NHK「美の壺(びのつぼ)」は普段使いの器から家具、着物、料理、建築に至るまで、衣食住、人の暮らしを彩ってきた美のアイテムを解説してくれる番組。紹介されたものは何?場所はどこ?出演は誰?どこで買える?と興味津々。
そんな気になる「美の壺・美術の鑑賞マニュアル」を詳しく調べてみました。最後に番組内の音楽もまとめてあります。
美の壺「豊かな輝き 金工」File 590
出演は俳優の 草刈正雄(くさかり まさお)さん、ナレーション(語り)は俳優の 木村多江(きむら たえ)さんです。
最新エピソード 美の壺 File 621「平安の美」 もどうぞ併せてご覧下さい。
BSプレミアム(2023年11月30日まで。2023年12月1日から NHK BS(BS101チャンネル) へ移動)
初回放送:2023年12月6日(水)19:30~20:00
再放送 :2023年12月13日(水)09:30~
BS4K(2023年12月1日から BSプレミアム4K へ名称変更)
初回放送:2023年10月25日(水)19:30~20:00
再放送 :2023年10月30日(月)14:00~、2023年11月1日(水)08:00~
2023年11月1日(土)06:45〜
総合
再放送 :2024年1月10日(水)15:10~
Eテレ
再放送 :2024年4月1日(月)05:55〜、2024年11月3日(日)23:00〜
2024年11月11日(月)05:55〜
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美の壺 豊かな輝き 金工 File 590 内容
弥生時代に始まり2000年以上の歴史を誇る日本の「金工」。伝統の技が生み出すのは固く冷たい金属のイメージが吹き飛ぶような、多様で自由な世界!
1枚の金属板をたたき続け…人間国宝の雄大な器
山形の古民家で生まれる手作りスプーン
大迫力!高温に溶かした金属を操る富山・高岡の鋳物
秋田発!ユニークな銀のアクセサリー
これも金属?!たんぽぽの綿毛まで…本物そっくりの草花
プロローグ
おろしそばを作ろうとする草刈さん。子供の頃におばあちゃんの手伝いをして大根をおろしたことを思い出します。
美の壺 一、鍛金(たんきん):伸びやかに 表情豊かに
ひとつめのツボは 鍛金(たんきん):伸びやかに 表情豊かに。
川地あや香さん / 金工作家 / 鍛金のカトラリー【山形県 南陽市】
山形県南陽市 にある築90年の古民家に住む金工作家で菓子制作家の 川地あや香(かわち あやか)さん。
川地さん一家の休日の楽しのみはおやつの時間。
食卓を彩るのは金属のカトラリー。叩いて成形する技法・鍛金(たんきん)で作られています。
カトラリーもお菓子も川地さんの手によるもの。東京藝術大学で鍛金を学び以来、17年間カトラリーを作り続けています。
華奢なのに強い感じが食卓にあるとアクセントになるし、叩いたならではの金槌の目が光に反射して表情になるのも面白いと語る川地さん。
スプーンを作る工程を見せてくれました。
材料はなんと1枚の板。厚さ1.5mmの 洋白(ようはく)と呼ばれる銅や亜鉛の合金です。
金属板をあらかたの形に切り抜いたら、鍛金に欠かせない工程 焼鈍(やきなまし)。叩く前に金属を火に当てて柔らかくします。
そして 叩く 工程へ。焼鈍(やきなまし)た洋白は叩くたびに薄く伸びていきます。
叩くと金属は硬くなります。焼鈍しては叩く、この繰り返しで形を作っていきます。
スプーンで大切な凹みの部分を成形します。まずは木槌でおおまかな形を作り、金槌に持ち替え整えます。
木槌で柔らかく作り、金槌で閉めていく。金属同士がぎゅっと固まります。
当金(あてがね)と呼ばれる道具で曲面を作ります。使い分けることで、口に含みやすい形に仕上げます。
作る過程で1枚の板が伸びたり金属の原子が移動したり。
その伸びやかさは鍛金の技法ならではの魅力。その部分が伝わるといいなと言う川地さんでした。
名前 | 川地あや香(かわち あやか)/ カワチ製菓 |
住所 | 山形県南陽市 |
WEB | https://www.kawachiayaka.com/ |
川地あや香さんの著書。
大角幸枝さん / 金工作家・人間国宝 / 最高峰の鍛金の技
金工作家の 大角幸枝(おおすみ ゆきえ)さんは卓越した技術と独自の作風が評価され、2015年に 鍛金(たんきん)の人間国宝に選ばれました。
大角さんの鍛金の技術は最高峰と評されています。
流れるような稜線。細かく打ち出された土目。淡く光る金箔が形の美しさを引き立てます。
大角さんのライフワークは海・風・潮など自然の景色を形にすること。特に子供の頃によく遊んだ海の姿を多く捉えてきました。
銀打出花器「荒磯(あらいそ)」は正方形の銀の板を打ち続けて生まれた形を生かし、激しい波そのもの形を表しています。
制作中の花器のモチーフは「渦潮(うずしお)」。
今年初めて見た鳴門の渦潮の水の力、見た時の感動が作品を作る原動力。
厚さ3mm幅30cmほどの銀板を半年以上叩き続け、さらに1年ほどかけ完成させるといいます。
叩きながら厚みを手を触り、素材と対話しながら作品を生み出します。
打つことは時を刻むこと。宿るのは人生です。
大角幸枝さんの著書。
大角幸枝さんの作品。
美の壺 二、鋳金(ちゅうきん):型から生まれる 自由な姿
ふたつめのツボは 鋳金(ちゅうきん):型から生まれる 自由な姿。
能作千春さん+井上直也さん / 能作 / 2500以上の鋳金の鋳型【富山県 高岡市】
富山県高岡市 は日本有数の 鋳物(いもの)の産地。
江戸時代に加賀藩藩主の前田利長により鋳物が主要産業に選ばれ、鍋や農具等の生活用具から大仏まで作られるようになりました。
今でも市内には50近くの鋳物工場があります。
市内で人気の観光施設と紹介されていたのは1916年に創業した鋳物メーカー 株式会社 能作(かぶしきがいしゃ のうさく)の本社工場。工場にはカフェやショップが併設され、工場見学や鋳金(ちゅうきん)体験もできます。代表取締役社長は 能作千春(のうさく ちはる)さん。
本社工場ショップのお客さんの目当ては 鋳物(いもの)。鋳金(ちゅうきん)の技で作られた品々です。
可愛らしい 盆栽鉢 や涼やかな音を出す ベル など多種多様な商品が販売されています。
この鋳金に欠かせないのが 型。型を使って様々な形を生み出します。
鋳物師の 井上直也 さんがベルを作る工程を見せてくれました。
ベルの原型をもとに金属を溶かし入れるための 鋳型(いがた)を作ります。
この工場で主に用いるのは砂。わずかな粘土と水分を配合しています。
あとは砂を人間が踏んで固めるだけ。微妙な加減を決めるのは人の足が1番なのだとか。
土踏まずの感覚を頼りに踏み固めるのはシンプルに見えて大変難しい工程です。
砂を踏み固める鋳型だけでもその数2500以上。しかも原型によって固め方がすべて異なります。
足を使い多種多様な鋳型を効率よく作る高岡伝統のこの技は習得するまで5年ほどかかるといいます。
対になる鋳型と合わせたら、1200度以上に溶かした真鍮を注ぎ込みます。
4〜5時間かけじっくり冷ますとベルの形が現れました。
表面を磨いたら出来上がり。
型は2500〜3000枚くらいもあり、様々なものを生産しています。
能作さんはお客様が求める形を時代に応じて作ることができるのが鋳物の楽しさであり魅力だと語っていました。
名前 | 株式会社 能作(かぶしきがいしゃ のうさく) |
住所 | 富山県高岡市オフィスパーク8-1 |
電話 | 0766-63-0001 |
WEB | https://www.nousaku.co.jp/ |
営業時間 | 10:00〜18:00 |
定休日 | 年末年始(工場見学は日曜・祝祭日休業。土曜は不定休) |
株式会社 能作の鋳物。
般若保さん+般若泰樹さん / 般若鋳造所 / 鋳金の技・吹分【富山県 高岡市】
富山県高岡市 で1870年に創業した 般若鋳造所(はんにゃちゅうぞうしょ)。紹介されていたのは鋳物師の 般若保(はんにゃ たもつ)さんと長男の鋳物師 般若泰樹(はんにゃ たいじゅ)さん。
般若さん親子はちょっと変わった 鋳金(ちゅうきん)の技、吹分(ふきわけ)を得意としています。
吹分は2つ以上の金属を型に溶かし入れる伝統的な技法。金属が混ざり合って生まれる幻想的な模様が特徴です。
般若保さんは吹分に出会って以来、50年もの間腕を磨いてきました。
溶けた金属で描かれた模様は見た人に「マジック」と言われるほど不思議で神秘的。
般若さんが主に使うのは 青銅(せいどう)と 真鍮(しんちゅう)の2種類の金属。
2つの金属を同時に扱うため親子2人がかりで行います。26年来の相棒です。
金属は鋳型に入れると固まり始めるため10秒ほどの間に模様が決まるといいます。
作りたい模様に合わせ金属の液体をタイミングよく注がないといけません。経験を頼りに阿吽の呼吸で行います。
型の中で混ざり合った金属は幻想的な模様を生み出します。
固体であった金属が液体になって模様を作ってまた固体になる。金属が液体であったことを見た人に感じて欲しい、と語る般若保さん。
型を使って、型にはまらない探究心。新しい表現の扉が開きます。
名前 | 般若鋳造所(はんにゃちゅうぞうしょ) |
住所 | 富山県高岡市長慶寺1000 |
電話 | 0766-23-8542 |
WEB | https://hannya-chuzo.com/ |
般若保さんの作品。
美の壺 三、彫金(ちょうきん):緻密な手仕事が生む 存在感
最後のツボは 彫金(ちょうきん):緻密な手仕事が生む 存在感。
鈴木祥太さん / 金属造形作家 / 繊細な彫金の技【京都市】
京都市 の金属造形作家 鈴木祥太(すずき しょうた)さんは 彫金(ちょうきん)というたがねなどの道具を使い、金属に細かい模様を施す技法に惹きつけられてきました。
もともと植物が好きだったという鈴木さん。
金属で カタバミの花 や たんぽぽの綿毛 の繊細な姿も表現してしまいます。
金属と植物。意外な組み合わせですが、金属が持つバネ性は風でゆらぐ植物と共通する性質があると語ります。
葉っぱを作る様子を見せてもらいました。
素材は厚さ0.3mmの 銅の板。
ヤスリ を使って葉っぱの輪郭をつくります。
たがね の先端を使って模様をつけていくと、葉脈が現れました。
たがね は表したい模様に合わせて使い分け、幅0.3mmのたがねでさらに細かい葉脈を打ちます。
この たがね も鈴木さんが試行錯誤して作ったもの。何種類か筋の細さを変えたものを使います。
直径6mmのたがねで葉のうねり、先端がくぼんだたがねで虫食いを作ります。
さらに穴の周辺を打ち、噛み痕まで再現。できるだけ質感のレイヤーを重ねて本物の質感に近づけていきます。
気の遠くなるような作業ですが、細かい細工をすればするほど作品のクオリティーが上がっていくのが目に見えてわかるのがいい、と語る鈴木さんでした。
名前 | 鈴木祥太(すずき しょうた) |
住所 | 京都府京都市 |
WEB | https://www.shotasuzuki.com/ |
松橋とし子さん / 矢留彫金工房 / 秋田銀線細工のアクセサリー【秋田市】
秋田 に伝わるひときわ繊細な技 秋田銀線細工(あきたぎんせんざいく)は細く線状にした銀を装飾品などの様々な形に加工する伝統工芸。
江戸時代から銀の産地として栄え、金工品が作られてきた秋田。その技術を元に誕生しました。
明治・大正時代には県内に金工を学ぶ指導所が設置され、海外から伝わったと考えられる 金や銀の線細工(フィリグリー)の技法が取り入れられて今に残っていると考えられています。
秋田市内にある銀線細工の工房 矢留彫金工房(やどめちょうきんこうぼう)。
工房長の 松橋とし子(まつはし としこ)さん、小林美穂(こばやし みほ)さん、髙橋香澄(たかはし かすみ)さんの3人の職人さんが秋田銀線細工の技を使った新しいものづくりに励んでいます。
秋田銀線細工の宝飾店「竹谷本店」で30年以上職人の技術を磨いてきた松橋さんと秋田公立美術大学大学院の学生だった髙橋さんは2018年に秋田商工会議所の企画展「銀線細工の企画展 北の燦めき」がきっかけで出会いました。松橋さんの竹谷本店での元同僚の小林さんもその会場を訪れていて、3人で活動することに。
閉店予定だった 菓子舗榮太楼 大町店 の建物の一部を借りて 矢留彫金工房 ををオープンしました。
矢留彫金工房では、雪が溶ける瞬間をモチーフにした ペンダント、愛らしい花をかたどった イヤリング など普段使いにぴったりのアクセサリーを生み出してきました。
中でも遊び心があると人気なのが秋田の特産品・米をモチーフにした ペンダント。大きさはわずか1cmです。
伝統的に使われているのが 銀線(ぎんせん)。直径0.3mmの2本の銀線をより合わせプレスしたものです。
銀線を巻いたり曲げたりしながら模様を作るのが秋田銀線細工の基本の技です。
モチーフによって細工がすべて異なる上に作るのは極小の物ばかり。技術の習得には大変な根気が必要です。種類が多く形に合わせて巻いていくのが難しいため、大体できるまで2〜3年かかるとのこと。
銀線と枠を接着するために用いるのは 銀鑞(ぎんろう)。銀に真鍮を混ぜたものです。
加熱すると銀より先に溶けるため、接着剤代わりになります。
銀鑞を使って彫金の 鑞付け(ろうづけ)をし、仕上げに磨きヘラと呼ばれる道具で艶を出します。
この小さな米モチーフ1粒に秋田の誇る伝統が凝縮されています。
秋田銀線細工は職人の高齢化が進み、今かわずか10人ほど。
伝統を絶やすまいと、4年前の2019年に3人は工房を立ち上げました。
昔から伝わってきた銀線細工の技を若い人にも伝えたい、と語る松橋さん。工房では制作・販売だけでなく、彫金の基本を学べる教室も開講しています。
脈々と受け継がれる伝統の技は時代を超えて輝きます。
名前 | 矢留彫金工房(やどめちょうきんこうぼう) |
住所 | 秋田県秋田市大町2-1-11 栄太楼ふるさと文化館1階 |
電話 | 018-838-1714 |
WEB | https://yadome-silver.com/ |
営業時間 | 月火木金土:13:00〜18:00 |
定休日 | 水曜・日曜 |
エピローグ
大根おろしも鍋もおばあちゃんの代からあるもの。おばあちゃんからは大根のおろし方だけでなくものを大事にすることを教えてもらいました。
草刈さんの作ったおろしそば。美味しそうに出来上がりました。
U-NEXT でNHKの動画配信サービス NHKオンデマンド を視聴可能。虎に翼・らんまん・なつぞら などの朝ドラや 光る君へ・鎌倉殿の13人・真田丸 などの大河ドラマ、探偵ロマンス・正直不動産 などの名作ドラマ、ファミリーヒストリー「草刈正雄」を一気見できます。U-NEXTは初回31日間無料トライアル。NHKオンデマンド は別料金ですが、もらえる600ポイントで購入できます。PR
音楽 BGM
ジャズの名曲が流れる美の壺。番組BGMファンもいらっしゃるのではないでしょうか。
オープニング曲と番組内挿入曲をまとめましたので参考にどうぞ。リンク先で試聴できます。
オープニングテーマ
オープニングテーマ は Art Blakey And The Messengers(アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ)の名曲「Moanin’」。ジャズドラマー アート・ブレイキーが1958年に発表した同名のアルバムに収録されています。作曲はピアニストの Bobby Timmons(ボビー・ティモンズ)。
番組内 楽曲
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