NHK「美の壺(びのつぼ)」は普段使いの器から家具、着物、料理、建築に至るまで、衣食住、人の暮らしを彩ってきた美のアイテムを解説してくれる番組。紹介されたものは何?場所はどこ?出演は誰?どこで買える?と興味津々。
そんな気になる「美の壺・美術の鑑賞マニュアル」を詳しく調べてみました。最後に番組内の音楽もまとめてあります。
美の壺「日々を豊かに かご」File 608
出演は俳優の 草刈正雄(くさかり まさお)さん、ナレーション(語り)は俳優の 木村多江(きむら たえ)さんです。
最新エピソード 美の壺 File 621「平安の美」 もどうぞ併せてご覧下さい。
NHK BS(BS101チャンネル)
初回放送:2024年6月25日(火)17:30~18:00
再放送 :2024年7月2日(火)10:25~
BSプレミアム4K
初回放送:2024年6月19日(水)19:30~20:00
再放送 :2024年6月24日(月)13:00~、2024年6月26日(水)08:00~
2024年6月29日(土)06:45〜
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美の壺 日々を豊かに かご File 608 内容
▽国内外のかごを日々愛用している料理研究家・有元葉子さん。イタリアのかご職人との出会い!
▽料理研究家・大原千鶴さんが愛用する竹製の「買い物かご」。京都にぴったりという理由とは?
▽世界かご編み大会日本代表によるかごバッグ
▽長野・野沢温泉を利用した極上の「あけびかご」
▽茶室で重用される「花籠」。明治の政治家・井上馨所用と伝わる唐物の名品登場!
▽置いたり掛けたり…花籠を味わい尽くす!
プロローグ
蔵を整理してたら段ボール箱いっぱいにかごが入っていました。
使い道ないから捨てるしかないかなぁ、という草刈さん。
え?かご、素敵じゃないですか?
美の壺 一、暮らし:日々に寄り添う
ひとつめのツボは 暮らし:日々に寄り添う。
有元葉子さん / 料理研究家 / 生活の中にある世界の籠【東京都 田園調布】
日本と海外を行き来する料理研究家の 有元葉子(ありもと ようこ)さんは洗練された暮らしと素材を生かした料理で大人気。東京・田園調布 でクッキングクラス STUDIO 281 を主宰、キッチンツール ラバーゼ(la base)ディレクション、キッチン雑貨のセレクトショップ SHOP 281 の経営など幅広く活躍。テレビや雑誌でレシピを紹介するのみならず、シンプルでスタイリッシュなライフスタイルは憧れの的。番組で映っていたご自宅は長女で建築家の 八木このみ さんの設計です。
美の壺 File 529「ごはん」の回にも出演され、お気に入りのおひつを紹介していました。
有元さんの暮らしに 籠(かご)はなくてはならない存在といいます。
キッチンにもかごがずらり。
日本各地から世界のものまで様々なかごを集めてきました。
長野県戸隠(とかくし)で見つけた根曲がり竹(ねまがりたけ)でできたカゴ。
イギリスの柳の木で作られたカゴ。
イタリアの南部のプーリア州でリコッタチーズを作るのに作られたカゴ。かご中にミルクを固めたものを入れて水分を抜きます。
かごの素材はその土地に生えている植物。
日本では竹や稲わら。イタリアでは水草やオリーブの木。
かごを通してそこの土地の自然が見えてくる感じがするのだと有元さん。
元々の用途があるかごも、自分が使いやすい用途を考えて使っています。
リコッタチーズ用のカゴも水切りネットや鍋つかみなどを入れて日々使っています。
水草の大きなカゴを窓の目隠しに使っている有元さん。
購入したのはおよそ50年前、東京の店で。どこのものかわからないけれど、心惹かれたといいます。
ところが10年ほど前、友人とカゴをめぐる旅をしていた時、イタリア・サルデーニャ の村で、偶然このカゴの作者に出会いました。
一子相伝の編み方で他の人には編めないもの。購入して何十年も経ってからサルデーニャにいた時に出会うとは夢にも思っていませんでした。
作者の職人さんは今も全く変わらずに作っていて、本当に素晴らしいですね。
思い入れのある 稲わらのカゴ。友人の紹介で長野県在住のかご作家に会い、その作品に魅力を感じたそうです。
細い稲わらを木槌で叩き、シナノキなどの繊維を織り込んでから編む手の込んだ工程。とても柔らかい風合いながらも丈夫なカゴです。
作った方がどんな気持ちで作られたのかとか、そこの土地のこと、私自身がそれを使って楽しんでいく生活の楽しみ。それが全てかごの中にあるのだと有元さんは語っていました。
名前 | 有元葉子(ありもとようこ)/ STUDIO 281 / SHOP 281 |
住所 | 東京都世田谷区玉川田園調布2-8-1 KEYAKI GARDEN |
WEB | https://www.arimotoyoko.com/ |
有元葉子さんの著書。
収納に便利な水草のかごボックス。
大原千鶴さん / 料理研究家 / 買い物かごと目籠【京都市】
愛用の 買い物カゴ を見せてくれたのは 京都市 在住の料理研究家 大原千鶴(おおはら ちづる)さん。美の壺 File 424「京野菜」、美の壺 File 538「パフェ」、美の壺 スペシャル「着物」、美の壺 スペシャル「和食」、美の壺 File 608「かご」の回にも登場されました。
NHK「きょうの料理」「あてなよる」「京都人の密かな愉しみ」にも出演されています。
大原さんは京都・花背にある摘草料理で有名な料理旅館 美山荘(みやまそう)の二女として生まれ、幼少期から京料理に親しんでこられました。美山荘は NHK「京都 山里の宿」シリーズでも密着取材されています。
いつも素敵に着物を着こなす大原さん。京都市内の自宅の近くにアトリエを構えています。「あてなよる」もこちらのアトリエで撮影されていますね。
アトリエの建物は6年前に見つけて、ボロボロの状態からリノベーションしたそうです。
お買い物をしていた京都市中京区のスーパーは 美の壺 スペシャル「和食」で登場した 京都八百一本館(きょうとやおいちほんかん)だと思います。
いつも着物の時に使う 竹製の買い物カゴ は15年ほど前に京都東山区のかご店で出会ったもの。
大きさや風合いが自分に合うものなかなか出会ずにいたところ、たまたま見つけてこれだって思って即買いしたというお気に入り。
普段着物の生活をしていると、よそ行きのバッグではなくカゴがしっくりくるそうです。
愛用の買い物カゴは底のところがすごくしっかりとした作り。底の隅(すみ)が出ていて、置いた時に底がべたっとつかずに隅で支える形になっていることが気に入った理由。そして持ち手が1つなのも好みでした。
大原さんは料理にもカゴが欠かせないといいます。
この日作るのは春から夏に旬を迎える山菜「こしあぶらの白和え」。
小ぶりの 目かご(めかご)に彩り豊かに盛り付けていきます。
京都は夏は湿度が高く気温も高い本当に蒸し暑い場所。視覚的にも涼しく感じるものをすごく取り入れる習慣があります。
竹素材や籠素材の器は京都の夏になくてはならないものだと大原さん。
かごが運んでくる季節感。暮らしの中で心を豊かに彩ります。
名前 | 大原千鶴(おおはら ちづる) |
WEB | http://c-foodlab.cocolog-nifty.com/ |
目かごやかごバッグ、欲しくなりますね。
美の壺 二、編む:風土をまとう
ふたつめのツボは 編む:風土をまとう。
熊谷茜さん / kegoya(けごや)かご作家 / くるみの木の皮のかご【山形県 西置賜郡 小国町】
山形県西置賜郡小国町(にしおきたまぐんおぐにまち)の広大な自然の中に古い小屋を改修した工房でかごを制作している kegoya(けごや)のかご作家 熊谷茜(くまがい あかね)さん。
「木小屋(けごや)」とは山形南部の方言で、作業小屋のこと。
熊谷さんは1979年東京都生まれ。東京農業大学農学部卒業後、2004年に山形県に移住。個展を中心に作品を発表し、2016年に自宅敷地内の古い木小屋を改装してアトリエにしました。
2019年に4年に1度ポーランドで行われる世界かご編み大会の日本代表として出場し実演部門で入賞。国内外で活躍しています。
熊谷さんが使うのは、主に くるみの木の皮。
四つ目編み(よつめあみ)という技法のかごバックは家の庭などでとれた くるみの木の皮を均等に編み込んでつくりました。
木には1本1本個性があるため、その特徴を生かして形をつくります。
かご編みに使うくるみの樹皮は、表側と裏側とで色も質感も違います。表側は白やグレーで象の肌みたいな質感。
裏側は茶色くてレザーみたいな質感。ちょっと重厚な落ち着いた感じのカゴを作るのには裏側を表面にして編んだり、作りたい雰囲気に合わせて制作しています。
熊谷さんの得意とする技法は 花結び(はなむすび)。
3本のくるみの木の皮を山折りに交差するように編み込み、次々と編んで花結びをつなげていきます。
形を整えるには力が必要ですが、締めすぎても花の形が悪くなるため、バランスを見ながら編み進めます。
この六角形のような花の形が蜂の巣の構造に似ていると感じる熊谷さん。自然が織り成す模様を作っていると語ります。
粒ぞろいの編み目が咲き乱れる花のよう。
緻密でありながらざっくりとした風合い。風が柔らかく吹き抜けます。
名前 | kegoya(けごや) |
住所 | 山形県西置賜郡小国町伊佐領318-18 |
電話 | 0238-61-4533 |
WEB | http://kegoya.me/ |
久保田敏昭さん / 三久工芸 かご職人 / アケビのつるのかご【長野県 下高井郡 野沢温泉村】
長野県下高井郡野沢温泉村。野沢温泉では江戸時代からアケビのつるを使ったかご作りが盛んに行われてきました。
紹介されていたのは 三久工芸(さんきゅうこうげい)の3代目 あけび蔓細工職人の 久保田敏昭(くぼた としあき)さん。55年アケビのかごを作っている熟練の職人です。
久保田さんの朝の日課はアケビのつるを持って 麻釜(おがま)へ行くこと。麻釜とは村の人が誰でも使える温泉が湧く場所。隣でほうれん草だとか山菜を茹でる人に混じり、この地域の職人たちは代々材料のアケビのつるを温泉につけてきました。
温泉の温度は70度位。そこへ漬けると短時間で柔らかくなります。乾燥したままだと硬くて織れないのです。
柔らかくなったつるを湿っているうちに編み始めます。
アケビのかごに使うつるは皮を剥いたものと剥かないもの2種類があります。皮を剥いたものは 製白蔓(せいはくづる)、皮を剥かないものは 赤棒(あかぼう)と呼ばれます。
皮を剥くには手間がかかりますが、よりしなやかに丈夫になるといいます。
目を詰めず、間隔を開けながら編んでいく 透かし編み(すかしあみ)の手法で編んでいきます。
アケビは強度があるため、透かして編んでも強いかごができるのだとか。目が詰まっていないため、軽いもの長所。
難しいのは底の部分から胴を編むために90度に折り曲げるときの角度。立ち上げの部分が美しく編めるのが技の見せ所です。
久保田さんのかごが完成しました。どこまでもなめらかな風合いです。
丈夫で長持ち。長い間使っているとべっ甲色になってきて味が出ます。
それぞれの風土をまとい様々な技で編む。かごならではの佇まいです
名前 | 三久工芸(さんきゅうこうげい) |
住所 | 長野県下高井郡野沢温泉村豊郷9274-2 |
電話 | 0269-85-2178 |
WEB | http://www14.plala.or.jp/sankyu39/ |
営業時間 | 夏期:9:00〜18:00、冬期:9:00〜20:00 |
定休日 | なし |
三久工芸の久保田さんが作るアケビのつるのかご。
美の壺 三、花籠:床の間に季節もたらす
最後のツボは 花籠:床の間に季節もたらす。
飯田國宏さん / 飯田好日堂 / 茶室の花籠【東京都 中央区 京橋】
茶室の花を入れる花器の1つとして、花籠(はなかご)は重要な役割を果たしてきました。
昭和16年創業の古美術店 飯田好日堂(いいだこうじつどう)の2代目店主 飯田國宏(いいだ くにひろ)さんは日本橋・京橋界隈の骨董街の生き字引的存在。飯田さんがとっておきの花籠を見せてくれました。
「唐物蝉籠掛花入(からものせみかごかけはないれ)」清朝初期 井上馨(いのうえ かおる)旧蔵
唐物蝉籠(からものせみかご)と呼ばれるかご。中国の清朝(しんちょう)初期、日本でいうと、江戸初期の作。
明治時代の政治家だった 井上馨(いのうえ かおる)が所持したとされています。
蝉籠(せみかご)という蝉の形をした花かごは初夏の頃に使われます。花が入れやすい「花映りがいい」ということで、尊ばれています。
「唐物手付籠花入(からものてつきかごはないれ)」清朝初期
こちらも清朝初期のもの。竹の皮を使い網代編み(あじろあみ)で編まれています。
そして金属の装飾、長い手がついているのも特徴です。端正な佇まいは茶人に好まれました。
ほぼ竹でできていますが、竹の間に籐(とう)が組み込まれていまてちょっと異色な作り方。飯田さんでも同じ作り方のものを見たことないそうです。
「唐物木耳付籠花入(からものきみみつきかごはないれ)」清朝初期 平瀬家 旧蔵
さらにこんな銘品も。魚を入れる魚籠(びく)に似たこのかごで、大阪の豪商・平瀬家が所持したとされます。
素材は籐(とう)。こうした耳が付いているものは座席で好まれました。
籠を使うことによって床の間がちゃんと締まる。お茶はお道具の取り合わせで季節感を表す演出をしますが、籠は重要な役割を表している、と飯田さん。
名前 | 飯田好日堂(いいだこうじつどう) |
住所 | 東京都中央区京橋1-14-2 京橋アインスビル1階 |
電話 | 03-3561-2033 |
WEB | https://www.tokyoartantiques.com/gallery/iidakojitsudo/ |
営業時間 | 月〜金:9:00〜17:00 |
定休日 | 土曜・日曜・祝日 |
お手頃価格のラタンのかごボックスは小物収納にぴったり。
上野雄次さん / 花道家 / 花籠と花道【東京都】
花籠(はなかご)に花をいけてくれたのは花道家の 上野雄次(うえの ゆうじ)さん。上野さんは1967年京都府生まれ、鹿児島県出身。1986年に勅使河原宏氏の前衛的な作品に出会い華道を学び始めました。
現在は「花を生ける行為」を「花いけ」と名付け、パフォーマンスを行っています。NHK「あさイチ」にも出演されました。
様々な花器の中でも花籠はユニークな役目を果たしてくれるといいます。
骨董から現代作家のものまで幅広い籠を用いてきました。
上野さんのお気に入りの 竹の花籠 にいけてもらいました。銘は無く作者不明。いつ作られたものかわからないといいます。竹が縦横無尽に躍動しています。
まず青と紫の紫陽花を入れ、そして1本のクレマチス、さらににピンクのガクアジサイを足していきます。
器自体の丸っとした感じに紫陽花の丸い花でリズム感を合わせながら配置。
竹と紫陽花、全く異なる質感のものが床の間で一体になりました。
今度は同じ花籠を縦にして野バラをいけます。
口ではなく網み目に花を入れていきます。編み方の動きとグルーヴを合わせていくように花をいけます。
花籠は花と人が出会う場に深い味わいを添えてくれます。
名前 | 上野雄次(うえの ゆうじ) |
WEB | https://ueno-yuji.com/ |
山葡萄(やまぶどう)の職人の手仕事かごバッグは一生もの。
エピローグ
懐かしいかごがいろいろ出てきました。
おばあちゃんが洗った食器を置いてたかご。おじいちゃんがみかんを盛っていたかご。
商店街のおばちゃんが吊り下げて使っていた小銭入れ。エアープランツを入れて吊り下げると素敵なインテリアになりました。
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音楽 BGM
ジャズの名曲が流れる美の壺。番組BGMファンもいらっしゃるのではないでしょうか。
オープニング曲と番組内挿入曲をまとめましたので参考にどうぞ。リンク先で試聴できます。
オープニングテーマ
オープニングテーマ は Art Blakey And The Messengers(アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ)の名曲「Moanin’」。ジャズドラマー アート・ブレイキーが1958年に発表した同名のアルバムに収録されています。作曲はピアニストの Bobby Timmons(ボビー・ティモンズ)。
番組内 楽曲
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