【美の壺】スペシャル 皇居 で紹介された場所はどこ?/草刈正雄 木村多江

美の壺

NHK「美の壺(びのつぼ)」は普段使いの器から家具、着物、料理、建築に至るまで、衣食住、人の暮らしを彩ってきた美のアイテムを解説してくれる番組。紹介されたものは何?場所はどこ?出演は誰?どこで買える?と興味津々。
そんな気になる「美の壺・美術の鑑賞マニュアル」を詳しく調べてみました。最後に番組内の音楽もまとめてあります。
美の壺「スペシャル 皇居」
出演は俳優の 草刈正雄(くさかり まさお)さん、ナレーション(語り)は俳優の 木村多江(きむら たえ)さんです。

放送時間

NHK BS(BS101チャンネル)
初回放送:2025年3月1日(土)19:30~21:00
再放送 :
BSプレミアム4K
初回放送:2025年2月22日(土)19:30~21:00
再放送 :

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美の壺 スペシャル 城 はこちらをどうぞ!

【美の壺】スペシャル 城 で紹介された場所はどこ?/草刈正雄 木村多江
NHK 美の壺 スペシャル「城」(2023年11月11日放送)。出演は草刈正雄さんと相島一之さん、語りは木村多江さん。世界遺産・姫路城、国宝・松本城、彦根城の石垣と玄宮園、天空の城・竹田城、金沢城の庭園と海鼠壁と成巽閣、名古屋城の庭園発掘と障壁画、二条城・二の丸御殿の障壁画模写プロジェクトを紹介。

美の壺 2024年度(2024年4月〜2025年3月)バックナンバー はこちらをどうぞ!

【美の壺】2024年度バックナンバー 放送日時と出演者まとめ /草刈正雄 木村多江
NHK「美の壺」2024年度(2024年4月-2025年4月)の番組バックナンバーと放送日時まとめ。出演は草刈正雄さん、語りは木村多江さん。ゲスト出演者、紹介されたお店などをリストにしています。随時更新中。

美の壺 スペシャル 皇居 内容

番組予告

▽皇居内を走る優美な馬車列。大正時代製造の馬車の修復は意外な職人が!
▽外国からの賓客と同じ目線での宮殿巡り。誰もが知るあの空間と椅子!
▽絵画・美術品の入れ替え現場
▽皇宮警察本部の儀仗隊。その美意識とは?
▽宮殿建設秘話
▽国賓のもてなしにも使われるワイングラス。装飾技法に職人が挑む!
▽豊明殿の巨大な織物。社運をかけた挑戦とは?
▽指紋・靴跡も残さない日々の手入れ
▽盆栽の春飾り作りの現場に密着!

プロローグ

マラソン大会を応援したら自分も走ってみたくなった草刈さん。
皇居ランでもしてみますか?

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美の壺 皇居

宮内庁 / 皇居の維持管理【東京都 千代田区】

今回のテーマ 皇居(こうきょ)の管轄は内閣府の機関である 宮内庁(くないちょう)。日々の維持管理を行っています。
宮内庁庁舎は宮殿と同じく旧西の丸にあり、番組で紹介されたように多くの宮内庁職員の方々がそれぞれの持ち場でプロフェッショナルな仕事をされています。

皇居で一般に公開されているのは 皇居東御苑(こうきょひがしぎょえん)。旧江戸城の本丸、二の丸、三の丸の一部分を皇居付属庭園として整備。宮中行事に支障のない限り公開され、無料で入場できます。

それ以外の皇居の制限エリアを一般人が訪問できる機会は、
 ・毎年1月2日と天皇誕生日に行われる 一般参賀(いっぱんさんが)
 ・春と秋に行われる 乾通りの通り抜け(いぬいどおりのとおりぬけ)
 ・参観コースを歩ける(事前申請または当日整理券が必要)皇居一般参観(こうきょいっぱんさんかん)
などがあります。

名前宮内庁(くないちょう)
住所東京都千代田区千代田1-1(皇居内)
WEBhttps://www.kunaicho.go.jp/
最後の秘境 皇居の歩き方
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美の壺 一、馬車:蹄(ひづめ)の音に導かれ

ひとつめのツボは 馬車:蹄(ひづめ)の音に導かれ

宮内庁車馬課 / 御料車と儀装馬車【東京都 千代田区】

令和6年(2024年)11月13日。皇居にほど近い 東京駅(とうきょうえき)。レンガ造りの駅舎を出発した 馬車列(ばしゃれつ)。
馬車に乗っているのは新たに着任したスウェーデン王国の大使 Viktoria Li(ヴィクトリア・リー)大使。
母国の信任状を天皇陛下に手渡す儀式、信任状捧呈式(しんにんじょうほうていしき)に臨むため、皇居に向かいます。
大使は自動車か馬車を選べますが、ほとんどが馬車を選びます。

信任状捧呈式が行われるのは 宮殿(きゅうでん)の 松の間(まつのま)。
信任状捧呈式の送迎で馬車を使っている国は世界でも数ヶ国。国際親善の一助になっているといいます。

歌川国利「御鳳輦之図」に描かれていたのは明治天皇が使用した馬車。
豪華絢爛に飾られた儀式用の 儀装馬車(ぎそうばしゃ)です。
その後、時代とともに自動車も。天皇皇后両陛下が乗られる車は 御料車(ごりょうしゃ)と呼ばれます。

御料車は 宮内庁車馬課(しゃばか)の職員が大切に守り続けています。
皇居内にある宮内庁車馬課自動車車庫。
昭和天皇が戦前から戦後にかけて乗っていたのはドイツ、メルセデス・ベンツ製の車両。
日本各地を訪問したいわゆる戦後巡幸(せんごじゅんこう)にも使われ、現在も大切に保管されています。

現在の御料車はトヨタ・センチュリーロイヤルやトヨタ・センチュリーなど。主に公式行事や国賓の送迎等に使われます。
行事や場所に合わせて様々なタイプの車が使い分けられています。
しかし、馬車の出番がなくなったわけではありません。
伊勢神宮での公務など伝統が重んじられる特別な場面には馬車が使われています。

皇居の中の 厩舎(きゅうしゃ)は 宮内庁車馬課主馬班(しゅめはん)が管理しています。
信任状捧呈式の送迎で使われる 儀装馬車(ぎそうばしゃ)の車体は漆塗り、金箔で飾られています。
皇室の馬車のほとんどは明治の終わりから昭和の初めに作られました。

儀装馬車を説明してくれたのは 宮内庁車馬課主馬班武田清志 さん。
大使の送迎に使用していたのは大正2年製造の 儀装馬車4号。昔、主馬寮が二の丸にあったときに、そこで製造したそうです。
明治時代の中頃までは馬車をヨーロッパから輸入していましたが、それを手本に国内でも作るようになりました。
上の箱(客室)の部分と下のシャーシ(車台)の部分が別になっていて、前に2点、後ろに2点ある板バネと黒い革で上の箱の部分を吊る構造。
車のスプリングと同様に、下がガタガタ揺れても上に揺れが伝わりません。
乗り心地の良さを追求した緻密な構造。100年以上たっても現役です。

信任状捧呈式の馬車列 は皇居外苑(二重橋前付近等)で見学することができます。
日程は宮内庁の公式サイトでご確認ください。

名前宮内庁(くないちょう)信任状捧呈式(しんにんじょうほうていしき)
WEBhttps://www.kunaicho.go.jp/about/gokomu/kyuchu/shinninjo/shinninjo01.html
天皇の日本史
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中䑓洋さん / 中台製作所 / 儀装馬車の漆塗り【千葉県 市川市】

皇室の馬車 をメンテナンスしているのは 千葉県市川市中台製作所(なかだいせいさくしょ)。
本業は 神輿(みこし)の製作所。伝統的な技法で神輿の木地製作から飾り金具、彫刻、漆塗、金箔、組立までを社内一貫作業しています。

5代目代表は 中䑓洋(なかだい ひろし)さん。屋外で激しく扱われる神輿は漆塗りや金箔の仕事もしっかりしています。塗りの下地や塗りの工法には自信があると胸を張ります。

紹介されていたのは中䑓さんが9年前に修理した儀装馬車。
長年の使用で色あせも金箔も剥がれていました。その馬車を神輿作りの職人たちが直しました。

ヨーロッパ発祥の馬車を日本伝統の技で直します。
作業場に行ってみると、メンテナンス中の宮内庁の馬車がありました。
漆塗りは下地が大事。ちゃんとやらないと仕上がりは悪くなるため念入りに。
神輿はパーツをバラバラにすることができますが馬車の場合はばらせません。
馬車の下に潜ったりして苦労して作業しますが手間は想像以上だったといいます。

神輿作りの技で往年の輝きを取り戻した儀装馬車。
漆を塗り重ね金箔で飾りました。

名前中台製作所(なかだいせいさくしょ)
住所千葉県市川市本塩21-3
電話047-357-2061
WEBhttp://www.mikoshiya.com/
営業時間月〜土:9:00〜17:00
定休日日曜・祝日
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宮本茂紀さん+宮本しげるさん / 五反田製作所 / 儀装馬車の幌と椅子【東京都 品川区】

中台製作所(なかだいせいさくしょ)を訪ねてきたのは、屋根の張り替えを担当する 五反田製作所(ごたんだせいさくしょ)の職人、宮本茂紀(みやもと しげき)さんと息子の 宮本しげる(みやもと しげる)さん。
儀装馬車の屋根は革製の (ほろ)。経年でだんだん革が縮み、縫い目などにヒビが入ったりして痛んできます。

椅子の神様 宮本茂紀の仕事 LIXIL BOOKLET 佐藤
椅子の神様 宮本茂紀の仕事

宮本茂紀さんは椅子張り職人。卓越した技術で「椅子の神様」とも呼ばれてきました。
皇室の馬車も15台以上直してきました。内装の張り替えもします。

馬車の椅子はヨーロッパ伝統の椅子と同じ作り。
中にはスプリングが入っています。でこぼこ道を走った場合にスプリングがあるとないとでは全然違うそうです。
さらに重要なのが充填物。
使うのは馬の毛。馬の毛を熱湯で消毒すると縮みます。綿よりも硬くて弾力があるクッション性のある充填物として活用。ヨーロッパで発展してきた乗り心地を良くする技や工夫です。
体に最初に触れる部分には綿を厚めに敷いて柔らかな感触にする心遣いも。
美しさと乗り心地を兼ね備えた走る工芸品。
それを支えているのは西洋と日本の技の融合でした。

名前五反田製作所(ごたんだせいさくしょ)
住所東京都品川区平塚2-18-21
電話03-3785-2331
WEBhttps://www.gotanda.co.jp/
営業時間月〜土:8:30〜17:30
定休日日曜

椅子の神様と言われる宮本茂紀さんの著書。

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ミニコーナー 皇居の馬

宮内庁車馬課主馬班 / 皇居の馬の世話と調教【東京都 千代田区】

皇居の馬 は皇室の方々にも親しまれています。
皇居では30頭ほどの馬が飼育されています。
そのほとんどが栃木県の 御料牧場(ごりょうぼくじょう)生まれ。
馬車を引く馬だけでなく、乗馬用など様々な馬がいます。
愛子様が21歳の誕生日に餌やりをされていた馬の名は「静風(しずかぜ)」。名前の付け方も独特です。

説明してくれたのは 宮内庁車馬課主馬班櫻山雄也 さん。
「静」というのはこの馬の生まれた年(平成26年)の初めに「歌会始」があり、そのお題「静(せい)」の文字を取りました。
「風」という字は母馬の1文字をとりました。

主馬班は毎日の世話だけでなく馬術などの 調教(ちょうきょう)も行います。宮内庁に伝わる古式馬術の伝承も大切な仕事です。
母衣(ほろ)を水平に長く引かせる 母衣引(ほろひき)。
平安貴族も楽しんだという 打毬(だきゅう)は中央アジア発祥とされる競技です。

すべての基本になるのが調教。
皇室の馬にふさわしい仕事ができるように育てます。
誰が乗ってもおとなしく指示をちゃんと聞く馬にしていくそうです。

宮内庁車馬課主馬班 / 皇居の馬の装蹄【東京都 千代田区】

皇居には馬の 蹄鉄(ていてつ)を作って装着する 装蹄師(そうていし)もいます。
馬の蹄(ひづめ)を守る大事な仕事です。

宮内庁車馬課主馬班米田達哉 さんに装蹄の作業を見せてもらいました。
作っていたのは輓馬用(ばんばよう)の蹄鉄。
輓馬は体重が700kg前後と大きく馬車を引く馬。馬車馬は蹄にたくさんの負荷がかかってしまうためその保護をするために装蹄をしています。

1頭ずつ緻密に形を合わせていき、装蹄。
晴れの舞台を裏で支える日々の鍛錬。伝統をこれからも守っていきます。

美の壺 二、宮殿:伝統と現代の調和

ふたつめのツボは 宮殿:伝統と現代の調和

賓客の目線で皇居の宮殿巡り【東京都 千代田区】

特別に外国からの賓客と同じ目線で皇居の 宮殿(きゅうでん)を巡ります。

皇居正門(こうきょせいもん)

皇居正門(こうきょせいもん)をくぐり、宮殿が見えてきました。
国の公的な儀式や宮中行事が行われる建物です。

長和殿(ちょうわでん)

宮殿で最も長い 長和殿(ちょうわでん)は南北に連なる163mの建物。
宮殿は国賓を始め訪れた人にとって特別な場所です。
宮中に招かれるのは国際的にも大変な栄誉とされています。

賓客が到着するのは長和殿の南端にある 南車寄(みなみくるまよせ)。
南車寄を抜けると大きな玄関ホール、南溜(みなみだまり)です。
水平に桟が伸びた障子。その向こうには日本庭園が見えます。

天井で輝くのは紫色のクリタスガラスで作られた シャンデリア
そのデザインには意外な人物が抜擢されたといわれました。
彫刻家・照明デザイナーの 多田美波(ただ みなみ)。40代前半のことでした。

宮殿は当時第一線で活躍していた芸術家の作品で彩られています。
南溜の奥にある 大階段(おおかいだん)。
一歩ずつ上がっていくと、エメラルドグリーンの海。巨大な岩が少しずつ現れます。
2階にあるのは 波の間(なみのま)です。
壁一面に飾られているのは昭和を代表する日本画家の1人 東山魁夷(ひがしやま かいい)の「朝明けの潮(あさあけのうしお)」。
縦3.8m、横14.3mの大作です。

東山魁夷は「海洋国家・日本に来たことを実感してもらいたい」との思いでこの画題を選びました。
この絵のために各地の海岸を見て回り試作を重ねました。

生前のインタビューで、東山は「昭和時代の記念的な建築として後世に残るその中に何らかの意味でお手伝いをさせていただいたことは大変感激に思っております」と語っていました。

波に洗われ輝く巨石は金箔の上に顔料を何層も重ねました。
白く輝く波頭や波紋はプラチナで表現。
朝日に照らされて黄金色に輝く波しぶきは金箔を粉にした金砂子(きんすなご)を散らしました。

もっと知りたい東山魁夷 生涯と作品
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回廊

波の間を抜けると広く長い 回廊(かいろう)。
左手には 緑豊かな庭、右手には 白い庭 が広がります。
宮殿には日本の文化を感じる趣向があちこちに凝らされています。

千草の間・千鳥の間

千草の間(ちぐさのま)と 千鳥の間(ちどりのま)は二間続きの 休所(きゅうしょ)です。
儀式行事に臨む前の時間をくつろいで過ごせるよう、窓の外には美しい風景が広がります。
千草・千鳥の名の通り、鳥や草花など自然を題材にした調度品が飾られています。

正殿(せいでん)

宮殿で最も格式の高い建物、正殿(せいでん)
正殿は松・竹・梅、3つの部屋に分かれています。
回廊から見て1番手前にあるのが 竹の間(たけのま)。両陛下との会見が行われます。

竹の間は部屋中、竹のモチーフで飾られています。
飾られていたのは 福田平八郎(ふくだ へいはちろう)「」。

人間国宝 加藤土師萌(かとう はじめ)「緑地金襴手飾壺(りょくじきんらんでかざりつぼ)」。
若竹を思わせる萌黄色に竹や菊の文を散らした 金襴手(きんらんで)の大壺です。

扉には貝殻の細工、螺鈿(らでん)が施されています。
手がけたのは漆芸家・木工家の 黒田辰秋(くろだ たつあき)。実用と装飾を融合させた作風で知られます。
内側は蝶貝(ちょうがい)、外側はメキシコアワビ。歩みによって光が様々に輝き美しく変化していきます。

松の間(まつのま)

正殿の中で最も格式が高い場所は中央に位置する 松の間(まつのま)。
床は宮殿内で唯一の板張りで 欅材(けやきざい)が87枚並べられています。
置かれているのは天皇陛下の椅子。ここで主要な儀式や行事が行われます。
令和元年12月6日に行われた 即位礼正殿の儀(そくいれいせいでんのぎ)には世界中から招待客が参列しました。
儀式のために京都御所から 高御座(たかみくら)が運ばれました。
天皇陛下が即位を内外に宣明されたのも松の間でした。

伝統を守りながら、新たな価値観も加えています。
その1つがこの 椅子(いす)。訪れた人が立つ床と同じ高さに置かれています。
明治時代に作られた宮殿では、椅子は高い台座の上に置かれ、豪華な細工で飾られていました。
現在は背後に大きな 衝立(ついたて)があるのみ。
衝立の色は 古代紫(こだいむらさき)。大王松(だいおうまつ)が金系で織り込まれています。
衝立の上にあるのは太陽と月の飾り。
簡素でありながら品格に満ちた空間。日本独自の美意識で貫かれた宮殿です。

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美の壺 三、建築:新たな時代を建てる

みっつめのツボは 建築:新たな時代を建てる

藤森照信さん / 吉村順三が設計した新宮殿【東京都 千代田区】

皇居明治宮殿の室内装飾 野中 和夫
皇居明治宮殿の室内装飾

戦争で一面焼け野原になった東京。
明治時代に建てられた宮殿も焼け、戦後長く更地の状態が続いていました。
明治の宮殿 は豪華絢爛で威厳に満ちていたと伝えられています。
戦後の復興に力を尽くした日本。高度経済成長期に入り、やっと宮殿の再建も決まりました。
最新の鉄筋コンクリートで建てられることになった宮殿。
明治の宮殿と区別するため、新宮殿(しんきゅうでん)と呼ばれました。

新宮殿の基本設計を担当したのは、当時東京藝術大学の助教授だった 吉村順三(よしむら じゅんぞう)。
代表作は「軽井沢の山荘」「ポカンティコヒルの家(ロックフェラー邸)」など。
またモダニズム建築の旗手として日本建築のあるべき姿を問い続けていました。
その日本的な空間構造は世界的にも評価され、住宅建築の名手としての地位を確立していました。

設計にはある課題がありました。君主から象徴へと変わった天皇像への対応です。
吉村に新しい宮殿の建設主題が課せられます。
「威厳よりも信愛を。荘重よりも平明を」

解説してくれたのは建築史家の 藤森照信(ふじもり てるのぶ)さん。生前の吉村と親交がありました。
建築史的に1番評価されているのは、伝統的な 寝殿造(しんでんづくり)と戦後主流になる モダニズム、それら2つの融合点を上手に探って成功したこと。

寝殿造の仕組みと宮中の行事 図鑑モノから読み解く王朝絵巻 2 倉田 実
寝殿造の仕組みと宮中の行事

吉村が取り入れたという 寝殿造(しんでんづくり)は中庭を中心に、四方に建てた平屋を回廊で結んだ建築様式です。
一方、明治の宮殿は武家社会で発展した 書院造(しょいんづくり)が基本。その内装は西洋的な調度品で飾られていました。
明治宮殿は基本的に 和洋折衷(わようせっちゅう)で、豪華ですが、後世から見ると相当奇妙なぎこちない折衷様式。
西洋のデザインを真似て取って付けることはしない。
日本の宮殿だから日本の伝統を踏まえるのが望ましい。
書院造が伝統の一般なんですけども、あえて寝殿造。
寝殿造の中にモダンなものを見るというのはやっぱり吉村順三の優れた感性だと藤森さん。

京都御所には寝殿造の様式が多く残されています。
日本古来伝わるこの寝殿造に吉村は新しさを再発見しました。
寝殿造は装飾が少なく、壁も非常に少なくて伽藍堂(がらんどう)のような空間。
現代から見ても自由に使える。そこが非常にモダンなところ。
吉村順三は寝殿造から現在に通じるエッセンスを抽出して、水平に伸びやかに広がる空間を作りました。

吉村は寝殿造の 屋根 にも注目します。
寺院建築に比べると屋根の勾配ば緩く庇(ひさし)が伸びやかに出ているデザイン。
屋根で威風を見せる威圧的なデザインはやめようと考えたのだと思う、と藤森さん。
重厚すぎる意匠は避けながらも日本の伝統を受け継ぎ品格のある新宮殿。
君主から象徴へと変わった天皇像を表す建築を考え抜いた吉村順三の解答です。

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東庭(とうてい)/ 一般参賀のために作られた特別な場所【東京都 千代田区】

毎年正月2日に行われる 新年一般参賀(しんねんいぱんさんが)は通常非公開の長和殿(ちょうわでん)前の 東庭(とうてい)に入場できます。
多くの国民が集まるこの空間のため、新宮殿では建物を南向きに配置する 天子南面(てんしなんめん)を採用しませんでした。
天子南面は藤原京以来、1,200年余り続いた伝統でした。
新宮殿は東を向いています。
その理由が一般参賀。一般参賀は国民と直接触れ合う場として昭和天皇が大切にしていた行事です。
東庭は一般参賀のために作られた特別な場所でした。

時代に沿った皇室の姿を表すものがもう一つ。長和殿のベランダ です。
今回特別に両陛下や皇族方が立たれる場所の撮影も許されました。意外に低く国民との距離が近いことに驚かされます。

皇族と人々の対面の形式はこのデザインでなければできなかったのでは、と藤森さん。
軒の深い縁側、そこにできる軒下の空間。皇室の方々がずらりと並んで、そんなに低い位置ではないところに一般参加の人たちが並ぶ。
そういう対面の形式は世界でも稀。昭和天皇が社会的に非常に重要なことだと考えて望んだ対面の形式が実現する空間です。

一般参賀は今も多くの国民と触れ合われる行事として定着しています。
基本設計の完成をもって宮殿の仕事を終えた吉村順三。その後、建設は多くの人に引き継がれ昭和43年秋に完成しました。
新たな時代を象徴する宮殿。今も守り続けられています。

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ミニコーナー 二重橋物語

二重橋【東京都 千代田区】

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皇居の二重橋と伏見櫓

皇居といえばよく知られるのが 二重橋(にじゅうばし)。
2つの橋が二重に見えるから?
違うんです。
二重橋はもともと奥に架かる橋だけの呼び名。
木造だった頃、橋桁(はしげた)が、二重だったからです。
いつの間にか2つの橋が重なって見えるから二重橋だと思われるように。
やがて奥の橋は鉄製になり、二重の橋桁ではなくなりました。
手前の橋も石造りになりましたが、二重橋という呼び名は残ったのです。

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皇宮警察本部 儀仗隊 / 皇居正門

石橋の向こうが 皇居正門(こうきょせいもん)。元は江戸城の門でした。
皇宮警察本部(こうぐうけいさつほんぶ)の 儀仗隊(ぎじょうたい)が警戒しています。

皇宮警察本部坂下護衛署市村愛樹 さんが説明してくれました。
皇居正門の儀仗というのは、皇居の顔とも言える部分ですので、主にキビキビした動きをなくしてゆっくりと美しさを醸し出す。そういったところを心がけているそうです。美しい立ち姿で今日も皇居を守ります。

美の壺 四、匠:世界に誇るおもてなし

よっつめのツボは 匠:世界に誇るおもてなし

宮内庁大膳課 / 晩餐会や昼食会の食器【東京都 千代田区】

宮内庁の総料理長のおいしいレシピ 高橋 恒雄
宮内庁の総料理長のおいしいレシピ

宮殿では飲食を伴う行事も行われます。
紹介されていたのは令和6年のケニア大統領夫妻をもてなす昼食会。美しい 食器(しょっき)が並びます。

宮殿の 整膳室(せいぜんしつ)には明治以降受け継がれてきた食器がぎっしり。
宮内庁大膳課(だいぜんか)の職員が守っています。
磨き抜かれた銀器の数々。晩餐会や昼食会で出されるのは明治以降フランス料理が伝統です。

宮中 季節のお料理 宮内庁侍従職
宮中 季節のお料理 宮内庁侍従職

担当しているのは 宮内庁大膳課石井真司 さん。
飾り皿・銀器・グラスの順でテーブルセッティングを行います。
その際、衛生面に気をつけながら破損や汚れがないかも確認。

昼食会のテーブルセッティングには近年新たに (はし)が加わりました。
「日本の文化を知ってもらいたい」という両陛下の発案で、令和5年秋から前菜に和食が出されるようになりました。
日本酒で乾杯することも。
グラスは 江戸切子(えどきりこ)。令和流のおもてなしです。

図説 宮中晩餐会 ふくろうの本 日本の文化 松平
図説 宮中晩餐会

令和元年に開かれた主賓・トランプ大統領の 宮中晩餐会(きゅうちゅうばんさんかい)。
会場は宮殿で1番広い 豊明殿(ほうめいでん)。国賓をもてなす特別な晩餐会です。
晩餐会のテーブルセッティングは昼食会とはやや異なります。
添えられるのは赤と白のグラス。赤は白ワイン用でこれも明治以来の伝統です。
ワイングラスは明治の初めにイギリスのメーカー Mortlock & Sons(モートロック&サンズ社)に注文したもの。

宮内庁の総料理長のおいしいレシピ
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カガミクリスタル株式会社 / ワイングラスのグラヴィール【茨城県 龍ケ崎市】

宮中晩餐会や昼食会では今も 明治時代のワイングラス が使われています。
毎回欠けやヒビがないか念入りに点検。
ワイングラスには Gravure(グラヴィール)と呼ばれる技法で菊の御紋などの模様が施されています。

明治の初めに作られたオリジナルのワイングラスはイギリス製ですが、メーカーは現存していないため、グラスが新たに必要になった時には日本国内で同じデザインで作ります。
作っているのは 茨城県カガミクリスタル株式会社
昭和初期にドイツでグラヴィールを習得した創立者による クリスタルグラス を作る会社です。
クリスタルガラスは透明度が高い高品質ガラスのこと。屈折率が高いので、キラキラと輝きます。

グラヴィールの作業場を見せてもらいました。
グラヴィール職人の 岡部理咲子 さんが1点1点手作業で制作しています。
まず 下絵 を描き、それから模様を 削り ます。
グラヴィールとは回転する銅板でガラスを薄く削り模様を刻む技法。削った部分は擦りガラス状になっています。
菊の御紋をムラなくするのが意外と難しく、練習ができていないとムラが出てしまう箇所。
模様に合わせて銅板を使い分けます。一筆書きの一発勝負。

次は 磨き
磨き用の円盤に研磨剤を塗って削ったところを磨いていきます。
磨くと擦りガラスだった部分が透明に。新たな表情が生まれました。

グラスが1つ割れたからといって、総取り替えするわけではありません。
数年前に入れたグラスと今回作ったグラスのずれが起きてしまうと、使う方たちが困ってしまうため、同じものを作る技術が必要です。
宮中晩餐会という華やかな舞台を陰で支える繊細な技です。

名前カガミクリスタル株式会社
住所茨城県龍ケ崎市向陽台4-5(つくばの里工業団地)
WEBhttps://www.kagami.jp/

カガミクリスタルのクリスタルガラス。

絵画・美術品の入れ替え【東京都 千代田区】

宮殿の役割の1つが来訪客をもてなすことです。
その心遣いは昭和から平成、そして令和の時代へと受け継がれています。
例えば多くの来訪客を迎えてきた 回廊(かいろう)。
突き当たりの 絵画(かいが)もおもてなしの1つ。絵は季節や行事に応じて掛け変えられます。
12月に飾られていたは嵐山の冬景色、宇田荻邨(うだ てきそん)「冬 嵐山」。

この日、新年に向けての掛け替えが行われていました。
新年や天皇誕生日、国賓来訪の時に掛けられる特別な絵画。
日本画の巨匠・奥村土牛(おくむら とぎゅう)が描いた「富士」。
日本を象徴する景色でおもてなし。

絵の前に置く作品も取り替えます。
帖佐美行(ちょうさ よしゆき)の彫金の壺「和讃想」。
新年を迎える準備が整いました。

掃除とメンテナンス【東京都 千代田区】

千草の間千鳥の間 では 掃除手入れ が行われていました。
漆塗りの椅子は指紋1つ残さないよう拭き上げられます。

敷かれているのは、毛足の長い毛織りの絨毯・緞通(だんつう)。
掃除機をかけて靴跡も全て消します。
長年受け継がれている心遣いです。

スミノエ インテリア プロダクツ / 豊明殿の緞通のメンテナンス

豊明殿 では 緞通(だんつう)を作ったメーカー・株式会社スミノエ インテリア プロダクツ のスタッフが点検に来ていました。説明してくれたのは 技士の 勝山正夫 さん。

宮中餐会が開かれる豊明殿。大勢の人が歩いたことで緞通に生じたズレや歪みを直します。
長さが40m近くある大きく重い緞通。容易ではありません。
それを直すのが ニーキッカーと呼ばれる道具。その名の通り、膝で蹴ることでズレを直していきます。

また、伸びて障子にぶつかり障子が開きにくくなることもありますが、ここも戻します。
海外からの来賓の方々もお使いになられる国の重要な施設なので、少しでも良い状態で長くお使いいただけるように心がけてメンテナンスを行っていると勝山さん。宮殿ができてからおよそ60年。心遣いの積み重ねが支えていました。

名前株式会社スミノエ インテリア プロダクツ
住所大阪府大阪市西区新町2-4-2
電話06-6537-6301
WEBhttps://suminoe.jp/

川島織物セルコン / 豊明殿の綴織「豊幡雲(とよはたぐも)」【京都市 左京区】

豊明殿(ほうめいでん)にはもう一つ来訪客を迎えるものがあります。
中村岳陵(なかむら がくりょう)原画の「豊幡雲(とよはたぐも)」。
天皇皇后両陛下の背後に広がるのは雄大な夕焼け空。万葉集の和歌にも登場する大きく美しく旗のようにたなびく豊幡雲(とよはたぐも)。
実はこれ壁紙ではなく織物。綴織(つづれおり)です。まるで窓から夕景を眺めるかのようです。

綴織を制作したのは 京都市 の西陣織の会社 川島織物セルコン(かわしまおりものセルコン)。
江戸時代の創業の老舗で綴織を得意としています。美の壺 File 611「祇園祭」でも綴織が紹介されました。
当時、豊畑雲のために新調した 織機(しょっき)が今も使われています。
現在は主に劇場の緞帳(どんちょう)などを作っています。

綴織は絵柄を表現する 緯糸(よこいと)を手で織り込みます。色糸の数は無制限。
まるで絵画のような細かい表現ができます。
当時から勤めている 井上光二(いのうえ みつじ)さんが説明してくれました。
会社にとってもこれだけ大きな綴織は初めてだったといいます。
昭和天皇も視察に訪れるなど、この作品は社運をかけた挑戦でした。
青空から夕焼けまで微妙なグラデーションをどう表現するかが課題でした。

同時の織見本も大切に保管されていました。試行錯誤の跡が見えます。
1つの色を出すのに1色で出さずに4色5色の色糸を組み合わせてその色を出す。
どういう糸をどうミックスすればどういう色が出るか、織ってみないとわからないため織見本を確認しながら本番に挑みました。

遠目には1色に見える青い空。
近づいてみると、何色もの絹糸をより合わせて表現しています。
さらに遠近感を出すために、糸の質感を変える工夫もありました。

社員一丸となって織り上げた巨大な綴織は4年がかりで完成させました。
明るく染まりゆく夕焼けの空のグラデーション。奥の空と手前の雲の糸の種類や織り方を変えることで広がる空を表現しました。
昭和42年秋、ついに出荷の日を迎えました。
井上さんは本館の前の玄関で社員全員が見送りしたのを今でも覚えています。
特別仕様のトラックに積まれて皇居へ向かいました。
遥か昔、万葉集の時代にも愛でられた景色。職人の技が今も人々の目を楽しませています。

名前川島織物セルコン(かわしまおりものセルコン)
住所京都府京都市左京区静市市原町265
電話075‒741‒4111
WEBhttps://www.kawashimaselkon.co.jp/
染織の都 京都の挑戦 革新と伝統
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ミニコーナー 江戸の名残

江戸城の石垣と門【東京都 千代田区】

江戸城の土木工事 石垣・堀・曲輪 594 歴史文化ライブラリー
江戸城の土木工事 石垣・堀・曲輪

もともと 江戸城(えどじょう)だった皇居。
今宮殿が立っている場所は天守などがあった本丸ではなく 西の丸(にしのまる)でした。
日本最大の城だった江戸城は 石垣(いしがき)も他の城と比べて大きく高く、石組みも多彩です。
全国の大名が幕府の命令で建設に参加しました。
中には担当した大名を示したり、石を識別するための印が刻まれているものもあります。

桜田門外ノ変〈上〉 新潮文庫 吉村 昭
桜田門外ノ変 / 吉村昭

桜田門外の変で知られる 桜田門(さくらだもん)も当時の姿で残っています。
江戸城の門の多くは2つの門が1組になった枡形門(ますがたもん)。
敵を閉じ込め一網打尽にするためです。
かつては西の丸の通用門だった 坂下門(さかしたもん)は今は宮内庁などへの行き来に使われています。

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美の壺 五、庭園:自然に手を入れ 自然を表す

最後のツボは 庭園:自然に手を入れ 自然を表す

宮内庁庭園課 / 庭園のメンテナンス【東京都 千代田区】

皇居東御苑の草木帖 木下 栄三
皇居東御苑の草木帖

皇居のもう一つの見所、それが 庭園(ていえん)です。
場所によって趣が異なる庭が設けられています。

庭を支えているのが 宮内庁庭園課 の職員です。
手入れをしていたのは 宮内庁庭園課小林紀之 さん。
「古葉ふるい」は冬になり赤茶けた葉とか古い葉をふるって、新しい葉で見栄え良くするような作業。
さらに他の枝と重ならないように段差を開けて扇形になるよう剪定します。
細やかな手入れが景観を支えています。

中庭(ちゅうてい)

正殿の前に広がる 中庭(ちゅうてい)。
即位礼正殿の儀ではのぼりが立てられました。
儀式でも使われる空間にふさわしく那智(なち)の 白い玉石(たまいし)が敷き詰められています。
庭の対角線上に植えられているのは 白梅(はくばい)と 紅梅(こうばい)です。

連翠(れんすい)の南北の庭

昼食会などが開かれる部屋 連翠(れんすい)。
北側 は手前に 枯山水(かれさんすい)、奥に緑豊かな景観が広がります。
枯山水に置かれているのは、佐渡の 赤石(あかいし)。
赤石には昔から邪気を払う力があると信じられてきました。
仕切り壁を下げると北と南とで表情が異なる庭を同時に楽しめます。
モダンなデザインの池が広がっています。
光の反射が部屋からでも楽しめるようになっています。

南庭(なんてい)の大刈込(おおかりこみ)

宮殿の南に広がる 南庭(なんてい)。
見所の1つが 大刈込(おおかりこみ)。
管理しているのは 宮内庁庭園課宮口久弥 さん。
高いところで6m位、24種程度のいろいろな樹種が入っている刈込になっています。
宮内庁の庭園は独自の考え方。色々な樹種を入れ、四季折々の変化に富んだ構成になっています。
緑の色も色々あるし、紅葉する葉もある。多様な樹種を入れて楽しんでもらう趣向です。

大刈込の内側は意外な空間が。
上に丸太が組んであり、職人がはしごをかけたり、足をかけたりして首を出して刈り込みします。
季節ごとに表情が変わる大刈込。春にはツツジなどが咲いて華やかに。見る人を楽しませます。

南庭の奥からは が流れています。
元の高低差を利用して渓谷の趣を出そうとしたと言われています。
周囲はあえて雑木林にしています。
醸しでる里山の風情。造形的な人工的なものではなく、自然の山を考えて作られています。
人が手が入ったとわからないような管理。
手を入れて手が入っていないように見せることに苦労して管理しています。

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宮内庁庭園課 / 大道庭園 / 盆栽仕立て場【東京都 千代田区】

宮中の盆栽―大道庭園の四季 『皇室』編集部
宮中の盆栽 大道庭園の四季

宮殿の各所に置かれているのが 盆栽(ぼんさい)。行事ごとに宮中を飾ります。
皇居内には盆栽の管理を専門にしている場所 大道庭園(おおみちていえん)があります。
現在盆栽の数はおよそ500。たくさんの盆栽を毎日毎日順番に手入れ。

黒松の手入れをしていたのは 宮内庁庭園課松本正樹さん。
古い葉を取っていかないと、だんだん樹形が乱れていくため、樹形を維持するのに古い葉を取って整枝してきれいにする作業。しかし手入れをしているように見えない形にするのが皇居の盆栽と教えられてきました。
盆栽の基本は、きっちりした形を整えていくこと。しかし、皇居の盆栽はきっちりし過ぎずに柔らかく自然な樹形にするよう努めているのだとか。

皇居には時代を経て受け継がれている盆栽があります。
黒松 銘「鹿島」は樹齢およそ390年の黒松。
国品を迎える時、南溜に設置される盆栽の1つです。
鉢は琉球焼。明治の終わり専用の船を仕立てて運ばれてきたのだとか。

樹齢600年を超え皇居で1番古いと言われる 真柏(双幹)。
白い部分は枯れた幹。悠久の時を感じさせます。

宮内庁庭園課塚野尋之 さんは、これだけの貴重な盆栽があり、毎日こうやって手入れができること、ここにいられるだけで特別なことだと思うと語ります。
皇族方始め様々なお客様にご覧いただく盆栽ですので、1番きれいなものを選んで見栄えよく差し出せるように心がけているそうです。

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盆栽の春飾り作り

盆栽(ぼんさい)の (はち)を保管している倉庫。
宮殿に設置するときには、こうした鉢に植え替えます。
12月、年末恒例の大事な作業、春飾り(はるかざり)と呼ばれる 寄植え盆栽(よせうえぼんさい)作りが始まります。

倉庫で春飾り用の鉢を選びます。選んだ鉢はおよそ20。
宮殿の各所や御所、宮邸などに飾られます。

そして寄植えに植える盆栽選び。新春といえば梅。
まずメインとなる (うめ)の木を選びます。
選ぶ梅は毎年変えます。樹齢150年を超えるものも。

春飾りは正月用の寄せ植えの盆栽です。
紅梅と白梅のバランスを見極めます。
松と竹も加えて 松竹梅(しょうちくばい)に。
縁起物の草木も植えていきます。
どれも皇居内で育てました。配置の仕方に決まりはありません。

そして坂下門に行き (こけ)を採取。春飾りの土を隠すために苔で覆います。
なるべく皇居のもので賄うため、皇居内で自生した苔を使い、春飾りを解体したあとはまた同じところに戻して育ててまた使えるようにしています。
いろいろな種類の苔を皇居のあちこちから採取してきました。
種類が異なる苔を用いることで、山の景色を思わせるような豊かな表情が生まれました。

12月30日、宮殿に設置します。
12月上旬から作り始めた春飾り。無事に設置すると1年が終わり安心して年が越せる。
新年に来られるお客さんに見てもらえるとほっとしていると盆栽担当の方々。

新年に後期を訪れた人を楽しませる春飾りは三が日が過ぎた後に下げられ元の状態に戻されます。
そして次の出番が来るまで大切に育てられます。
皇居の自然を一鉢に濃縮したような春飾りです。
皇居に新たな1年がまた重なりました。

よくわかる盆栽 基礎から手入れまで
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エピローグ

皇居ランをしようとした草刈さんの前に現れたのはご先祖様。
内裏の工を率いる役職についているというご先祖様は内裏の造りを見たいと言いますが、皇居の制限エリア内には入れません。
新年の一般参賀の頃に出直そうとご先祖様は帰って行きました。

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音楽 BGM

ジャズの名曲が流れる美の壺。番組BGMファンもいらっしゃるのではないでしょうか。
オープニング曲と番組内挿入曲をまとめましたので参考にどうぞ。リンク先で試聴できます。

オープニングテーマ

オープニングテーマArt Blakey And The Messengers(アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ)の名曲「Moanin’」。ジャズドラマー アート・ブレイキーが1958年に発表した同名のアルバムに収録されています。作曲はピアニストの Bobby Timmons(ボビー・ティモンズ)。

番組内 楽曲

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