NHK「美の壺(びのつぼ)」は普段使いの器から家具、着物、料理、建築に至るまで、衣食住、人の暮らしを彩ってきた美のアイテムを解説してくれる番組。紹介されたものは何?場所はどこ?出演は誰?どこで買える?と興味津々。
そんな気になる「美の壺・美術の鑑賞マニュアル」を詳しく調べてみました。最後に番組内の音楽もまとめてあります。
美の壺「ぬくもりを味わう お椀(わん)」File 591
出演は俳優の 草刈正雄(くさかり まさお)さん、ナレーション(語り)は俳優の 木村多江(きむら たえ)さんです。
最新エピソード 美の壺 File 609「出雲」 もどうぞ併せてご覧下さい。
BSプレミアム(2023年11月30日まで。2023年12月1日から NHK BS(BS101チャンネル) へ移動)
初回放送:2023年11月15日(水)19:30~20:00
再放送 :2023年11月22日(水)08:00~、2023年11月25日(土)06:45〜
BS4K(2023年12月1日から BSプレミアム4K へ名称変更)
初回放送:2023年11月15日(水)19:30~20:00
再放送 :2023年11月22日(水)08:00~、2023年11月25日(土)06:45〜
総合
再放送 :2023年11月29日(水)15:10〜
でNHKの動画配信サービス NHKオンデマンド を視聴可能。 U-NEXTらんまん・
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美の壺 橋 はこちらをどうぞ!
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美の壺 2024年度(2024年4月〜2025年3月)バックナンバー はこちらをどうぞ!
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美の壺 ぬくもりを味わう お椀(わん)File 591 内容
福井・鯖江の越前漆器の地で、お椀(わん)のさまざまな形を楽しむ!
100以上の工程を経て作られる輪島塗。完成後も年月が育むツヤで、自分だけの輝き!
京都の料理人は、二十四節気ごとに自ら考案したお椀(わん)で極上の一品を!
加賀の気鋭の漆芸家が作り出す新たな世界
木地師によって建てられた寺で今も皆で使う、明治時代の「合鹿椀(わん)」。一度は途絶えた幻の合鹿椀を、職人が完全復元!
プロローグ
草刈さんの家に置かれていたお椀とお箸。一体誰のものなんでしょう?
美の壺 一、姿:肌で味わう
ひとつめのツボは 姿:肌で味わう。
内田徹さん / 漆琳堂 当主 / 越前漆器のお椀専門工房【福井県 鯖江市】
福井県鯖江市(さばえし)は古来から 越前漆器(えちぜんしっき)の街として知られてきました。
漆琳堂(しつりんどう)創業 寛政5年(1793年)、225年続くお椀の専門の漆塗りの工房です。
8代目当主は 内田徹(うちだ とおる)さん。美の壺 File 521「漆」の回にも出演され、漆塗りだらけのご自宅も紹介されました。
![](https://hbb.afl.rakuten.co.jp/hgb/371ecac1.b6ab8864.371ecac2.b90bf3c1/?me_id=1203151&item_id=10021028&pc=https%3A%2F%2Fimage.rakuten.co.jp%2Fprokitchen%2Fcabinet%2Fshitsurindo%2Fna1407-0236-201-1_1.jpg%3F_ex%3D400x400&s=400x400&t=pict)
漆琳堂ではこれまでに1500種類以上のお椀を作ってきました。
最も一般的な 汁椀(しるわん)と紹介されているのは 布袋型(ほていがた)と呼ばれるお椀。七福神の布袋尊(ほていそん)のお腹に似ていることがその名の由来です。
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同じ汁椀でも 端反型(羽反型 はぞりがた)と呼ばれるお椀は、少しだけ外に広がっています。
少し傾けるとすぐ口にお味噌汁が入り、美しい所作で最後まで飲みきることができます。
![](https://hbb.afl.rakuten.co.jp/hgb/1f48ee4e.f7521077.1f48ee4f.4522434d/?me_id=1390601&item_id=10003149&pc=https%3A%2F%2Fimage.rakuten.co.jp%2Fakomeyatokyo%2Fcabinet%2F08468136%2Fimgrc0087789776.jpg%3F_ex%3D400x400&s=400x400&t=pict)
ご飯を盛る 飯椀(めしわん)は汁椀より浅く間口を広くすることで、箸を入れやすい形になっています。
永平寺(えいへいじ)で使われている 応量器(おうりょうき)はすべての椀が重なるようになっています。
持ち上げて口に運ぶという食器は世界的に見てもすごく稀だと内田さん。
日本独自の文化として発展していたのがお椀なのかな、と言われていました。
名前 | 漆琳堂(しつりんどう) |
住所 | 福井県鯖江市西袋町701 |
電話 | 0778-65-0630 |
WEB | https://shitsurindo.com/ |
営業時間 | 10:00~16:00 |
定休日 | 不定休 |
漆琳堂の漆椀。赤・黒あり。
中室耕二郎さん / 輪島屋善仁 当主 / 輪島塗のお椀【石川県 輪島市】
お椀といえば 漆塗り。漆塗りの歴史は古く、縄文時代には既に存在していました。
江戸時代になると現在に伝わる技法が各地で確立されたと言われています。
石川県輪島市、江戸時代から続く創業210年 輪島塗(わじまぬり)の工房 株式会社 輪島屋善仁(わじまやぜんに)。
9代目当主は 中室耕二郎(なかむろ こうじろう)さん。
漆というのは非常に柔らかい塗料。そのため手で持った時、口に運んだ時に、他の塗料・素材にはない漆独特の優しさ柔らかさがあると思います、と中室さん。
輪島塗は100以上の工程を経て作られます。
中でも輪島産の珪藻土から作る 地の粉(じのこ)を使った下地塗りが特徴です。
地の粉に漆が浸透することで強度が生まれます。
仕上げの上塗りはほこりやちりが入らないよう専用の部屋で行われます。
ムラが出ないよう漆の状態を見極めながら、4種類のはけを使い分ける職人技。
漆が固まると漆黒の宇宙のようなお椀が出来上がります。
完成後も変化し続けるのも漆椀の魅力。
中室さんがが私普段使ってるお椀は使っているうちにピカピカになっていっています。普段使いのケの日の器は使うことによって自然と磨き工程がなされて使いづやが出てくるといいます。
一方、ハレの日の豪奢な器。研ぎ炭(とぎすみ)で磨き上げると 呂色(ろいろ)と呼ばれる輝きのあるお椀が出来上がります。
暮らしとともに表情を変えていくお椀です。
名前 | 株式会社 輪島屋善仁(わじまやぜんに) |
住所 | 石川県輪島市平成町63番地 |
電話 | 0768-22-0521 |
WEB | https://www.wajimayazenni.co.jp/ |
営業時間 | 商品展示場:8:30〜17:00 工房見学:8:30〜12:00,13:00〜16:30 |
定休日 | 4/21-11/26 : 無休 11/27-4/21:土曜・日曜・年末年始 |
輪島屋善仁のものではありませんが、こちらも上質な輪島塗のお椀。
美の壺 二、季節:お椀と料理の小宇宙
ふたつめのツボは 季節:お椀と料理の小宇宙。
佐々木浩さん / 祇園さゝ木(ぎおんささき)店主【京都市 東山区】
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京都市東山区 八坂通りに店を構えるミシュラン3つ星の日本料理店 祇園 さゝ木(ぎおんささき)。店主の 佐々木浩(ささき ひろし)さんはお椀に並々ならぬ思いを寄せています。
使うのは 二十四節気(にじゅうしせっき)に合わせ変えるという 蓋付きのお椀。
すべて佐々木さんが考え注文して作ったものです。
7月下旬から8月の 大暑(たいしょ)の頃には 花火 が描かれたお椀。
絵柄を彫り金を埋める 沈金(ちんきん)という技法が使われています。
蓋は花火を少しでも大きく見せるように面をできるだけ平らにするというこだわりの形。
裏側には大輪の花火が。艶やかです。
絵柄に合わせてお椀の形や大きさを変えています。
蛍(ほたる)の清楚な絵のお椀は少し小ぶり。
この椀が出てきて開けてもらったときにお客さんが「あー蛍飛んでる時期なんやねえ」と言ってしばらく会話が弾むのがお椀の醍醐味。出す方も食べる方も1つの極みだと佐々木さん。
佐々木さんがこだわりのお椀に合わせる 料理 を見せてくれました。
日本料理の 椀物(わんもの)の要となるのが1番だし。季節ごとに変える昆布と鰹節の合わせだしです。
具材に合わせた だしを取る日本料理。
夏場はエレガントにすっきりとしたお椀。
真冬の寒いときには葛(くず)を入れてとろみをつけてあったまってもらう。
すべて季節を表し、いただく方に感じとってもらうことが1番大事。
二十四節気、9月中旬頃の 白露(はくろ)には すすき と 月 のお椀。
蓋の裏には ウサギ が描かれています。湯気で着いた滴(しずく)は月明かりのようにウサギを照らしてなんとも趣のある姿に。
お椀の中に目を移すと、だし汁に浮かぶ 鶏卵豆腐の満月。そうめん を雲に見立てました。
10月下旬の 霜降(そうこう)の時期は鮮やかに色づいた 嵐山(あらしやま)と 渡月橋(とげつきょう)が描かれたお椀。
具材は秋の味覚 松茸(まつたけ)とこの時期に脂が乗るという 鱧(はも)。
お碗と料理の響き合い。極上のひと椀がここにあります。
名前 | 祇園さゝ木(ぎおんささき) |
住所 | 京都府京都市東山区八坂通大和大路東入小松町566-27 |
電話 | 075-551-5000 |
WEB | https://gionsasaki.com/ |
営業時間 | 月〜金:12:00〜14:00, 18:30〜21:00、土:12:00〜14:00, 17:00〜22:00 |
定休日 | 日曜、第2・第4月曜 |
美の壺 三、つなぐ:器に宿る物語
最後のツボは つなぐ:器に宿る物語。
田中瑛子さん / 漆芸家 / 【石川県 加賀市】
石川県加賀市 の気鋭の漆芸家 田中瑛子(たなか えいこ)さんが作る独自の形のお椀を紹介。
まるで花のようなお椀。全てが1つに納まる形になっています。
留め椀(とめわん)と呼ばれる汁椀も見たことがないような形。
昔のお椀や伝統の形を何百と勉強してきたという田中さん。
それを踏まえた上で「じゃああなたは何を作るの」と考えて行き着いた結果、こういうお椀があっても良いと思った形を作り出すようになりました。
田中さんは生地びきから仕上げまで全て1人で行います。
まずはお椀形作り。パッと持ったときに自分の中に完璧にフィットするような、違和感なく一体化できる曲線を目指していると語ります。
田中さんの真骨頂は漆の表現。
下地は塗らず、生地に黒と赤の漆を塗り、ヤスリで磨いていきます。
浮かび上がるのは とちの木の 杢(もく)。木の中の硬さの違いが漆の浸透の差を出し模様になるのです。
さらに 生漆(きうるし)を塗り、何度も磨きをかけることで生まれる黄金の柄。
お椀に新たな世界を作ります。
名前 | 田中瑛子(たなか えいこ) フゾン カガ カフェ&スタジオ / Gallery and Salon 漏刻(ろうこく) |
住所 | 石川県加賀市大聖寺魚町21 |
電話 | 0761-75-7340 |
WEB | https://eikotanaka.com/ |
営業時間 | 金〜水:12:00~18:00 |
定休日 | 木曜 |
飯山五百子さん / 福正寺 坊守 / 合鹿椀(ごうろくわん)【石川県 能登町 合鹿】
石川県能登町合鹿(ごうろく)、創建およそ500年の 福正寺(ふくしょうじ)。この地域でお椀を作っていた生地師たちが建てたと言われています。
この日檀家が集まり法要が行われました。解説してくれたのは坊守の 飯山五百子(いいやま いおこ)さん。
寺の台所では食事の準備をしています。白米が貴重だった時代、山盛りのご飯を持ち帰って、家族で分けるという風習が今も残っています。
![](https://hbb.afl.rakuten.co.jp/hgb/371f5e8e.5065be45.371f5e8f.b5d0c3f6/?me_id=1241464&item_id=10000489&pc=https%3A%2F%2Fimage.rakuten.co.jp%2Fauc-sikkiya%2Fcabinet%2F00890730%2Fgourokutame101.jpg%3F_ex%3D400x400&s=400x400&t=pict)
使うのはこの地域で作られた明治時代のお椀。合鹿椀(ごうろくわん)と呼ばれています。
寺には江戸時代の合鹿椀も残されていました。
けやきで作られ、高さおよそ10cmと大きく、高台(こうだい)と呼ばれる足が高いのが特徴です。
田植えなどの野良仕事や山仕事などに持っていくこともあり、また畳の部屋が少なかった時代でもむしろとか土間の上に置いた時に安定するということで、高い高台になっていたと伝えられています。
名前 | 福正寺(ふくしょうじ) |
住所 | 石川県鳳珠郡能登町合鹿31-10 |
電話 | 0768-76-0290 |
WEB | https://fukushouji.jp/ |
営業時間 | 10:00〜16:00 |
定休日 | なし |
大宮静時さん / 木彫刻家・漆作家 / 合鹿椀の復元【石川県 能登町 十郎原】
現在の能登町、旧柳田村で古くから作られてきた 合鹿椀(ごうろくわん)。しかし明治時代にその生産が途絶えてしまいました。
合鹿椀に魅せられ30年以上作り続けているという 石川県能登町十郎原(旧柳田村)の木彫刻家・漆作家 大宮静時(おおみや せいじ)さん。
元は木彫作家として活動していた大宮さんですが、古い合鹿椀との出会いが人生を変えました。
合鹿椀のとてもく彫刻的なフォルム、その器の中にある力強さとともに人を包み込むようなおおらかさを感じたといいます。
自分なりの合鹿椀を作っていた大宮さん。しかしこのままだと復元もされず、廃れていくのではと危惧しました。そして15年前に始めたのが、かつての合鹿椀の復元です。
参考にしたのは、旧柳田村が5年の歳月をかけ合鹿椀を調査しまとめた1冊の本でした。
1番の特徴は下地材。炭の粉と柿渋を混ぜて作ります。その下地材を縁に布着せをしたお椀の内側に塗り、生漆を重ねます。
外側は生地に直接生漆を塗ります。
これを6回繰り返し水分を抜いた素黒目漆(すぐろめうるし)を塗り完成です。
復元した飯椀と汁椀。
けやきの木目が生かされた素朴で力強い合鹿椀です。
使い方にも特徴がありました。
昔は温かいご飯を盛って汁椀をその蓋にして、それでお客さんに出したそうです。
温かいご飯の熱が汁椀に伝わり、汁椀が温まったところにお汁を入れる。
日常の中に存在した器ですから、人の肌に近いのが魅力だと大宮さん。
暮らしに寄り添い続けたお椀の姿です。
名前 | 大宮工房(おおみやこうぼう) |
住所 | 石川県鳳珠郡能登町字十郎原9-3 |
電話 | 0768-76-0690 |
WEB | http://www.ne.jp/asahi/woodcarving/oomiya/ |
エピローグ
お椀で川を渡る?鬼退治?もしかしてお椀とお箸の持ち主は一寸法師?
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音楽 BGM
ジャズの名曲が流れる美の壺。番組BGMファンもいらっしゃるのではないでしょうか。
オープニング曲と番組内挿入曲をまとめましたので参考にどうぞ。リンク先で試聴できます。
オープニングテーマ
オープニングテーマ は Art Blakey And The Messengers(アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ)の名曲「Moanin’」。ジャズドラマー アート・ブレイキーが1958年に発表した同名のアルバムに収録されています。作曲はピアニストの Bobby Timmons(ボビー・ティモンズ)。
番組内 楽曲
美の壺 2024年(2024年1月〜2024年12月)放送スケジュール 初回放送・再放送 全まとめ はこちらをどうぞ!
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