NHK「美の壺(びのつぼ)」は普段使いの器から家具、着物、料理、建築に至るまで、衣食住、人の暮らしを彩ってきた美のアイテムを解説してくれる番組。紹介されたものは何?場所はどこ?出演は誰?どこで買える?と興味津々。
そんな気になる「美の壺・美術の鑑賞マニュアル」を詳しく調べてみました。最後に番組内の音楽もまとめてあります。
美の壺「布に花咲く 絞り染め」File 604
出演は俳優の 草刈正雄(くさかり まさお)さん、ナレーション(語り)は俳優の 木村多江(きむら たえ)さんです。
最新エピソード 美の壺 File 621「平安の美」 もどうぞ併せてご覧下さい。
NHK BS(BS101チャンネル)
初回放送:2024年5月14日(火)17:30~18:00
再放送 :2024年5月21日(火)10:25~
BSプレミアム4K
初回放送:2024年5月8日(水)19:30~20:00
再放送 :2024年5月15日(水)08:00~、2024年5月18日(土)06:45〜
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美の壺 布に花咲く 絞り染め File 604 内容
▽京都で見つけたポップな現代の絞り染めアイテム
▽職人が生み出す「雪花絞り」の技
▽室町時代に一世を風靡し、武将も珍重した幻の絞り染め「辻ヶ花」とは?!
▽染色家・久保田一竹が半生をかけ生み出した極上の世界
▽大きな円柱で染める?!一度途絶えた「嵐絞り」を絞り染作家が復元!
▽三宅一生のテキスタイルデザイナーが「蜘蛛絞り」の技法を使って生み出した洋服。その制作現場をテレビ初公開!!
プロローグ
草刈さんが見つけた箱の中に入っていたのは絞り染めの布?
美の壺 一、模様:一期一会の味わい
ひとつめのツボは 模様:一期一会の味わい。
若林剛之さん / SOU・SOU(そうそう)/ 現代のライフスタイルに合わせた絞り染め【京都市 中京区】
京都市中京区 の SOU・SOU(そうそう)は伝統の技法や素材を用いて、今のライフスタイルに合ったものづくりをしているブランド。創業は2003年。地下足袋から和服・洋服・雑貨、和菓子や家具など、多岐にわたるアイテムを製作・販売しています。
解説してくれたのはプロデューサーの 若林剛之(わかばやし たけし)さん。
人気の1つが 絞り染め(しぼりぞめ)。
紹介されていたのは 豆絞り(まめしぼり)のシャツ、縫い締め絞り(ぬいしめしぼり)の羽織、雪花絞り(せっかしぼり)のワンピース、帽子絞り(ぼうししぼり)のシャツ。
こうした伝統の技法や素材を残していきたいと、若林さんが約20年前にブランドを立ち上げました。
色々な絞りの技法がある中で、ポップな絞り、大胆な柄の絞りを今のライフスタイルに合うように心がけてデザインに取り入れています。
絞りは出たとこ勝負ではありますが、同じものが2つ仕上がらない面白みがあるのだと若林さん。
今はインクジェクトで生地に写真を印刷することもできますが、絞りはその真逆。
最先端の技術の反対側にある原始的な技術。そこが面白いと語っていました。
SOU SOU(そうそう)の店舗は京都市内に13店舗、東京・青山に2店舗、サンフランシスコに1店舗あり。
番組が撮影されていたのは京都の SOU・SOU 着衣(kikoromo)店。
名前 | SOU・SOU(そうそう)着衣(kikoromo)店 |
住所 | 京都市中京区新京極通四条上ル中之町583-6 |
電話 | 075-221-0020 |
WEB | https://www.sousou.co.jp/ |
営業時間 | 木〜火:12:00~20:00 |
定休日 | 水曜 |
田端和樹さん / たばた絞り / 帽子絞り、雪花絞り【京都市 中京区】
SOU・SOU(そうそう)の絞り染めの生地を製作しているのは 京都市中京区 の絞り染めの工房 たばた絞り(たばたしぼり)。
代表は絞り染め職人の 田端和樹(たばた かずき)さん。京鹿子絞り(きょうかのこしぼり)の職人の父から技を学び、今年でおよそ20年。SOU・SOUの他、COS(コス)などのファッションブランドともコラボレーションしています。
作業工程を見せてもらいました。
帽子絞り(ぼうししぼり)はつまんだ布に樹脂のカバーをかけ染料が入らないようにして染めます。
使用されていた生地は綿ですが、田端さんは麻やウールなども使います。
染め上がった後、カバーを外すときれいな模様が現れます。
浴衣の反物を 雪花絞り(せっかしぼり)に染めます。
この日は4等分に細長くしたものを正三角形に畳みます。
畳んだ生地を縦にして木の板で上下から挟む 板締め(いたじめ)と呼ばれる技法。
板で上から布を押し込み糸を使って固定。どのくらい強く挟むかで模様の出方が大きく左右されます。
初めに紺の染料の中へわずか3秒浸けて、次に紫の染料に1分間浸けます。
染料に浸ける時間が模様の色の濃さや大きさを変えていきます。
水で洗って余分な染料を落とし、最後にお湯の中へ。
きれいな紺色が浮かび上がってきました。
雪花絞りは江戸時代から他の産地で作られてきましたが、田端さんはその反物を参考に試行錯誤の末、今のやり方を確立しました。
人が作るものは完璧なものはなくて、歪んでいたり、いびつだったり、同じものがなかったり、それが個性だと田端さん。
唯一無二のものが生まれるのが魅力です。
名前 | たばた絞り(たばたしぼり) |
住所 | 京都市中京区壬生松原町43-15 |
電話 | 090-8526-2327 |
WEB | http://kyoshibori.jp/ |
美の壺 二、描く:重ねの技が描き出す
ふたつめのツボは 描く:重ねの技が描き出す。
辻が花(つじがはな)/ 幻の絞り染め
辻が花(つじがはな)は幻と言われた絞り染め。
辻が花とは主に 縫い締め絞り(ぬいじめしぼり)という技法を用いて、多くの色、さらに絵や刺繍を施す贅を尽くした絞り染めのこと。
戦国時代の当たる武将たちも珍重しました。
重要文化財「小袖 白練緯地花鳥模様(こそで しろねりぬきじかちょうもようつじがはなぞめ)」は室町時代の1566年に神社に奉納する芸能のために作られた衣装。東京国立博物館に収蔵されています。
重要文化財「胴服 染分地銀杏雪輪散模様(どうぶく そめわけじいちょうゆきわちらしもよう)」は徳川家康が家臣に贈ったと伝えられる辻が花の胴服(どうぶく)。東京国立博物館に収蔵されています。
しかし、人気を把握した辻が花も、江戸中期友禅染が登場すると急速に衰退。
辻が花は幻の絞り染めと呼ばれるようになりました。
二代 久保田一竹さん / 久保田一竹美術館 / 現代の辻が花【山梨県 南都留郡】
山梨県南都留郡(みなみつるぐん)の富士山を望む場所にある 久保田一竹美術館(くぼたいっちくびじゅつかん)には染色家・久保田一竹(くぼた いっちく)の作品が展示されています。
久保田一竹が生涯をかけ作り上げたのは「現代の辻が花」とも言われる絞り染めの技法で染められた絵画のような着物。
着物全体に絞り染めが施されていて、染め分けられた草花は立体的な美しさを見せています。
解説してくれたのは息子の 二代 久保田一竹(くぼた いっちく)さん。
初代 久保田一竹(くぼた いっちく)は大正6年(1917年)東京生まれ。神田の骨董品屋に生まれましたが、手に職をつけたいと14歳で手書き友禅の道へ。1937年、20歳の時に東京国立博物館で目にした 辻が花 に胸を打たれ、その技法を研究するようになります。太平洋戦争に出兵、敗戦すると捕虜となりシベリアに抑留という辛い時期を乗り越え、40歳で本格的に研究を開始し独自の技法「一竹辻が花」を生み出します。
2003年に亡くなるまで制作を続け、その功績は国内外で高く評価されています。
もともとは友禅染の作家でした。
「御」という作品は赤富士を表現した一作。
富士の作品は10点ほど残されていますが、その中でも代表作といわれる印象的な作品です。
夏の朝赤い光で満たされた世界。草花や鳥たちも赤い光に染まり、その中央に富士山が大きくそびえています。
「幻」は研究の末完成した第1号の作品。
緻密に染めあげられた花々。その柔らかい輪郭が濃い地染めの中に鮮やかに浮かび上がっています。
代表作の1つ「燦(さん)」は69歳の時の作品。
モチーフにしたのはシベリアの夕日。久保田一竹は太平洋戦争で捕虜としてシベリアに抑留されました。
その時に見た雄大な夕日が生きる糧になったと生前語っています。太陽の中にも繊細な墨書きで様々な草花が描き込まれています。
名前 | 久保田一竹美術館(くぼたいっちくびじゅつかん) |
住所 | 山梨県南都留郡富士河口湖町河口2255 |
電話 | 0555-76-8811 |
WEB | http://www.itchiku-museum.com/ |
営業時間 | 水〜月:10:00〜17:00 |
定休日 | 火曜 |
初代 久保田一竹の制作工程
久保田一竹(くぼた いっちく)の記録映像が残されていました。
まず下絵を書きます。下書きはせず直接生地に描いていきます。
細かな模様を1つ1つに縫い締め絞りを行っていきます。
部分染めの「色差し(いろさし)」という作業。
縫う、絞る、染める、蒸す、水洗い、糸を解く、という工程を何十回と繰り返していきます
1つの作品に1年以上かけて完成させたといいます。
久保田一竹最大の連作「光響(こうきょう)」
パノラマ写真のように美しい風景がダイナミックにつながっています。
移ろう日本の色とさらには宇宙までを表現しようと構想していました。
目指したのは80作品。しかし完成したのは39。志半ば85歳で亡くなりました。
絵画のごとく美しい作品を残した久保田一竹。その彩りは今も輝きを放ち続けています。
美の壺 三、再生:伝統に続く
最後のツボは 再生:伝統に続く。
有松 / 絞りの名産地【愛知県 名古屋市 有松】
歌川広重(うたがわひろしげ)の「東海道五十三次 鳴海(とうかいどうごじゅうさんつぎ なるみ)名産絞り店」の看板には「名物有松絞(めいぶつ ありまつしぼり)」と書かれています。
この 有松(ありまつ)という場所は 絞り染め の名産地。
旅人に絞り染めの手ぬぐいを売るようになり、やがて絞り染めが盛んに。
当時は100を超える絞り染めの技法があったのだとか。
早川嘉英さん / 蔵工房 絞り染め作家 / 嵐絞りの復興【愛知県 名古屋市 有松】
愛知県名古屋市有松(ありまつ)で紹介されていたのは 蔵工房(くらこうぼう)の絞り染め作家 早川嘉英(はやかわ かえい)さん。
早川さんは1946年に名古屋市有松の染色を営む家に生まれ、1972年から絞り染めの道へ。一度途絶えた 嵐絞り(あらししぼり)という技法を復興させました。1985年からは有松の旧家の絞り問屋の蔵を 蔵工房(くらこうぼう)として活動拠点にしています。
嵐絞りは嵐の中の雨のような直線模様が特徴です。
直線を組み合わせて染める嵐絞りのバリエーションは数多くあります。
「羽衣(はごろも)」と名付けられた嵐絞りは交差する2本の直線が特徴です。
早川さんに制作工程を見せてもらいました。
ステンレスの円柱に布を巻き付け、間隔約8mmで木綿の糸をかけていきます。
昔は丸太を使っていましたが、ステンレスの円柱はその代用品。
どのくらいの力で糸を巻きつけていくか、それが模様の出方を左右します。
糸を巻きつけた後、一気に寄せていくと生地が蛇腹に。
畳まれた上の部分を染めれば、直線模様が出来上がるのだとか。
一度水を染み込ませた後に表面を染めます。使うのは本藍。
およそ40年前、嵐絞りは時代の流れとともに1度途絶えていました。
早川さんは残された嵐絞りを研究。復元を始めます。
線で構成することが絞り染めの中でも面白いと早川さん。
白地に藍の直線模様はキリッと生えています。
名前 | 蔵工房(くらこうぼう) |
住所 | 愛知県名古屋市緑区有松2316 |
電話 | 090-2613-5563 |
WEB | https://www.arashi-hayakawa.com/ |
NHK「すてきにハンドメイド」2023年8月号で早川嘉英さんと嵐絞りが紹介されています。
皆川魔鬼子さん / HaaT(ハート)/ 蜘蛛絞り【東京都 南青山】
東京都南青山 の イッセイミヤケ HaaT(ハート)は「テキスタイルから発想する」がコンセプトのブランド。
トータルディレクターは三宅一生のもとで長年テキスタイルディレクターを務めた 皆川魔鬼子(みながわ まきこ)さん。
皆川さんは京都府生まれ。祖父・父は染織工芸の作家。京都市立美術大学(現・京都市立芸術大学)美術学部染織科に在学中から染織作家としての創作活動を始めました。1970年に三宅一生と出会い、卒業後の1971年に三宅デザイン事務所に入社。素材開発を担当するテキスタイルデザイナーとして活躍し、2000年にイッセイミヤケの中にブランド HaaT(ハート)を創設してトータルディレクターに就任しました。
紹介されていたのは有松の絞り染め技法が使われているシャツ。
裾や襟・元袖口に1cmほどの小さな突起が施されています。蜘蛛絞り(くもしぼり)という伝統技法を使って作られました。
皆川さんは新商品の開発のために 名古屋市有松(ありまつ)の老舗問屋を訪ねました。
今回はこれまでと違う生地を使った新作のテストを行います。
蜘蛛絞りは、江戸時代から有松で行われてきました。つまんだ生地に糸を巻いて絞り、染めるのが蜘蛛絞り。蜘蛛の巣のような模様ができます。
有松の産地に来て蜘蛛絞り染めに初めて出会ったという皆川さん。惹かれたのは蜘蛛絞りの染めではなく、くくっている形状。
ひらめいたのは服の端の部分にくくりのある服。くくりがアクセントになっています。
今回の生地は綿に近い風合いのスパンポリエステルという合成繊維。美しい立体加工ができるかを試します。
糸のくくり方の原理は昔と同じ。針金に生地をひっかけると、引き込まれながら糸でくくられていきます。
次にシワ加工をし、糸でくくって丸めます。
釜に入れ蒸気と圧力をかけシャツに施した加工を記憶させます。
立体的なフォルムを失うことなく取り扱いもしやすくなるそうです。
絞り染めの技法が生み出した美しく立体的なフォルム。
最先端のファッションの中にも日本の伝統が息づいていました。
名前 | HaaT(ハート)AOYAMA |
住所 | 東京都港区南青山4-21-29 |
電話 | 03-5785-0400 |
WEB | https://www.isseymiyake.com/pages/haat |
営業時間 | 11:00〜20:00 |
定休日 | 不定休 |
エピローグ
絞り染めのハンカチには「おばあちゃんへ。いつもありがとう。これは学校でつくりました。どうぞ使ってください。正雄より」という手紙が添えられていました。子供の頃におばあちゃんにプレゼントしていたんですね。
U-NEXT でNHKの動画配信サービス NHKオンデマンド を視聴可能。虎に翼・らんまん・なつぞら などの朝ドラや 光る君へ・鎌倉殿の13人・真田丸 などの大河ドラマ、探偵ロマンス・正直不動産 などの名作ドラマ、ファミリーヒストリー「草刈正雄」を一気見できます。U-NEXTは初回31日間無料トライアル。NHKオンデマンド は別料金ですが、もらえる600ポイントで購入できます。PR
音楽 BGM
ジャズの名曲が流れる美の壺。番組BGMファンもいらっしゃるのではないでしょうか。
オープニング曲と番組内挿入曲をまとめましたので参考にどうぞ。リンク先で試聴できます。
オープニングテーマ
オープニングテーマ は Art Blakey And The Messengers(アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ)の名曲「Moanin’」。ジャズドラマー アート・ブレイキーが1958年に発表した同名のアルバムに収録されています。作曲はピアニストの Bobby Timmons(ボビー・ティモンズ)。
番組内 楽曲
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