NHK「美の壺(びのつぼ)」は普段使いの器から家具、着物、料理、建築に至るまで、衣食住、人の暮らしを彩ってきた美のアイテムを解説してくれる番組。紹介されたものは何?場所はどこ?出演は誰?どこで買える?と興味津々。
そんな気になる「美の壺・美術の鑑賞マニュアル」を詳しく調べてみました。最後に番組内の音楽もまとめてあります。
美の壺「東北の手仕事」File 598
出演は俳優の 草刈正雄(くさかり まさお)さん、ナレーション(語り)は俳優の 木村多江(きむら たえ)さんです。
最新エピソード 美の壺 File 621「平安の美」 もどうぞ併せてご覧下さい。
NHK BS(BS101チャンネル)
初回放送:2024年3月13日(水)19:30~20:00
再放送 :2024年3月20日(水)09:30~
BSプレミアム4K
初回放送:2024年3月6日(水)19:30~20:00
再放送 :2024年3月13日(水)08:00~、2024年3月16日(土)06:45〜
U-NEXT でNHKの動画配信サービス NHKオンデマンド を視聴可能。虎に翼・らんまん・なつぞら などの朝ドラや 光る君へ・鎌倉殿の13人・真田丸 などの大河ドラマ、探偵ロマンス・正直不動産 などの名作ドラマ、ファミリーヒストリー「草刈正雄」を一気見できます。U-NEXTは初回31日間無料トライアル。NHKオンデマンド は別料金ですが、もらえる600ポイントで購入できます。PR
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美の壺 東北の手仕事 File 598 内容
東北地方各地に伝承する手作業から生まれる工芸品や東日本大震災からの復興を支えた手仕事を紹介!
91歳の元宮司が祈りを込めて作る切り紙“オカザリ”の圧巻!
イタヤカエデの若木を削いで編むイタヤ細工の美
会津若松の起き上がり小法師はたくましく立ちあがる復興のシンボル
戦争未亡人を支えたしなやかで温かい岩手のホームスパン
ドイツの華やかな毛糸から生まれた気仙沼の新たな手仕事とは?
プロローグ
東北に住む友人からもらった手作りの 箒(ほうき)がくたびれてしまったという草刈さん。
自分でも作れるでしょうか?
美の壺 一、おまもり:福を呼ぶ小さな工芸
ひとつめのツボは おまもり:福を呼ぶ小さな工芸。
会津若松 十日市 / 400年以上続く初市 / 縁起物の露店【福島県 会津若松市】
福島県会津若松(あいづわかまつ)で毎年1月10日に行われる 十日市(とうかいち)は江戸の昔から400年以上続く初市です。
風車(かざぐるま)と 起き上がり小法師(おきあがりこぼし)、この2つの縁起物を求めて多くの人が訪れます。
風車はくるくる元気で働けますようにという願いが込められています。
七転び八起きの 起き上がり小法師。
勢いよく転がして元気に立ち上がるものを選びます。
家族の数より1つ多く買うのが習わしなのだとか。家族が増えるようにと子孫繁栄を願います。
名前 | 会津若松 十日市(あいづわかまつ とうかいち) |
住所 | 福島県会津若松市 神明通り・市役所通り・大町通り |
電話 | 十日市実行委員会:0242-37-2789 |
WEB | https://www.aizukanko.com/event/115 |
営業時間 | 毎年1月10日 8:00〜20:00 |
山田賢治 / 山田民芸工房【福島県 会津若松市】
起き上がり小法師(おきあがりこぼし)を作っているのは 会津若松市 の 山田民芸工房(やまだみんげいこうぼう)。5代目の 山田賢治(やまだ けんじ)さんが昔ながらの作り方をかたくなに守って制作しています。こちらの工房では会津三縁起と言われる「起上り小法師」「風車」「初音」を作っています。
江戸時代に会津藩の武士が内職で始めたという 起き上がり小法師。七転八起、転んでも転んでも起き上ることから縁起物として扱われてきました。
工房で起き上がり小法師の作業工程を見せてもらいました。
起き上がり小法師は木型に和紙を貼る 張子(はりこ)の技法で作られます。
和紙を木型に貼り重ね、火鉢の上で乾かします。道具も年季物。
乾いたら木型の真ん中で切れ目を入れると2つ1度に出来上がり。
底には山の土で捏ねた重りをつけ、胡粉で真っ白く塗った後、着物を着せて行きます。
最初から最後まで全部手作りで作るというのが山田さんのこだわり。
手作りなので顔も一つ一つ違う良さがあり、皆さんが幸せに良いことが増えますようにと心を込めて作っていると語ってくださいました。
こちらの工房では4月~10月中旬の間、起上り小法師の絵付け体験教室が開催されています(要予約)。
名前 | 山田民芸工房(やまだみんげいこうぼう) |
住所 | 福島県会津若松市七日町12-35 |
電話 | 0242-23-1465 |
WEB | https://www.aizukanko.com/spot/8 |
営業時間 | 8:00~19:00(体験教室は4月~10月中旬の9:00~16:00) |
定休日 | 月曜 |
会津若松の縁起物、起き上がり小法師。
菅原清澄さん+菅原文子さん / 民芸イタヤ工房 / イタヤ細工【秋田県 仙北市】
秋田県角館雲然(かくのだて くもしかり)は積雪2mにもなる豪雪地帯。
紹介されていたのは冬の季節の副業として作られてきた イタヤ細工(いたやざいく)。
昔は質実剛健な農具が中心でしたが、軽くて使いやすいことから、今はおしゃれな工芸品として注目されています。
イタヤ細工の作業工程を見せてくれたのは 民芸イタヤ工房(みんげい いたやこうぼう)の4代目、イタヤ細工職人の 菅原清澄(すがわら きよすみ)さん、菅原文子(すがわら ふみこ)さん。2人の娘さん 西宮麻巨(にしみや まみ)さん、田口呉羽(たぐち くれは)さんと家族4人で制作しています。
ご自宅兼工房は北市角館町雲然ですが、4月中旬〜11月初旬は映画「たそがれ清兵衛」のロケ地になった武家屋敷 旧・松本家住宅で実演されているので見学ができます。
イタヤ細工は昔から夫婦二人三脚で行われてきました。ヒゴを作るのは夫の仕事、編むのは妻の仕事。
材料となるのは堅くて弾力に富む イタヤカエデ の木。清澄さんが薄くそいでヒゴにして使います。
寒冷地の秋田では竹が生育しないため、イタヤカエデが籠やざるの材料に使われてきました。
ヒゴの両端を1〜2mmの幅で面取りしていきます。この丁寧な面取りをすることで編むときにもやりやすく仕上がりも美しくなるのです。
編むのは文子さん。面取りしたヒゴを見事な手さばきで編んでいきます。
仕上がりは滑らかで美しい網代編み(あじろあみ)の模様が浮かんでいます。面取りの一手間の効用です。
オボキ と呼ばれる丸籠が出来上がりました。昔は麻糸を入れるものだったそうです。
イタヤ細工の小さな馬 は昔から母親が子供に編んで与えたおもちゃ。
しっぽから編んで左を向いて留めるので「左馬」と呼ばれています。
左向きの馬は無病息災の縁起の良い馬。
雪に閉ざされた毎日でも子供の幸せを願う親心に溢れています。
名前 | 民芸イタヤ工房(みんげい いたやこうぼう) |
住所 | 旧・松本家住宅:秋田県仙北市角館町小人町4 |
電話 | 0187-53-2609 |
WEB | https://tazawako-kakunodate.com/ja/shops/96 |
営業時間 | 松本家実演:4月中旬〜11月初旬:9:00〜16:00 |
定休日 | 不定休 |
イタヤ細工の縁起物・イタヤ馬。
美の壺 二、いのり:神への願いを紙に託す
ふたつめのツボは いのり:神への願いを紙に託す。
まめから稲荷神社 / オカザリ【宮城県 登米市】
宮城県登米市(とめし)、およそ240年歴史を持つ まめから稲荷神社(まめからいなりじんじゃ)の拝殿。
紹介されていたのは東北地方ならではの紙飾り・オカザリ。
オカザリは和紙で作った切り紙で、複雑で立体的な形。魚を取る網のようにも見えることから、網飾り(あみかざり)とも呼ばれています。
名前 | まめから稲荷神社(まめからいなりじんじゃ) |
住所 | 宮城県登米市豊里町新田町216 |
電話 | 0225-76-4578 |
千葉惣次さん / オカザリ研究者・郷土人形作家
オカザリ を20年にわたり研究しているオカザリ研究者・郷土人形作家 千葉惣次(ちば そうじ)さん。
東北の神社を巡り、1千点ものオカザリを収集してきました。
御幣(ごへい)と呼ばれる和紙を竹で挟んだもの。神様が宿るといわれています。
東北の御幣はその地方により様々な神をかたどります。
狐の姿をした神様に馬の神様。暴れん坊のような姿の雷神様。
紙が複雑に切り込まれ繋がる不思議な形のものもあります。
御幣が進化し複雑していくうちに網飾りに移行すしたのだと考える千葉さん。
厳しい自然と向き合ってきた東北の暮らしが、多くの神々への祈りの形となって、オカザリを見出しました。
千葉惣次さんの著書。
熊谷昭穂さん / 元・曽慶熊野神社宮司 / オカザリ【岩手県 一関市】
岩手県一関市曽慶(いちのせきし そげい)一帯では毎年立派な オカザリ が作られていきました。
解説してくれたのは70年もオカザリを切り続けているという元・曽慶熊野神社(そけいくまのじんじゃ)宮司の 熊谷昭穂(くまがい あきほ)さん。
オカザリは型紙もなく、神主が代々親から子へ伝えてきました。しかし熊谷さんは神主の父を戦争で亡くし、その技を受け継ぐことができませんでした。
社に残っていたボロボロのオカザリを苦心の末復元。自らの手で復活させたのです。
以来、毎年粛々と切り続けてきました。
長さ2mを超える大きさのオカザリ。
米俵を飾るのが大黒様。鯛を飾るのが恵比寿様。恵比寿大黒で1組。
かつては神主が1軒1軒家を訪ねて切ったそうです。
オカザリに使うのは障子紙。折り畳んで切るだけで豪華な模様をつくります。
恵比寿大黒1組を切るのに約2時間かかるといいます。
最初に切るのはオカザリの1番下に下がる紙垂(しで)と呼ばれる部分。
紙垂は神聖な場所を表す印。下書きもなくフリーハンドで切っていきます。
紙垂の上に末広がりのめでたい扇が下がり、商売繁盛の銭、小判、お宝を入れる巾着。縁起物が次々と切り離されることなく続きます。
そして恵比寿様のシンボル、鯛。
切り終えたものはまだオカザリではないという熊谷さん。
支度してお祓いをして初めて聖なるオカザリとなるのです。91歳の手になる奉納の技です。
名前 | 曽慶熊野神社(そけいくまのじんじゃ) |
住所 | 岩手県一関市大東町曽慶西ノ沢65 |
美の壺 三、
最後のツボは ぬくもり:やさしさを織り交ぜて。
菊池直子さん / 岩手県立大学 / ホームスパン
岩手県の毛織物工房ではイギリスの農家で作られてきた ホームスパン を織っています。
ホームは「家庭」スパンは「紡ぐ」という意味。軽くて暖かくざっくりとした風合いが手作りならではの魅力となります。
ホームスパンはいつ頃日本に入ってきたのでしょうか?
解説してくれたのは岩手県立大学、盛岡短期大学部名誉教授 菊池直子(きくち なおこ)さん。
きっかけは、大正時代、政府が全国の農村の副業として羊の飼育や羊毛加工技術を奨励したこと。
花巻で農業をしていた 梅原乙子(うめはら おとこ)さんという女性がホームスパンの先駆者と言われています。
その志は岩手の女性たちの手によって受け継がれていきます。
戦後は戦争未亡人の生活の糧にもなりました。
そして伝統の技は今も続いています。
渡辺未央さん / みちのくあかね会 / ホームスパン【岩手県 盛岡市】
岩手県盛岡市 で ホームスパン を作っているのは長い歴史のある毛織物の工房 みちのくあかね会(みちのくあかねかい)。お話をしてくれたのは企画担当の 渡辺未央 さん。
ホームスパンの作業工程を見せてもらいました。
まずは汚れを取った羊の毛を染料で染めることから始めます。
今日は青と赤と緑に。染めた羊毛は色のバランスを考えながらまぜ、繊維を揃えていきます。
白をベースに3色がアクセントとなり、真綿のような柔らかな手触りに。
その羊毛に撚りをかけ手で紡ぎます。手加減1つで糸の太さを変えていきます。
紡いだ糸を経糸(たていと)にしてマフラーを織ります。
緯糸(よこいと)は深い緑色。緯糸を入れた杼(ひ)をゆっくりと滑らせて。
糸の打ち込みはあくまでやさしく。
手紡ぎならではの糸の魅力を生かしたふっくらとした織り上がりに。
マフラーは耳の仕上がりも魅力の1つです。緯糸の緑が立体的な表情を生み出します。
名前 | みちのくあかね会(みちのくあかねかい) |
住所 | 岩手県盛岡市大慈寺町10-34 |
電話 | 019-622-2648 |
WEB | https://www.michinoku-akanekai.com/ |
営業時間 | 月〜土:10:00〜16:00 |
定休日 | 日曜 |
みちのくあかね会の一点ものの手織りホームスパン。
梅村マルティナさん+佐々木健太 / 編み物【宮城県 気仙沼市】
宮城県気仙沼市(けせんぬまし)の気仙沼駅前に構えた 梅村マルティナ気仙沼FSアトリエ(うめむらマルティナけせんぬまFSアトリエ)。壁にはカラフルな毛糸がずらり。
店の主はドイツ出身の 梅村マルティナ(うめむら マルティナ)さん。子供の時から 編み物 大好きだというマルティナさん。気仙沼駅前アトリエを2014年にオープン、2021年にリニューアルオープンしました。
使用する毛糸はドイツTUTTO社の Opal(オパール)シリーズのソックヤーン。マルティナさんのふるさとドイツで作られている靴下用のもの。
編むほどに線になったり模様になったり。どんな大きさの靴下でも自動的に柄が現れる不思議な毛糸です。
マルティナさんさんと気仙沼はこの毛糸で結ばれました。
東日本大震災が起きて間もなく、まだ日常が戻っていない気仙沼の避難所に簡単な作り方を添えて毛糸を送ったのです。
指を動かすと気持ちが落ち着くというマルティナさん。
無心になって辛いことも忘れたりできるかもしれないと思い気仙沼の避難所に毛糸を送ることを思いつきました。
誰も思いつかなかった発想でした。
暖かな手触りと鮮やかな色の毛糸。みんな編み物に夢中になりました。
編んだのは腹巻の形。首に通せばネックウォーマー。真ん中で捻るとリバーシブルな帽子。
形を変えるマフラーは避難所の人たちの心をほぐしていきました。
マルティナさんに「もっと毛糸を送ってください」と電話がかかってきた時には涙が出て。
「はい喜んでいくらでも送りますと」お答えしたところから気仙沼ろご縁ができたそうです。
それまで京都に住んでいたマルティナさんは、気仙沼に拠点を移し、地元の若者もスタッフに加わるようになりました。
若いスタッフの 佐々木健太(ささき けんた)さんは編み物の楽しさに目覚めたようです。
作品が出来上がったら達成感があり、編んでいると無心になれる。集中できる。何も考えなくていいので楽しいと語っていました。
名前 | 梅村マルティナ気仙沼FSアトリエ(うめむらマルティナけせんぬまFSアトリエ) |
住所 | 宮城県気仙沼市古町3-2-41 |
電話 | 022-625-9321 |
WEB | https://www.kfsatelier.co.jp/ |
営業時間 | 火〜土:10:00〜17:00 |
定休日 | 日曜・月曜・祝日 |
梅村マルティナさんの著書。
ドイツTUTTO社のブランド Opal(オパール)のソックヤーン。20色あり。
エピローグ
ご近所の農家から材料にする藁(わら)をいただいて、さっそく箒(ほうき)づくり。
上手に完成しましたが、もったいなくて使えません。
U-NEXT でNHKの動画配信サービス NHKオンデマンド を視聴可能。虎に翼・らんまん・なつぞら などの朝ドラや 光る君へ・鎌倉殿の13人・真田丸 などの大河ドラマ、探偵ロマンス・正直不動産 などの名作ドラマ、ファミリーヒストリー「草刈正雄」を一気見できます。U-NEXTは初回31日間無料トライアル。NHKオンデマンド は別料金ですが、もらえる600ポイントで購入できます。PR
音楽 BGM
ジャズの名曲が流れる美の壺。番組BGMファンもいらっしゃるのではないでしょうか。
オープニング曲と番組内挿入曲をまとめましたので参考にどうぞ。リンク先で試聴できます。
オープニングテーマ
オープニングテーマ は Art Blakey And The Messengers(アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ)の名曲「Moanin’」。ジャズドラマー アート・ブレイキーが1958年に発表した同名のアルバムに収録されています。作曲はピアニストの Bobby Timmons(ボビー・ティモンズ)。
番組内 楽曲
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