NHK「美の壺(びのつぼ)」は普段使いの器から家具、着物、料理、建築に至るまで、衣食住、人の暮らしを彩ってきた美のアイテムを解説してくれる番組。紹介されたものは何?場所はどこ?出演は誰?どこで買える?と興味津々。
そんな気になる「美の壺・美術の鑑賞マニュアル」を詳しく調べてみました。最後に番組内の音楽もまとめてあります。
美の壺「人生を共にする旅行鞄(かばん)」File 392
出演は俳優の 草刈正雄(くさかり まさお)さん、ナレーション(語り)は女優の 木村多江(きむら たえ)さん、ゲストは芸人の フーテンの小寅(フーテンのことら)さんです。
最新エピソード 美の壺 File 622「炎」 もどうぞ併せてご覧下さい。
BSプレミアム(2023年11月30日まで。2023年12月1日から NHK BS(BS101チャンネル) へ移動)
初回放送:2016年10月21日(金)19:30~20:00
再放送 :2016年10月25日(火)11:00〜、2016年10月27日(木)6:30~
Eテレ
再放送 :2017年2月26日(日)23:00~、2019年9月29日(日)23:00~
:2022年1月23日(日)23:00~、2022年1月27日(木)11:00~
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美の壺 人生を共にする旅行鞄(かばん)File 392 内容
▽現代に受け継がれる一流の職人技!パリ万博で絶賛された柳行李(やなぎごうり)のトランク。
▽ヌメ革を自分色に染めたコレクション600点!傷まで愛(いと)おしい、思い出が詰まったかばん
▽親子代々使い込んだ革トランクが醸し出す、あめ色の味わい
▽手縫いのオーダーメイドボストンバッグは横顔が命!?
▽音楽家・古澤巌が、演奏旅行用に特注した鞄も登場!
▽寅さん愛用のトランク、気になる中身は?
プロローグ
友達と温泉旅行に行こうとしている草刈さん。しかし一足先に妻に新しい旅行鞄を持って行かれて古い鞄しかありません。
おじいちゃんが新婚旅行に持っていったという革のトランク、使ってみましょうか。
美の壺 一、飴色:時が染める味わい
ひとつめのツボは 飴色:時が染める味わい。
葛飾柴又寅さん記念館 / 寅さんのトランク【東京都 葛飾柴又】
紹介されていたのは映画「男はつらいよ」の世界に触れることができる 葛飾柴又寅さん記念館(かつしかしばまた とらさんきねんかん)。
寅さんの実家「くるまや」の撮影に使用したセット、タコ社長の「朝日印刷所」など昭和レトロな展示が盛り沢山。
寅さんのトランク や衣装も展示されています。
名前 | 葛飾柴又寅さん記念館(かつしかしばまた とらさんきねんかん) |
住所 | 東京都葛飾区柴又6-22-19(葛飾区観光文化センター内) |
WEB | https://www.katsushika-kanko.com/tora/ |
営業時間 | 9:00〜17:00 |
定休日 | 第3火曜、12月第3火・水・木曜 |
カバンストリート / 日本一の鞄生産地【兵庫県 豊岡市】
兵庫県豊岡市 は日本一の 鞄(かばん)の生産地として知られています。
2005年3月にカバン産業と商店街が協力して発足した カバンストリート はおよそ200mの間に10件もの鞄屋さんが並びます。
鞄の修理やクリーニングの専門店もあり。鞄を大切にする土地柄が伺えます。
豊岡の鞄の歴史は江戸時代に遡ります。
発祥は柳の枝を編んで作った軽くて丈夫な 柳行李(やなぎごうり)。
通気性がよく衣類などの収納や行商人の運搬道具としてなくてはならないものでした。
柳行李の一大生産地だったことから、豊岡は鞄の町として発展し、明治時代に持ち手とベルトが付けられた 行李鞄(こうりかばん)として生まれ変わりました。
行李鞄は1900年のパリ万国博覧会に出品されると、その軽さや機能性が絶賛されました。
名前 | カバンストリート |
住所 | 兵庫県豊岡市中央町8 |
WEB | https://www.cabanst.com/ |
柳行李から本革まで、豊岡産のかばん。
寺内卓巳さん / たくみ工芸 / 柳行李・行李鞄【兵庫県 豊岡市】
今でも 行李鞄(こうりかばん)の技を受け継ぐ職人と紹介されていたのは たくみ工芸(たくみこうげい)の柳行李伝統工芸士 寺内卓巳(てらうちたくみ)さん。
豊岡杞柳細工 は柳行李や籐籠などを含む豊岡市の伝統産業。1992年に国の伝統的工芸品に指定されました。そのうち柳行李の伝統工芸士は寺内さんただ1人。
寺内さんは1978年に家業の柳籠・籐籠製造業に入門。柳行李職人はどんどん減ってしまいましたが、現在は後進の育成にも力を注いでいます。
寺内さんは原料となるヤナギ科の植物 コリヤナギ を育てる農家でもあります。
しなやかで強靭なコリヤナギの枝の間に麻糸を通し編んで行きます。縦糸に柳、横糸に麻、隙間なく緻密に編むと投げても壊れない強さを生まれます。
豊岡生まれの丈夫な行李鞄は使い込んでこそ生まれる魅力があります。
100年前に作られた行李鞄は美しい飴色の輝きを放ちます。
寺内さんも使っていただく方には見せてくださいとお願いしているそうです。
1年ごとに柳の色が濃くなり落ち着いた雰囲気になっていくのを見ると、大事されているととても嬉しく思うと語っていました。
名前 | たくみ工芸(たくみこうげい) |
住所 | 兵庫県豊岡市出石町魚屋99 |
WEB | https://takumi-yanagi.com/ |
営業時間 | 9:00〜17:00 |
定休日 | 不定休 |
たくみ工芸の行李鞄(こうりかばん)。普段使いにちょうどいい かごバッグも作っています。
植村賢仁さん / マスミ鞄囊 / ヌメ革のトランク【兵庫県 豊岡市】
創業100年を迎えたカバンメーカーと紹介されていたのは 兵庫県豊岡市 の マスミ鞄囊(マスミほうのう)。大正5年(1916年)に初代・植村賢輔さんが創業。現在は3代目の 植村賢仁(うえむらけんじ)さんが代表取締役を務めています。
トランクやアタッシュケースのような 箱型鞄 の生産から始まったマスミ鞄囊は100年以上の間に多種多様な旅行鞄を製造してきました。
ヌメ革(ヌメがわ)という牛革を舐めしたままの染色加工をしていない革は革本来の美しさを発揮する材料。自然の風合いが最も現れるといいます。
ヌメ革のトランク は月日を経て味わいを増し、持ち主の愛着も深くなる逸品。
ヌメ革は光を避けるため倉庫の奥で紙に包まれ厳重に保管されています。
非常にデリケートな革のため、包紙が少し破れていただけで日焼けしてしまい使えなくなってします。
手に汗を書いていたら色が変わるなど、水分にも弱い繊細な素材。
ヌメ革の魅力は表面に現れる表情だという植村さん。
「牛の首のところは人間と同じにシワができます。血筋と呼ばれる血管は千差万別ですので牛の育ってきた歴史を感じます」と語っていました。
名前 | マスミ鞄囊(マスミほうのう) |
住所 | 兵庫県豊岡市立野町5-1 |
WEB | https://masumihono.com/ |
営業時間 | 8:40〜17:30 |
定休日 | 不定休 |
マスミ鞄囊(マスミほうのう)製のアタッシュケース。
マスミ鞄囊(マスミほうのう)製、三越伊勢丹オリジナルの大人用ランドセル型リュック。黒もあり。
古山浩一さん / 画家・鞄コレクター
画家・鞄コレクターの 古山浩一(ふるやまこういち)さんは1955年東京生まれ、筑波大学大学院芸術専攻修了。万年筆で描く絵画作品を多数発表し、万年筆収集家でもあります。
古山さんは600点以上のカバンコレクションを所有。自宅の他に鞄用の家まで借りています。
鞄への愛はイラストとなり、ついには本も出版するほど。
革そのものが味わいを持つ ヌメ革。その風合いは鞄好きの人を虜にするといいます。
古山さんもヌメ革に魅せられています。
コレクションの始めは40年前。イタリアの古道具屋で出会った飴色に輝くヌメ革のトランクでした。
嬉しくなって内側に至るまで細々と描き、以来スケッチ旅行はいつもヌメ革の鞄と一緒です。
色が変化していくところが好きだという古山さん。
使っているうちに手の油でだんだん色が付いてきたり、体の擦れる部分ところがどんどん光ってきたり。雨に降られた跡すら表情があって面白い、と語ります。
長い時間をかけて自分色に染め上げた愛おしいカバンです。
名前 | 古山浩一(ふるやまこういち) |
WEB | http://www.entotsu.net/ |
古山浩一さんの著書。
美の壺 二、ボストンバッグ:緊張感を放つセクシーな横顔
ふたつめのツボは ボストンバッグ:緊張感を放つセクシーな横顔。
藤井幸弘さん / Fugee(フジイ)藤井鞄店 / ボストンバッグ【東京都 豊島区】
日本全国に主要な鉄道網が整備されたのは大正時代。北は北海道から南は九州まで線路が伸び、鉄道旅行は憧れの的となりました。
旅のお供に登場したのが ボストンバッグ。
アメリカボストンの大学生が使っていたということから日本で名付けられたモダンなカバン。口が広く開き、荷物の出し入れがしやすく、たくさん入ります。
ボストンバッグの美しさを追求する鞄職人 Fugee(フジイ)藤井鞄店 の 藤井幸弘(ふじいゆきひろ)さん。
顧客の要望を聴きながらオーダーメイドで作ります。
もともと機械の設計をしていたという藤井さん。鞄作りも綿密な図面を引いてから製作します。
上質な革と高度な技術で作り上げる藤井さんのボストンバッグ。カバンを閉じた時側面に生まれる張り詰めた表情が魅力です。
藤井さんがボストンバッグの材質として選んだのは ブライドルレザー。牛革に蝋を染み込ませ革の繊維を凝縮し強くした革です。
厚さはおよそ4mm。乗馬用の鞍や手綱によく使われます。
いきなり削りはじめたのはバッグの横側になる部分。指の感触を頼りに側面の丸いくぼみになる部分を削り、美しい曲線を描くこだわりの横顔を生み出します。
美しいと思う曲がり方、張りの出方になるように、どれくらいの範囲をどれだけ削るか試しながら削るしかない、という藤井さん。
藤井さんの作るカバンはすべて手縫い。二本の針を使い麻糸で縫い上げていきます。
手縫いならではのひと針ひと針のリズムが革の表情を引き締めます。
最後に反発する硬い革を二人がかりで押さえ込み側面に美しい曲線を形作っていきます。
革のもつ張りと繊細な削りの技が相まって理想のボストンバッグが誕生します。
名前 | Fugee(フジイ)藤井鞄店 |
住所 | 東京都豊島区要町1-24-8 |
WEB | https://www.fugee.jp/ |
営業時間 | 11:00~19:00(予約制) |
定休日 | 不定休 |
美の壺 三、相棒:晴れの舞台に寄り添うカバン
最後のツボは 相棒:晴れの舞台に寄り添うカバン。
世界のカバン博物館【東京都 浅草】
東京浅草 にある世界の鞄を集めた博物館 世界のカバン博物館(せかいのかばんはくぶつかん)。カバンの製造・販売で知られる エース株式会社 が運営。50カ国以上から集められた約550点のカバンが展示されています。館長の 廣崎秀範(ひろさきひでのり)さんが説明してくださいました。
19世紀半ば船旅が盛んになると洋上の日々を快適にするために生まれた キャビントランク。
まるで小さな洋服ダンス。片方には夜間用のドレスやタキシードをかけ、片方は引き出し。
シルクハットをしまうスペースもありました。
K・西園寺と名前が入った存在感のある トランク は、明治から大正にかけて総理大臣などを務めた 西園寺公望(さいおんじきんもち)が所有していたもの。
第1次世界大戦終結のためのパリへの旅で使ったという歴史の1ページを彩ったトランクです。
巨人軍 長嶋茂雄(ながしましげお)さんの監督時代の遠征の時に愛用した鞄。
柔道家の 山下泰裕(やましたやすひろ)さんが1984年のロサンゼルスオリンピックで使用したスーツケース。
昭和の初めに作られた特別な鞄。浄瑠璃好きだった実業家が義太夫を語る見台を入れ、旅をしたのだとか。美しい漆塗りの道具が収められています。
名前 | 世界のカバン博物館(せかいのかばんはくぶつかん) |
住所 | 東京都台東区駒形1-8-10 エース株式会社 東京店内 |
WEB | https://www.ace.jp/museum/ |
営業時間 | 月〜土:10:00〜16:30 |
定休日 | 日曜・祝日 |
入場料 | 無料 |
エース株式会社の本革軽量ビジネスリュック。
古澤巌さん / バイオリニスト / 演奏旅行用トランク
クラシック音楽にとどまらず常に新しいジャンルに挑戦するバイオリニスト 古澤巌(ふるさわいわお)さんが登場。
古澤さんは1959年神奈川県生まれ。桐朋学園大学、カーティス音楽院、モーツァルテウム音楽院で学び、1988年から4年間、東京都交響楽団のソロ・コンサートマスターを務めました。
以降はソロヴァイオリニストとして、オーケストラのみならずさまざまなジャンルのアーティストと共演。
2017年のNHK「旅するイタリア語」に出演するなど音楽以外の活動も精力的に行なっています。
年間150回を数えるという演奏会。旅も毎日のように続いています。
古澤さんはスタイリッシュなファッションも魅力。こだわりの トランク をオーダーして旅の相棒にしています。愛車・デラシャペルにトランクを乗せて颯爽と走ります。
忘れ物をしないように、中の間仕切りも考え抜かれたもの。
バイオリンケースは鞄の上部に取り付け車の振動をできるかぎり拾わない工夫。
スカーフやシャツなどは箱に入れてコンパクトに収納。スーツも押しつぶされないように空間に余裕を持たせています。
このトランクを作ったのは先程登場した マスミ鞄囊(マスミほうのう)さん。
名前 | 古澤巌(現:古澤巖 ふるさわいわお) |
WEB | https://www.iwaofurusawa.com/ |
古澤巌さんのCD。
エピローグ
おじいちゃんの革のトランクに枕や羊のぬいぐるみを詰めて旅に出た草刈さん。フーテンの小寅さんのトランクと間違えて持って帰って来てしまいましたが、古いカバンの良さに気がついたようです。
高校生の頃に使っていたボストンバッグを持って旅に出たら、初恋に人に会えるかも?
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音楽 BGM
ジャズの名曲が流れる美の壺。番組BGMファンもいらっしゃるのではないでしょうか。
オープニング曲と番組内挿入曲をまとめましたので参考にどうぞ。リンク先で試聴できます。
オープニングテーマ
オープニングテーマ は Art Blakey And The Messengers(アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ)の名曲「Moanin’」。ジャズドラマー アート・ブレイキーが1958年に発表した同名のアルバムに収録されています。作曲はピアニストの Bobby Timmons(ボビー・ティモンズ)。
番組内 楽曲
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