NHK「美の壺(びのつぼ)」は普段使いの器から家具、着物、料理、建築に至るまで、衣食住、人の暮らしを彩ってきた美のアイテムを解説してくれる番組。紹介されたものは何?場所はどこ?出演は誰?どこで買える?と興味津々。
そんな気になる「美の壺・美術の鑑賞マニュアル」を詳しく調べてみました。最後に番組内の音楽もまとめてあります。
美の壺 スペシャル「日本の匠」
出演は俳優の 草刈正雄(くさかり まさお)さん、ナレーション(語り)は俳優の 木村多江(きむら たえ)さんです。
NHK BS(BS101チャンネル)
初回放送:2025年6月21日(土)21:00~22:30
再放送 :2025年7月27日(日)13:00~
BSプレミアム4K
初回放送:2025年5月24日(水)19:30~21:00
再放送 :
でNHKの動画配信サービス NHKオンデマンド を視聴可能。 U-NEXT美の壺 も見逃し配信中。
虎に翼・
らんまん・
なつぞら などの朝ドラや
光る君へ・
鎌倉殿の13人・
真田丸 などの大河ドラマ、
探偵ロマンス・
正直不動産 などの名作ドラマ、
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美の壺 スペシャル 日本の匠 内容
▽美の壺スペシャル「日本の匠」。匠の最高峰、人間国宝の技と人に迫る89分!
▽石垣島に伝わる八重山上布。途絶えていたくくり染を復活させた新垣幸子さん。
▽彫金の人間国宝、桂盛仁さんの超絶技巧を大解剖。
▽京舞井上流、井上八千代さんが俳優、木村多江に京舞を手ほどき。
▽螺鈿の人間国宝北村昭斎が挑んだ唯一無二の輝き。
▽色絵磁器の人間国宝、十四代今泉今右衛門さんが生み出した全く新しい有田焼
▽佐々木蔵之介も登場!
プロローグ
美の壺 一、八重山上布:南国香る、彩色
ひとつめのツボは 八重山上布:南国香る、彩色。
新垣幸子さん / 八重山上布 人間国宝【沖縄県 石垣市】

沖縄県石垣島 に暮らす 新垣幸子(あらかき さちこ)さんは2024年に 八重山上布(やえやまじょうふ)の 重要無形文化財(人間国宝)に認定されました。
新垣さんさんは1945年、疎開先の熊本県に生まれ、石垣市育ち。
高校卒業後は地元の新聞社や保険会社に勤務した後、1972年に県工業試験場(現・県工芸振興センター)染織課で1年間技術を習得。故・大城志津子さんや故・石垣英富さんに師事し、1973年に独立し自身の工房・新垣幸子織物工房(あらがきさちこおりものこうぼう)を設立。
明治・大正時代に新しい技術が考案されたために途絶えた琉球王国時代の八重山上布の調査研究と復元に注力。伝統的な絣織の技法を復活させました。
新垣さんが作るのは石垣島に古くから伝わる 八重山上布。
およそ250年もの間、琉球王国が税として納めることを義務付けていました。
トンボの羽に例えられる軽やかさが特徴で、イラクサ科の多年草 苧麻(ちょま)で作られます。
柄は幾何学模様の 琉球かすり(りゅうきゅうかすり)。
植物染料で綺麗に染まっていて、色の透明感もあり、芋麻が細くて艶がある。美しい、と語る新垣さん。
自宅兼工房の中庭で、八重山上布の材料 苧麻(ちょま)が栽培されています。
葉を落とし、茎の表皮の裏側の繊維を取って使います。
濡らしたあとに陰干しをして、細かく裂いてから手で紡いでいきます。石垣伝統の手仕事です。
上布を織っている方ならひとりで栽培して糸を紡ぐことができるそうです。
先と根を合わせて、つなぎ目を抜けないようにしっかり紡ぐことが大切です。
毎日、空いた時間で少しずつ。苧麻を紡ぐ時間がこうして半世紀続いています
若い頃は那覇で保険の外交員をしていた新垣さん。伝統工芸の仕事がしたいと地元の石垣島に戻り、研修所で織物を始めました。
当時主流だったのが麻の白を生かした上布です。ハケで柄を染める 捺染(なっせん)と呼ばれる技法が使われていました。
織物を始めて1年。新垣さんは運命を変える着物に出会います。
それが 日本民藝館(にほんみんげいかん)で見た 古い八重山上布 の着物です。
新垣さんを感動させたのは、さまざまな色で複雑に織られた八重山上布。紅花、山桃のような渋い黄色、水色、こんなに美しいものがあるのかと驚いたそうです。
染め付けは 捺染(なっせん)ではなく、括染(くくりぞめ)でした。
糸を染めない部分をくくって染める、括染。しかし、手作業の複雑さもあり徐々に衰退していきました。
新垣さんの作品。
新垣さんは資料を集め、衰退したくくり染を復活させました。
里山の湖、林の緑、青い空をイメージして作られました。
縦のかすり模様も複雑に色が絡み合っています。
新垣さんは時折近くの公園まで散歩に出かけます。
石垣島の自然を八重山上布に写し取るためです。
新芽の緑の濃淡やハゼの木の紅葉を観察。自分が歩いている足元でも表現したいと考えています。
そして毎日思いついたデザインをスケッチに残しています。
石垣島の光、風のささやき、海や緑の輝きを記録しておくのです。
いちばんのこだわりが 括染(くくりぞめ)。
糸の染めない部分を、一つ一つビニールでくくっていきます。
かすり の「足」と呼ばれる少しボケたような色合い、その優しさ、薄い色から濃い色まで同じ色でも表現ができるのも括染の奥深さ。
染料は フクギ、ヤマモモ、クール、クチナシ、ヒルギ、椎など地元でとれる植物です。
濃い色から薄い色まで丁寧に染め上げられた糸。
全て手織り。1人で作るため1年で織り上がる布は僅か2反から3反ほどです。
「せせらぎ」というタイトルの作品は山から出たところの細い川の流れをイメージ。
川の周囲の木々や木の枝や木々も緑色のグラデーションで表現されています。
つけてくださる方に南の島を想像して気持ちよくつけてくださればありがたい、と語る新垣さん。
糸作りから染色 全てが沖縄の自然そのもの。新垣さんの思いが詰まった八重山上布です。
名前 | 新垣幸子織物工房(あらがきさちこおりものこうぼう) |
住所 | 沖縄石垣市 |
WEB | https://www.nihonkogeikai.or.jp/works/534/ |
新垣幸子さんの著書。
新垣幸子さん作の八重山上布。
美の壺 人間国宝アーカイブ①
濱田庄司さん / 民芸陶器 人間国宝

昭和30年(1955年)に認定が始まった 重要無形文化財(人間国宝)。
NHKのアーカイブをたどりながら先人の偉業を紹介していました。
民芸陶器 人間国宝
濱田庄司(はまだ しょうじ)(1894-1978)
昭和30年、人間国宝の第一号として認定されたのは陶芸家 濱田庄司(はまだ しょうじ)。
美の壺 File 565「縄文」、美の壺 File 630「バーナード・リーチ」でも紹介されました。
民藝運動の中心人物でもあった濱田は、昭和5年(1930年)に益子に窯を開き、「用の美」を唱える日用品を益子焼という形で確立しました。
映像では生前の濱田庄司が溶かした 蝋(ろう)で絵付けをして 釉(ゆう)をかける 蝋抜き(ろうぬき)の技で描いているところを紹介。
そして濱田の真骨頂が 流し掛け(ながしがけ)。ひしゃくで釉薬(ゆうやく)をすくい上げ、流しかけて模様を描く技法です。
「健やかな芸術品」と呼ばれた濱田庄司の作品は、今も多くの陶芸家に影響を与え続けています。
名前 | 濱田庄司記念益子参考館(はまだしょうじきねん ましこさんこうかん) |
住所 | 栃木県芳賀郡益子町益子3388 |
電話 | 0285-72-5300 |
WEB | https://mashiko-sankokan.net/ |
営業時間 | 火〜日:9:30〜17:00 |
定休日 | 月曜 |
美の壺 二、彫金:超絶技巧のその先に
ふたつめのツボは 彫金:超絶技巧のその先に。
桂盛仁さん / 彫金 人間国宝

2023年から全国各地を巡回している「ポケモン×工芸展」。
20名の工芸作家が ポケモンをテーマに、陶芸 木工染色などさまざまな作品を発表しています。
帯留 ブラッキー「威嚇」
ブローチ ブラッキー「眠り」
帯留 ブラッキー「立ち姿」(全て2022年 個人蔵)
素材の金属を削って金をはめ込んだ 帯留(おびどめ)や ブローチ。
作者は彫金家で人間国宝の 桂盛仁(かつら もりひと)さん。
金属の表面に彫刻を施す 彫金(ちょうきん)の技法で作られた作品。
彫金とは、金や銀などの金属にタガネを使い文様や柄を施す工芸技法です。

桂さんは1944年東京都生まれ。父・桂盛行さんは江戸初期の町彫りの彫金家・横谷宗珉の弟子である柳川派の弟子筋にあたる彫金家。工芸高校の金属工芸科卒業後にグラフィックデザイナーを目指しましたが挫折。1960年に家業を継ぐことを決意して父に師事。
1968年武蔵野美術短期大学卒業後、第11回伝統工芸新作展をはじめ数々の賞を受賞。2008年重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定されました。
現在は神戸芸術工科大学客員教授、東北芸術工科大学非常勤講師、金沢美術工芸大学非常勤講師。創作活動の傍ら人材の育成にも努めています。
美の壺 File 553「鶴」の回にも出演されました。
国宝 銀鶴、銀鶴及磯形、金鶴及銀樹枝(平安時代)所蔵 春日大社
2022年には春日大社所蔵の国宝、金鶴(きんつる)・銀鶴(ぎんつる)を復元。
美の壺 File 553「鶴」の回で制作過程も紹介されていました。
平安時代に作られた純銀の銀鶴と、銀の枝に止まった金鶴。
純金でできた金鶴は高さ僅か4.1cm、幅3.1cm。平安の技の結晶が輝きます。
国宝の代わりに 春日大社の若宮わかみやへ、桂さんが復元する金鶴・銀鶴が奉納されることになりました。
本物と寸分の狂いもなく作られた 金鶴。
千年の時を超え、平安の技が舞い戻った瞬間でした。
1500年ほどの歴史があるといわれる彫金。技が花開いたのは平安時代です。
国宝 群島文兵庫鎖刀(ぐんちょうもんひょうごぐさりのたち)(鎌倉時代)所蔵 東京国立博物館
鎌倉時代に作られた 国宝 群島文兵庫鎖刀(ぐんちょうもんひょうごぐさりのたち)
こしらえ全体に群れ飛ぶ鳥が見事に彫られています。
こうした技法が今の彫金の基礎となっています。
桂家は室町時代から代々続く彫金一家。
昭和の名人といわれた桂盛仁さんの父・桂盛行(かつら もりゆき)さん。
紹介されていた作品は、黒い地金と銅を3mmの幅ではぎ合わせた箱、蓋は銀でできています。
いくつもの技法を重ねて作られた蓋の飾り。金属を思わせない柔らかさを醸し出しています。
父を見て育った桂さん。しかし最初目指したのはグラフィックデザインの道でした。
思春期になると家業の彫金で生計を立てていくのは経済的に大変だという気持ちと、あれもやりたいこれもやりたいという興味とでグラフィックデザインを志しました。
しかし、なかなか思うように力を発揮できない日々が続き、26歳で挫折。すると父から彫金の仕事を手伝わないかと誘われ家業を継ぐことを決意。
以来50年以上彫金を続けてきました。63歳の時には人間国宝に認定。
桂さんの作品の魅力の一つが超絶技巧です。
紹介されていた作品は 湯飲み。
彫った柄の部分に金粉を埋め華やかに。
さらに見どころは蓋。なんと一枚の金属を打ち出して取っ手を作り出しています。
蓋と湯飲みが ずれることなく見事に重なり美しい造形を描きます。
大きさ3cmほどの てんとうむしの帯留め。
驚くのは 胴から細い脚まで全て一枚の金属から打ち出していること。
桂さんの超絶技巧の作品。しかし技巧を褒められるよりも素直に「いいね」と言ってもらえるのが嬉しいのだと語る桂さんでした。
名前 | 桂盛仁(かつら もりひと) |
住所 | 東京都練馬区 |
WEB | https://www.nihonkogeikai.or.jp/works/853/ |
桂盛仁さんの著書
新作「シロクマ」
2025年1月、桂さんは 北海道旭川市 の 旭山動物園(あさひやまどうぶつえん)に向かいました。
冬、オウサマペンギンのパレードが大人気の動物園です。
シロクマを題材にした作品の構想を練っていた桂さんのお目当ては ホッキョクグマ。
いろいろ調べていましたが、わからないところは実物を見ないといけない。
実物を見てから、ぶっ壊して完璧に自分のものにするのだとか。
さまざまな角度からシロクマを観察します。びっくりしたのは首が長いこと。
桂さんが制作に取りかかりました。
まずはイメージを絵にしていきます。描いては消し描いては消しての繰り返しです。
今回は直径17cmほどの作品。
完成品は銀とプラチナ。
しかしとても高価なため、まずはテストとして 銅と銀を使い、本番さながらに作っていきます。
道具は桂さん自ら作ったタガネです。さまざまな形のタガネを使い、造形を作り出していきます。
彫金には いくつもの技法があります。
薄肉(うすにく)は金属を裏側から たたき出し、形を作る技法。
彫り(ほり)はタガネを使い分け彫って柄を描いていきます。
桂さんがシロクマの作品で使うのが、高肉象嵌(たかにくぞうがん)という薄い別板を貼る技法です。まず土台となる金属をクマの形に彫っていきます。深さは0.6mm。
そこにクマの形に切り取った金属をはめるのですが、貼り付けるときに「のり」というようなものは使いません。
熱で軟らかくしたクマをくぼみでたたき曲げていきます。
実は輪郭の切り方にポイントがありました。斜めにカットされているのが分かります。
貼り付ける板の輪郭をハの字にカット。土台もハの字に膨ります。
しかしこのままでははまりません。貼り付ける板をくぼませることで中へ入るようになります。
そして曲げたほうをまっすぐに戻せば、きっちりとはまるという仕組みです。
1mmでも狂えばうまくはまりません。
表からは見えない超絶技巧。
クマの高さは1.2mm。
今度はクマの形を作っていきます。
「はつる」という技法。高いところを基準にして、そこから削って下げていきます。
肩・尻・腹などのそれぞれ部分を残しながら谷を落として削っていく作業です。
2週間後、クマの造形ができあがりました。
まだ試作段階で仕上げの磨きも かけていませんが、僅か1.2mmの高さで作られた造形は見事のひと言。
長年向き合った彫金、桂さんはどう思っているのでしょうかと尋ねると、
「好きって言われるとちょっとよくわからないですけど、嫌いじゃないです。ですからずっとやっていられる。
それを好きと言っていいんですかね。わかりません」との答え。
平安時代から受け継がれてきた彫金は、令和の今 進化を続け新たな千年へとその技を伝えます。
名前 | 旭山動物園(あさひやまどうぶつえん) |
住所 | 北海道旭川市東旭川町倉沼 |
電話 | 0166-36-1104 |
WEB | https://www.city.asahikawa.hokkaido.jp/asahiyamazoo/ |
営業時間 | 1/2-4/7:10:30〜15:30 4/26-10/15:9:30〜17:15 10/16-11/3:9:30〜16:30 11/11-12/29:10:30〜15:30 |
定休日 | 不定休 |
美の壺 人間国宝アーカイブ②
石黒宗麿さん / 鉄釉陶器 人間国宝

鉄釉陶器(てつゆうとうき)人間国宝
石黒宗麿(いしぐろ むねまろ)(1893-1968)
陶芸家 石黒宗麿(いしぐろ むねまろ)は日本初の画期的な焼き物を完成させました。
木葉天目(このはてんもく)所蔵 京都精華大学
天目釉(てんもくゆう)という黒い釉薬をかけ、木の葉をのせて文様を焼き付けた木葉天目です。
昭和34年(1960年)石黒宗麿の貴重な映像 NHK短編映画「石黒宗麿 鉄釉陶器」が残っていました。
工房は京都の八瀬(やせ)。
800年ほど前の中国南宋(なんそう)の時代に盛んに作られていた木葉天目。
石黒はその木葉天目を再現すべく試行錯誤を繰り返しました。
そしてムクの葉を使い、その再現に成功したのです。
パリで開かれた陶芸展に出品すると一躍世界にその名を知らしめました。
特定の師匠を持たず研究を重ねた石黒。途絶えていた木葉天目の技術を探求心で復活させ、次世代への懸け橋となりました。
美の壺 木村多江の人間国宝訪問
木村多江さんが 京舞(きょうまい)の人間国宝 京舞井上流五世家元 井上八千代(いのうえ やちよ)さんを訪ねました。
井上八千代さん / 京舞 人間国宝
京都のお茶屋のお座敷を彩るのは芸妓と舞妓の舞です。
祇園では舞は 京舞(きょうまい)。流派は 井上流(いのうえりゅう)です。
京舞は御所風(ごしょふう)の上品な立ち居振る舞いと白拍子(しらびょうし)の舞を合わせて生まれた 座敷舞(ざしきまい)。
踊りを披露してくれたのは 京都・祇園甲部(ぎおんこうぶ)の芸妓・ゆり葉(ゆりは)さんと、舞妓・明日葉(あけは)さん。
ゆり葉さんは 美の壺 File 525「祇園の舞妓」にも出演されていました。

京舞 を指導するのは人間国宝、京舞井上流五世家元 井上八千代(いのうえ やちよ)さん。
祇園甲部の舞妓と芸妓、全員を指導しています。
井上流は代々八千代の名を受け継ぎ、現在の家元は五世。
井上八千代さんも 美の壺 File 525「祇園の舞妓」にも出演されていました。
井上さんの祖母であり師匠である人間国宝の 四世・井上八千代(1905-2004)。
その舞は力強くも繊細で迫力があるものでした。
五世 八千代さんは小さい頃から祖母・四世 八千代に 厳しく指導を受け、2000年に五世 八千代を襲名。
2015年に人間国宝に認定されました。
ナレーションの 木村多江 さんが井上八千代さんを訪ねました。
伺ったのは芸舞妓が三味線や舞を習う学校、八坂女紅場学園(やさかにょこうばがくえん)です。
日本舞踊を長く続けておられる木村多江さんは松本流という流派で師範の資格を持つ実力。
今回は京舞に挑戦。井上さんから基本の動き方を教わりました。
多江さんが習っている日本舞踊は後ろに重心をかけますが、京舞はどちらかというと前に重心をかけるそうです。
体験することで、京舞と日本舞踊・松本流は動きも同じところと違うところがあるということがわかった、と多江さん。
祇園で連綿と受け継がれてきた京舞。
人間国宝 京舞井上流 五世家元 井上八千代さんの舞を見せていただきました。
演目は「山姥やまんば」。
山姥が、かって遊女だった頃の思い出を四季の移ろいとともに表現する京舞の代表的な舞です。

井上八千代さんの後継者で長女の 井上安寿子(いのうえ やすこ、本名:観世安寿子)さんの稽古も拝見。
安寿子さんは2歳で四世と五世に師事。17歳で井上流の名取になりました。
現在は 井上八千代さんと共に芸舞妓の指導にあたるほか、自身の公演も行っています。
最後に 井上八千代さん、安寿子さんによる舞「千代の友」を見せていただきました。
人間国宝の研ぎ澄まされた技と心は、日々重ねる鍛錬によって生まれるということを改めて感じる一日でした。
京舞のすばらしさとは?という多江さんの質問に、「京都に根づいた舞であること」と答えた井上八千代さん。
街、山里、川があり人がいてお寺もあり神社もある京都。いろんな人々の魂が京舞にこもっていると語っていました。
名前 | 八坂女紅場学園(やさかにょこうばがくえん) |
住所 | 京都府京都市東山区祇園町南側570‐2 |
電話 | 075-561-1115 |
WEB | https://gion-museum.com/ |
美の壺 三、螺鈿(らでん):唯一無二の輝き
みっつめのツボは 螺鈿(らでん):唯一無二の輝き。
北村昭斎さん / 螺鈿 人間国宝
奈良 の 正倉院(しょうそういん)にはシルクロードに由来する貴重な宝物が所蔵されています。
その一つ、螺鈿(らでん)。
螺鈿紫檀五弦琵琶(らでんしたんのごげんびわ)は全長108.1cm。
紫檀で作られた琵琶の裏側には、びっしりと螺鈿細工が施されています。
螺鈿とは夜光貝(やこうがい)などの貝をかたどり漆器や木地を装飾する技法。奈良を中心に発展しました。
螺鈿(らでん)の人間国宝 北村昭斎(きたむら しょうさい)(1938-2023)がこの琵琶について語る映像が残されていました。
北村昭斎は2023年に他界。85歳の生涯でした。
静岡掛川市 の 資生堂アートハウス(しせいどうアートハウス)に北村昭斎の代表作が所蔵されています。
学芸員の 福島昌子(ふくしま まさこ)さんが解説してくれました。
椿折枝文螺鈿箱(つばきおりえだもんらでんばこ)
色鮮やかなツバキが螺鈿で描かれています。
昭斎は螺鈿の新境地を切り開きました。
この厚貝螺鈿は1000年以上の歴史がある漆の技法。それを現代にどういう形で表現できるかということを非常に深く考えている、と福島さん。
貝の表面をサンドブラストでちょっと荒らして顔料を入れて拭き取るという技法。
非常に鮮やかな色が出ますが、派手すぎずに気品があり美しい。なおかつ自然のままの色がここにほころび出たような優しさもある。
そして葉の輝き。ふたつとして同じものがない貝の輝きを計算し尽くして作り出しています。
こういった古典の上に新しい非常にモダンで軽やかで気品のあるものを作った。
そこがとても魅力的だと福島さんは語っていました。
名前 | 資生堂アートハウス(しせいどうアートハウス) |
住所 | 静岡県掛川市下俣751-1 |
電話 | 0537-23-6122 |
WEB | https://corp.shiseido.com/art-house/jp/ |
営業時間 | 木金土:10:00~16:30 |
定休日 | 日曜〜水曜 |
小西寧子さん / 漆芸家・北村昭斎の娘
人間国宝 北村昭斎(きたむら しょうさい)の後を継ぐのは2人の子どもたちです。
昭斎が使用していた工房で螺鈿細工を行うのは娘で漆芸家の 小西寧子(こにし やすこ)さん。
小西さんは1968年に奈良市で北村昭斎の長女として生まれ、1992年から漆芸の道へ。
現在は漆芸家として活躍されています。NHK「イッピン」や 美の壺 File 635「奈良の手仕事」の回にも出演されました。
小西さんの作品、螺鈿蒔絵箱「若草」
貝で表現された若草。蒔絵を施すことで新芽の生命力を表しています。
螺鈿は夜光貝、黒蝶貝(くろちょうがい)、白蝶貝(しろちょうがい)、アワビなど数種類の貝を使い分けます。
重要なのは 貝の輝きを見極めること。
作る文様に合わせ貝の使う場所を決めていきます。
柄の形に切り出した貝を漆で漆器に接着します。
乾燥させ、さらに上から漆を塗り墨で磨き上げていきます。
貝の輝きと漆器のバランスをどう取るかが難しいと小西さんは言います。
頭で描いている通りにできあがるのか作業後半になるまでわからない。
いくつ作ってもなかなか自分でも満足いくものはできない、と螺鈿漆器の難しさを語っていました。
小西さんは 父 北村昭斎をどう見ているのでしょうか?
仕事にかける情熱が私は全然父にはついていけない。人生を賭けて仕事をしていたので、人生を傾けただけの物が作れていたと思うのだそうです。
名前 | 小西寧子(こにし やすこ) |
メール | yas.koni@gmail.com |
WEB | https://www.nihonkogeikai.or.jp/works/2306/ |
北村繁さん / 選定保存技術「漆工品修理」保持者・北村昭斎の息子
人間国宝 北村昭斎(きたむら しょうさい)が螺鈿の工芸とともに尽力したことがあります。
選定保存技術の認定を受け、正倉院の宝物や国宝などの修理復元を行っていました。
1995年、春日大社(かすがたいしゃ)の式年造替(しきねんぞうたい)に向け、神への捧げ物をのせる 八足案(はっそくあん)という机を復元新調しました。
それまで使われていた八足案と同じものを作るため、墨で模様の形を取りました。
使用した貝の模様は、およそ5,000個。1年以上かけて5つの八足案を完成させました。
先人の遺産である文化財を保護し、次世代へとつなげる究極の伝統工芸です。
しかし北村昭斎が復元道半ばのものがありました。
奈良市 の 奈良国立博物館文化財保存修理所
今も、ここで復元が行われています。
今回 特別に扉の外から撮影をさせていただきました。
復元を手がけるのは八足案の復元も手伝っていた息子の 北村繁(きたむら しげる)さんです。
父、北村昭斎と同じ選定保存技術の認定を受けています。
国宝 紫檀地螺鈿飾剣(したんじらでんかざりたち)(平安時代)所蔵 春日大社
春日大社の国宝・紫檀地螺鈿飾剣の復元模造。
昭斎の頃から始まり、2年前に昭斎が他界したため、その後 息子の北村繁さんが引き継ぎこの仕事を続けてやっています。
平安時代の刀で、鞘さやは紫檀で作られ螺鈿でオウムが描かれています。
行っているのは螺鈿最後の仕上げ 毛彫り(けぼり)です。
貝に模様をつけていきます。
北村繁「すごく味のある、非常に趣深い
それでいてすごく細かな模様が彫られている。
その辺りをできるだけオリジナルに、その線も寄せていかないといけない。
彫る感触というか 彫り味というところも、意識して再現しないといけないというところが いちばん難しいところです。
復元 自身の作品にも味わいを大切にした父を、繁さんは今どう見ているのでしょうか?
昭斎が作ったものは細かさとか緻密さだけではなく、できあがった時に全体が醸し出す独特の柔らかな雰囲気がある、なかなか簡単には到達することは難しい。
高い技術とともに作品全体が醸し出す気配までをも作り出すのが人間国宝たるゆえんです。
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美の壺 人間国宝アーカイブ③
前大峰さん / 沈金 人間国宝
沈金 人間国宝
前大峰(1890-1977)
先人の偉業。
昭和30年に沈金の人間国宝になった前大峰(まえ たいほう)です。
前大峰もまた、沈金の世界に新たな技術を生み出しました。
1974年
「日本の美沈金」より
晩年の大峰です。
沈金とはノミで漆器を彫り、金粉を埋めて柄を作る技法です。
大峰が編み出したのは点彫りてんぼり
細かい点を無数に彫ることでグラデーションを作り、立体感や動きを表現しました。
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前史雄さん / 沈金 人間国宝
沈金 人間国宝 前史雄さん
前大峰の技術を受け継いだ
弟子で人間国宝の前史雄(まえ ふみおさん)です。
前さんもまた 師匠とは違う新たな技法を生み出しました。
前さんが考案した角ノミです。
彫った溝がV字形になり、点や線ではできなかった表現が可能になりました。
彫った木の葉に金粉を埋めると
前「乱反射になりますけど 光の変化と言いますか、金色の色の変化ができるというそういうおもしろさはありますね。
昨年の能登半島地震で輪島の工房は全焼。作品も焼失しました。
しかし、現在は金沢の家族のもとで再び、新たな挑戦に挑んでいます。
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美の壺 四、色絵磁器:創造に終わりはなし
最後のツボは 色絵磁器:創造に終わりはなし。
十四代 今泉今右衛門さん / 色絵磁器 人間国宝
佐賀県 有田町(ありたちょう)
日本最古の色絵磁器の産地です。
2016年放送
「美の壺スペシャル~有田焼400年器の宇宙~」
2016年の「美の壺スペシャル 有田焼400年」。
私 木村多江が息をのんだ作品がありました。
それが こちらの大きなハチ。
多江「うわぁ。このグレーが また きれいですね。
グラデーションがまた優しい感じの印象を受けるんですね。
淡い背景に舞うのは雪の結晶。
江戸時代から続く 墨はじきすみはじきという伝統技法で描かれています。
色絵磁器 人間国宝
十四代 今泉今右衛門さん
作者は十四代、今泉今右衛門(いまいずみ いまえもん)さんです。
51歳の時、陶芸家として最年少で人間国宝に認定されました。
用意されたのは絵の具ではなく 墨(すみ)。
柄を墨で描き その上から絵の具を重ね焼き上げます。
すると墨が はじかれ、磁器の色で柄が浮かび上がります。
今右衛門さんの窯では370年以上色鍋島(いろなべしま)を作り続けています。
色鍋島とは 藍で下絵を描き、本焼きしたあとに
赤黄緑の3色で上絵をつけたものです。
こちらは、十二代今右衛門の作品。
一面に描かれるのは鍋島更紗(なべしまさらさ)の紋様をもとにした柄。
堂々とした風格が漂います。
色絵磁器 人間国宝
十三代 今泉今右衛門さん(1926-2001)
その色鍋島に革新をもたらしたのが、人間国宝でもある先代の十三代 今右衛門です。
それまでの磁器の白を基調としたものから一変。背景を淡い青で染め付けしています。
絵の具を吹きつける吹墨(ふきずみ)という技法で描かれています。
複雑な濃淡があたたかい雰囲気を醸し出しています。
今泉「最初、このブルーの吹墨を出品し始めた頃は、どうして この白磁の自がきれいなのに汚すんだと賛否両論ありまして、その中で父は 現代の新しい雰囲気はと言ってこの吹墨をずっと作り続けていった。
全体に絵の具をかけることによって明暗が抑えられる。
ですから逆にそれが現代の光の中では 落ち着いた雰囲気がより見ていただける時代になってきているんだと思います。
革新をもたらした十三代。
そして、十四代今泉今右衛門さんも、新たな表現を生み出しました。
一見 真っ白に見えるこちらのハチ。
よく見てみると、うっすらと柄が浮かび上がります。
墨はじきを応用した雪花墨はじきせっかすみはじきです。
今泉「ボディの白の生地よりももっと白い土を墨はじきではじくという技法。
ですからこのかすかに見えるグレーの色がボディ(磁器)の色。
自の微妙な見えるか見えないかぐらいの模様が表現できればと思って作った作品。
化粧土(けしょうど)と呼ばれる白い土を塗り、背景の白を表現。
こちらは緑の葉が描かれた壺。
しかしよく見ると白い菊が。
今泉「白が見えにくいけれども かすかに見える。しかし そこが見え始めると、かすかに見えるところがしっかり主役に見えてくる。
そこまではっきりとした狙いではなく、自の菊を表現したいと思って作ったらそういう魅力が出てきたというのが正直なところなんです。
赤黄緑を絵付けする色鍋島。
白はあくまで 磁器そのものの白でした。
今右衛門さんが 白の新たな表現に挑戦したのはおよそ20年前。
今泉「え〜っとこれですね あの〜白化粧の墨はじきを最初し始めた時の試験なんです。
自の濃淡でできたんです。
しかし 少し剥がれたり、こちらのハチもそうなんですけども、パッとみ きれいなんですが
ボツボツボツボツ釉薬をはじいているんです。
技術研究所に通いながら試作に試作を重ねました。
今泉「いろんな試験を釉薬でしたりとか、白化粧でしたり、それまで 無釉のことでもしてました。
いろんなあらゆる自の違いを表現していろいろしていました。
もう これできないんじゃないかなと思いました 途中。これもう無理かなと思った。
試行錯誤を繰り返し、2004年ようやく完成。
今右衛門さんが編み出した雪花墨はじき。
その技を少し見せていただきました。
柄を描くのは 墨ではなく撥水剤はっすいざい。
今泉「絵の具は墨ではじくことができるますが、白化粧の白い土は粘り気がありますので墨では はじききれない。
撥水力の問題と細い線をどう描くか、その中で選んでいる感じです。
撥水剤で柄を描いたあとは背景の白の肝となる化粧土を塗ります。
もともとは素地の上から塗り、白く見せるために使われてきました。
今右衛門さんはその化粧土をアレンジして使っています。
今泉「化粧士の土と生地の土、それと素焼きの粉、そんなのを入れていく。
調合とか比率をいろいろしながらやっと食いつくようになったものなんです。
撥水剤で柄を描き その上から化粧土。
これを焼き上げると、見事に柄が抜かれました。
今右衛門さんの情熱と技が生み出した新たな色鍋島の世界です。
今泉「昔の技術を継承していくと同時に、作る技術は江戸時代の手仕事であるけれども現代の新しいものを生み出さなきゃいけない。
ですから何か違うものをしたいというのはありました。
伝統技術にあぐらをかくことなくその技術を生かし次へ向かう。
日本の匠の挑戦はこれからも続きます。
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音楽 BGM
ジャズの名曲が流れる美の壺。番組BGMファンもいらっしゃるのではないでしょうか。
オープニング曲と番組内挿入曲をまとめましたので参考にどうぞ。リンク先で試聴できます。
オープニングテーマ
オープニングテーマ は Art Blakey And The Messengers(アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ)の名曲「Moanin’」。ジャズドラマー アート・ブレイキーが1958年に発表した同名のアルバムに収録されています。作曲はピアニストの Bobby Timmons(ボビー・ティモンズ)。
番組内 楽曲
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