NHK「美の壺(びのつぼ)」は普段使いの器から家具、着物、料理、建築に至るまで、衣食住、人の暮らしを彩ってきた美のアイテムを解説してくれる番組。紹介されたものは何?場所はどこ?出演は誰?どこで買える?と興味津々。
そんな気になる「美の壺・美術の鑑賞マニュアル」を詳しく調べてみました。最後に番組内の音楽もまとめてあります。
美の壺「あかあかと燃ゆる 炭」File 594
出演は俳優の 草刈正雄(くさかり まさお)さん、ナレーション(語り)は俳優の 木村多江(きむら たえ)さんです。
最新エピソード 美の壺 File 621「平安の美」 もどうぞ併せてご覧下さい。
NHK BS(BS101チャンネル)
初回放送:2023年12月20日(水)19:30~20:00
再放送 :2023年12月27日(水)09:30~
BSプレミアム4K
初回放送:2023年12月13日(水)19:30~20:00
再放送 :2023年12月18日(月)14:00~、2023年12月20日(水)08:00~
2023年12月23日(土)06:45〜
Eテレ
再放送 :2024年1月14日(日)23:00〜、2024年1月17日(水)05:30〜
U-NEXT でNHKの動画配信サービス NHKオンデマンド を視聴可能。虎に翼・らんまん・なつぞら などの朝ドラや 光る君へ・鎌倉殿の13人・真田丸 などの大河ドラマ、探偵ロマンス・正直不動産 などの名作ドラマ、ファミリーヒストリー「草刈正雄」を一気見できます。U-NEXTは初回31日間無料トライアル。NHKオンデマンド は別料金ですが、もらえる600ポイントで購入できます。PR
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美の壺 2024年度(2024年4月〜2025年3月)バックナンバー はこちらをどうぞ!
美の壺 あかあかと燃ゆる 炭 File 594 内容
▽日本では30万年の歴史をもつ炭
▽炭にこだわるうなぎ屋。表面はカリッと身はフワッと焼き上げる炭の威力
▽炭の最高傑作、紀州備長炭。365日炭を作り続ける秘密と職人の根気
▽茶事で欠かすことのできない菊炭。裏千家茶道家による炭手前。考え抜かれた炭の組み方から茶事で感じる炭の移ろいまで
▽炭の暖房・火鉢。美食家、北大路魯山人も愛用した火鉢とは?築170年の古民家でいろりを囲んで家族団欒。
プロローグ
さんまをいただいた草刈さん。炭火で焼いたら絶対美味しい、と七輪を出してきました。
美の壺 一、白炭:白き魔術師 備長炭の味わい
ひとつめのツボは 白炭:白き魔術師 備長炭の味わい。
吉岡隆さん / 鰻屋 かざん 店主 / 備長炭で焼き上げるウナギ【福岡県 北九州市】
福岡県北九州市小倉北区、地元で人気の 鰻屋 かざん(うなぎや かざん)では店主の 吉岡隆(よしおか たかし)さんが 炭火焼き(すみびやき)にこだわって 鰻(うなぎ)を焼いています。
吉岡さんは20代から鰻屋で修行を積み、北九州市小倉に「花山(かざん)」という鰻屋を出店したものの、バブル崩壊の影響を受けて閉店。
還暦を過ぎた時にもう一度自分の店を持ちたいと2018年にオープンしたのがこの「鰻屋かざん」です。
吉岡さんが使うのは 備長炭(びんちょうたん)。表面はカリッと中はふっくらと焼き上がり、1度使うと2度とガスには戻れないのだとか。
高温で堅く焼き締められた備長炭は不純物がなく安定した火力が長時間続きます。
さらに強力な遠赤外線が食材の芯まで火を通すことから、料理人に好まれています。
吉岡さんはうなぎの間近まで炭を近づけます。焦がさないギリギリまで炭に近づけて、表面をカリッと焼き上げ、さらにうなぎを叩くように焼く「こなし」と呼ばれる技。
これで身をふっくらと仕上げるのです。
炭の技はもう一つ。炭に落ちたタレやうなぎの脂は炭の香りと相まって煙となり、うなぎをふくよかな香りで包みます。
「炭は私より上の調理師かもしれない」と語る吉岡さん。まさに人の手を超えた炭の力がなす一品です。
気になるお値段は
うなぎのせいろ蒸し(お吸い物・サラダ・お香物付き)
梅 ¥2,100、竹 ¥2,700、松 ¥4,000、特上 ¥4,800
うな重(お吸い物・サラダ・お香物付き)
竹 ¥3,000、松 ¥4,200、特上 ¥5,100
うな丼(お吸い物・サラダ・お香物付き)
梅 ¥2,000、竹 ¥2,600、松 ¥3,800
名前 | 鰻屋 かざん(うなぎや かざん) |
住所 | 福岡県北九州市小倉北区金鶏町10-15 |
電話 | 093-883-6408 |
WEB | https://www.unagiya-kazan.com/ |
営業時間 | 11:00~15:00, 17:00~21:00 |
定休日 | 火曜・水曜 |
岡崎光男さん / 製炭士 / 最高級の紀州備長炭【和歌山県 みなべ町】
備長炭(びんちょうたん)は炭の中でも最高傑作の1つとされています。
表面が白いことから 白炭(しろずみ)と呼ばれる備長炭。平安時代に弘法大師空海が白炭の技術を中国から持ち帰り広めたと言われています。
備長炭は鉄のように硬く、金属のような音が特徴です。
和歌山県 は備長炭の中でも最高級とされる 紀州備長炭(きしゅうびんちょうたん)の生産地。年間約1,200tを生産しています。
和歌山県日高郡みなべ町、岡﨑製炭(おかざきせいたん)製炭士(せいたんし)の 岡崎光男(おかざき みつお)さんに備長炭作りを見せてもらいました。
岡崎さんは1965年和歌山県生まれ。専門学校を卒業後、父の建設会社で建設業に従事していましたが2011年に製炭業の道へ。2013年に独立し、息子さんと共に製炭業を営んでいます。
まずは林で備長炭の材料となる 姥目樫(ウバメガシ)の材料を伐採。和歌山県の県木にも指定されています。
硬いウバメガシは紀州備長炭には最適の木。木が硬いと炭の火の温度が高くて火持ちがいい最高級の備長炭に仕上がります。
1度の炭焼きに用意するウバメガシは500kgほど。木材の中でもとりわけ重いウバメガシを1本ずつ伐採、運び出します。
長さや形を整える 木づくり をして 窯入れ(かまいれ)です。
炭作りは365日絶え間なく行われます。窯の日を一旦絶やすと炭作りに最適な環境が失われるため、絶えず窯をいい状態に保っておく必要があるのです。
窯入れはウバメガシを縦に立てて並べる 立て詰め。この地域ならではの特徴です。
立てて並べると空気の通りが良くなりうまく空気が循環して木が燃焼します。
窯の素材は レンガ と 赤土 。コンクリートだと酸と熱にやられてしまいます。
窯の入り口に火をつけ全てを塞ぎ、窯の温度が上がると原木の炭化が始まります。
煙や臭いで窯の中の状態を見極めること2週間。
窯出しの日は朝7時から1時間おきに少しずつ穴を開け、不純物を燃やし切る ねらし の作業です。
窯に少しずつ空気を入れて炭を赤く焼き、ゆっくり焼き締めます。
夜通し穴を開け続けて午前3時。窯出し(かまだし)が始まります。
窯の温度は1000度。およそ10時間かけて赤々と燃えたぎる炭を取り出していきます。
10分の1の大きさにまで焼き締められた炭。鉄のように硬い備長炭の姿が現れました。
土と灰を混ぜた 素灰(すばい)をかけて空気を遮断し、急速に消火します。
備長炭の表面が白いのはこの素灰がかかっているため。紀州で炭作りが始まって1000年余り。先人の知恵と職人の根気が最高級の炭を作り出します。
名前 | 岡﨑製炭(おかざきせいたん) |
住所 | 和歌山県日高郡みなべ町東神野川88−1 |
炭の中でも最高級とされる紀州備長炭。
美の壺 二、黒炭:ゆらぎに宿る 侘び寂びの世界
ふたつめのツボは 黒炭:ゆらぎに宿る 侘び寂びの世界。
大前宗貴さん / 裏千家茶道家 / 菊炭を使う茶事の炭手前【神奈川県】
備長炭 と並んで炭の傑作といわれるのが 菊炭(きくすみ)です。
クヌギ等を材料とし、放射状の割れ目が入る断面が菊の模様になることから、その名がつきました。
備長炭とは違い、自然に消火させることで黒く仕上がるため、黒炭(くろずみ)とも呼ばれます。
菊炭は茶人・千利休(せんのりきゅう)が茶会で使用したことで全国に広まったと言われています。
茶事(ちゃじ)ではお湯を沸かすために炭を組む 炭手前(すみてまえ)の作法があります。
裏千家(うらせんけ)茶道家(さどうか)の 大前宗貴(おおまえ そうき)さんが解説してくれました。
大前さんは1970年19歳で茶道に出会い裏千家に入門。1980年に茶名「宗貴」を拝受。
NHK文化センター、朝日カルチャーなどで講師を務めています。2023年に一般社団法人 茶の湯文化学院を創立し学院長となりました。
炭手前(表千家と武者小路千家では「炭点前」)の作法は流派によって違い、番組で紹介されていたのは裏千家の作法です。また、炉(ろ)と風炉(ふろ)とでも炭の大きさや組み方が違ってきます。
使用するのは菊炭。
大きさや形の違う 7種類の菊炭(胴炭(どうずみ)・丸管(まるくだ)・丸毬打(まるぎっちょう)・割毬打(わりぎっちょう)・割管(わりくだ)・輪胴(わどう)・点炭(てんずみ))とツツジなどの小枝の隅に白い顔料をかけた 枝炭(えだずみ)を使います。
なぜこんなにもたくさんの種類の炭を使うのか不思議に思いますが、2刻4時間の茶事の間、なるべく火を持たせるということで、いろいろな種類を考えたのではないかと大前さん。
お茶を飲むために いかに火を起こすかということ。そして、茶事の間に炭火の移ろい、ゆらぎを感じ取っていくというのが根本的にはあるのではないかと語ります。
大前さんに 炭手前(すみてまえ)を見せていただきました。
炉の中央に種火となる炭を置き、その周りに炭を組んでいきます。
菊炭を組んで導火線となる白い枝炭を置きます。
炭は立てておくと火力が強くなり、横にすると弱くなります。ちょうどいい温度になるように考えられた炭の配置。
最後に大きな胴炭(どうずみ)に火が入り、茶事が行われる間、火を保つ工夫が凝らされています。
炭の役割はお茶を点てるためのお湯を沸かすだけではありません。
最初は真っ黒の炭が徐々に火がついてゆらぎ、徐々に灰になっていく。
その移ろいを茶人たちは楽しんできたではないかという大前さん。
パチパチと音をたて、わずかに炎をあげながら、真っ赤に燃える炭。
茶事が進み時間が経つことで、やがて白く灰になっていく様は、まるで炭が生きているようだと大前さんは言います。
炭の代わりゆく様に、時の移ろいを感じ取る心がありました。
名前 | 一般社団法人 茶の湯文化学院(ちゃのゆぶんかがくいん) |
住所 | 神奈川県相模原市南区相武台2-21-21 |
美の壺 三、暖:炭火を囲み 和むひととき
最後のツボは 暖:炭火を囲み 和むひととき。
増田剛さん / 炭専門店 増田屋 代表取締役 / 昔の庶民の暖房・火鉢【東京都 大田区】
炭を使った暖房といえば 火鉢(ひばち)。昭和の初めまではどこの家庭にもありました。
火鉢とはどこにでも置くことができる炉の一種で奈良時代には既に使用されていたと考えられています。
清少納言(せいしょうなごん)が長保3年(1001年)頃に書いたと言われる「枕草子(まくらのそうし)」。「春はあけぼの」の一節に出てくる「火桶け(ひおけ)」とは火鉢のこと。
暖かくなって火鉢の炭火が白い灰になってしまうのは良くないと記されています。
その後、江戸から昭和にかけて様々な火鉢が登場しました。
東京大田区 の炭専門店 株式会社 増田屋(ますだや)昭和10年(1935年)創業。代表取締役の 増田剛(ますだごう)さんが火鉢を紹介してくれました。
関東を中心に使われた 関東長火鉢(かんとうながひばち)。
主にケヤキで作られています。
こちら側に亭主、向こう側にお客さん。対面で座って使うような火鉢です。
火鉢の中は銅になっていて、この中に灰を入れ、炭を乗せて使用します。
関西を中心に使われた 関西長火鉢(かんさいながひばち)。
火鉢の周りをテーブル状にすることで、家族が集まれるようになっています。
名前 | 株式会社 増田屋(ますだや) |
住所 | 東京都大田区南久が原2-5-3 |
電話 | 03-3755-3181 |
WEB | https://www.masudaya.co.jp/ |
営業時間 | 月〜金:9:00〜17:30、土:9:00〜16:00 |
定休日 | 日曜 |
増田屋さんが作っている火鉢。暖をとったり、お湯を沸かしたり、食材を炙ったりと楽しめます。
増田屋さんの炭。
岡田直子さん / 吉兆庵美術館 学芸員 / 北大路魯山人の火鉢
美食家として知られる 北大路魯山人(きたおうじ ろさんじん)も火鉢を愛用していました。
解説してくれたのは 吉兆庵美術館(きっちょうあんびじゅつかん)学芸員の 岡田直子(おかだ なおこ)さん。
「吹墨風星岡茶寮文字瓶掛」は昭和初期、魯山人が40歳頃に自身の会員制高級料亭 星岡茶寮(ほしがおかさりょう)で使うために作った高さ20cmほどの火鉢。
炭を入れ、手を温める 手あぶり火鉢 です。
多才なことで知られている魯山人。様々な経験をしているからこそ、他の陶芸家では真似ができない技術を随所に見ることができる、と岡田さん。
食を楽しむ空間の彩りに炭を加える魯山人の粋を感じ取れる作品。
書家や落款士としても活躍した魯山人ならではの書体や浮き出た文字が独自の世界観を作っています。
名前 | 岡山・吉兆庵美術館(おかやま きっちょうあんびじゅつかん) |
住所 | 岡山県岡山市北区幸町7-28 |
電話 | 086-364-1005 |
WEB | https://www.kitchoan.co.jp/museum/okayama/ |
営業時間 | 10:00~17:00 |
定休日 | 第1・3月曜、年末年始、展示入替日 |
名前 | 鎌倉・吉兆庵美術館(かまくら きっちょうあんびじゅつかん) |
住所 | 神奈川県鎌倉市小町2-9-1 |
電話 | 0467-23-2788 |
WEB | https://www.kitchoan.co.jp/museum/kamakura/ |
営業時間 | 10:00~17:00 |
定休日 | 第1・3月曜、年末年始、展示入替日 |
奥野瑠一さん+奥野瞳さん / 古民家の囲炉裏(いろり)で家族団欒【千葉県 長生郡】
千葉県長生郡(ちょうせいぐん)長柄町(ながらちょう)にある築170年の古民家に住む 奥野瑠一(おくの)さん、奥野瞳(おくの ひとみ)さんと2人の娘さんのご一家。
古い家に住みたいと8年前に購入。自分たちで修復しながら暮らしています。
特徴は何といっても総かやぶきの屋根。専門の職人たちと一緒にふき替えました。
かやぶき屋根に欠かせないもの。それは 囲炉裏(いろり)。
美の壺 File 436「いろり」でも解説されていたように、煙がかやぶきの内側に入り込んで虫を寄せ付けなくなったり、雨漏りにも強くなったりするのです。
1年を通して週に1度は火を入れています。囲炉裏は家の補強にもひと役買っているのです。
奥野さん一家は週末になると囲炉裏を囲んでお餅やお肉やお魚を焼きます。
コンロは簡単に火はつきますが、そこに一手間加えることで自分も楽しめて、子供たちも火がどうやったらつくのか、食べるものがどうやったら柔らかくなって食べられるようになるのかわかるのがすごくいい、と奥野さん。
体と心をじんわり温めてくれる炭のある暮らし。昔も今もなごみのひとときがそこにあります。
エピローグ
炭を買いに行ったもののたくさん種類があり、わからないので片っ端から買ってきてしまった草刈さん。
うまく火がつかなくて困ってしまいました。
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音楽 BGM
ジャズの名曲が流れる美の壺。番組BGMファンもいらっしゃるのではないでしょうか。
オープニング曲と番組内挿入曲をまとめましたので参考にどうぞ。リンク先で試聴できます。
オープニングテーマ
オープニングテーマ は Art Blakey And The Messengers(アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ)の名曲「Moanin’」。ジャズドラマー アート・ブレイキーが1958年に発表した同名のアルバムに収録されています。作曲はピアニストの Bobby Timmons(ボビー・ティモンズ)。
番組内 楽曲
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