NHK「美の壺(びのつぼ)」は普段使いの器から家具、着物、料理、建築に至るまで、衣食住、人の暮らしを彩ってきた美のアイテムを解説してくれる番組。紹介されたものは何?場所はどこ?出演は誰?どこで買える?と興味津々。
そんな気になる「美の壺・美術の鑑賞マニュアル」を詳しく調べてみました。最後に番組内の音楽もまとめてあります。
美の壺「楽器の王様 パイプオルガン」File 515
出演は俳優の 草刈正雄(くさかり まさお)さん、ナレーション(語り)は女優の 木村多江(きむら たえ)さん、ゲストは 謎のオルガン弾き役で登場したジャズピアニストの 山下洋輔(やました ようすけ)さんです。
最新エピソード 美の壺 File 621「平安の美」 もどうぞ併せてご覧下さい。
BSプレミアム(2023年11月30日まで。2023年12月1日から NHK BS(BS101チャンネル) へ移動)
初回放送:2020年10月16日(金)19:30~20:00
再放送 :2020年10月24日(土)06:45〜、2021年10月16日(土)06:45〜
2021年10月22日(金)12:30〜、2023年4月14日(金)06:45〜
BS4K(2023年12月1日から BSプレミアム4K へ名称変更)
初回放送:2020年10月16日(金)19:30~20:00
再放送 :2020年10月19日(月)16:00〜、2020年10月23日(金)09:00~
2021年10月16日(土)06:45〜、2021年10月22日(金)12:30〜
2023年4月14日(金)06:45〜
Eテレ
再放送 :2022年10月16日(日)23:00〜、2022年10月19日(水)05:30〜
U-NEXT でNHKの動画配信サービス NHKオンデマンド を視聴可能。虎に翼・らんまん・なつぞら などの朝ドラや 光る君へ・鎌倉殿の13人・真田丸 などの大河ドラマ、探偵ロマンス・正直不動産 などの名作ドラマ、ファミリーヒストリー「草刈正雄」を一気見できます。U-NEXTは初回31日間無料トライアル。NHKオンデマンド は別料金ですが、もらえる600ポイントで購入できます。PR
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美の壺 2024年度(2024年4月〜2025年3月)バックナンバー はこちらをどうぞ!
美の壺 楽器の王様 パイプオルガン File 515 内容
▽パイプオルガンで始まるユーミンの名曲「翳(かげ)りゆく部屋」。松任谷正隆さんが、44年ぶりに同じ大聖堂で奏でる!
▽世界で唯一!回転するパイプオルガンの音色の秘密とは?!
▽世界から名匠とたたえられる、日本人パイプオルガン製作家の技に密着!
▽徳川頼貞が特注した日本最古のパイプオルガン。その秘められた歴史と音色に迫る!
▽ジャズピアニスト・山下洋輔さんによる“謎のオルガン弾き”も必見!
プロローグ
ジャズのレコードを聴いている草刈さん。しかし探してる曲が見つかりません。
そこに「オルガンはいらんかね?」と流しの謎のオルガン弾きが現れました。
もしかしたら音楽に詳しいかもしれません。
「オルガンください!」
山下洋輔さん / 謎のオルガン弾き
謎のオルガン弾き 役はジャズピアニストの 山下洋輔(やました ようすけ)さんが演じています。
美の壺「ジャズ」の回にも出演していました。
山下さんは1942年東京生まれ。幼少からピアノとバイオリンを習い、中学生でジャズに傾倒。麻布高校在学中にプロとしてのの演奏活動を開始し、国立音楽大学作曲科でクラシックの作曲理論を学びます。
1965年に富樫雅彦や武田和命らと日本で初めて フリージャズ を演奏したグループを結成。1966年に 山下洋輔トリオ 結成。国内外でのライブツアーを行い活動の幅を広げます。
1988年に ベース:セシル・マクビー さん、ドラム:フェローン・アクラフ さんと 山下洋輔ニューヨーク・トリオ を結成。並行してソロや作曲、他ジャンルとのコラボレーションなどの音楽活動、エッセイなどの執筆活動など、ジャズの枠に囚われずに幅広く活躍しています。
山下洋輔ニューヨーク・トリオの結成30周年記念アルバム。
美の壺 一、響き:そこにしかない響きを求めて
ひとつめのツボは 響き:そこにしかない響きを求めて。
小林英之さん / 東京芸術劇場コンサートホール / 多彩な音色【東京都 西池袋】
東京・西池袋 の 東京芸術劇場(とうきょうげいじゅつげきじょう)コンサートホールは1,999席の大ホール。
大空間を圧倒的な響きで満たすパイプオルガンの高さは約10m。フランスのパイプオルガン製作者 Marc Garnier(マルク・ガルニエ)工房 が作りました。
9,000本ものパイプが多彩な音色を奏でます。
鍵盤の左右にあるたくさんのレバーは音色を選ぶ装置で ストップ と呼ばれます。
多彩な音色の秘密は126ストップもあること。内訳はルネサンスが26ストップ、バロックが37ストップ、モダンが63ストップ。
東京芸術劇場オルガニストの 小林英之(こばやし ひでゆき)さんが解説してくれました。
小林さんは東京藝術大学音楽学部卒業、同大学院修了。ドイツ・フランクフルト音楽大学卒業。
各地での独奏会のほか、NHK交響楽団、名古屋フィルなどの交響楽団などでオルガンを担当。
現在は東京芸術劇場オルガニスト、上野学園大学教授を務めています。
126もあるストップのうち プリンシパル というストップがオルガンの最も基本的な音色。その倍音を重ねるのが基本。
その他にクルムホルンという管楽器のまねをした クルムホルン というストップ。
他にも管楽器トランペットの音色を模した トランペット というストップもあり。
このストップという装置で音色を足すことができます。
演奏されていたのはルネサンス時代の舞曲 ジャイルズ・ファーナビー作曲「古いスパニオレッタ」。
こちらのパイプオルガンには ルネサンス と バロック の レバー があり、バロック時代の曲を演奏するときにはレバーを切り替えます。
レバーを切り替えると調律法と音の高さが変わるのです。
レバーを バロック に切り替えて演奏したのはバロック時代の曲 ヨハン・ゼバスティアン・バッハ作曲「愛しきイエスよ 我らはここに」。
長い歴史の中で調律の方法や基準になる音の高さが少しずつ変わってきたパイプオルガン。
作曲した時代の響きをできるだけ忠実に再現できるように設計されています。
そしてもっと新しい曲を弾く時はなんとパイプオルガン全体が回転。2台のパイプオルガンが回転壁の表裏に配置されていて、180度回転させて使用する方を表にする方式です。
音色はもちろんデザインも モダン に変身。世界で唯一の仕掛けです。
モダンのパイプオルガンで演奏されたのは20世紀に作曲された楽曲 フランシス・ジャクソン作曲「大主教のファンファーレ」でした。
名前 | 東京芸術劇場(とうきょうげいじゅつげきじょう) |
住所 | 東京都豊島区西池袋1-8-1 |
電話 | 03-5391-2111 |
WEB | https://www.geigeki.jp/ |
営業時間 | 演目による |
定休日 | 演目による |
東京芸術劇場×キングレコード共同企画の音源。小林英之さんを始め4人のオルガニストが東京芸術劇場の巨大パイプオルガンを演奏しています。
松任谷正隆さん / 東京カテドラル聖マリア大聖堂 / ポップスとパイプオルガン【東京都 西池袋】
音楽プロデューサーの 松任谷正隆(まつとうや まさたか)さん。1976年にユーミンこと 荒井由実(あらい ゆみ)さんの「翳りゆく部屋」を編曲。当時としては珍しいパイプオルガンで始まるポップスでした。
「翳りゆく部屋」の前奏は 東京カテドラル聖マリア大聖堂(とうきょうかてどらる せいまりあだいせいどう)を使って録音されました。
松任谷正隆さんは編曲とパイプオルガンの演奏を担当。
録音から44年、当時を振り返ります。
大聖堂の神の声が聞こえてくるみたいな大空間の天から降ってくる音。
神がかった音を録ってみたいと思ったそうです。
当時はイギリスなどでクラシックとロックの融合がブーム。「翳りゆく部屋」は教会音楽的な要素が強い曲だったのでそういうアプローチをやってみたかったのだとか。
東京カテドラル聖マリア大聖堂の現在の建物は建築家・丹下健三の設計で1964年に竣工。パイプオルガンは老朽化に伴い2004年に2代目が製作され、現在使われているのはその2代目。
パイプオルガンの新設置はイタリア屈指のパイプオルガン奏者 Lorenzo Ghielmi(ロレンツォ・ギエルミ)さんに設計コンサルタントと工事監督を依頼。
製作はイタリアの老舗工房 Eugenio & Enrico Mascioni(エウジョニオ&エンリコ・マショーニ)社。製作と設置のドキュメンタリーはNHK「パイプオルガン誕生」という番組になり、DVD化されています。
番組で演奏していたのは東京カテドラル聖マリア大聖堂オルガニストの 青田絹江(あおた きぬえ)さん。
青田さんは1962年福島県生まれ。国立音楽大学器楽学科オルガン専攻を首席で卒業。1989年にリヨン国立高等音楽院、ウィーン国立音楽大学、パリ国立高等音楽院に留学。留学中よりヨーロッパ各地で演奏活動を行い、1993年に帰国。国内外各地で演奏活動を続けています。
現在は東京カテドラル聖マリア大聖堂オルガニストを務めるほか、後進の指導にあたっています。
コンクリートの空間が生み出す長い残響時間。松任谷さんはこの響きに惹かれ44年前に録音しました。
最後に松任谷さんが「翳りゆく部屋」の前奏を演奏していました。
名前 | 東京カテドラル聖マリア大聖堂(とうきょうかてどらる せいまりあだいせいどう) |
住所 | 東京都文京区関口3-16-15 |
電話 | 03-3941-3029 |
WEB | https://tokyo.catholic.jp/archdiocese/cathedral/ |
営業時間 | 火~土:9:00~17:00、日:8:00~16:00 |
定休日 | 月曜 |
荒井由実(松任谷由実)さんの1972年〜1976年のシングル・アルバムをまとめたCD。「翳りゆく部屋」も収録されています。
東京カテドラル聖マリア大聖堂のパイプオルガン製作と設置のドキュメンタリー。ロレンツォ・ギエルミによるオルガン演奏も収録。
美の壺 二、音色:風を操り 音を極める
ふたつめのツボは 音色:風を操り 音を極める。
武久源造さん / 鍵盤楽器奏者 / 携帯用のパイプオルガン「オルガネット」「バルダキンオルガン」
ルネサンス時代の宗教画 ハンス・メムリンク「奏楽の天使」に描かれているのは Organetto(オルガネット)と呼ばれる携帯用のパイプオルガンです。
今もオルガネットを演奏している音楽家がいます。そのひとり、鍵盤楽器奏者の 武久源造(たけひさ げんぞう)さん。
演奏していたのは作曲者不詳(イレボルク写本より)「プレアンブルム」。
武久さんは1957年愛媛県生まれ。1歳のときに病気で失明。2歳で音楽教師の父親から音楽の才能を見出されます。1966年にカラヤンがベルリンフィル松山市民会館の公演で演奏したチェンバロの音色に魅せられたことからチェンバロを学ぶようになりました。
東京藝術大学音楽学部楽理科卒業後、同大学大学院音楽研究科修了。
1984年から国内外で演奏活動を始め、チェンバロ、オルガン、ピアノ、クラビコードなど様々な鍵盤楽器を弾きこなしています。CDリリースも多数。
1998年〜2010年はフェリス女学院大学と同大学院講師。現在は国立音楽大学客員講師を務めています。
オルガネットは「ふいご」で風を本体に送り鍵盤を押すとパイプの下の弁が開いて音が出る仕組み。
大きなパイプオルガンと同じ原理です。ふいごを揺らすと風が揺らぎ音に表情が生まれます。
オルガネットの名手と伝えられている14世紀の盲目のオルガニスト Francesco Landini(フランチェスコ・ランディーニ)。
ランディーニがオルガンを弾くと鳥たちが集まってきて鳥たちが一緒に合奏をしたと。それがえもいわれぬ美しいものだったといわれています。
Baldachin Organ(バルダキンオルガン)という16世紀型のパイプオルガンはふいごを扱う ふいご手 (ふいごしゅ)と2人で演奏します。
大航海時代には宣教師たちがこうした楽器を携えて世界中を布教して回ったといいます。
演奏していたのは作曲者不詳(アテニャン版オルガン曲集より)「新しいパッサメッツォ 第3版」。
武久さんのオルガネットとバルダキンオルガンの製作は 中西光彦(なかにし みつひこ)さん。
奈良市内の高校の国語教師として在職中から中世ルネサンス音楽の演奏グループ「アウルコンソート」の一員として活動。独学でオルガン制作を始め、退職後に草苅オルガン工房で草苅徹夫氏に師事。
その後、奈良県山辺郡山添村の工房を構えました。
名前 | 武久源造(たけひさ げんぞう) |
WEB | http://www.genzoh.jp/ |
武久源造さんのCD。
横田宗隆さん / パイプオルガンの製作【神奈川県 相模原市】
神奈川県相模原市にある世界的なパイプオルガン製作者の工房 横田宗隆オルガン製作研究所(よこたむねたか おるがんせいさくけんきゅうしょ)。
パイプオルガン製作者 横田宗隆(よこた むねたか)さんは昔ながらのパイプオルガンに魅せられ当時の技術にこだわっています。
横田さんとパイプオルガンとの出会いは14歳の時。音楽付きの両親からプレゼントされたレコードはシャルロッテンブルグ宮殿のアルブ・シュニットガー・オルガンでのバッハの楽曲の演奏。天に上ような音に魅了されました。大学では経済学部に進んだもののパイプオルガンを作りたいという気持ちを諦め切れすに大学卒業後にオルガン建造家 辻宏(つじ ひろし)さんの元で修業。
そしてアメリカへ渡り古いパイプオルガンの製造方法を研究しました。さらにスウェーデン国立イエーテボリ大学で15-19世紀ヨーロッパのオルガン製作の研究を重ね、それに基づいた新築オルガンの設計・製作、歴史的楽器の修復に携わります。
40年近く海外を拠点に活動し高い評価を得た頃、後進の育成に力を注ぎたいと2015年日本に永住帰国。横田宗隆オルガン製作研究所を設立し東京藝術大学非常勤講師も務めています。
横田さんが製作したパイプオルガンは
スウェーデン ヨーテボリ市のヨーテボリ大学エリグリュリテ新教会。
オランダ アムステルダム市のオルゲルパーク。
アメリカ ニューヨーク州ローチェスター市のイーストマン音楽大学、など多数。
パイプは錫と鉛を溶かした合金で作りますが、精錬技術が低かった時代に混ざっていた不純物を調べわざわざ加える徹底ぶり。
パイプの表面に微妙な凹凸をあえて残して作ります。
古いパイプオルガンの材料や作り方を徹底的に分析し、量産技術の発達で途絶えた工法を解明します。
欧米でも名匠と呼ばれるまでになりました。
膨大な手間をかけてまで昔のやり方にこだわるのは古いパイプオルガンの音の持つ心地よさを再現したいため。
持続音に残る雑音を完全に取り払うのではなく、ある種の雑音をある程度残すほうが心地よく感じるのだとか。
風を送る ふいご。
現代のパイプオルガンの多くは電気の力で風を作ります。
しかし横田さんは人の力が起こす風のニュアンスにこだわります。人力で踏むのです。
日本福音ルーテル宮崎教会のパイプオルガンの演奏シーンのようにふいごを踏む ふいご手 が必要になります。
名前 | 横田宗隆オルガン製作研究所(よこたむねたか おるがんせいさくけんきゅうしょ) |
住所 | 神奈川県相模原市緑区牧野5584-22 |
電話 | 042-682-0159 |
富島裕史さん + 松波久美子さん / 日本福音ルーテル宮崎教会【宮崎県 宮崎市】
宮崎県宮崎市 の 日本福音ルーテル宮崎教会(にほんふくいんるーてるきょうかい)。
マルティン・ルターの宗教改革1517年から500年目を祝う記念行事のひとつとして、新しいヒルデブラント様式オルガンを製作を 横田宗隆 さんに依頼しました。
横田さんが日本に拠点を移してから最初に手がけた パイプオルガン の最終調整をしているところを取材。
パイプオルガンは置かれている空間全体が一つの楽器となって鳴り響きます。
そのため音の確認は聴く人のいる場所で。
作ったのはバッハが活躍した18世紀前半ドイツ中部の様式 ヒルデブラント様式です。
こだわりは弦楽器 ビオラ・ディ・ガンバに似た音を出すこの ストップ。
弦楽器の弓の最初のガリッという感じが出るように調整されています。
ガリッというような発音が入ったガンバはなかなかない、作るのは非常に楽しかったと嬉しそう。
最終確認は教会のオルガニスト 松波久美子(まつなみ くみこ)さんと行います。
演奏していたのは ヨハン・ゼバスティアン・バッハ作曲「フーガの技法 コントラプンクト I」。
横田さんのこだわりが詰まった ふいご。
演奏に合わせて踏む力を調節。生きた風を送ります。
牧師の 富島裕史(とみしま ひろし)さんは、パイプオルガンを入れるのは夢のまた夢だと思っていたのに実現して感激していました。
教会のパイプオリルンは 宗教改革500年記念オルガン(The Miyazaki Reformation Organ 略称:MRO)と名付けられました。
これからずっと美しい音色を奏でてほしいですね。
名前 | 日本福音ルーテル宮崎教会(にほんふくいんるーてるきょうかい) |
住所 | 宮崎県宮崎市船塚3-40 |
電話 | 0985-24-5438 |
WEB | https://www.miyazaki-jelc.org/ |
日本福音ルーテル宮崎教会のパイプオルガン演奏の録音。演奏は松波久美子さん、ふいご手はオルガンを作った横田宗隆さんが担当しています。
美の壺 三、時:思いをつなぐ
最後のツボは 時:思いをつなぐ。
大塚直哉さん / 旧東京音楽学校奏楽堂 / 日本のパイプオルガン教育を支えたオルガン【東京都 上野】
東京・上野 にある 旧東京音楽学校奏楽堂(きゅうとうきょうおんがくがっこう そうがくどう)は明治23年(1890年)に建てられた日本で一番古い洋式音楽ホール。
2階のホールにあるパイプオルガンは今年100年を迎えるという演奏可能なパイプオルガンとしては日本最古のもの。
解説してくれたのはチェンバロ・オルガン奏者で東京藝術大学(とうきょうげいじゅつだいがく)教授の 大塚直哉(おおつか なおや)さん。
演奏していたのはエドワード・エルガー作曲「威風堂々」。
大塚さんは1994年東京藝術大学音楽学部卒業後、同チェンバロ専攻修了。アムステルダム音楽院チェンバロ科およびオルガン科修了。
チェンバロ・オルガン・クラヴィコードのソリストとして活躍するほか後進の育成にも尽力し、東京藝術大学教授を務めています。
また、宮崎県立芸術劇場、彩の国さいたま芸術劇場、旧東京音楽学校奏楽堂のオルガン事業アドバイザーも務めています。
旧東京音楽学校奏楽堂のパイプオルガンはもともと紀州徳川家16代 徳川頼貞(とくがわ よりさだ)が大正9年(1920年)に紀州徳川家の音楽堂 南葵楽堂(なんきがくどう)のために作らせたもの。
「音楽の殿様」と呼ばれるほどの音楽好きだった徳川頼貞はヨーロッパで出会ったパイプオルガンに感動し自分の音楽堂のためにイギリスの Abbott and Smith(アボット&スミス)社に特注。
5年かけて完成にこぎ着けますが3年後に関東大震災に合い、建物もオルガン自体も被害を受けてしまいます。
結局、徳川頼貞はパイプオルガンを東京音楽学校、今の東京藝術大学の前身の学校に寄付することにしたのです。
パイプオルガンは昭和3年(1928年)に東京音楽学校に移設され、以来日本のパイプオルガン教育を支えてきました。
旧式ではあるけれど今も現役。すり減った象牙の鍵盤には100年の歴史が刻み込まれています。
大塚さんが習った先生の一人も卒業試験でこのパイプオルガンを使ったとのこと。
一度弾いたら最後故障して止まらなくなったりするということが頻出してたために、今日はオルガンの機嫌がいいかどうかドキドキしながら弾いていたそうです。
今の日本のオルガン界を支えている多くの人たちがこの楽器で勉強した、と100年現役のオルガンのエピソードを語ってくれました。
現在、旧奏楽堂は東京藝術大学から台東区が譲り受け一般へ公開。昭和63年(1988年)に国の重要文化財の指定を受けています。
名前 | 台東区立 旧東京音楽学校奏楽堂(きゅうとうきょうおんがくがっこう そうがくどう) |
住所 | 東京都台東区上野公園8-43 |
電話 | 03-3824-1988 |
WEB | https://www.taitocity.net/zaidan/sougakudou/ |
営業時間 | 火~日:9:30~16:30 |
定休日 | 月曜 |
中島萬里子さん 中里威さん / 新潟カトリック教会 / 90年以上愛されてきたパイプオルガンの修理【新潟県 新潟市】
新潟市 で明治4年(1871年)に布教を始めた 新潟カトリック教会(にいがたかとりっくきょうかい、または カトリック新潟教会)には90年以上愛されてきたパイプオルガンがあります。
2020年に30年ぶりに大がかりな修理(オーバーホール)が行われました。
このパイプオルガンは1929年にドイツ Anton Feith(アントン・フェイス)社が作ったもの。
パイプの数はおよそ320本。その全てがきれいに鳴るように部品を一つ一つ調整します。
修理を担当するのはオルガン建造家の 中里威(なかざと たけし)さん。
このオルガンを50年間弾き続けてきた新潟カトリック教会オルガニストの 中島萬里子(ながじま まりこ)さんは調子の悪いところを記録してきました。
Cの音が弾き終わってもしばらく鳴るという不調があったようですが、弁を調整してもらって治ったようです。
今回の修理はさまざまな人の思いで実現しました。
もう亡くなった神父様が亡くなる前にオーバーホールの費用は自分がなんとかするって
私たちもオルガンを愛して各教会で奉仕をしている仲間たちと去年チャリティーコンサートをしながら費用を考えたりして
今回の修理はさまざまな人の思いで実現しました。
去年亡くなった神父の 三崎良次(みさき りょうじ)さん。パイプオルガンの修理に遺産を使うよう言い残しました。
チャリティーコンサートを行い信者からの寄付を足してようやく修理が実現したのです。
修理が終わり初めてのミサの日。信者の方たちもとても嬉しそう。
年月を経て世代が変わっても同じ場所で同じ音色を奏でる。
いつまでも愛され続けるパイプオルガンです。
名前 | 新潟カトリック教会(にいがたかとりっくきょうかい) |
住所 | 新潟県新潟市中央区東大畑通一番町656 |
電話 | 025-222-5024 |
WEB | http://cathedral-niigata.jp/ |
営業時間 | 一般見学:9:00〜18:00 |
定休日 | ミサや結婚式などのイベント時には見学不可 |
エピローグ
草刈さんが探していたのは Art Blakey And The Messengers(アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ)の名曲「Moanin’」。美の壺のオープニングテーマです。
草刈さんがおじさんのうちに遊びに行った時に必ずこのレコードかかってた思い出の曲です。
U-NEXT でNHKの動画配信サービス NHKオンデマンド を視聴可能。虎に翼・らんまん・なつぞら などの朝ドラや 光る君へ・鎌倉殿の13人・真田丸 などの大河ドラマ、探偵ロマンス・正直不動産 などの名作ドラマ、ファミリーヒストリー「草刈正雄」を一気見できます。U-NEXTは初回31日間無料トライアル。NHKオンデマンド は別料金ですが、もらえる600ポイントで購入できます。PR
音楽 BGM
ジャズの名曲が流れる美の壺。番組BGMファンもいらっしゃるのではないでしょうか。
オープニング曲と番組内挿入曲をまとめましたので参考にどうぞ。リンク先で試聴できます。
オープニングテーマ
オープニングテーマ は Art Blakey And The Messengers(アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ)の名曲「Moanin’」。ジャズドラマー アート・ブレイキーが1958年に発表した同名のアルバムに収録されています。作曲はピアニストの Bobby Timmons(ボビー・ティモンズ)。
番組内 楽曲
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