NHK「美の壺(びのつぼ)」は普段使いの器から家具、着物、料理、建築に至るまで、衣食住、人の暮らしを彩ってきた美のアイテムを解説してくれる番組。紹介されたものは何?場所はどこ?出演は誰?どこで買える?と興味津々。
そんな気になる「美の壺・美術の鑑賞マニュアル」を詳しく調べてみました。最後に番組内の音楽もまとめてあります。
美の壺「“空間の魔術師” フランク・ロイド・ライト」File 414
出演は俳優の 草刈正雄(くさかり まさお)さん、ナレーション(語り)は女優の 木村多江(きむら たえ)さんです。
最新エピソード 美の壺 File 621「平安の美」 もどうぞ併せてご覧下さい。
BSプレミアム(2023年11月30日まで。2023年12月1日から NHK BS(BS101チャンネル) へ移動)
初回放送:2017年6月23日(金)19:30~20:00
再放送 :2017年6月30日(金)06:00〜、2019年6月14日(金)19:30~
2019年6月22日(土)06:30〜、2019年11月18日(月)10:45~
Eテレ
再放送 :2017年8月27日(日)23:00~、2018年6月17日(日)23:00~
2020年5月17日(日)23:00~、2020年5月21日(木)23:00~
BS4K
再放送 :2019年4月25日(木)19:00~、2019年5月02日(木)09:00~
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美の壺 “空間の魔術師” フランク・ロイド・ライト File 414 内容
▽建築家フランク・ロイド・ライト生誕150年!
▽壮麗な巨大建築「帝国ホテル旧本館」。“空間の魔術師”ライトが仕掛けた演出とは?
▽丘の斜面にはうように建てられた住宅「ヨドコウ迎賓館(旧山邑家住宅)」。ライトが目指した自然との調和とは?
▽「自由学園明日館」。美しい学校建築にはライトのある思いが!
▽50年前の貴重な映像と、最新のバーチャルリアリティーが、ライト建築の神髄を解き明かす!
フランク・ロイド・ライト
今回の草刈さんは建築家 フランク・ロイド・ライト を演じていました。
フランク・ロイド・ライト / アメリカ人建築家
世界的建築家 フランク・ロイド・ライト(Frank Lloyd Wright)は1867年アメリカ合衆国ウィスコンシン州生まれ。
100年前の大正6年(1917年)に日本を訪れ、帝国ホテル、旧林愛作邸、旧山邑邸(現:ヨドコウ迎賓館)、自由学園明日館、の4作品を設計しました。
近代建築三大巨匠の一人と称されるライトの作品は独創的。
アメリカ・ペンシルベニアの カウフマン邸(落水荘)は滝の上の家。
アメリカ・ニューヨークの ソロモン・R・グッゲンハイム美術館 はまるでかたつむりのような形。
ライトの建築が見られるのはアメリカ以外では日本だけ。
東洋の宝石とうたわれた豪華絢爛なホテル 帝国ホテル。
丘の斜面にはうように建てられた住宅 旧山邑邸(現:ヨドコウ迎賓館)。
草原に建つ家をイメージした学校 自由学園明日館。
ライトは斬新なデザインを施しながらも日本人の感覚に寄り添った建物を設計しました。
建築家 隈研吾(くま けんご)さんは、ライトは単に自分がアメリカでやったものを日本に押しつけようとした訳ではなく、日本に来て日本の空気や光を感じて自分の建築をそれに合わせて変えていった、と語ります。
建築は場所から生えてきた植物みたいなものだと考えている隈さんは、多分ライトもそれに近い事を感じてたんじゃないかなと思うそうです。
実はライト来日する前から日本に強い関心を抱いていました。中でも愛してやまなかったのが浮世絵。
生涯に買い付けた浮世絵は数千点にも上ったといいます。帝国ホテルの報酬のほとんどを浮世絵に費やしたという逸話もあるほどです。
自伝には「浮世絵と出会ってからというもの日本は世界で最もロマンティックで芸術的で自然に鼓舞された国として私を魅了し続けている」と書かれています。
ライトが所有した浮世絵は、現在 フランク・ロイド・ライト財団(Frank Lloyd Wright Foundation)が所蔵管理しています。
名前 | フランク・ロイド・ライト財団(Frank Lloyd Wright Foundation) |
WEB | https://franklloydwright.org/ |
隈研吾さん / 建築家
隈研吾(くま けんご)さんは日本を代表する建築家のひとり。
1954年神奈川県生まれ。東京大学工学部建築学科を卒業後、東京大学大学院建築意匠専攻修士課程を修了。日本設計、戸田建設、コロンビア大学客員研究員を経て、1990年に隈研吾建築都市設計事務所を設立しました。
2019年に竣工した国立競技場の設計者としても知られています。東京大学特別教授・早稲田大学特命教授も務めています。
美の壺 File 441「屋根」、美の壺 File 584「竹」の回にも出演していました。
名前 | 隈研吾建築都市設計事務所 |
住所 | 東京都港区南青山2-24-8 BY-CUBE |
WEB | https://kkaa.co.jp/ |
米山勇さん / 建築史家・江戸東京博物館研究員
建築史家・江戸東京博物館研究員の 米山勇(よねやま いさむ)さんは1965年東京都生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科博士後期課程修了後、日本学術振興会特別研究員、早稲田大学大学院非常勤講師、日本女子大学非常勤講師を経て、東京都江戸東京博物館研究員。日本銭湯文化協会理事。
日本近現代建築史、江戸東京の建築・都市史を専門に活躍し、著書も多数。
名前 | 米山勇(よねやま いさむ) |
WEB | https://www.facebook.com/yoneskyf |
米山勇さんが監修したモダニズム建築鑑賞ガイド。
美の壺 一、ホテル:“空間の魔術師”が見せるドラマ
ひとつめのツボは ホテル:“空間の魔術師”が見せるドラマ。
帝国ホテル 旧本館(ライト館)
フランク・ロイド・ライト が日本で初めて設計した建築は 帝国ホテル(ていこくホテル)旧本館。1914年(大正3年)頃から、当時の総支配人だった 林愛作(はやし あいさく)が旧知のライトと新館設計の相談を重ね、1916年(大正5年)に設計契約を締結。翌1917年にライトは来日し、弟子となった 遠藤新(えんどう あらた)とともに設計に当たります。1919年に帝国ホテル着工。
1922年にライトは完成を見ることなく帰国。帝国ホテル本館は1923年に竣工しました。(参照:wikipedia)
1923年(大正12年)ホテルが竣工し落成記念披露宴の準備中に関東大震災が起こります。
10万棟以上の建物が全壊。20万棟以上が火災で全焼しました。
その中で倒壊を免れた帝国ホテルは被災した人々を受け入れ避難場所として使われました。
関東大震災を乗り越えた帝国ホテル本館は老朽化のため1968年(昭和43年)新本館建設のため解体。玄関部分は 博物館明治村(はくぶつかん めいじむら)に移築保存されています。
現在の帝国ホテル本館 オールドインペリアルバー には大谷石や壁のテラコッタなど当時の姿が僅かに残されています。奥には宴会場に飾られていたというライトがデザインした壁の装飾も。バーの椅子ははライトがデザインした椅子を再現しています。
紹介されていたのはかつての帝国ホテルの姿を収めた貴重なフィルム「帝国ホテル 失われたライトの遺産」。1968年に旧本館が解体される時に製作された28分のフィルムです。
記録映像を制作した グループ現代 社は たびたび美の壺の制作も担当する映像制作会社。この回もグループ現代担当回でした。
建築史家・江戸東京博物館研究員の 米山勇(よねやま いさむ)さんは、ホテルというのは一種のアミューズメント空間だと語ります。
色々な要素の機能を持った空間が集積するホテルという場所を、空間の印象を劇的に変化させながら構成していくテクニックは魔術的だと評していました。
名前 | 帝国ホテル(ていこくホテル) |
住所 | 東京都千代田区内幸町1-1-1 |
WEB | https://www.imperialhotel.co.jp/ |
博物館明治村 / 移築復元された帝国ホテル旧本館(ライト館)中央玄関【愛知県 犬山市】
帝国ホテル旧本館(ライト館)は解体後その一部が移築復元されました。愛知県犬山市の 博物館明治村(はくぶつかん めいじむら)で 中央玄関 を原形に近い形で見る事ができます。
NHK連続テレビ小説「まんぷく」で安藤サクラさん演じる福子がホテルで働くシーンは明治村の帝国ホテル旧本館でロケをされていました。ドラマや映画のロケ地にもなることが多いですね。
古代の遺跡を彷彿とさせる重厚な外観。足を踏み入れると思いの外低い天井。
ところが階段を上ると一気に視界が開け、3階まで吹き抜けになったメインロビーが現れます。突如現れる大空間が開放感を与えるライトの演出。
上の階へ行くにはフロアの隅に設けられた小さな階段を上ります。ほんの6段上がった先には中二階のフロア。ライトはこうした僅かな高低差を至る所に仕掛けました。
1階2階3階といった各階を機械的に階段でつなげていくのではなく、ちょっとした階段で空間の印象を変えていくことを意図的にデザインしている、と米山さんは指摘します。
名前 | 博物館明治村(はくぶつかん めいじむら) |
住所 | 愛知県犬山市内山1番地 |
WEB | https://www.meijimura.com/ |
営業時間 | 3〜7・9・10月:9:30~17:00、8月:10:00~17:00、11月:9:30~16:00、12月~2月:10:00~16:00 |
定休日 | 不定休 |
一般公開されているフランク・ロイド・ライトの74の作品を紹介した書籍。
岸上剛士さん / 凸版印刷 / 帝国ホテル・ライト館VR再現プロジェクト
装飾にもライトならではの計算がありました。複雑なデザインの照明は幾何学模様を繰り返し重ねています。同じ模様を反復させ複雑なデザインでありながらも秩序だった印象を与えています。
紹介されていたのは 凸版印刷(とっぱんいんさつ)の 帝国ホテル・ライト館VR再現プロジェクト。失われた帝国ホテルの旧本館をデジタルで再現しようとする取り組みです。
移築復元された建物の実測データを基に、5,000枚に上る写真や当時の建物を知る人々の証言からコンピューターでモデリングして VR(バーチャルリアリティー)を製作。昭和初期の帝国ホテル旧本館の姿が浮かび上がってきました。
現在は博物館明治村の帝国ホテル中央玄関内「VR THEATER ROOM」でVRコンテンツを活用したオリジナル映像を公開しています。
VRを制作したのは凸版印刷文化財VRプロデューサー 岸上剛士(きしがみ つよし)さん。同部署は熊本城のVR制作など最先端技術を使って文化財を記録保存し伝える仕事をしています。
帝国ホテルの当時の写真を基に照明を配置してみると意外と少なく、想像しているよりも薄暗い空間だったと語ります。
観せてくれたのは再現された 夜のロビー のVR(バーチャルリアリティー)。階段で2階へ上がり、薄暗い廊下を抜けるとロビーのモダンな照明が迎えてくれます。狭い場所を通って広い場所に出る、薄暗い場所を通って明るい場所に出る、というライトの空間演出が生きています。
ロビーの天井がキラキラと輝いているのは貝殻や雲母などが塗り込められていたのではないかと考えられています。
名前 | 凸版印刷(とっぱんいんさつ)帝国ホテル・ライト館VR再現プロジェクト |
WEB | https://vrstory.jp/project/ |
美の壺 二、住宅:自然と調和する
ふたつめのツボは 住宅:自然と調和する。
ヨドコウ迎賓館(旧山邑家住宅)/ 大谷石【兵庫県 芦屋市】
兵庫県芦屋市、町を見下ろす丘の中腹に建つ 旧 山邑家住宅(きゅう やまむらけじゅうたく)は フランク・ロイド・ライト が設計した住宅。
「美の壺 窓」の回でも紹介されていました。
灘の造り酒屋 櫻正宗(さくらまさむね)を営む八代目 山邑太左衛門(やまむら たざえもん)の別邸として建てられました。ライトが来日中の大正7年(1918年)に基本計画が行われましたが、ライトのアメリカに帰国後に実施設計と工事が進められたためライトのスケッチを基に弟子であった 遠藤新(えんどう あらた)と 南信(みなみ まこと)が担当。大正13年(1924年)に竣工しました。
1947年に 株式会社 淀川製鋼所(よどがわせいこうしょ)が社長邸として建物を購入し、1989年から ヨドコウ迎賓館(ヨドコウげいひんかん)として一般公開しています。
建物にふんだんに使われているのが 大谷石(おおやいし)。栃木県で採れる石材で軟らかく加工しやすいのが特徴。
ライトはこの大谷石を好み、通常は外壁や塀など屋外で使われる事が多い大谷石を内装にも使いました。
応接室の柱まわり、暖炉にも大谷石。家中を大谷石で飾ったのには理由があったといいます。
解説してくださったのはヨドコウ迎賓館 館長の 岩井忠之(いわい ただゆき)さん。
六甲山の南の端に位置するこの別邸は、下を見れば芦屋の市街地、その奥には大阪湾という景色が広がっています。ライトは自然と調和した建物を建てたいと考えたのではないかと語ります。
大谷石には「みそ」といわれる凸凹があり、他の石にあまり見られない特徴です。普通の石は硬くて冷たいイメージがありますが、大谷石には「みそ」があるために自然感が醸し出されます。そのため自然と調和した建築を作ろうとしていたライトが好んで使ったのではないかと岩井さん。
ライトは建築に日本の素材を生かす事にこだわりました。
名前 | ヨドコウ迎賓館(旧山邑家住宅 きゅうやまむらけじゅうたく) |
住所 | 兵庫県芦屋市山手町3-10 |
WEB | https://www.yodoko-geihinkan.jp/ |
営業時間 | 水土日祝:10:00~16:00 |
定休日 | 月曜・火曜・木曜・金曜 |
入場料 | 大人:500円、小・中・高校生:200円 |
伊奈製陶(INAX)/ 帝国ホテル煉瓦製作所 / レンガ【愛知県 常滑市】
帝国ホテル旧本館(ライト館)で大谷石と共に使われているのが 煉瓦(れんが)。表面にたくさんの筋が入ったレンガはライトが帝国ホテルのために特別に注文したもの。
建築家の 隈研吾(くま けんご)さんは、何故あんなに手の込んだ事をやったのかというと、タイルに影をつけたかったからだと思う、と分析。影をつけると質感に微妙な深みが出て、日本の湿度のある景観に合うのです。
焼き物の産地として知られる 愛知県常滑市(とこなめし)。レンガ作りを依頼したのは黄色いレンガを焼けるという常滑市の煉瓦職人 久田吉之助(ひさだ きちのすけ)でした。しかし久田のレンガ作りが思うように進まず、しびれを切らした帝国ホテルは大正6年(1917年)に煉瓦製作を行う直営工場 帝国ホテル煉瓦製作所(ていこくほてるれんがせいさくしょ)を設立。伊奈製陶所 の 伊奈初之烝(いな はつのじょう)・伊奈長三郎(いな ちょうざぶろう)親子が技術顧問を務めました。
レンガ作りは紆余曲折があったようで、久田吉之助を主役にした2019年のNHKドラマ「黄色い煉瓦〜フランク・ロイド・ライトを騙した男〜」の題材にされています。
常滑市の 帝国ホテル煉瓦製作所 の工場で 筋が入ったスクラッチレンガ「通称:すだれ煉瓦」を4年間で250万個製造。
どうやって大量のレンガに筋を入れたのかを再現してもらいました。
再現してくれたのは INAX(イナックス)(現在は LIXIL(リクシル)傘下)。帝国ホテル煉瓦製作所は大正10年(1921年)に製造を終え、設備と従業員を技術顧問をしていた 伊奈初之烝 に譲り渡しました。同年、匿名組合伊奈製陶所が設立され、1924年に 伊奈製陶株式会社 を設立。これがタイルやトイレの便座や洗面陶器で有名な INAX(イナックス)の前身です。
INAX(イナックス)は2011年の会社統合で株式会社 LIXIL(リクシル) 傘下となりました。
レンガの製法を解説してくれたのは LIXIL資料館(リクシルしりょうかん)館長の 後藤泰男(ごとう やすお)さん。(LIXIL資料館は2018年9月に閉館しています)
レンガに筋を入れるのは手作業。木枠の中に焼く前のまだ軟らかい状態のレンガを置き、道具で引っ掻きます。筋を入れる道具は木材におよそ5mm間隔でクギを打ちつけたもの。
無数に出来た土の盛り上がりが味わいを与えるレンガは日の光によって表情を変えます。
光があり影がありその影の揺らぎがある。作る人が違えばレンガの溝の凹凸も不均質になり影にも揺らぎができる。それがタイルに特別な効果を与えてると実感する、と後藤さん。
ライトは幾何学模様が立体的にデザインされたレンガ すだれ異型テラコッタ も発注。型に入れて成形し筋は手書きで入れていきます。
ライトは大谷石の切れ目の下にこのれんがを配置しました。雨が降ると雨だれが優しい音色を奏でます。
建築は雨にさらされる訳で、ライトは雨水がどう流れていくかにかなり関心を持っていたと思う、と 隈研吾さん。
ライト生誕150周年を記念して東京の帝国ホテル ロビーに常設展示スペース「インペリアルタイムズ」を新設。四隅には「ライト館」と呼ばれた旧本館のロビーと宴会場を彩った「光の籠柱(ひかりのかごばしら)」を再現。平面図や模型、椅子や煉瓦など当時の品々を展示しています。
名前 | INAX(イナックス)(現在はLIXIL傘下) |
住所 | 愛知県常滑市鯉江本町5-1 |
WEB | https://www.biz-lixil.com/column/manufacturing/tile013/ |
帝国ホテルのスクラッチタイルとテラコッタの魅力や復元を伝える書籍。
美の壺 三、学校:校舎も生徒も ひとつに
最後のツボは 学校:校舎も生徒も ひとつに。
自由学園 明日館 / 大きな家庭のような学校【東京都 西池袋】
東京池袋 の 自由学園 明日館(じゆうがくえん みょうにちかん)はライトの作品としては数少ない学校建築です。女学校として美しい芝生を囲む木造の校舎が造られました。大正10年(1921年)に竣工しました。
自由学園は1934年に移転し、以降旧校舎は「明日館(みょうにちかん)」と名付けられて様々な事業に使用されてきました。1997年に国の重要文化財に指定され、保存改修されました。
現在は見学・講習会・結婚式場・コンサート会場として利用しながら保存する「動態保存」のモデルケースのひとつとされています。見学時にはホールまたは食堂でコーヒー・紅茶や焼菓子をいただくことも可能。
美の壺 スペシャル レトロ建築 では木村多江さんが訪れていました。
自由学園の設計を依頼したのは婦人雑誌「婦人之友」を出版する気鋭のジャーナリスト 羽仁吉一(はに よしかず)・羽仁もと子(はに もとこ)夫妻。大正デモクラシーの考えが広まる時代に自由教育運動を実践する場を作ろうとした羽仁夫妻。遠藤新の紹介で羽仁夫妻の教育理念を聞いたライトはすぐに共感し、校舎の設計を引き受けました。
解説してくださったのは自由学園明日館 館長の 有賀寛(あるが ひろし)さん。
「何歳から何歳の女学生に、日本の中流家庭の主婦たる教養をつけるための教育をしたい。どういう校舎にするかは一切をお任せする」というのが羽仁夫妻の依頼でした。
学校の中央には正面玄関や校長室を設けるのが一般的だった時代、ライトは正面に生徒が集う ホール を配置。その奥には天井を高くしつらえた 食堂 を作りました。生徒も先生も学校の全ての人がここに集まり食事を共にしました。
ライトには学校教育に熱心なおばさんが2人ぐらいいて、当時のアメリカで「ホームスクール」とよばれることを実践していました。
それを近くで見て育ったライトは、学校を大きな家庭のようなイメージで造っているように思う、と有賀さん。
明日館は一般的な建物よりも軒が低く造られています。
米山さんによればライトがこだわった プレーリー・ハウス=草原住宅 という理念が根底にあると考えられます。
その土地に沿った建築を構成していく。大地に根ざしたような建築をデザインすることを目指していたライト。
ライトは土地との一体感を大切にしました。
庭から続く石畳は玄関・廊下・教室に至るまで同じ高さで設計しました。大地と建物をつなぐライトの技です。
開校当初は生徒26人でスタート。
日々の生活全てが学びの場。掃除や食事の準備など生徒同士が協力して行い、一つの家族のように過ごしました。
大正11年(1922年)、ライトがアメリカに帰国する時に開かれた送別会の写真が残されていました。
生徒たちに囲まれるライト。
ライトが学校に贈った言葉
「生徒はいかにも校舎に咲いた花にも見えます
木も花も本来一つ そのように校舎も生徒もまた一つに」
建物は今も卒業生や地域の人々の学びの場となっています。
名前 | 自由学園 明日館(じゆうがくえん みょうにちかん) |
住所 | 東京都豊島区西池袋2-31-3 |
WEB | https://jiyu.jp/ |
営業時間 | 火〜日:10:00〜16:00、第3金曜日の夜間見学:18:00 〜 21:00 |
定休日 | 月曜、年末年始 |
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音楽 BGM
ジャズの名曲が流れる美の壺。番組BGMファンもいらっしゃるのではないでしょうか。
オープニング曲と番組内挿入曲をまとめましたので参考にどうぞ。リンク先で試聴できます。
オープニングテーマ
オープニングテーマ は Art Blakey And The Messengers(アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ)の名曲「Moanin’」。ジャズドラマー アート・ブレイキーが1958年に発表した同名のアルバムに収録されています。作曲はピアニストの Bobby Timmons(ボビー・ティモンズ)。
番組内 楽曲
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