NHK「美の壺(びのつぼ)」は普段使いの器から家具、着物、料理、建築に至るまで、衣食住、人の暮らしを彩ってきた美のアイテムを解説してくれる番組。紹介されたものは何?場所はどこ?出演は誰?どこで買える?と興味津々。
そんな気になる「美の壺・美術の鑑賞マニュアル」を詳しく調べてみました。最後に番組内の音楽もまとめてあります。
美の壺「瑞穂(みずほ)の国の 龍」File 595
出演は俳優の 草刈正雄(くさかり まさお)さん、ナレーション(語り)は俳優の 木村多江(きむら たえ)さんです。
最新エピソード 美の壺 File 621「平安の美」 もどうぞ併せてご覧下さい。
NHK BS(BS101チャンネル)
初回放送:2024年1月17日(水)19:30~20:00
再放送 :2024年1月24日(水)09:30~
BSプレミアム4K
初回放送:2024年1月10日(水)19:30~20:00
再放送 :2024年1月17日(水)08:00~、2024年1月20日(土)06:45〜
2024年6月12日(水)19:30~、2024年6月17日(月)13:00~
2024年6月19日(水)08:00〜、2024年6月22日(土)06:45〜
Eテレ
再放送 :2024年11月17日(日)23:00〜、2024年11月25日(月)05:55〜
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美の壺 瑞穂(みずほ)の国の 龍 File 595 内容
2024年の干支「龍」を特集。十二支の中で唯一実在しない生き物は2000年前の弥生時代から、人気映画「千と千尋の神隠し」でも強い存在感を放つ。現存する最古の龍の姿を刻む弥生土器。
若き匠が手掛ける木彫の「龍」
京都・妙心寺の「雲竜図」。絵師狩野探幽と「龍」
日本画家・土屋禮一さんの龍の障壁画、誕生秘話。
清流に龍をとらえる写真家
龍神信仰が残る奈良・室生。稲わらで作る龍の依り代。
プロローグ
蔵の中に龍の掛け軸があったのを思い出した草刈さん。出してみると龍ではなく鯉の絵でした。
説明書には「鯉が龍となる時、願いは叶えられる」と書いてありますが?
美の壺 一、化身:自然の象徴
ひとつめのツボは 化身:自然の象徴。
春成秀爾さん / 考古学者 / 弥生時代の土器に描かれた龍【大阪府 和泉市】
日本で現存する 最古の龍 は大阪府池上曽根遺跡で出土し 大阪府立弥生文化博物館(おおさかふりつやよいぶんかはくぶつかん)に所蔵されている 弥生時代の土器 に描かれています。
龍は壺の中央に線で刻まれていて、中国から稲作が伝わった弥生時代に龍の概念も広まったと考えられています。
解説してくれたのは考古学者の 春成秀爾(はるなり ひでじ)さん。
日本の龍の足の表現は魚のヒレの形をしていといいます。
龍は水の神様。魚が水の中に住むように、龍も水の中に住む動物だと考えられたようです。
龍が描かれた土器は井戸から発掘されました。
稲作が始まった当時、水が枯れないよう雨乞いをするため、龍に祈ったとされています。
水の神様である龍に酒を供える器。祭祀に使われていたと春成さんは考えています。
なぜ壺に龍の絵を描くのか。それは「宛先」を示していると春成さん。
相手の龍は自分に当ててるということはわかって、それじゃお酒をいただこうと。
そしてお酒をいただいた以上、じゃあ水が湧き出るようにしてあげようと。
水を司る神様に対して捧げ物をして、水をどうぞ沸いてくださいというお願いをしている。
その跡ではないかと春成さんは考えています。
春成さんは土器の文様を写し取ることで、その本質に迫ろうと努めています。
龍の隣に描かれた線に雨を切望する人々の思いを読み解きます。
後ろ足の近くに描かれていた図像は稲妻の表現でないかと推測。
稲妻に乗って雷と雨とともに龍が降りてくると、あの絵は表現しているんではないかと語る春成さん。
龍というのは人間を超越した存在。
水の精霊であり、とてつもないエネルギーの持ち主。
人間が勝手に海出したものと考えずに、実在するものとして見えないものに対する畏敬、そこが龍の魅力、惹きつけるところだと春成さん。
名前 | 大阪府立弥生文化博物館(おおさかふりつやよいぶんかはくぶつかん) |
住所 | 大阪府和泉市池上町4-8-27 |
電話 | 0725-46-2162 |
WEB | https://yayoi-bunka.com/ |
営業時間 | 火〜日:9:30〜17:00 |
定休日 | 月曜、年末年始 |
春成秀爾さんが編集した書籍。
菊池侊藍さん / 木彫刻師・仏画師 / 倶利伽羅龍の木彫
弥生土器から2000年、未だ姿を現さない龍を写し取ろうと奮闘する匠と紹介されていたのは木彫刻師・仏画師の 菊池侊藍(きくち こうらん)さん。
菊池さんが彫った 倶利伽羅龍(くりからりゅう)。不動明王の化身です。第一作は群馬県前橋市の天明寺に納品されているそうです。
もともとアニメなど様々な媒体で龍やドラゴンを目にする機会は多く、子供の頃から好きだったという菊池さん。龍に特別な思いを寄せてきました。
「千と千尋の神隠し」ではハクが龍の形になりますが、千を迎えに来るシーンのヒゲのたなびきや千を乗せて空を飛ぶシーンの体のうねりなどが子供ながらに印象的に残っているのだとか。
倶利伽羅龍製作の工程を見せていただきました。まずは全体をかたどる 荒彫り(あらぼり)。
基本的には 九似(きゅうじ)を元にして形作ります。九似とは頭はラクダ、うなじはヘビなど龍の体が9つの動物に似ているという説。
古来中国では9は無限を表し、龍はこの世の生き物すべての象徴であると考えられてきました。
龍全体が風をまとっていたり、龍が風を起こしていたり。龍の躍動を表現するために、菊池さんは胴のうねりや鱗に心血を注ぎます。目指すのは力強い風格のある中に繊細さと迫力とが共存するような龍。
体の部位に沿って1枚1枚鱗の大きさを変え、輪郭を彫ります。
およそ200本のみを使い分けながら、さらに凹凸をつけ、立体的に仕上げていきます。
不動明王の如く炎を背にまとった倶利伽羅龍。一切の悪を滅ぼす力を持ち、仏の教えを守る神獣です。
自然の象徴・龍は神仏の形をとり、私たちを見守っています。
名前 | 菊池侊藍(きくち こうらん) |
WEB | https://kikuchikouran.jp/ |
菊池侊藍さんの龍の彫刻の写真がタペストリーになりました。
菊池侊藍さんのインタビューと作品が掲載された書籍。
美の壺 二、絵画:変幻自在の姿を描く
ふたつめのツボは 絵画:変幻自在の姿を描く。
津田章彦さん / 妙心寺 / 狩野探幽が描いた雲龍図【京都市 右京区】
南北朝時代、禅寺としての歴史が始まった 京都市右京区 の 妙心寺(みょうしんじ)。臨済宗妙心寺派の大本山で京都最大の禅寺です。解説してくれたのは妙心寺法務部の 津田章彦 さん。
妙心寺で有名な 狩野探幽(かのう たんゆう)作の 雲龍図(うんりゅうず)。説法を受ける建物 法堂(はっとう)の天井の直径およそ12mの円相に描かれた龍です。
雲龍図は火事を避け、仏法の雨を降らすとされてきました。
妙心寺の龍は、明暦2年(1656年)に描かれ、現在でも修復することなくおよそ360年前の鮮やかな姿をとどめています。
愚堂東寔(ぐどうとうしょく)という当時の妙心寺住職が江戸幕府のお抱え絵師であった狩野探幽に依頼。
言い伝えでは「何百年何年でも生き続ける龍を描いてほしい」と依頼したのだとか。
既に名声を得ていた探幽がこの雲龍図を完成させるまでには約8年という多くの歳月を費やしたといいます。
探幽は妙心寺で3年間座禅を組み、住職と絵師の間で禅の本質を知るための問答が交わされました。
さらに探幽は5年月をかけて龍を描きました。
完成したのはどこから見ても睨んでいるように見える 八方睨みの龍(はっぽうにらみのりゅう)。
意図的なのか偶然なのかわかりませんが、見る角度によってその表情姿が変わるように思える、見るものの心を映す鏡のような龍です。
名前 | 妙心寺(みょうしんじ) |
住所 | 京都府京都市右京区花園妙心寺町1 |
電話 | 075-461-5226 |
WEB | https://www.myoshinji.or.jp/ |
営業時間 | 法堂・大庫裏:9:00~12:00, 13:00〜16:00 |
定休日 | なし |
土屋禮一さん / 日本画家 / 瑞龍寺の瑞龍図【岐阜】
禅の修行道場である名刹、瑞龍寺(ずいりょうじ)。美の壺 File 588「禅」の回にも登場しました。
紹介されていたのは瑞龍寺の障壁画 瑞龍図(ずいりょうず)の龍。描いたのは日本画家の 土屋禮一(つちや れいいち)さん。
稲光と共に見え隠れしている姿を追うと、黒雲とともに龍が現れます。
土屋さんは障壁画に取り掛かる際、瑞龍寺の住職に「蔵頭露尾(ぞうとうろび)」という言葉を教わりました。
「頭隠して尻隠さず」と同義ですが、土屋さんは「わかっているようでもほとんどわからない」と考え、中々姿を現さない龍を連想。
龍の頭が見えているけれど、体は隠れている。体の方が見えたと思ったら、既に顔は見えない。中々姿を見せない龍と不動の山を題材にしようと思いつきました。
1998年の制作当時、土屋さんは題材の山を見るため中国安徽省(あんきしょう)に出かけます。
ところが27年ぶりの大台風に見舞われ、道路を寸断されて、谷の激流の中をロープをつけて渡ることに。
その悪天候を体験しているときに、自然の見えない力の中で龍に出会えたと思ったと言います。
自然の見えない力に龍を見た土屋さんは山々を描くことなく、大きな宇宙観を表そうと決めました。
空気や風や光、見えない世界全部を描く。見えないもの生かすために絵を描くと語る土屋さん。
土屋さんはあえて正面から捉えた龍に挑みました。
その際最も腐心したのが目だといいます。何度も描いたり消したり。遠くを見ている目が内なる自分を見ている目か。
龍が暴れまわる向こう側には彩雲。これも龍の姿です。
名前 | 瑞龍寺(ずいりゅうじ) |
住所 | 富山県高岡市関本町35 |
電話 | 0766-22-0179 |
WEB | https://www.zuiryuji.jp/ |
営業時間 | 2/1-12/9:9:00~16:30 12/10-1/31:9:00~16:00 |
定休日 | なし |
美の壺 三、信仰:恵みに感謝を込めて
最後のツボは 信仰:恵みに感謝を込めて。
山岡淳雄さん / 室生寺 / 龍神伝説【奈良県 宇陀市】
古都・奈良、宇陀市の龍神信仰の里、室生(むろう)。清流が人々の暮らしを支えています。
平安時代から1000年以上この地を守る 室生寺(むろうじ)には龍伝説が受け継がれています。
解説してくれたのは住職の 山岡淳雄(やまおか じゅんゆう)さん。
国宝・五重塔(ごじゅうのとう)の九輪(くりん)の上に開けられた 水瓶(すいびょう)と呼ばれる壺は全国でも珍しい形。
室生寺の僧侶・修円(しゅうえん)と 弘法大師(こうぼうだいし、空海)が祈祷による力比べをし、雨をどちらが先に降らすことができるか争った際に、修円が水瓶に日本国中の龍神をすべて封じ込めたという伝説が残されています。
龍神は雨の神様。修円は日本国中の龍神様を無くしてしまえば、弘法大師が雨を降らすことができないのでは考えたようです。
名前 | 室生寺(むろうじ) |
住所 | 奈良県宇陀市室生78 |
電話 | 0745-93-2003 |
WEB | http://www.murouji.or.jp/ |
営業時間 | 9:00〜16:00 |
定休日 | なし |
堀内昭彦さん / 写真家 / 室生の風景写真に宿る龍【奈良県 宇陀市】
室生の地を度々訪れている写真家 堀内昭彦(ほりうち あきひこ)さんは日本各地の奥深い山々や水の豊かな地を巡り祈りの風景を撮り続けています。
奈良県宇陀市 の 龍鎮渓谷(りゅうちんけいこく)には水を司る神を奉る 龍鎮神社(りゅうちんじんじゃ)があります。
滝壺の水を聖水として古代から雨乞いの神事が行われてきました。
感じ取ることを何よりも大切にしている堀内さん。
この日堀内さんが写した1枚
龍鎮渓谷の水の清らかさが本当に素晴らしいと言う堀内さん。
レンズを移動させて取る流し撮りの手法で水と光を捉えます。
龍というのも1つのエネルギー体。水の流れの中や、大気の流れ、雲となって、現れたり自然の象徴としていろんなところに現れていると感じているそうです。
名前 | 龍鎮渓谷(りゅうちんけいこく) |
住所 | 奈良県宇陀市榛原荷阪 |
堀内昭彦さんが写真を担当した書籍。
新貝吉則さん / 室生龍穴神社 / 龍神を祭る室生【奈良県 宇陀市】
室生寺周辺の地は 九穴八海(きゅうけつはっかい)という名の霊場です。
様々な伝説とともに龍のが付いた淵や岩穴が存在しています。
中でも最も霊験あらたかな場所として信仰を集めてきたのが 吉祥龍穴(きっしょうりゅうけつ)。
古より人々は、この穴に龍が住むと考え、雨を願い、祈りを捧げてきました。
およそ600m下りた麓に龍が地上に姿を現した場所として、龍穴神社(りゅうけつじんじゃ)が祭られています。
社を守るのは室生の5つの村から選ばれた 宮本(みやもと)と呼ばれる氏子。責任役員の 新貝吉則 さんが秋祭りの準備を見せてくれました。
毎年秋祭りが近づくと、宮本の人たちは、龍に見立てた 勧請縄(かんじょうなわ)を協力して作ります。
収穫したばかりのもち米のわらで作った龍の頭。うるち米のわらでなった胴体をつなげ、紅葉で鱗を表します。
勧請杉(かんじょうすぎ)と呼ばれる杉の木に勧請縄(かんじょうなわ)を吊るします。
龍は水の神様。室生の田に水をいただけるよう龍を信仰し恵に感謝する。
代々受け継がれてきたこの習わしも宮本の高齢化に伴い難しくなっているといいます。
室生寺境内にはもう一つの勧請縄が掲げられます。
天神社(てんじんじゃ)は天から龍神が最初に舞い降りる場所。勧請杉と一対で室生の里を見守ります。
祭り当日。天神社に舞い降りた龍神は宮本の人たちと共に勧請杉へとお渡りをします。
これまでの1年に感謝をし、この先1年の平和を祈ります。
龍神に見守られる里、室生。自然の恵みに感謝する暮らしに龍は生きています。
名前 | 龍穴神社(りゅうけつじんじゃ) |
住所 | 奈良県宇陀市榛原荷阪 |
エピローグ
願いをかけると叶う伝説の掛け軸?宝くじが当たりますようにと願いをかけてみます。
突然停電で灯が消え、再び灯がつくと鯉が龍になっていました。
宝くじはといと…300円当たっていました。良い1年になりますように。
U-NEXT でNHKの動画配信サービス NHKオンデマンド を視聴可能。虎に翼・らんまん・なつぞら などの朝ドラや 光る君へ・鎌倉殿の13人・真田丸 などの大河ドラマ、探偵ロマンス・正直不動産 などの名作ドラマ、ファミリーヒストリー「草刈正雄」を一気見できます。U-NEXTは初回31日間無料トライアル。NHKオンデマンド は別料金ですが、もらえる600ポイントで購入できます。PR
音楽 BGM
ジャズの名曲が流れる美の壺。番組BGMファンもいらっしゃるのではないでしょうか。
オープニング曲と番組内挿入曲をまとめましたので参考にどうぞ。リンク先で試聴できます。
オープニングテーマ
オープニングテーマ は Art Blakey And The Messengers(アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ)の名曲「Moanin’」。ジャズドラマー アート・ブレイキーが1958年に発表した同名のアルバムに収録されています。作曲はピアニストの Bobby Timmons(ボビー・ティモンズ)。
番組内 楽曲
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