NHK「美の壺(びのつぼ)」は普段使いの器から家具、着物、料理、建築に至るまで、衣食住、人の暮らしを彩ってきた美のアイテムを解説してくれる番組。紹介されたものは何?場所はどこ?出演は誰?どこで買える?と興味津々。
そんな気になる「美の壺・美術の鑑賞マニュアル」を詳しく調べてみました。最後に番組内の音楽もまとめてあります。
美の壺「とにかくめでたい!鯛(たい)」File 623
出演は俳優の 草刈正雄(くさかり まさお)さん、ナレーション(語り)は俳優の 木村多江(きむら たえ)さんです。
NHK BS(BS101チャンネル)
初回放送:2024年12月17日(火)17:30~18:00
再放送 :2024年12月24日(火)12:00~、2024年12月28日(土)07:30〜
BSプレミアム4K
初回放送:2024年12月11日(水)19:30~20:00
再放送 :2024年12月16日(月)13:00~、2024年12月18日(水)08:00~
2024年12月21日(土)06:45〜
U-NEXT でNHKの動画配信サービス NHKオンデマンド を視聴可能。虎に翼・らんまん・なつぞら などの朝ドラや 光る君へ・鎌倉殿の13人・真田丸 などの大河ドラマ、探偵ロマンス・正直不動産 などの名作ドラマ、ファミリーヒストリー「草刈正雄」を一気見できます。U-NEXTは初回31日間無料トライアル。NHKオンデマンド は別料金ですが、もらえる600ポイントで購入できます。PR
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美の壺 とにかくめでたい!鯛(たい)File 623 内容
▽魚の王様・たいの魅力を存分にご紹介!
▽日本人のたい好きは万葉集にも!
▽正月の間は「にらむ」だけ?関西のお正月
▽京都・名店の技で魅せる姿と味
▽祭りにもたい!全高7メートル、総漆!唐津くんちの曳山「鯛山」の造形の秘密
▽祝いの気分を盛り立てる!銚子の名物・大漁旗
▽ひとくち食べれば、甘くて幸せ!元祖たい焼きの誕生物語
▽南蛮渡来の砂糖菓子、金花糖。受け継がれた「たい」の木型と職人の心
プロローグ
美の壺 一、べっぴんさん:とことん味わう、姿と味
ひとつめのツボは べっぴんさん:とことん味わう、姿と味。
魚秀 / 焼魚の専門店の焼鯛【兵庫県 明石市】
兵庫県明石市 の 魚の棚商店街(うおんたな しょうてんがい)にある焼魚の専門店 魚秀(うおひで)。
看板商品は 焼鯛(やきだい)。創業から100年以上、今も毎日市場から仕入れた新鮮な鯛を1匹ずつ丁寧に調理しています。
生き生きとした姿を表現するために飾り塩をしっかりと付け、ヒレをピンと起こし、じっくりと焼き上げます。
年末には「正月用に」と買い求める人が殺到。多い時は4000匹を焼き上げるのだとか
関西のお正月の風習を教えてくれたのは 大阪民俗学研究会(おおさかみんぞくがくけんきゅうかい)代表の 田野登(たの のぼる)さん。
「お正月には焼鯛が欠かせない」と言います。
しかし昔はすぐに食べられるわけではなく、三が日の間は「にらみだい」。
「にらみだい」は関西などで行われていた風習の1つ。
正月の間は鯛をひたすらにらんで過ごし、三が日が明けるとありがたくいただきました。
生活習慣が変化し、元旦から箸を付けるようになりました。
今も正月といえば鯛。
田野さんはいつも妻に「注文してあるお鯛さんをもらってきて」と言われ、背ビレや尾ビレが欠けないよう注意して持って帰るのだとか。ヒレが欠けたりしたら「験が悪い」と言って叱られてしまいます。
関西の正月を彩る「おたいさん」です。
名前 | 魚秀(うおひで) |
住所 | 兵庫県明石市本町1-4-3 |
電話 | 078-911-2537 |
WEB | https://uohide.shop/ |
営業時間 | 6:00〜17:30 |
定休日 | お盆(8/14~19)、お正月(1/1~6) |
お正月、お食い初めや各種お祝いに尾頭付き尾頭付きの焼き鯛
高橋義弘さん / 瓢亭 / 祝いの鯛料理【京都市 左京区】
京都市左京区、400年以上の歴史を持つ日本料理の名店 瓢亭(ひょうてい)。鯛料理の技を見せてくれたのは15代目当主で料理人の 高橋義弘(たかはし よしひろ)さん。
山に囲まれた盆地、京都。かつて京料理に使われていたのは川魚が中心でした。
流通が良くなり、生きの良い鯛が手に入るようになると毎日使うようになったそうです。
鯛は「べっぴんさん」な魚だと高橋さん。
べっぴんさんの味わいをどう引き出すかが料理人の腕の見せ所。
お造り1つにも細やかな気遣いがあります。
平造りではなくて、へぎ造り。身の繊維に対して垂直に切らずにちょっと斜めに切る調理法です。
へぎ造りにすると、口の中で噛んでいて食感がしっかりと残り筋肉質な感じが味わえます。
「鯛のお造り」
透明感のある白身がまず目を引きます。
そこに鮮やかな赤い血合い。盛り付けもところどころで赤が出てくるように配置。
紅白の組み合わせが食事の席を晴れやかに彩ります。
「祝いの焼きもの」
めでたい祝いの席には特別な鯛料理を用意することも。
尾頭付きと身の部分とに切り分けて、それぞれの魅力を引き出します。
尾頭付きはカブトも美味しくいただけるように塩を振ってじっくりと炭火で焼き上げます。
身のほうは食べやすい大きさに切り分けた後、串打ちをしてさっと火を通し、さらに一手間。
卵白を塗った後に粉末状にしたカラスミを贅沢にふりかけます。
もう半分には赤しそのふりかけを。カラスミ焼きの色合いと対をなすように仕上げます。
カラスミとシソによって旨味がさらに引き立てられ極上の味わいです。
扇形にあしらった赤飯に、健康願う黒豆、良縁を招く熨斗梅(のしうめ)と縁起よい添え物も合わせて盛り付けます。
べっぴんさんの姿形を生かし、味わいをさらに深める。
伝統の技が鯛の魅力を存分に引き出します。
名前 | 瓢亭(ひょうてい) |
住所 | 京都府京都市左京区南禅寺草川町35 |
WEB | http://hyotei.co.jp/ |
電話 | 075-771-4116 |
営業時間 | [本館] 木〜火:12:00〜15:00, 17:00〜21:30 [別館] 金〜水:8:00〜11:00, 12:00〜16:00 |
定休日 | [本館] 水曜 [別館] 木曜 |
高橋義弘さんと父・高橋英一さんの共著。
高橋英一さんの著書。
美の壺 二、吉祥:創造力をかき立てる、紅の鯛
ふたつめのツボは 吉祥:創造力をかき立てる、紅の鯛。
吉田宗弘さん / 関西大学名誉教授 / 鯛と日本人
鯛と日本人 は、いつどのようにして深い縁を持つようになったのでしょうか。
食の歴史に詳しい関西大学名誉教授 吉田宗弘(よしだ むねひろ)さんによると、その始まりは神話の時代にまで遡ると言います。
「古事記(こじき)」に出てくる 海幸彦(うみさちひこ)。その海幸彦の釣り針を喉に引っ掛けてしまった魚が 赤海鯽魚(あかうみそくうお)。
海鯽魚(うみそくうお)はクロダイのことなので、赤海鯽魚は(赤いクロダイ=マダイ)のこと。
食べてみたらクロダイよりも真鯛(マダイ)の方が美味しいということで、マダイが取れるととても縁起が良いとみんな大変喜んだのではないかと吉田さん。
日本人は赤い色は魔除けの色だと考えていたため、赤い鯛を見るとこれで邪気を払ってくれるのではないかと思ったのだろうと語っていました。
多久島修さん / 唐津くんち 鯛山 元・曳子【佐賀県 唐津市】
赤い色は魔除けの色、赤い鯛は邪気を払ってくれる、という古代からの思いが形となって日本各地に残されています。
紹介されていたのは 佐賀県唐津市 で毎年11月に行われる 唐津くんち(からつくんち)。
そこに登場する14台の 曳山(やま)の中にも鯛が。
曳山(やま)は神様が乗る神輿(みこし)の前で邪気を払う役目を担っています。
5番曳山(やま)魚屋町「鯛(たい)」(1845年制作)
鯛の曳山が作られたのは、江戸時代後期の1845年のこと。それ以来ずっと地元の人たちの手で大切に守られてきました。
親しみを込めて 鯛山(たいやま)と呼ばれています。
解説してくれたのはかつて鯛山(たいやま)の曳子(ひきこ)を務めていた 多久島修 (たくしま おさむ)さん。唐津生まれの唐津育ち。少年時代から祭りのときに鯛山に乗って町中を練り歩くのが何よりも楽しかったのだとか。
鯛山への思いは尽きず、大人になった今も研究を重ねています。
鯛山について調べてた結果、鯛山の大先輩にあたるのは奈良・興福寺の阿修羅像。全く同じ作り方をしているそうです。
鯛山の光沢のある赤を生み出しているのは漆。実はこの鯛山、世界最大級の漆工芸品。
中は空洞になっています。漆と麻布それに和紙を何枚も重ねて作ることで、大きさと軽さを両立させています。
さらに造形の見事さも見逃せないと多久島さん。
正面から見ると三角形、おにぎりのような形。横に来るとひし形に変わる。さらに後方に回り込むと楕円形に変わる。
見る角度によって三角形・ひし形・楕円形と形を変え、見事に鯛の形を保ちつつデフォルメをした造形。
先人の立体図造形力は本当に素晴らしいものがある、と語っていました。
名前 | 唐津くんち(からつくんち) |
WEB | https://www.karatsu-kankou.jp/feature/karatsukunchi/ |
開催日 | 毎年11月2日・3日・4日 |
宮澤雅樹さん / 額賀屋染工場 染物職人 / 銚子の大漁旗【千葉県 銚子市】
日本有数の漁港を抱える 千葉県銚子市(ちょうしし)。町の名物の1つが 大漁旗(たいりょうばた)。
港で船の帰りを待つ人たちにいち早く大漁を知らせるものとして使われてきました。
大漁旗の制作を見せてくれたのは、代々大漁旗などの染物を手がけてきた 額賀屋染工場(ぬかがやそめこうじょう)の染物職人 宮澤雅樹(みやざわ まさき)さん。
大漁旗に図柄が入るようになったのは昭和30年頃。その図柄 万祝(まいわい)という着物の柄から転用しました。
万祝(まいわい)とは江戸時代後期から昭和にかけて作られた大漁を祝う羽織物のこと。鶴亀などめでたい柄が好んで描かれました。
万祝(まいわい)から吉祥柄を取り入れたこの地域ならではの大漁旗を 萬祝式大漁旗(まいわいしきたいりょうばた)と呼びます。
大漁旗の制作は2日がかり。
もち米やぬか、石灰などを練り込んだ糊(のり)で縁取りを描くところから始まります。
のり付けしたところには染料が入らないので、白いままになります。
特に鱗の糊付けに注意して、のりをたくさん出して擦れないように。
のり付けが終わると大漁旗全体に砂を撒きます。
こうするとのりの乾きが早くなり、大きく盛り上がるので、染料がはみ出しにくくなるといいます。
続いては染め付け。白く残る部分との境目がぼやけないように、丁寧に染料を入れていきます。
鯛が仕上がったら文字や背景に染料を入れていきます。ムラなく染めていくのがコツと宮澤さん。
翌日、のりを落とすと色鮮やかな鯛が姿を現しました。
近年大漁旗は本来の役割ではなく、違う形で使われることが多くなっています。
例えば、孫が生まれた時や節句祝い、出産の祝い、還暦祝いなど祝いの品として作る機会が増えています。
単純にめでたい。その期待に応えるように丁寧に作るように心がけているという宮澤さんでした。
名前 | 額賀屋染工場(ぬかがやそめこうじょう) |
住所 | 千葉県銚子市中央町2-3 |
電話 | 0479-22-1135 |
WEB | https://www.choshikanko.com/kankoDB/額賀屋染工場/ |
営業時間 | 月〜土:9:00~17:00 |
定休日 | 日曜・祝日 |
美の壺 三、お菓子:甘く、優しく、喜びを与える
最後のツボは お菓子:甘く、優しく、喜びを与える。
神戸将守さん / 浪花家総本店 たい焼き職人 / たい焼き発祥の店【東京都 港区】
東京港区 の たい焼き 発祥の店とされている 浪花家総本店(なにわやそうほんてん)。
たい焼き職人 神戸将守(かんべ まさもり)さんは職人歴40年以上。
こちらのお店では1つずつ一丁焼き、パリッとした薄皮が特徴です。
次から次へ、手際よく焼き上げられていきます。
できるだけ高温で短時間、皮がさくっと焼けるように焼くのがコツ。
創業は明治45年。当時たい焼きはとても斬新なアイデアでした。
明治時代に「鯛」という存在は今より大きく、祝いやご馳走の象徴。
結婚式といえば鯛。いいことがあれば鯛。
そんな鯛をすごく安い値段で食べられるというので、たい焼きは皆さんの心に触れたのかな、と神戸さん。
子供が手に取ったときに、鯛の形をしている、それだけで喜びを与えられる。
頭かじってやろうとか、しっぽちぎってやろうとか、それだけで遊べる。
それはすごいことだと語っていました。
名前 | 浪花家総本店(なにわやそうほんてん) |
住所 | 東京都港区麻布十番1-8-14 |
電話 | 03-3583-4975 |
WEB | https://www.azabujuban.or.jp/shop/shop_category/eat/219/ |
営業時間 | 水〜月:11:00~19:00 2F naniwaya café:水〜月:10:30~18:00 |
定休日 | 火曜・第3水曜 |
鈴木真善さん / 萬年堂 社長・金花糖職人 / 南蛮渡来の伝統のお菓子
雛壇を彩る可愛くて、不思議なものたちは 金花糖(きんかとう)。南蛮渡来の伝統のお菓子です。
江戸時代後期から昭和の中頃にかけて、庶民の味として独自の発展を遂げました。
作る工程を見せてくれたのは金花糖職人の 鈴木真善(すずき まさよし)さん。実は江戸駄菓子の卸、株式会社 萬年堂(まんねんどう)、屋号・江戸駄菓子まんねん堂 の4代目です。
鈴木さんは東京でただ1人の金花糖職人。
30代の頃、廃棄を決めた職人から軽い気持ちで木型を譲り受けたのが事の始まりでした。
次々と店が消え、金花糖の伝統が途絶えようとしていることに気づいた鈴木さん。職人になることを決意し、ほぼ独学で作り方をマスターしたといいます。
金花糖が1番ポピュラーに扱われるのが桃の節句。雛祭りのときのお飾りとして使われるのがメイン。
嫁いだ先で食に困らないように子孫繁栄、娘の幸せを祈ってカゴに盛ってお飾りにしたという風習がありました。
お飾りにはやはり鯛。鯛が何よりも中心に来るものなのだとか。
金花糖の鯛は水と砂糖だけで作ります。素朴な菓子だけに職人の経験と勘が試されます。
作る工程を見せてもらいました。
金花糖作りは時間との戦い。砂糖が冷めて固まってしまわないうちに手早く木型に流し込みます。
天気や温度・湿度にとても左右される金花糖づくり。木型から外す時はいつも緊張するそうです。
仕上げに色付け。
鱗の模様を浮かびがらせながら、微妙なグラデーションを付けていきます。
最後に目を入れて愛らしい鯛が完成。
金花糖を買い求める人の中には特別な思いを持つ人もいるといいます。
80歳位のおばあさんがお店に来て、金花糖を手に取り「昔ばあやが買ってくれたのよね」と言う。
そういうふうに昔の子供の頃の温かい思い出みたいなもの皆さんおのおの持っていてとても面白いと鈴木さん。
甘く優しい味わいの鯛。
これからも思い出の数々を育んでいくことでしょう。
名前 | 株式会社 萬年堂(まんねんどう)/ 江戸駄菓子のまんねん堂 |
住所 | 東京都台東区下谷2-18-9 |
電話 | 03-3873-0187 |
WEB | https://www.mannendo.tokyo/ |
エピローグ
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音楽 BGM
ジャズの名曲が流れる美の壺。番組BGMファンもいらっしゃるのではないでしょうか。
オープニング曲と番組内挿入曲をまとめましたので参考にどうぞ。リンク先で試聴できます。
オープニングテーマ
オープニングテーマ は Art Blakey And The Messengers(アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ)の名曲「Moanin’」。ジャズドラマー アート・ブレイキーが1958年に発表した同名のアルバムに収録されています。作曲はピアニストの Bobby Timmons(ボビー・ティモンズ)。
番組内 楽曲
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