NHK「美の壺(びのつぼ)」は普段使いの器から家具、着物、料理、建築に至るまで、衣食住、人の暮らしを彩ってきた美のアイテムを解説してくれる番組。紹介されたものは何?場所はどこ?出演は誰?どこで買える?と興味津々。
そんな気になる「美の壺・美術の鑑賞マニュアル」を詳しく調べてみました。最後に番組内の音楽もまとめてあります。
美の壺「和の光満ちて 障子」File 583
出演は俳優の 草刈正雄(くさかり まさお)さん、ナレーション(語り)は俳優の 木村多江(きむら たえ)さんです。
最新エピソード 美の壺 File 621「平安の美」 もどうぞ併せてご覧下さい。
BSプレミアム(2023年11月30日まで。2023年12月1日から NHK BS(BS101チャンネル) へ移動)
初回放送:2023年7月5日(水)19:30~20:00
再放送 :2023年7月12日(水)08:00~、2023年7月15日(土)06:45〜
BS4K(2023年12月1日から BSプレミアム4K へ名称変更)
初回放送:2023年7月5日(水)19:30~20:00
再放送 :2023年7月12日(水)08:00~、2023年7月15日(土)06:45〜
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美の壺 和の光満ちて 障子 File 583 内容
▽カーテンがない!障子の魅力を味わえる邸宅
▽昭和の豪邸に設えられた変わり障子の数々
▽再現不可能!?職人の超絶技巧が光る逸品
▽光を操り、空間を演出!障子に宿る日本人の知恵と美意識
▽職人の腕自慢!精巧を極める障子のミニチュア
▽障子づくりに密着!木という自然に向き合う職人魂
▽豪華絢爛!人気の観光列車の車内を彩る障子▽金沢に夏の訪れを告げる簾戸替えに密着!
プロローグ
新しい障子に替えようかと考えていた草刈さん。
すると不思議なことに障子の神の声が聞こえてきました。
美の壺 一、やわらか:光を操り 家を彩る
ひとつめのツボは やわらか:光を操り 家を彩る。
伊藤孝男さん / 障子のある家【福島県 須賀川市】
福島県須賀川市 の 伊藤孝男(いとう たかお)さんのお宅を訪ねました。
至る所に 障子(しょうじ)が使われています。玄関から居間に通じる引き戸も障子、居間の南に面した窓にも大きな障子。
居間の横にある和室はもちろん階段上の踊り場にも障子が。
こちらのお宅にはカーテンがありません。障子がカーテンの代わり。朝の光を優しく通してくれます。
障子紙に使われる 和紙(わし)。和紙の繊維は隙間の多く日の光を乱反射させ、室内に広げます。
それが柔らかい光となって目には優しく感じるのだそうです。
リビングの障子には上が開くような仕掛けがありました。
障子の一部が上下する 摺上障子(すりあげしょうじ)の1つ。月見障子(つきみしょうじ)とも呼ばれます。
夜の暗がりを感じたかったという伊藤さん。少しずつずらして開けるのは伊藤さんのこだわり。
家の中にいれば外を感じ、外から見えると家の中の暖かさを教えてくれる。
単に遮るものというだけでは無い、障子にはまた違った役割があるようです。
依田徹さん / 遠山記念館 学芸課長 / 遠山元一の豪邸【埼玉県 川島町】
埼玉県比企郡川島町、昭和初期に建てられた豪邸・遠山邸を保存公開している 遠山記念館(とおやまきねんかん)。
実業家で美術品収集家でもあった日興証券創設者 遠山元一(とうやま げんいち)が生家の再興と母の安住な住まいとして3000坪の敷地に建てたもの。解説してくれたのは学芸課長の 依田徹(よだ とおる)さん。
こちらの邸宅は石原さとみさん主演ドラマ「高嶺の花」などのロケ地になっていたりするので、どこかで見たことあると思った方もいるのでは?
農家風の居間 にあるのは5段組の けんどん型 と呼ばれる障子。けんどんとは上下につけられた溝を使って付けたり外したりできる蓋のようなもの。
障子を外すと風が通りやすくなり、自然の風を部屋に取り込むための工夫です。
続いて案内されたのは 書院造の大広間。1番広い障子の面がある部屋です。
障子には光を拡散させる効果があり、和紙を通った日の光は部屋の中の隅々まで広がっていくといいます。
紹介されていたのは大広間に施されていた光を利用した仕掛け。
暗い畳敷きの中廊下に面した部分に障子が付けられています。大広間から障子を通ってきた光が暗い廊下をほのかに照らしていました。
普段は公開していない2階へ。
錆竹兜巾組(さびたけときんぐみ)といわれる障子は現代では再現できないというとても珍しい障子。
数寄屋造りで珍重される 錆竹(さびたけ)で作られたもの。錆竹とはサビのようなまだらが生じた竹のこと。
その竹を割り表面を貼り合わせて作られたもの格子に組み、さらに節を合わせ絶妙に配置。
匠の技が上質な和の空間を作り出しています。
明るさを演出し、和の佇まいを艶やかに彩る。障子には、日本人の知恵と繊細な美意識が宿っているようです。
名前 | 遠山記念館(とおやまきねんかん) |
住所 | 埼玉県比企郡川島町白井沼675 |
電話 | 049-297-0007 |
WEB | https://www.e-kinenkan.com/ |
営業時間 | 火〜日:10:00〜16:30 |
定休日 | 月曜、年末年始 |
美の壺 二、職人技:端々に宿る 職人のこだわり
ふたつめのツボは 職人技:端々に宿る 職人のこだわり。
阿部文和さん / 大阪歴史博物館 / 昭和初期の建具のミニチュア【大阪市 中央区】
平安時代に生み出された 障子(しょうじ)は閉じたままで光を通すという画期的な建具でした。
江戸時代になると様々な種類が作られます。
大阪市中央区 の 大阪歴史博物館(おおさかれきしはくぶつかん)に障子の歴史的資料が残されています。解説してくれたのは学芸員の 阿部文和(あべ ふみかず)さん。
特別に見せていただいたのは 建具雛形(たてぐひながた)といわれるもの。建具雛形とは建具を作るときに施主に見せる見本として作られたミニチュアのようなもの。
昭和初期に大阪の建具店が作ったという建具雛形。いろいろな形の障子の見本がありました。
最も基本的な 横組み障子(よこぐみしょうじ)。
縦長の格子がたくさんある 縦繁障子(たてしげしょうじ)。
障子の中央に額縁が付いている 額入り障子(がくいりしょうじ)。
障子の下に腰板と呼ばれる板がつけられた 腰付き障子(こしつきしょうじ)。
元は猫が出入りするために部分的に開口部があったという 猫間障子(ねこましょうじ)。
よく見ると細い木の角が削られ、動く部分も実に丁寧に作られています。それぞれの職人が自分の腕を振るい、どれぐらいの腕(技術)を持っているかを示す目的もあったのでは、と阿部さん。
たとえ見本であっても、妥協しない当時の職人の心意気です。
名前 | 大阪歴史博物館(おおさかれきしはくぶつかん) |
住所 | 大阪府大阪市中央区大手前4-1-32 |
電話 | 06-6946-5728 |
WEB | https://www.osakamushis.jp/ |
営業時間 | 水〜月:9:30〜17:00 |
定休日 | 火曜、年末年始 |
渡辺忠さん / 建具師 / 雪見障子の製作【福島県 二本松市】
福島県二本松市 の建具師 渡辺忠(わたなべ ただし)さんの工房で 障子 の製作過程を見せてもらいました。
渡辺さんは19歳でこの世界に入り、今年で45年。障子を始め様々な建具を作ってきました。
建具を作るには決まり事があるといいます。それは完成したときに木が森に立っていた時と同じように木材を使うこと。
建具を立てたときに木が逆さまにならないように下は下、上は上。
また、木裏(きうら)木表(きおもて)があるため、木の内側が建具の内側に来るように、外側は外に行くようというのが基本的な扱い方。
木裏とは木の芯に近い方、木表とは木の外側に近い方をいいます。
完成した時に障子に狂いが出ないようにするため、例えば障子の両側の縦枠には、外側に木表が内側に木裏が来るように作ります。
木という自然と向き合ってきた建具職人だからこその知恵です。
昔ながらの組み方で 雪見障子(ゆきみしょうじ)を作るところを見せてもらいました。
仕上げる前に濡れた布で障子の枠になる部分を拭いていきます。
仕上げる前に水をつけて濡らすと加工してる間の傷や凹みが戻ります。やっぱり木は生き物なんですね。
細く加工した木で、縦横の格子を組んでいきます。
ここからが職人の技。縦横の細い木を布を織り上げる糸のようにそれぞれ交互に組んでいくのです。
木をねじりながら行うので ネジ組み と呼ばれる技。こうすることで格子が外れにくく、また障子が反りにくくなります。しかし手間も技術も必要なので、今はほとんど行われないと言います。
格子を組み終えると外枠にはめ、最後に上下に動く格子を取り付けて完成です。
どれだけ作っても納得がいくがいくものはなかなかできないと渡辺さんは語っていました。
美の壺 三、変幻自在:変わる時代 変わらぬ和の心
最後のツボは 変幻自在:変わる時代 変わらぬ和の心。
水戸岡鋭治さん / 工業デザイナー / JR九州の豪華列車・36ぷらす3【福岡市 博多区】
博多駅のホームに入線してきたのはJR九州の人気観光列車「36ぷらす3」。九州を走り、驚き・感動・幸せの3つが味わえるそうです。
36ぷらす3 をデザインしたのは工業デザイナー 水戸岡鋭治(みとおか えいじ)さん。水戸岡さんは1947年岡山県の家具店の長男として誕生。岡山県立岡山工業高校インテリア科卒業後、大阪のデザイン会社に勤務。24歳でミラノのデザイン事務所に勤めるものの4か月で退職し、1年半ほど鉄道の周遊パスでヨーロッパを放浪。ことのときの経験が後の車両デザインに役立ったといいます。
帰国後仕事が順調に舞い込み、家業を弟に任せることにして1972年に ドーンデザイン研究所 を設立。
当時は家具や建築のデザインが中心でしたが、1987年にJR九州の車両デザインを依頼されたことをきっかけに車両デザインを行うようになります。
代表作は1992年 つばめ、1992年 ソニック、2000年 かもめ、2013年 ななつ星in九州、2020年 36ぷらす3。他にも多くの鉄道車両の名作をデザイン。美の壺 File 497「路面電車」の回では長崎電気軌道の路面電車「みなと」の紹介で出演されました。
36ぷらす3 の車内に入ると、そこには 障子 が!
西洋の列車の中に和の障子が違和感なく溶け込んでいます。
一般的に鉄道車両は100%工業製品なので洋風。和風の要素は1つもありません。
そこに障子を入れると全体の5%以下なのに、それだけで和風のデザインに見えてしまいます。列車の中なのに障子があるというだけで雰囲気が違って見えるのは不思議。
「障子とは万能の可変装置」だという水戸岡さん。光を通す半透明の障子はまるで雲のよう。日本人が発明した大道具だとその効果について語ります。
平安時代に生まれた和のしつらえは、時を越えて今なお新たな形で生き続けていました。
名前 | ドーンデザイン研究所 |
住所 | 東京都板橋区中丸町24-11 |
障子が素敵な JR九州の観光列車「36ぷらす3」。
水戸岡鋭治さんのデザイン&イラスト図鑑。
馬場華幸さん / 懐華樓 女将 / 夏の簾戸替え【石川県 金沢市】
日本には、夏に備えて 夏障子(なつしょうじ)と呼ばれる特別な障子をしつらえる暮らし方があります。
紹介されていたのは 石川県金沢市 ひがし茶屋街(ひがしちゃやがい)で江戸時代から続く金沢の茶屋文化を残す 懐華樓(かいかろう)。建物は1820年に建てられたという金沢市指定保存建物。女将は 馬場華幸(ばば はなこ)さん。
馬場さんは 美の壺 File 615「金沢の手仕事」の回にも出演されていました。
朱塗の階段を上ると2階には大きな広間。今も1日1組限定でお座敷をあげています。
大広間の一面にしつらえられた障子はどことなく艶っぽい雰囲気。他のお座敷にも洒落た障子が。
毎年5月の最後の日にこれらの障子を 夏障子 に入れ替える 簾戸替え(すどがえ)と呼ばれる作業。
女所帯の茶屋では、簾戸替えは女性たちの仕事です。
簾戸替えの簾戸とは、簾(すだれ)をはめ込んだ障子のこと。昔は贅沢品として大事にされてきました。6月1日の衣替え前に合わせ必ず簾戸替えを行ってきたそうです。
簾戸替えが終わった大広間は少し広くなったような気がします。
葦で編まれた簾が向こう側の風景とともに、外の涼しい風を部屋の中に届けます。
障子から簾戸へ。こうして金沢は夏を迎えます。
例えば風鈴の音で涼しさを感じるように、簾戸は簾戸の姿で涼しさを感じるという馬場さん。
季節と共にしつらえを替える。日本人の暮らしの傍に障子はいつも寄り添ってきました。
懐華樓の1階はカフェとショップ、2階はお座敷。お座敷は要予約ですが10:00~17:00は2階も見学可能。
建物見学料は
大人:750円、小・中・高生:500円
見学なしでカフェのみの利用もできます。
名前 | 懐華樓(かいかろう) |
住所 | 石川県金沢市東山1-14-8 |
電話 | 076-253-0591 |
WEB | https://www.kaikaro.jp/ |
営業時間 | 10:00~17:00 夜は要予約:17:00~21:00 |
定休日 | 水曜 |
エピローグ
今の障子は摺上障子(別名:雪見障子)。そんな風情のある障子を替えるなんて、と障子の神に諭され使い続けることに。
そういえば、おばあちゃんが言っていた夏用の夏障子に替えるという手もあると気が付き、涼しげな夏障子に交換しましょう。
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音楽 BGM
ジャズの名曲が流れる美の壺。番組BGMファンもいらっしゃるのではないでしょうか。
オープニング曲と番組内挿入曲をまとめましたので参考にどうぞ。リンク先で試聴できます。
オープニングテーマ
オープニングテーマ は Art Blakey And The Messengers(アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ)の名曲「Moanin’」。ジャズドラマー アート・ブレイキーが1958年に発表した同名のアルバムに収録されています。作曲はピアニストの Bobby Timmons(ボビー・ティモンズ)。
番組内 楽曲
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