NHK「美の壺(びのつぼ)」は普段使いの器から家具、着物、料理、建築に至るまで、衣食住、人の暮らしを彩ってきた美のアイテムを解説してくれる番組。紹介されたものは何?場所はどこ?出演は誰?どこで買える?と興味津々。
そんな気になる「美の壺・美術の鑑賞マニュアル」を詳しく調べてみました。最後に番組内の音楽もまとめてあります。
美の壺「神秘のゆらめき 炎」File 622
出演は俳優の 草刈正雄(くさかり まさお)さん、ナレーション(語り)は俳優の 木村多江(きむら たえ)さんです。
NHK BS(BS101チャンネル)
初回放送:2024年12月10日(火)17:30~18:00
再放送 :2024年12月17日(火)10:25~、
BSプレミアム4K
初回放送:2024年12月4日(水)19:30~20:00
再放送 :2024年12月9日(月)13:00~、2024年12月11日(水)08:00~
2024年12月14日(土)06:45〜
U-NEXT でNHKの動画配信サービス NHKオンデマンド を視聴可能。虎に翼・らんまん・なつぞら などの朝ドラや 光る君へ・鎌倉殿の13人・真田丸 などの大河ドラマ、探偵ロマンス・正直不動産 などの名作ドラマ、ファミリーヒストリー「草刈正雄」を一気見できます。U-NEXTは初回31日間無料トライアル。NHKオンデマンド は別料金ですが、もらえる600ポイントで購入できます。PR
美の壺 平安の美 はこちらをどうぞ!
美の壺 2024年度(2024年4月〜2025年3月)バックナンバー はこちらをどうぞ!
美の壺 神秘のゆらめき 炎 File 622 内容
▽京都・仁和寺の金堂(国宝)の壁画「五大明王」。描かれた火炎の意味とは?願い事を書いた木を燃やす「護摩供」も!
▽長野・浅間温泉の「たいまつ祭り」。2.5mもの巨大なたいまつ作りから当日の様子まで密着!
▽日本伝統の明かり「和ろうそく」。炎が大きく、風がなくてもゆらめく秘密とは?
▽日本画の巨匠・速水御舟の傑作「炎舞」。炎を際立たせる驚きの技法
▽「たき火の極意」を専門家が指南!
プロローグ
町内会でギリシャ神話の主役を演じることになった草刈さん。
天の神ゼウスから火を盗んで人に与えるプロメテウス。心にやる気の炎が燃えてきました。
美の壺 一、祈り:願いを込める
ひとつめのツボは 祈り:願いを込める。
大林實温さん / 仁和寺 執行長 / 光背を背負った五大明王の壁画【京都市 右京区】
京都市右京区 にある 仁和寺(にんなじ)は平安時代に創建された真言宗御室派(しんごんしゅうおむろは)の総本山。
解説してくれたのは執行長の 大林實温(おおばやし じつおん)さん。
国宝の 金堂(こんどう)には江戸初期に描かれた 五大明王(ごだいみょうおう)の壁画が残されています。
五大明王とは明王の中でも中心的役割を担う5つの明王。不動明王(ふどうみょうおう)を中心に 金剛薬叉明王(こんごうやしゃみょうおう)、降三世明王(ごうざんぜみょうおう)、軍荼利明王(ぐんだりみょうおう)、大威徳明王(だいいとくみょうおう)の5躰が描かれています。
五大明王はすべて火炎の 光背(こうはい)を背負っています。
その中の中心の仏様が真言宗で特に大切にされているという 不動明王。様々な煩悩や欲望や業といったもの全てを焼き尽くすと言われています。
炎の象徴である不動明王と一体になるという意味で行われる供養、護摩供(ごまく)。
護摩炊(ごまたき)きや 護摩祈願(ごまきがん)とも言われます。
炉に仏を招き火を焚いて願いを捧げます。
火に願い事を書いた護摩木(ごまぎ)を入れ、煩悩や障害を焼き尽くすことで願いを叶えるのだといいます。
すべてのものを焼き尽くす恐れの面もございますと大林さん。
一方で私たちの様々な障害物を炎で焼き尽くすという意味と同時に炎で私たちをより高めていく。
そういうマイナスからプラスへ転じる、そしてプラスをさらに伸ばしていく。そんな側面があるのではないかと語っていました。
五大明王(ごだいみょうおう)の壁画は2018年秋まで370年以上全く非公開とされてきました。
2018年以降は期間限定で公開されています。公開日程は公式サイトでご確認ください。
名前 | 仁和寺(にんなじ) |
住所 | 京都府京都市右京区御室大内33 |
電話 | 075-461-1155 |
WEB | https://ninnaji.jp/ |
営業時間 | 9:00〜17:00 |
定休日 | なし |
御射神社 / たいまつ祭り【長野県 松本市】
長野県松本市 の 浅間温泉 御射神社(みしゃじんじゃ)春宮 の例大祭 松明祭り(たいまつまつり)。
毎年10月に行われる奇祭。五穀豊穣と生活の安泰を願い巨大な松明に火をつけ温泉街を練り歩きます。
話をしてくれたのは氏子会長の 木村鈐一(きむら けんいち)さんと第八町会 町会長の 柳原忠志 さん。
9月。祭りのための 松明(たいまつ)が作られます。
材料の麦わらを並べ両側から丸めていきます。しっかり締め上げることで、崩れない松明が出来上がります。
高さ2.5m、重さ200kgの松明ができました。
祭り当日。
まずは火おこし。御神火(ごじんか)と呼ばれる神聖な炎です。
御神火に備え物をして地域の安泰を願います。
夜7時に温泉街の中心に松明が集まります。その数40基。
ワクワクしている柳原さん。火が入るとさらに心が沸き立つような気持ちになってきます。
神社でおこした御神火でまず細い松明に火をつけ、大きな松明に移します。
神社までおよそ2時間。燃える松明を担いで歩きます。
最後は神社へ奉納。大きな炎に祈りを込めて、連綿と受け継がれてきた祭りです。
名前 | 御射神社(みしゃじんじゃ)春宮 |
住所 | 長野県松本市浅間温泉8147 |
WEB | https://asamaonsen.jp/culture/御射神社/ |
美の壺 二、和ろうそく:唯一無二のゆらめき
ふたつめのツボは 和ろうそく:唯一無二のゆらめき。
佐藤好輝さん / 曹澤寺 住職 / 和ろうそく【滋賀県 高島市】
平安時代、油を入れた皿にいぐさを浸して火をともしていました。
そして室町時代に登場し、江戸時代に一気に広まったのが 和ろうそく(わろうそく)。
材料は 櫨(はぜ)の実などの植物から採った ろう。
芯は 和紙 と いぐさ で作られます。
赤みを帯びた大きい炎。風がなくても揺らぐのが特徴です。
炎の根元を見てみると、ろうが溶けて太い芯に吸い上げられているのがわかります。
ろうが垂れることなく、炎の揺らぎを楽しむことができます。
現在和ろうそくは主に寺や神社で使用されています。
滋賀県高島市 の洞雲山 曹澤寺(そうたくじ)は室町時代に創建された前田家ゆかりのお寺。
住職の 佐藤好輝 さんに話を伺いました。
お釈迦様が自らを灯し火として、色々なことに向かいなさいとおっしゃられたのだと佐藤さん。
灯し火をより所とすると言う意味で供養として ろうそく を灯しているそうです。
用途により使い分けているのだとか。
赤い和ろうそくはお祝い事やおめでたい時の祈祷に使います
炎が大きく上がり、明るくて見ていても心が穏やかになると語っていました。
名前 | 曹澤寺(そうたくじ) |
住所 | 滋賀県高島市今津町今津113 |
電話 | 0740-22-0378 |
WEB | https://tounzansotakuji.simdif.com/ |
花柄絵ろうそくは喪中お見舞いやお供えなどにも使われます。
大西明弘さん+大西みよさん / 大與(だいよ)/ 和ろうそく工房【滋賀県 高島市】
滋賀県高島市 にある1914年創業の和ろうそく工房 大與(だいよ)。創業以来110年、同じ技法で和ろうそくを作り続けています。
作る工程を見せてくれたのは3代目代表の 大西明弘(おおにし あきひろ)さんと母の 大西みよ(おおにし みよ)さん。
芯はいぐさ。太いのが特徴です。
芯を作るのは大西みよさん。100歳になる今でも作り続けています。
いぐさの髄 を乾燥させた紐を巻きつけ、蚕から作られる 真綿(まわた)で留めます。
ろうを付ける作業は大西明弘さんの担当。
櫨(はぜ)の実から作ったろうを付けていきます。塗っては乾かし塗っては乾かしを繰り返します。
大変な手間がかかりますが、やはり櫨(はぜ)が一番だといいます。
ちなみに大與さんは米ぬかでも和ろうそくを作ってらっしゃいます。
仕上げは 上掛けろう(うわがけろう)と呼ばれる品種の違う櫨(はぜ)のろうを使います。
中のろうは粘り気があり、上掛けは粘り気は少なくさらっとしていて色が綺麗。
上掛けろうは中のろうよりも溶ける温度が高いことも特徴。中のろうが先に溶けるため、垂れないのだといいます。
どこまでも白くどこまでも滑らかな肌触りの和ろうそくが完成しました。
先人たちの知恵と職人技が生み出す灯火です。
名前 | 大與(だいよ) |
住所 | 滋賀県高島市今津町住吉2-5-8 |
電話 | 0740-22-0557 |
WEB | https://warousokudaiyo.com/ |
営業時間 | 月〜金:9:00〜17:00 |
定休日 | 土曜・日曜 |
大與(だいよ)の和ろうそく。
美の壺 三、たき火:生活から芸術まで
最後のツボは たき火:生活から芸術まで。
山﨑妙子さん / 山種美術館 館長 / 速水御舟「炎舞(えんぶ)」【東京都 渋谷区】
東京・渋谷区、数々の日本画を所蔵する 山種美術館(やまたねびじゅつかん)。山種証券(現:SMBC日興証券)創業者の 山崎種二(やまざき たねじ)さんが蒐集したコレクションを展示する日本画専門美術館として1966年に開館しました。
現在の館長は山崎種二さんの孫にあたる3代目 山﨑妙子(やまざき たえこ)さん。1961年生まれ、慶應義塾大学卒業後、東京藝術大学大学院美術研究科後期博士課程修了。2007年から山種美術館館長を務めています。
山﨑さんは 美の壺 File 527「猫」の回にも出演されました。
山種美術館には焚き火を描いた日本画の傑作があります。
日本画家・速水御舟(はやみぎょしゅう)が30歳の時に描いた「炎舞(えんぶ)」。
描かれているのは闇の中燃え盛る焚き火の炎、舞い上がる火の粉と群がる蛾の姿。
大正14年の7月から9月にかけて、御舟は家族と一緒に貸し別荘を借りて軽井沢に3ヶ月間滞在し、その時に毎晩焚き火をしては焚き火とそこに群がる蛾をスケッチしたのだとか。
ダイナミックに立ち上る炎。背景は漆黒ではなく、赤みを帯びた独特の色で描かれています。
それは御舟自身が「もう一度描けと言われても二度とは出せない色」と語った色彩。
ただの黒ではなく、非常に深い紫色をしていて炎との対比によって非常に美しく見ます。
煙の部分は金泥を用いて光っているように描いていて、御舟の最高傑作と言っていいと山崎さん。
どこまでも精緻に描かれた蛾。一方、炎は仏画を思わせる様式化された表現。
日本画の新しい表現を追求し続けた速水御舟ならではの作品です。
名前 | 山種美術館(やまたねびじゅつかん) |
住所 | 東京都渋谷区広尾3-12-36 ワイマッツ広尾 |
電話 | 050-5541-8600 |
WEB | https://www.yamatane-museum.jp/ |
営業時間 | 火〜日:10:00〜17:00 |
定休日 | 月曜、展示替え期間、年末年始 |
伊澤直人さん / 野営家 / 焚き火の極意【長野県 諏訪郡 富士見町】
昔ながらの焚き火を実践している人と紹介されていたのは野営家の 伊澤直人(いさわ なおと)さん。
伊澤さんは Office Hideout の代表を務め 週末冒険会(しゅうまつぼうけんかい)を主催。アウトドアプログラムの企画・運営を行なっています。
長野県諏訪郡富士見町 の自宅の敷地内では、生活のための 焚き火(たきび)を伝える活動も行っています。
焚き火の極意はまず薪(まき)の選び方から始まります。
重要なのは乾き具合。湿っていると燃え上がりません。折ったときにパキっと小気味を良い音がして簡単に折れる木を選びます。
この日は焚きつけに使う細い木を始め、炎を大きく長持ちさせるため、3種類の薪を用意しました。
次に薪を組んでいきます。
まず丸太のような太い木を置き、そこに細い薪から順番に山形に立てかけていきます。
太い木は かまどの役目を果たすと言います。火が燃えるのに必要な温度を太い木が供給し、太い木自体も内側から燃えていきます。
最初火おこしするのに必要な 焚き付け(たきつけ)は1番細い木。そしてだんだん太い木が燃えるように覆います。
調理、暖房、照明というような用途によって、薪の組み方や燃やし方を変えることが、野外で焚き火を活用するときにすごく重要なことだと伊澤さん。
最初の10分ほどは火の管理が重要だと言います。
ある程度燃えたら手前にもう1本かまど代わりの太い木を置き、熱を溜め込みます。
そして太い薪をさらに立てかけて完成。
炎が大きくなり、明かりとしての焚き火になりました。
刻一刻と姿を変える炎。
暖をとったり料理をするときは薪を崩し、おき火にすると良いのだとか。
1つとして同じ燃え方しているものがないし、何時間でも見ていられるのが焚き火と語る伊澤さん。
生活から芸術まで、炎は私たちに寄り添い続けています。
名前 | 週末冒険会(しゅうまつぼうけんかい) |
住所 | 長野県諏訪郡富士見町境11601-2 週末冒険会八ヶ岳Base |
電話 | 090-3521-7970 |
WEB | https://backcountry-boys.net/ |
伊澤直人さんの著書。
火起こし道具。
エピローグ
頭に月経樹の冠をかぶりギリシャ神話を読んでみたり。
炎の映像を見ながらうたた寝したり。相変わらずマイペースな草刈さんでした。
U-NEXT でNHKの動画配信サービス NHKオンデマンド を視聴可能。虎に翼・らんまん・なつぞら などの朝ドラや 光る君へ・鎌倉殿の13人・真田丸 などの大河ドラマ、探偵ロマンス・正直不動産 などの名作ドラマ、ファミリーヒストリー「草刈正雄」を一気見できます。U-NEXTは初回31日間無料トライアル。NHKオンデマンド は別料金ですが、もらえる600ポイントで購入できます。PR
音楽 BGM
ジャズの名曲が流れる美の壺。番組BGMファンもいらっしゃるのではないでしょうか。
オープニング曲と番組内挿入曲をまとめましたので参考にどうぞ。リンク先で試聴できます。
オープニングテーマ
オープニングテーマ は Art Blakey And The Messengers(アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ)の名曲「Moanin’」。ジャズドラマー アート・ブレイキーが1958年に発表した同名のアルバムに収録されています。作曲はピアニストの Bobby Timmons(ボビー・ティモンズ)。
番組内 楽曲
美の壺 2024年(2024年1月〜2024年12月)放送スケジュール 初回放送・再放送 全まとめ はこちらをどうぞ!
美の壺 2024年度(2024年4月〜2025年3月)バックナンバー はこちらをどうぞ!
美の壺 2023年度(2023年4月〜2024年3月)バックナンバー はこちらをどうぞ!
美の壺 2022年度(2022年4月〜2023年3月)バックナンバー はこちらをどうぞ!
美の壺 2021年度(2021年4月〜2022年3月)バックナンバー はこちらをどうぞ!
美の壺 2020年度(2020年4月〜2021年3月)バックナンバー はこちらをどうぞ!
美の壺 2019年度(2019年4月〜2020年3月)バックナンバー はこちらをどうぞ!
美の壺 2018年度(2018年4月〜2019年3月)バックナンバー はこちらをどうぞ!
美の壺 2017年度(2017年4月〜2018年3月)バックナンバー はこちらをどうぞ!
美の壺 2016年度(2016年4月〜2017年3月)バックナンバー はこちらをどうぞ!