NHK「美の壺(びのつぼ)」は普段使いの器から家具、着物、料理、建築に至るまで、衣食住、人の暮らしを彩ってきた美のアイテムを解説してくれる番組。紹介されたものは何?場所はどこ?出演は誰?どこで買える?と興味津々。
そんな気になる「美の壺・美術の鑑賞マニュアル」を詳しく調べてみました。
美の壺「琉球の心を映す 紅型」File 508
出演は俳優の 草刈正雄(くさかり まさお)さん、ナレーションは女優の 木村多江(きむら たえ)さんです。
最新エピソード 美の壺 File 616「菊」 もどうぞ併せてご覧下さい。
BSプレミアム(2023年11月30日まで。2023年12月1日から NHK BS(BS101チャンネル) へ移動)
初回放送:2020年8月7日(金)19:30~20:00
再放送 :2020年8月15日(土)06:45〜、2022年7月29日(金)06:45〜
2023年6月9日(金)06:45〜
BS4K(2023年12月1日から BSプレミアム4K へ名称変更)
初回放送:2020年8月7日(金)19:30~ 20:00
再放送 :2020年8月9日(日)06:45〜、2020年8月10日(月)16:00〜
2020年8月14日(金)09:00〜、2023年6月9日(金)06:45〜
Eテレ
再放送 :2021年8月12日(木)11:00〜
U-NEXT でNHKの動画配信サービス NHKオンデマンド を視聴可能。らんまん・なつぞら などの朝ドラや 光る君へ・鎌倉殿の13人・真田丸 などの大河ドラマ、探偵ロマンス・正直不動産 などの名作ドラマ、ファミリーヒストリー「草刈正雄」を一気見できます。U-NEXTは初回31日間無料トライアル。NHKオンデマンド は別料金ですが、もらえる600ポイントで購入できます。PR
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美の壺 琉球の心を映す 紅型 File 508 内容
▽鮮やかな色彩、生き生きとした模様が特徴の沖縄の染め物、紅型(びんがた)
▽琉球王朝の栄華を思わせる国宝登場!
▽王族にだけ許された色とは?
▽朱色発色の秘密
▽沖縄の自然を模様に映しとる技に密着!
▽沖縄戦で焦土と化した中で作られた貴重な紅型は意外なもので染められていた
▽復興に向け奔走した紅型作家によるタペストリーの志は、首里城焼失を機に新たな紅型へ!16代にわたる歩み。
プロローグ
久しぶりに沖縄旅行に行くことになった草刈さん、妻に内緒で 紅型(びんがた)を注文しておいてプレゼントして驚かせようと閃きました。三線(さんしん)は持っているという設定です。三線は以前に美の壺で取り上げられてましたね。
美の壺 一、夢の世界へいざなう
ひとつめのツボは 夢の世界へいざなう。
那覇市歴史博物館 / 沖縄県立博物館・美術館 / 古(いにしえ)の紅型【沖縄県 那覇市】
最初に登場したのは 那覇市歴史博物館 所蔵の 国宝 紅色地龍宝珠瑞雲文様紅型(べにいろじりゅうほうじゅずいうんもんようびんがた)。18〜19世紀につくられたものですが色鮮やか。独特の配色、生き生きとした龍の模様です。
沖縄の染物・紅型(びんがた)の 紅 は「多彩な色」、型 は「模様」を意味します。
沖縄はかつて 琉球(りゅうきゅう)と呼ばれる国でした。様々な国の影響を受けながら独自の文化を発展させてきた琉球。紅型は琉球が育んだ美の結晶と呼ばれています。
その伝統は500年以上とも。大胆な配色、繊細な模様。職人の眼差しが時代の空気を写し取ります。
次に紹介されたのはこちらも18〜19世紀につくられた 那覇市歴史博物館 所蔵の 国宝 黄色地鳳凰蝙蝠宝尽青海立波文様紅型(きいろじほうおうこうもりたからづくしせいがいたつなみもんようびんがた)。琉球の国王が着ていたと伝えられる紅型です。
黄色地は王族だけが着ることを許されていました。「くがに」と呼ばれる黄色は黄金色を意味していて豊かさの象徴。黄色を纏うことで王の権威を示しました。
沖縄県立博物館・美術館 所蔵の 白地流水蛇籠に桜葵菖蒲小鳥模様紅型(しろじりゅうすいじゃかごことりしょうぶもんようびんがた)。19世紀に江戸で琉球の舞楽を披露する少年が着ていたと伝えられています。
沖縄県立博物館・美術館 学芸員 與那嶺一子(よなみね いちこ)さんによると、紅型と絵画の色材はほぼ同じ。赤・青・黄・白・黒、それを組み合わせて色を作ります。模様をよく見てみると一つの葉の中にもいろいろな色が入っていて、花や鳥の色も現実にはない色を使っています。南国の強い光の中ではっきりと現れる色に向かって行ったのではないかと與那さんは考えます。
番組で紹介されていた紅型はサントリー美術館で2018年7月〜9月に開催された展覧会『琉球 美の宝庫』でも展示されていましたね。ご覧になった方もいらっしゃるのではないでしょうか。
名前 | 那覇市歴史博物館 |
住所 | 沖縄県那覇市久茂地1-1-1 |
WEB | http://www.rekishi-archive.city.naha.okinawa.jp/ |
営業時間 | 金〜水:10:00〜19:00(新型コロナウイルスの影響により変更あり) |
定休日 | 木曜日 |
名前 | 沖縄県立博物館・美術館(おきなわけんりつはくぶつかん・びじゅつかん 愛称:おきみゅー) |
住所 | 沖縄県那覇市おもろまち3-1-1 |
WEB | https://okimu.jp/ |
営業時間 | 火水木日:9:00〜18:00、金土:9:00〜20:00 |
定休日 | 月曜、12/29〜1/3 |
道家由利子さん + 道家良典さん / 紅型工房ひがしや / 鮮やかな色の秘密【沖縄県 今帰仁村】
紅型の鮮やかな色の秘密。材料には主に鉱物を砕いて作る 顔料(がんりょう)を用います。日差しにも強く色褪せません。
製作過程を見せてくれたのは 紅型工房ひがしや の紅型作家 道家由利子(どうけ ゆりこ)さんと 道家良典(どうけ よしのり)さん。道家由利子さんは沖縄県糸満市の びんがた工房 くんや で勤務後、2015年に独立。現在は沖縄北部の今帰仁村で古典舞踊の衣装を手掛けています。
色を濃く染めるのが踊りの衣装の特徴。そして紅型の鍵を握る色は 朱色(しゅいろ)。朱色を入れることによって柄が生き生きとしてくるのだそうです。古典の引き締まった赤は首里城のキリッとした赤を目指して、朱色に墨を少しずつ足しながら柄に似合う深い赤を探ります。
古典舞踊の衣装には伝統的な配色が息づいています。赤に染めるのは鳳凰。生命力溢れる存在が引き立ちます。
遠く離れた場所からでも舞台衣装のひとつひとつの柄が浮き立つように反対色を隣り合う柄に塗ることを心がけているのだとか。
染めた色にぼかしを入れて濃淡を付ける 隈取り(くまどり)という効果で遠近感ををつけて奥行きを出すと描かれた模様が生き生きと浮かび上がります。
その後に蒸し、水元、糊伏せという工程を経て地染め。色むらが出ないように大きな刷毛で一気に染めていきます。
そして仕上げの 水元(みずもと)。糊を水で落とすと鮮烈な色彩が現れます。
日差しに映える鮮やかな顔料の色彩。舞台で衣装を纏った踊り手が踊ると一層生きてくるのが感慨深い、と道家さんがおっしゃっていました。
こちらの工房は着物や帯はオーダー制で製作。小物は那覇の Craft house Sprout(クラフトハウス スプラウト)で購入できます。
名前 | 紅型工房ひがしや(びんがたこうぼうひがしや) |
住所 | 沖縄県国頭郡今帰仁村与那嶺 |
@bingata_higashiya |
田口博章さん / 琉球舞踊【沖縄県】
装いと技とが相まって完成する琉球舞踊の夢の世界。
識名園で紅型工房ひがしやさんの衣装を身に纏い琉球舞踊「諸屯(しゅどぅん)」を披露してくださったのは踊り手 田口博章(たぐちひろあき)さん。5歳から琉球舞踊を始め沖縄県立芸術大学卒業後、組踊で第一線を目指すべく国立劇場おきなわ 組踊研修生として研修修了。期待の若手舞踊家として活躍されています。
田口さんは紅型工房ひがしやさんに衣装を発注されることも多く、その強いこだわりに道家さんも精一杯応えて製作されているようです。
沖縄県出身の紅型作家 Morio(宮城守男)さんコラボ紅型柄の琉球帆布マスク。
美の壺 二、命の息づかいを映し取る
ふたつめのツボは 命の息づかいを映し取る。
きもの おがわ屋 / 普段づかいの紅型の帯【埼玉県 さいたま市】
紅型の装いは舞台衣装だけではありません。
埼玉県さいたま市 で老舗呉服店 きもの おがわ屋 の女将 小川聖子(おがわ せいこ)さんは紅型を普段の生活に取り入れています。紅型の帯は身にまとうとエネルギーを頂けると語っていました。
お気に入りの組み合わせは縮緬の着物に沖縄の花 月桃(げっとう)をあしらった紅型の帯。迫力のある帯なので無地感覚の着物に合わせてお茶席やお呼ばれなどに着る機会が多いようです。
白地に藍色で描かれた シダ の柄の 琉球藍型(りゅうきゅうあいがた)の帯。多色使いの紅型に対して藍型は藍だけで文様を染めるのが特徴。シダはいつも青々と生育するので長寿を意味するモチーフ。涼しげな藍色は夏の装いにぴったり。こちらの帯は番組で紹介された紅型作家 渡名喜はるみ さん作のもの。
名前 | きもの おがわ屋(きもの おがわや) |
住所 | 埼玉県さいたま市中央区新中里3-4-12 |
WEB | https://kimono-ogawaya.jp/ |
営業時間 | 火〜土:11:00〜1900 |
定休日 | 日曜・月曜 |
城間びんがた工房の城間栄順さん作の帯。
渡名喜はるみさん / 沖縄の自然をモチーフにした紅型【沖縄県】
砂浜で波をスケッチをしていたのは 紅型作家の 渡名喜はるみ(となき はるみ)さん。作家として活躍する一方で沖縄県立芸術大学で教鞭をとられ2020年3月に退官されました。
渡名喜さんは小川聖子さん愛用の紅型の帯の作家さん。沖縄の自然や風物をモチーフに光と影を紅型に表現しようとしています。
何回見ても自然の造形はすごいし、静かに見える海でも風で水が動いている。風、光を受け止めたものを布に表したい、と毎日見る自然が自分の栄養源と語る渡名喜さん。
見せてくれたのはスケッチを図案に起こす作業。波の形を流線型で描くのではなく星砂の連なりで波の動きを表すアイデア。
次に図案を元に型紙を彫る作業。小さな星の形をひとつひとつ丹念に切り抜きます。
出来上がったのは波を表す 青海波文様(せいがいはもんよう)と波型を描いて連なる星砂が染められた紅型。青のグラデーションが美しい紅型を着物に仕立てていました。
知念冬馬さん / 知念紅型研究所 / おぼろ型【沖縄県 那覇市】
王朝時代から続く工房 知念紅型研究所 の10代目当主 紅型作家の 知念冬馬(ちねん とうま)さん。知念さんは異なる模様の型紙を重ねて柄を立体的に見せる手法 おぼろ型(朧肩 おぼろがた)に力を注いでいます。
知念冬馬さんの目標は祖父 知念貞夫(ちねん さだお)さんがつくったおぼろ型の作品。地紋には藤色に染まる笹と菊。浮かぶように見えるのは竹とふくら雀。
祖父がどうしておぼろ型をやっていたんだろうと気づいたのがおぼろ型との出会い。より深い表現をしたいと思った時に色だけでなく柄同士の組み合わせで新しい見え方ができると知念さん。
知念さんが1枚の布地に3枚の型紙を重ねるおぼろ型に挑んでいます。
1枚目の型紙は雨。一番表面に出したい雨の型紙に糊を置きます。
2枚目の型紙はブーゲンビリア。型紙で染め、更に色を乗せていきます。地は空色に染めます。
3枚目の型紙はノグチゲラとシーサー。沖縄の歴史や精神的な部分も作品に落とし込みます。
おぼろ型の魅力は紅型の本質に通ずると考える知念さん。紅型の技術で柄により生き生きと命を吹き込むことを表現しようとしています。
名前 | 知念紅型研究所(ちねんびんがたけんきゅうしょ) |
住所 | 沖縄県那覇市宇栄原1-27-17 |
WEB | https://www.chinenbingata.com/ |
営業時間 | 月〜金:9:00〜17:00 |
定休日 | 土曜・日曜・祝日 |
知念紅型研究所の知念初子さん作の帯。
美の壺 三、心の風景を染める
最後のツボは 心の風景を染める。
平良家 / 食料袋をキニーネで染めた紅型【沖縄県 うるま市】
沖縄県うるま市 の 平良敏(たいら さとし)さんと 平良京子(きょうこ)さんが見せてくれたのは平良家に残る貴重な紅型。戦時中米軍から配給された 食料袋で仕立てペンキで模様を描いた紅型 で、劇団を主宰し俳優でもあった平良敏さんの父 平良良勝(たいらりょうしょう)が誂えたもの。
失意の人々を励ましたいと黄色に染色。黄色に染める材料に使ったのは抗マラリア療法薬 キニーネ。この黄色の衣装を纏った俳優たちは収容所の観衆の前で華やかに舞いました。
焦土でふるさとを失った人たち、悲しんでいる人たちに最高のものを見せてあげたい、という思いで染めた故郷の風景が生きる紅型です。
知念紅型研究所の知念貞男さん作の帯。
城間栄順さん + 城間栄市さん / 城間びんがた工房 / 代々続く紅型工房【沖縄県 那覇市】
美しい沖縄をかたどった紅型。琉球王国が栄華を極めた頃を思わせる首里城の姿が描かれています。琉球王朝時代から続く老舗紅型工房 城間びんがた工房 の14代目 城間栄喜(しろまえいき)さんの作品。沖縄戦で首里城は跡形もなく燃えてしまいましたが記憶の中の首里城を紅型に込めて表しました。
栄喜さんは日本軍の濠から拾った地図を型紙に、糊袋の口金に薬莢を使い紅型を製作。沖縄にかつての豊かな色を取り戻そうと紅型の復興に奔走。多くの弟子を育てました。
ちなみにかつての琉球王国士族に仕えた紅型三宗家がこの城間家、先ほど紹介された知念家、そしてもうひとつは沢岻(たくし)家。この三宗家が中心となって紅型を守り次の世代に伝えています。
栄喜さんの意志は15代目 城間栄順(しろまえいじゅん)さん、16代目 城間栄市(しろまえいいち)さんに受け継がれています。
1992年に復元された首里城は2019年10月31日に焼失してしまいます。
祖父、父の志を継ぐ16代目の栄市さんにとって大きな出来事でした。大事なものが失われてしまったと悲しむ栄市さんが思ったのは祖父と父のこと。シンボルを失った時にこんな気持ちで仕事を頑張ってきたのかと改めて祖父や父の型紙を見返しています。
新たなモチーフを図案に起こす栄市さん。八匹の龍に末広がりの幸せを込め心の中にある首里の街を紅型に描こうとしています。
名前 | 城間びんがた工房(しろまびんがたこうぼう) |
住所 | 沖縄県那覇市首里山川町1-113 |
WEB | https://www.facebook.com/shiromabingata/ |
城間びんがた工房の城間栄順さん作の帯。
エピローグ
草刈さんがオーダーした紅型。スケッチしていたのはゴーヤチャンプルーの図案。
斬新すぎますね。
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音楽 BGM
ジャズの名曲が流れる美の壺。番組BGMファンもいらっしゃるのではないでしょうか。
オープニング曲と番組内挿入曲をまとめましたので参考にどうぞ。リンク先で試聴できます。
オープニングテーマ
オープニングテーマ は Art Blakey And The Messengers(アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ)の名曲「Moanin’」。ジャズドラマー アート・ブレイキーが1958年に発表した同名のアルバムに収録されています。作曲はピアニストの Bobby Timmons(ボビー・ティモンズ)。
番組内 楽曲
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