。
高野山の精進料理は日本料理、会席料理が基本となっていて、いわゆる「五味・五法・五色」を意識して作っているそうです。
「五色」は黒・白・赤・青・黄色の五色。
彩りもおもてなしの大切な要素ということで、いろいろな色が取り入れられていると言われています
「五法」は焼く・煮る・蒸す・揚げる・生の5つの調理法。
「五味」は甘味・酸味・塩味・辛味・苦味の5つ味。
すべてのものは5つの要素から成り立っているという教えにのっとり、五味五法五色を大切にしているそうです。
恵光院の宿坊が宿泊予約サイトで予約できます。食事内容やお部屋によって価格が違います。
瞑想・写経体験付きプランあり。
半露天風呂付きラグジュアリースイートもあり。
1泊2名1室 目安 ￥34,000〜（税・サービス料込み、レギュラーシーズン）
角濱巧治さん / 角濱総本舗 / 胡麻豆腐店【和歌山県 伊都郡 高野町】
空海がおよそ1,200年前に開いた高野山。
厳しい修行の中で食べる精進料理の一つとして生まれたのが ごま豆腐（ごまどうふ）です。
かつてはそれぞれの寺で作られていましたが、現在多くが専門店で作られています。
紹介されていたのは昭和2年（1927年）創業のごま豆腐店 株式会社 角濱総本舗（かどはまほんぽ）。代表取締役は 角濱巧治（かどはま こうじ）ささん。
材料は 白ごま と 吉野本葛（よしのほんくず）。名前は豆腐ですが豆腐は入っていません。
まず 白ごま をすり合わせ、皮を剥きます。残った皮は水で流しながら丁寧に取り除いていきます。
皮を綺麗に取り除いてから作るのがごま豆腐作りのいちばんのポイント。ごま豆腐が白くなるのです。
白いごま豆腐を漆器や柄のない黒い器に乗せた時にきれいに映えます。
そしてもう一つの材料、吉野本葛 は葛の根からとったでんぷん。
白ごまの搾り汁を混ぜ、火にかけながらゆっくり固めていきます。
栄養価の高いごま豆腐は昔のお坊さんの英知が込められた食品だという角濱さん。
あまりの白さからその名が付いたというごま豆腐。
1,000年以上受け継がれてきた高野山の味です。
| 名前 | 株式会社 角濱総本舗（かどはまほんぽ） |
| 住所 | 和歌山県伊都郡高野町高野山262 |
| 電話 | 0736-56-2336 |
| 楽天店 | 角濱ごまとうふ 楽天市場店 |
| WEB | https://www.gomatohu.com/ |
| 営業時間 | 8:00〜17:00 |
| 定休日 | 年末年始 |
角濱総本舗のごま豆腐。
エピローグ
調べると、古今東西、いろんな人が高野山についてうたっています。
自分の中からも言葉が溢れてきた…と思ったのにどこかへ行ってしまいました。
あ！高野山で買ってきた ごま豆腐食べたら思い出すかもしれない！と中断する草刈りさんでした。
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真田丸 などの大河ドラマ、
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音楽 BGM
ジャズの名曲が流れる美の壺。番組BGMファンもいらっしゃるのではないでしょうか。
オープニング曲と番組内挿入曲をまとめましたので参考にどうぞ。リンク先で試聴できます。
オープニングテーマ
オープニングテーマ は Art Blakey And The Messengers（アート・ブレイキー＆ザ・ジャズ・メッセンジャーズ）の名曲「Moanin’」。ジャズドラマー アート・ブレイキーが1958年に発表した同名のアルバムに収録されています。作曲はピアニストの Bobby Timmons（ボビー・ティモンズ）。
番組内 楽曲
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