NHK「美の壺(びのつぼ)」は普段使いの器から家具、着物、料理、建築に至るまで、衣食住、人の暮らしを彩ってきた美のアイテムを解説してくれる番組。紹介されたものは何?場所はどこ?出演は誰?どこで買える?と興味津々。
そんな気になる「美の壺・美術の鑑賞マニュアル」を詳しく調べてみました。最後に番組内の音楽もまとめてあります。
美の壺「いにしえの息吹伝える 琵琶湖」File 632
出演は俳優の 草刈正雄(くさかり まさお)さん、ナレーション(語り)は俳優の 木村多江(きむら たえ)さんです。
NHK BS(BS101チャンネル)
初回放送:2025年5月2日(火)21:15~21:45
再放送 :2025年5月9日(火)12:00~、2025年5月10日(土)07:30〜
BSプレミアム4K
初回放送:2025年4月23日(水)19:30~20:00
再放送 :2025年4月28日(月)13:00~、2025年4月30日(水)08:00~
2025年5月3日(土)06:45〜
でNHKの動画配信サービス NHKオンデマンド を視聴可能。 U-NEXT虎に翼・
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美の壺 いにしえの息吹伝える 琵琶湖 File 632 内容
▽写真家が見守り続ける琵琶湖の極上の景色
▽春先に起こる不思議な現象「琵琶湖の深呼吸」とは?
▽随筆家・白洲正子が「近江でいちばん美しい」と称賛した国宝の十一面観音の魅力
▽湖魚の豊かな食文化
▽湖に浮かぶ矢印は、千年前から続く伝統の漁法
▽琵琶湖のヨシ原から生まれる「江州よしすだれ」。短いすだれをかけるのは?
▽ヨシを何十年も寝かせて生み出す濃淡の美。時をまとって美しくなるすだれの味わい。
プロローグ
琵琶湖のほとりに住んでいる旧友から葉書が届いた草刈さん。
琵琶湖かぁ、いいねぇ…。
美の壺 一、悠久:静かなる時の流れ
ひとつめのツボは 悠久:静かなる時の流れ。
今森光彦さん / 写真家 / 琵琶湖の風景【滋賀県 大津市】

琵琶湖(びわこ)の風景は多くの人を引き付けてきました。
写真家・切り絵作家の 今森光彦(いまもり みつひこ)さんは1954年滋賀県大津市生まれ。
子どもの頃から琵琶湖に親しんできた今森さん。近畿大学理工学部土木工学科卒業後に写真家を志し、スタジオ勤務の後に1980年に独立。琵琶湖をのぞむ田園にアトリエを構え、琵琶湖周辺に生息する昆虫や里山の風景を撮影してきました。

NHK「オーレリアンの庭 今森光彦 里山の四季を楽しむ」「ワイルドライフ 今森光彦とめぐる琵琶湖」などの番組にも出演されています。

仰木の棚田(おおぎのたなだ)は四季折々にシャッターを切ってきた場所。
琵琶湖を一望できる1200年続くこの棚田は琵琶湖を象徴する風景だと言います。
山と湖の距離が短い琵琶湖は水の流れがよく分かる。水の物語を感じると今森さん。
3月初旬の日の出前。
この時期狙っているテーマの撮影のため 琵琶湖の北岸 へ。
水深が深く冬は雪が多いため、冬から春に向かう季節の変わり目に起こる「全層循環」という現象です。
全層循環は「琵琶湖の深呼吸」とも呼ばれています。
春が近づくと山から流れる雪どけの水が湖の表面を覆います。
この時 、湖底の水との間に寒暖の差が生まれ、冷たい水は下へ、湖底の水は上へと大きく循環します。
表層の酸素を多く含んだ水が湖底まで行き渡ると、底生生物の生存環境が改善され琵琶湖の生態系が維持されるのです。
名前 | 今森光彦(いまもり みつひこ) |
WEB | https://imamori-satoyama-world.com/ |
今森光彦さんの著書。
NHKの今森光彦さん出演番組はU-NEXTやAmazonのNHKオンデマンドで視聴できます。U-NEXTは初回無料トライアルあり。
白洲正子が称賛した仏像 / 渡岸寺観音堂の国宝・木造十一面觀音菩薩立像【滋賀県 長浜市】

独自の審美眼で日本の文化を見つめた随筆家・白洲正子(しらす まさこ)は日本の美と日本人の心を記しました。
正子にとってとりわけ魅力的な場所が 近江(おうみ)の地でした。
ほんとうに近江は広い。底知れぬ秘密にうもれている。(略)
「かくれ里」より
近江は私にとって、つきせぬ興味の宝庫である。

ある時、 自洲正子は琵琶湖の北東、湖北地方(こほくちほう)を訪れました。
この一帯には集落ごとに小さなお堂があり、観音が祭られています。
無人のお堂は村人の手によってひっそりと守られてきたといいます。
湖北地方は「観音の里」としても知られ、美の壺 File 602「観音」でも紹介されていました。
正子が注目したのは 渡岸寺観音堂(向源寺)(どうがんじかんのんどう(こうげんじ))。
土地の人々はドウガンジ、もしくはドガンジと呼んでいる。(略)
「かくれ里」より
近江で一番美しい仏像が、こんなささやかな寺にかくれているのは、
湖北の性格を示すものとして興味がある。

お堂へ入ると、丈高い観音様が、むき出しのまま立っていられた。
「十一面観音巡礼」より
野菜や果物は供えてあるが、その他の装飾は一切ない。
信仰のある村では、とかく本尊を飾りたてたり、
金ピカに塗りたがるものだが、
そういうことをするには観音様が美しすぎたのであろう。
国宝「木造十一面観音菩薩立像(もくぞうじゅういちめんかんのんぼさつりつぞう)」は日本彫刻史上の最高傑作と言われ、平安時代の作と伝えられます。
右足を僅かに前へ踏み出し、腰がしなやかな曲線を描きます。
救済を求める人に手を差し伸べる姿。
頭上に彫られた仏たちは慈愛の仏がある一方、怒りの仏も見られます。
正子は険しい表情の仏に目を向けていきます。
渡岸寺の観音の作者が、どちらかと云えば、
「十一面観音巡礼」より
悪の表現の方に重きをおいたのは、注意していいことである。(略)
美しい顔の横から、邪悪の相をのぞかせているばかりか、
一番恐しい暴悪大笑面を、頭の真後につけている。
暴悪大笑面(ぼうあくだいしょうめん)は世の中の悪行の数々人間の愚かさを、大きな口を開けて笑い飛ばしています。
この観音が生き生きとしているのは、
「十一面観音巡礼」より
作者が誰にも、何にも頼らず、自分の目で見たものを彫刻したからで、
悪魔の笑いも、瞋恚(しんい)の心も、彼自身が体験したものであったに違いない。
琵琶湖のほとりの観音は、時を超えて、静かなほほ笑みを浮かべています。
名前 | 渡岸寺観音堂(向源寺)(どうがんじかんのんどう(こうげんじ)) |
住所 | 滋賀県長浜市高月町渡岸寺50 |
電話 | 0749-85-2632(渡岸寺観音堂国宝維持保存協賛会) |
WEB | https://douganji-kannon.sakura.ne.jp/ |
営業時間 | 9:00〜17:00(冬季は16:00まで) |
定休日 | なし |
美の壺 二、湖魚:千年の恵みをいただく
ふたつめのツボは 湖魚:千年の恵みをいただく。
勝見昌和さん / 漁師 / 琵琶湖で千年伝わる魞漁(えりりょう)【滋賀県 野洲市】
琵琶湖(びわこ)が誕生したのは400万年前といわれます。世界有数の古代湖です。
湖の魚は 湖魚(こぎょ)と呼ばれています。
ビワマス、イサザなど琵琶湖にしかいない固有種も数多く生息しています。
琵琶湖ならではの光景、湖に浮かぶ矢印。
「魞(えり)」という、魚をとる仕掛けです。
魚が入ると書いて魞。文字どおり魚を誘い込んで捕獲していきます。
魞漁(えりりょう)は千年もの間琵琶湖に伝えられてきました。
滋賀びわ湖漁業協同組合中主支所長・漁師の 勝見昌和(かつみ まさかず)さんが魞漁を見せてくれました。
船が出港し、およそ15分、仕掛けが見えてきました。
魞にかかった魚をあげていきます。
魞漁は何がとれるか分からない、待つ漁法といわれています。
網を揚げないと何が獲れているのかはわかりません。
水深10mの底から網を上げていきます。網の引きあげには機械は使いません。
魚は弱らないようにざるですくいあげます。
獲れていたのはアユの稚魚・氷魚(ひうお)。繊細で弱いため丁寧に扱います。
一緒に入っていたのは透き通った スジエビ と琵琶湖の固有種 イサザ。
そして固有種 ゲンゴロウブナ。背中のところがすごく盛り上がっている魚です。
琵琶湖は限られた水瓶なので、獲り過ぎず、自分の体力に見合った量が獲れたらいちばんいいかなと、勝見さん。
名前 | 滋賀びわ湖漁業協同組合 中主支所 |
住所 | 滋賀県野洲市吉川1645-5 |
電話 | 077-585-5612 |
源谷桂子さん / しづか楼 女将 / ふなずしとホンモロコ【滋賀県 大津市】

琵琶湖の西岸、滋賀県大津市堅田(かたた)。
湖上交通の安全を願って建てられた 浮御堂(うきみどう)は、近江八景(おうみはっけい)の1つに数えられ、歌川広重(うたがわ ひろしげ)も「近江八景 堅田の落雁」を描いています。
湖畔には100年続く料亭 しづか楼(しずかろう)があり、湖の幸を使った伝統料理が受け継がれています。
女将の 源谷桂子(げんたに けいこ)さんが自慢の料理を紹介してくれました。
琵琶湖の ニゴロブナ を塩漬けにし、ごはんと重ねて発酵させた 鮒鮓(ふなずし)。近江の伝統食です。
こちらの料亭では代々女将が漬けているのだとか。
漁師の 村河克則 さんが勝手口に届けた魚は琵琶湖の固有種 ホンモロコ。体長10cmほどの銀色の輝き。
江戸時代に書かれた琵琶湖の生物図鑑「湖中産物図証」には、ホンモロコは「雛祭の宴には欠かせない上品でうまい魚」と記されています。
ふなずしと並ぶ名物の 焼きもろこ。源谷さんがホンモロコを焼いてくれました。
備長炭で火をおこします。子持ちの出回る2月から4月にかけてが一番おいしいといいます。
姿が美しい魚で優しそうに見えますが、パワーがあってピョーンと跳ねて飛んで大騒ぎになったりすることもあるそうです。それも楽しそうですね。
焼いているとひれが透き通っていきます。
ここで、火鉢の網にホンモロコを頭から突き刺しました。
脂がのっているので、立てると脂が下がってきて頭がカリッと焼き上がります。
こうやってお客様の前で一匹一匹焼いてお出しするというのは誇らしいし嬉しい、と語る源谷さん。
琵琶湖で味わう至福のひとときです。
ホンモロコがいただけるのは11月~4月上旬頃まで。
気になるお値段は
・本もろこ、焼鴨、鴨鍋コース 13,200円/1人前(2名様より)
名前 | しづか楼(しずかろう) |
住所 | 滋賀県大津市本堅田2-17-13 |
電話 | 077-572-1111 |
WEB | https://www.shizukarou.com/ |
営業時間 | 11:00~19:00(完全予約制) |
定休日 | 不定休 |
美の壺 三、ヨシ:空間を装う
最後のツボは ヨシ:空間を装う。
関目正樹さん / 納屋孫 主人 / 江州よしすだれが生む景色【滋賀県 東近江市】
琵琶湖の水辺に群生する ヨシ。湖を象徴する風景です。
このヨシを使った工芸品、江州よしすだれ(ごうしゅうよしすだれ)が近江の暮らしに息づいています。
琵琶湖の東部、東近江市 の 五個荘(ごかしょう)は近江商人発祥の地といわれ、屋敷や蔵が並びます。
その五個荘の一角にある江戸時代中期創業の料亭 納屋孫(なやまご)。話をしてくれたのは7代目主人の 関目正樹(せきめ まさき)さん。
軒下に掛けられているのが琵琶湖のヨシで作る 江州よしすだれ(ごうしゅうよしすだれ)。
こちらのお店では夏だけでなく一年中掛けられています。琵琶湖のヨシを使ったすだれは近江のシンボルのようなものだと関目さん。
すだれは風を通しつつ、日ざしを遮り暑さやまぶしさを和らげます。
すだれにはもうひとつの目的があるといいます。
それは、庭や景色を切り取り引き立てること。影を作ることによって景色が引き立ってくるのです。
納屋孫さんでいただけるのは琵琶湖や里山の旬の食材を生かしたお料理。
うなぎ、ふなずし、近江牛、そして春はホンモロコ、夏はスッポン、秋は松茸、冬は鴨など四季折々のメニューが楽しめます。
名前 | 納屋孫(なやまご) |
住所 | 滋賀県東近江市五個荘川並町620 |
電話 | 0748-48-2631 |
WEB | https://www.nayamago.com/ |
営業時間 | 11:00~15:00, 17:00~21:00(要予約) |
定休日 | 不定休 |
田井中敏巳さん+田井中敏夫さん / 株式会社タイナカ すだれ職人 / 江州よしすだれ【滋賀県 東近江市】
納屋孫(なやまご)の 江州よしすだれ(ごうしゅうよしすだれ)を作っているのは 株式会社タイナカ。3代目代表・すだれ職人の 田井中敏巳(たいなか としみ)さんとその父で会長・すだれ職人の 田井中敏夫(たいなかとしお)さんが製作工程を見せてくれました。
琵琶湖の東岸、ヨシが群生する 滋賀県近江八幡市 で、すだれの材料となる ヨシ の刈り取り。
断ち切り、束ね、穂や葉をこそぎ落します。
僅かに機械化されたものの、そのほとんどが今でも手作業です。
毎年1月から3月の間にヨシ刈り。
刈らないままの状態を放置にすると翌年から良いヨシが生えてこないそうです。
古い芽を刈り取り、焼いて、新しい新芽がまた育つ環境を整えます。
今年刈り取ってきたヨシは細さや長さによって1本1本振り分け、最終的に200分の1にまで選別。
選ばれたヨシは倉庫で何年も寝かせます。
倉庫には敏巳さんの祖父が刈り取ったものも保管されていて、古いものでは30年以上経っているのだとか。
皮がかぶっている部分とかぶってない部分があり、かぶっていない部分は年月が経つにつれて焼けてくるし、皮がかぶった部分は本来の色合いで残ります。
加工して作ろうと思っても出ない色。その濃淡を出すために寝かしています。
すだれを編む工程を見せてくれたのは田井中敏夫さん。
40年連れ添った機械でリズミカルに編みます。
ヨシの根元と先とでは細さが違うため、1本おきにヨシの向きを変えて編んでいます。
そして節のゆがみを直すため、節に爪を押し当てて手作業で修正。
琵琶湖のヨシは世界で一番と言われるほどの強度や光沢が最高のヨシ。ずっと後世にも伝えていきたいし精進したいと誇らしげに語る敏夫さん。
時をまとって美しくなる、琵琶湖が生んだ工芸品です。
名前 | 株式会社タイナカ |
住所 | 滋賀県東近江市福堂町1426番地 |
電話 | 0748-45-0336 |
WEB | https://tainaka.co.jp/ |
エピローグ
琵琶湖への旅を計画している草刈さん。おじいちゃんの釣竿も出してきました。
琵琶湖の大物を釣ろうと張り切って出発!
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真田丸 などの大河ドラマ、
探偵ロマンス・
正直不動産 などの名作ドラマ、
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音楽 BGM
ジャズの名曲が流れる美の壺。番組BGMファンもいらっしゃるのではないでしょうか。
オープニング曲と番組内挿入曲をまとめましたので参考にどうぞ。リンク先で試聴できます。
オープニングテーマ
オープニングテーマ は Art Blakey And The Messengers(アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ)の名曲「Moanin’」。ジャズドラマー アート・ブレイキーが1958年に発表した同名のアルバムに収録されています。作曲はピアニストの Bobby Timmons(ボビー・ティモンズ)。
番組内 楽曲
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