NHK「美の壺(びのつぼ)」は普段使いの器から家具、着物、料理、建築に至るまで、衣食住、人の暮らしを彩ってきた美のアイテムを解説してくれる番組。紹介されたものは何?場所はどこ?出演は誰?どこで買える?と興味津々。
そんな気になる「美の壺・美術の鑑賞マニュアル」を詳しく調べてみました。最後に番組内の音楽もまとめてあります。
美の壺「日々を楽しくおいしく 小鉢」File 640
出演は俳優の 草刈正雄(くさかり まさお)さん、ナレーション(語り)は俳優の 木村多江(きむら たえ)さんです。
NHK BS(BS101チャンネル)
初回放送:2025年7月25日(金)21:15~21:45
再放送 :2025年8月1日(金)12:00~、2025年8月2日(土)07:30〜
BSプレミアム4K
初回放送:2025年7月16日(水)19:30~20:00
再放送 :2025年7月23日(水)08:00~、2025年7月26日(土)06:45〜
でNHKの動画配信サービス NHKオンデマンド を視聴可能。 U-NEXT美の壺 も見逃し配信中。
虎に翼・
らんまん・
なつぞら などの朝ドラや
光る君へ・
鎌倉殿の13人・
真田丸 などの大河ドラマ、
探偵ロマンス・
正直不動産 などの名作ドラマ、
ファミリーヒストリー「草刈正雄」を一気見できます。U-NEXTは初回31日間無料トライアル。
NHKオンデマンド は別料金ですが、もらえる600ポイントで購入できます。PR
美の壺 大阪の美 はこちらをどうぞ!

美の壺 2025年度(2025年4月〜2026年3月)バックナンバー はこちらをどうぞ!

美の壺 日々を楽しくおいしく 小鉢 File 640 内容
▽一汁三菜が基本の和食。煮物や酢の物などを盛るのが小鉢。
▽小鉢の形は多種多様。丸や四角の他 桔梗に菊などの花の形。平安貴族の木沓(きぐつ)を模した小鉢まで
▽料理研究家の藤井恵さんが思い出の小鉢を披露。藤井さんが長年憧れていた小鉢のある暮らしとは?
▽江戸時代中頃、小鉢を使う食習慣が広がった理由
▽400年前から作られ続ける名小鉢「割山椒」の美
▽北大路魯山人の名器も登場!
プロローグ
週末に陶芸教室に行くという草刈さん。どんな小鉢を作ろうか考えていますが…。
美の壺 一、自在:食卓に自由な景色を
ひとつめのツボは 自在:食卓に自由な景色を。
内木雅子さん / うつわのみせ大文字 / 多種多様な小鉢【東京都 渋谷区 表参道】
東京・表参道 の大通りを少し入ったところにある和食器店 うつわのみせ 大文字(だいもんじ)。店主は 内木雅子(うちき まさこ)さん。
産地や作家にこだわらず、上質な物を集めたこちらのお店には 小鉢(こばち)の品ぞろえが充実しています。
小鉢の形に決まりはありません。四角や丸の定番から六角形などさまざま。
色鮮やかなものもあれば、日本伝統の模様も豊富です。
場所柄、外国人客が多く、取材日にはデンマークから観光で日本を訪れた方々が買い物をしていました。
和食の店で、さまざまな料理をのせた小鉢に興味を引かれたといいます。
小鉢には 自然をモチーフにしたものが数多くあります。

青磁桔梗渕小鉢(せいじききょうぶちこばち)。
桔梗(ききょう)の花を模した 桔梗渕(ききょうぶち)、あるいは 桔梗形(ききょうがた)といわれている形。
ちょっとつまんだような形がが桔梗の花を模しているとされています。
菊小鉢。
秋の花といえば菊。
お料理を盛って、全て食べてしまって無くなると、花の花弁が見えて菊が完成する。
そういった楽しさもある小鉢です。
緑交趾菊型小鉢(みどりこうちきくがたこばち)。
こちらも菊の花の形。
鮮やかな色合いが特徴の 交趾焼(こうちやき)の小鉢です。

黄瀬戸沓型小鉢(きせとくつがたこばち)。
歪んだ形が印象的な黄瀬戸沓型小鉢。
平安貴族が履いた 木沓(きぐつ)に似ていることから名付けられました。
透かし彫り小鉢。
繊細な模様を彫り抜いた透かし彫りの小鉢。
職人の高い技術が小さい器に込められています。

十草丸形小鉢。
絵付けも自由自在。
植物の 十草(とくさ)から転じた伝統模様は、まっすぐに伸びる十草をイメージした 細かい線が一本一本 描かれています。線は裏側まで続いています。

網文小鉢。
手拭いや扇にも使われる網目模様。
網は福をからめ捕り、縁起が良いとされています。
これは何に使えばいいんですか?とよく聞かれますが、小鉢には決まりは特にないので自由に使っていたきたい、と内木さん。
名前 | うつわのみせ 大文字(だいもんじ) |
住所 | 東京都渋谷区神宮前5-48-3 |
電話 | 03-3406-7381 |
WEB | https://daimonji.biz/ |
営業時間 | 11:00〜19:00 |
定休日 | 第3日曜、年末年始 |
神崎宣武さん / 民俗学者 / 小鉢の歴史と日本の食習慣

解説してくれたのは食文化に詳しい民俗学者の 神崎宣武(かんざき のりたけ)さん。
神崎さんは1944年岡山県生まれ。実家は宇佐八幡神社社家。家業に反発し武蔵野美術大学へ。
大学で民俗学者の宮本常一教授に出会い民俗学の道へ。その後近畿日本ツーリスト社が開設した日本観光文化研究所で研究。陶磁器、食文化を中心にフィールドワークを重ね著書多数。
宇佐八幡神社の28代目宮司も務めています。
美の壺 スペシャル「日本のお弁当」、美の壺 スペシャル 現代のうつわ、美の壺 File 610「石仏」、にも出演されました。
日本で多種多様な小鉢が使われるようになったのは、江戸時代の器の変化に関係があると神崎さんは考えています。
古来、日本人は 木の器 を使っていました。
おもてなしの席で使われたのは飯椀、汁椀、向付(むこうづけ)などの漆の器、漆器(しっき)。
おかずを盛る小鉢の役割は、向付の椀(わん)が担っていました。
漆器(しっき)、特に本漆は扱いが大変難しい。一つずつ丁寧に洗い、真綿に近い布類で拭いて、よく乾燥して。
さらに布や和紙でくるんで保存しなければひび割れてしまいます。

ところが 江戸時代になると、漆器に替わるように 磁器(じき)が登場し、次第に磁器に替わってきます。
江戸時代の半ばに磁器の小鉢は徐々に庶民の食卓に広がります。
磁器は表面が強くコーティングがしっかりしていて、洗うときにそれほど神経使わなくてもいい。そして水切りがいい。漆器や陶器よりも扱いが楽で便利。
大平椀(おおひらわん)という煮物を入れる漆器は、同じような大きさ・形に磁器に変わっていきました。
いわゆる今でいう「おかず」がここへ乗るようになりました。
さらに小鉢の普及を後押しした理由がもう一つありました。
江戸時代には一人一つの お膳(おぜん)に数種類の器を乗せるのが一般的なスタイル。お膳から口元までは約70cmほどの距離があるため、器を手に持って食べるという作法が定着。
手に持てるサイズ、薄くて丈夫な磁器が好まれ、小鉢が発達していったのです。
日本独自の生活習慣が多様な小鉢を生み、食卓の風景も大きく変わりました。
神崎宣武さんの著書。
美の壺 二、愛着:集める幸せ 使う幸せ
ふたつめのツボは 愛着:集める幸せ 使う幸せ。
藤井恵さん / 料理研究家 / 暮らしを彩る小鉢
愛用の小鉢を紹介してくれたのは料理研究家・管理栄養士の 藤井恵(ふじい めぐみ)さん。
藤井さんは1966年神奈川県川崎市生まれ。女子栄養大学在学中からテレビ番組の料理アシスタントを務め大学卒業と同時に結婚。長女・次女をもうけ、家事と育児に専念した後、テレビ番組のフードコーディネーターを担当。
NHK「きょうの料理」「あさイチ」、日本テレビ「ヒルナンデス」などのメディア出演も多数。レシピ本も多数執筆されています。
美の壺 File 587「土瓶」の回にも出演されました。
藤井の料理は手間をかけずに栄養もしっかりとれるレシピに定評があります。
SNSやレシピ本で提案するのはさまざまな 小鉢(こばち)を添えた献立。
食器棚にはお気に入りの小鉢がたくさんそろっています。
木瓜型小鉢(もっこうがたこばち)。
形で好きなのは 木瓜(もっこう)の器。
深い小鉢だと汁気のあるものも汁気のないものも盛りつけることができます。
小さい小鉢には3分の1丁ほど残ってる豆腐を2人で分けて冷奴。少ない量でも器がカバーしてくれて寂しさを感じさせません。

藤井さんの思い出が詰まった大切な小鉢は駆け出しの頃に購入したもの。
いただいたお仕事で頂いたお金を握りしめて、下の娘をおんぶして食器屋さんに行って買った記憶が詰まっています。
子育てと仕事に奮闘しながら、気に入った小鉢を少しずつ集めてきました。
これは形が面白い。これは使い勝手がいい。ついつい集めた小鉢はいつの間にか50種類。
おままごとが大好きだったという子ども時代。小さな器に石や葉っぱや小枝をいろいろ入れて遊んでいました。
そのまま大人になり、おままごとをしてるような感じでいろんな形の小鉢を集めて折敷の上に並べては見て楽しんでいます。それは心の栄養にもなっているそうです。

藤井さんの小鉢使いを見せていただきました。
まず初めに色や形が重ならないように折敷に並べてみて組み合わせを考えます。
季節の野菜に赤が少ないときには器を赤を入れたりすると、ぱっと華やかに見えるようになるというテクニックも教えてくれました。
盛りつける料理は特別なものでなく日々の総菜です。
春巻きとコロッケも小鉢にのせると装いが一新。
メインディッシュのお肉料理も一ロサイズにおさまりました。
小鉢を使えば冷蔵庫の残り物もぜいたくな御膳ごぜんに早変わり。藤井さんのマジックです。
夜はこれで日本酒を飲みながらゆっくりいただくのが楽しみだという藤井さん。
藤井さんが長年温めてきた夢。それは旅館のように折敷の上にいろいろな小鉢がのっている朝ご飯。
10年ぐらい前からいつかやろうと思ってて、やっとできるようになりました。
小鉢をそろえられた今だからできる朝の御膳を作ってもらいました。
温泉卵を花びらの形の小鉢に割り入れます。
焼きじゃけは渋い色合いの小鉢に。しゃけの赤ときゅうりの緑が映えます。
発芽玄米のごはんに絹さやと油揚げのおみそ汁。
6つの小鉢を添えて朝食御膳の完成です。
少しずつたくさんのものを食べたい。欲張りな願いをかなえる小鉢は暮らしを豊かに彩る食卓の味方です。
名前 | 藤井恵(ふじい めぐみ) |
WEB | https://ameblo.jp/fujii-megumi/ |
藤井恵さんのレシピ集。
美の壺 三、割山椒:食卓に花咲く小宇宙
最後のツボは 割山椒:食卓に花咲く小宇宙。
割山椒(わりざんしょう)/ 400年前に誕生した小鉢

形も色も大きさも自由な小鉢。
中でも独特なものが 割山椒(わりざんしょう)です。
ふっくらとした丸み。
大きく入った3つの切れ込み。
この形は山椒の実がはぜた様子を表しています。
たくさんの実をつける山椒は子だくさんを連想させることから、割山椒は縁起が良い器とされています。

割山椒は安土桃山時代に 千利休(せんのりきゅう)が確立した 茶懐石(茶懐石)のために作られたと伝えられます。
以来400年間使われ続けている人気の小鉢です。
宮坂 / 魯山人の割山椒【東京都 港区 南青山】
紹介されていたのは 北大路魯山人(きたおうじ ろさんじん)が作った 割山椒(わりざんしょう)。
ふっくらとした丸み。深く潔く入った切れ込み。自然の山椒を思わせる 縁のゆらぎ。
備前の土の色合いが料理を引き立てます。
器と料理はミシュラン1つ星の名店・宮坂(みやさか)の撮影協力。
隙間からチラリと見せるのも割山椒ならではの演出。
「器は料理の着物」と語った魯山人が好んだ小鉢です。
名前 | 宮坂(みやさか) |
住所 | 東京都港区南青山5-4-30 ヴィラソレイユE号 |
電話 | 03-3499-3877 |
営業時間 | 18:00〜23:00 |
定休日 | 日曜 |
大野友之さん / 木挽町 大野 / 茶懐石と割山椒【東京都 新宿区 四谷】

東京・四谷 の 茶懐石(ちゃかいせき)専門の料理店 木挽町 大野(きびきちょう おおの)。
茶懐石とは茶の湯の「おもてなし」のひとつで、その中で提供される食事のことをいいます。

店主の 大野友之(おおの ともゆき)さんは茶人でもあり料理人。
飯と汁と向付で始まる茶懐石。
大野さんが向付に選んだのは鯛の昆布締めです。
盛りつける器は京丹後の作家が焼いた 割山椒(わりざんしょう)。
この4客の器は少しずつ開き方が違っています。集まったお客さんにお互いの器を見比べて楽しんでほしいという遊び心なのだとか。
鯛の透き通った白身を割山椒が優しく包みます。
味を楽しみ えりすぐりの器をめでる茶懐石のだいご味です。
割山椒の小さな宇宙、すばらしい割山椒に鯛の昆布締めを盛り付ければ割山椒がきれいに花咲くと思うと語る大野さんでした。
名前 | 木挽町 大野(きびきちょう おおの) |
住所 | 東京都新宿区四谷3-6 |
電話 | 03-3353-5455 |
予約 | https://restaurant.ikyu.com/107932 |
営業時間 | 12:00〜22:00 |
定休日 | 不定休 |
紹介されていた茶懐石の名店、木挽町 大野(きびきちょう おおの)。お料理の後に茶室でお菓子と抹茶をいただけるコースあり。
荒木漢ーさん / 荒木陶房 笠取士半窯 / モダンな割山椒【京都府 宇治市】
ユニークな形の 割山椒(わりざんしょう)はどのように作られるのでしょうか。
京都府宇治市 の工房、荒木陶房 笠取士半窯 は親子2代で割山椒を手がけてきました。
作業工程を見せてくれたのは代表で陶工の 荒木漢ー(あらき かんいち)さん。
名工といわれた父・荒木義隆(あらき よしたか)さんは暇を見つけては割山椒を焼いていたそうです。
父・義隆さんの割山椒。
波打つ縁に大きな切れ込み。釉薬を使わない焼き締めの肌が美しい模様を描きだしています。
作り手の個性が色濃く出る割山椒。
父・義隆さんは他の焼き物に飽きるといつも割山椒に立ち返り、陶工としての自分を見つめなおしていたといいます。
父の技を引き継ぎながら漢ーさんは時代に合わせた割山椒を模索しています。
義隆さんの作った見本は切れ込みがきつく深く入っています。漢ーさんは重ねて保存するときのことを考え、重なりがいい形を考えているのだとか。
ろくろで成型し、ヘラで3か所を押さえくぼみを入れます。
少し乾燥させ3か所の切れ込みを入れます。
どのくらいの深さで どのくらい開くかに作り手の個性とセンスが表れます。
切れ込みの頂点に小さな穴を開けるのは、焼いたときに窯の中で割れるのを防ぐため。
あとは一気に潔くカット。
手がかかる分楽しいく作っていると漢ーさん。
父は焼き締めを好みましたが、漢ーさんは釉薬をかけてモダンな割山椒を目指します。
ほんのりと丸みを出しながらもシャープな漢ーさんの作品。
和食にも洋食にも合う鮮やかなトルコブルー。小鉢の可能性を広げる現代の割山椒です。
割山椒が生まれて およそ400年。時代を超えて受け継がれる小鉢です。
名前 | 荒木陶房 笠取士半窯 |
住所 | 京都府宇治市炭山久田 炭山工芸村 |
荒木陶房 笠取士半窯、荒木漢一さん作の器。
エピローグ
オリジナリティーのある小鉢の構想を練りすぎて行き詰まってしたった草刈さん。
結局作ったのは…ラーメン鉢?
でNHKの動画配信サービス NHKオンデマンド を視聴可能。 U-NEXT美の壺 も見逃し配信中。
虎に翼・
らんまん・
なつぞら などの朝ドラや
光る君へ・
鎌倉殿の13人・
真田丸 などの大河ドラマ、
探偵ロマンス・
正直不動産 などの名作ドラマ、
ファミリーヒストリー「草刈正雄」を一気見できます。U-NEXTは初回31日間無料トライアル。
NHKオンデマンド は別料金ですが、もらえる600ポイントで購入できます。PR
音楽 BGM
ジャズの名曲が流れる美の壺。番組BGMファンもいらっしゃるのではないでしょうか。
オープニング曲と番組内挿入曲をまとめましたので参考にどうぞ。リンク先で試聴できます。
オープニングテーマ
オープニングテーマ は Art Blakey And The Messengers(アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ)の名曲「Moanin’」。ジャズドラマー アート・ブレイキーが1958年に発表した同名のアルバムに収録されています。作曲はピアニストの Bobby Timmons(ボビー・ティモンズ)。
番組内 楽曲
美の壺 2025年(2025年1月〜2025年12月)放送スケジュール 初回放送・再放送 全まとめ はこちらをどうぞ!

美の壺 2025年度(2024年4月〜2025年3月)バックナンバー はこちらをどうぞ!

美の壺 2024年度(2024年4月〜2025年3月)バックナンバー はこちらをどうぞ!

美の壺 2023年度(2023年4月〜2024年3月)バックナンバー はこちらをどうぞ!

美の壺 2022年度(2022年4月〜2023年3月)バックナンバー はこちらをどうぞ!

美の壺 2021年度(2021年4月〜2022年3月)バックナンバー はこちらをどうぞ!

美の壺 2020年度(2020年4月〜2021年3月)バックナンバー はこちらをどうぞ!

美の壺 2019年度(2019年4月〜2020年3月)バックナンバー はこちらをどうぞ!

美の壺 2018年度(2018年4月〜2019年3月)バックナンバー はこちらをどうぞ!

美の壺 2017年度(2017年4月〜2018年3月)バックナンバー はこちらをどうぞ!

美の壺 2016年度(2016年4月〜2017年3月)バックナンバー はこちらをどうぞ!
